上海センター国際シンポジウム
「中国特需−脅威から“マーケット”に変身する中国−」
日時 2004年7月2日(金) 14:00〜17:00 |
講演概要 | |
京セラグループの中国事業戦略 京セラ株式会社執行役員常務 前田 辰巳氏 |
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京セラグループの紹介
京セラは稲盛和夫氏が1959年4月1日に資本金300万円、従業員28人で始めたが、その後めざましい躍進を遂げた。グループ企業としては、日本だけでなく、アジア、北米、ヨーロッパ、南米にも活動拠点を拡大している。この中で、半導体素材から事務機、携帯電話など素材から完成品に至るまでの幅広い業種に拡大をしている。 京セラグループの経営戦略 京セラグループの中国展開 中国市場はここ5年の自動車生産台数が2.4倍、携帯加入者数が7.9倍、GDPが40%増というよう成長している。この市場への開拓を京セラは、1974年に香港に販売会社を設立して以来ずっと続けてきた。1987年に広東省東莞市でカメラの委託生産を開始、1995年に上海京セラ電子を設立、1996年に東莞石龍京セラ光学を開業、1999年京セラ北京事務所を開設、2000年に京セラミタ香港が石龍鎮で委託生産を開始、2001年京セラ美達弁公設備(東莞)、京セラ振華通信設備を設立、2003年京セラ(天津)商貿、京セラ(天津)太陽能を設立した。現在のグループ従業員は13500人である。特に、京セラ(天津)商貿は外資系メーカーとしては世界で初めて中国におけるグループの生産品と輸入製品を中国国内で総合的に販売することを目的として設立されたものであり、一部は中国の資材メーカーの製品を世界の京セラグループに供給する役割もになっている。現在、150人の従業員がアフターサービスを含めた事業を進めている。 報告ではこの他、東莞石龍京セラ光学(従業員4600名)、京セラ美達弁公設備(東莞)(従業員3700名)の詳しい紹介もされた。素材から完成品までの一貫生産という点では、先の上海京セラ電子と同じやり方をとっている。また、京セラ(天津)太陽能の太陽光発電事業の説明もなされた。 @日本においては、新技術、新市場を創出し、かつ生産構造改革を行う。 A総合販社を活用し、成長拡大する中国市場で、京セラグループビジネス展開 の拡大を目指す。 B低コスト・高品質のモノ作りを実現し、中国に進出している各分野でのNo.1を目 指している。 |
最近の中国マクロ経済情勢: 機会と挑戦 中国人民大学経済学院教授 于 同申教授 |
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改革開放政策がもたらした経済成果について 計画経済から市場経済へ、自給自足の農業経済から工業化経済へというふたつの大きな変化があった。その中で、持続的高度成長を達成し、過去25年間の平均成長率は9%となった。この間、政府のマクロ経済政策は時に積極財政を行い、時に物価安定を優先することによって安定した経済成長に貢献したし、民間の高い貯蓄率も経済成長に大きな貢献をした。 改革開放政策の回顧と中国経済が直面する新たな挑戦 この間の改革開放政策を回顧すると、 最近のマクロ経済情勢について 最近のマクロ経済情勢について、次の4点が重要である。すなわち、 結論として述べられたこと @改革開放以来の経済成長を肯定的に評価し、今後もこの成長の勢いが保た |
脅威から救世主へと変わる中国 中国で活動している日本企業には「輸出型」のそれと「内販型」のそれがあるが、とくに後者の利益率の改善が目覚しい。この下で、中国国内での需要増の著しい素材メーカーはこぞって対中投資を計画している。この変化の早さにどうついていくかが問題だ。 この点では、たとえば、ほんの一年前に「我こそ中国市場の発展に目をつけている」と述べていたある文章が面白い。この文章では、「2010年頃には日本の対中貿易は対米貿易に比肩する」と述べていたが、その年の内に輸入総額で一気に対中貿易が対米貿易を上回り、輸出額でも翌年には台湾・香港を含めた中華経済圏への貿易が対米貿易を上回った。つまり「我こそ中国市場の今後を知っている」とした人間の予想をも大きく上回るスピードとなっているわけだ。私は、ドルベースで10%以上の成長が2025年まで続くと予想し、「高すぎる」と言われ続けたが、今後人民元の上昇が始まればこの予想さえ上回る可能性もある。今後25年で、ドルベースで中国のGDPが約18倍となり、世界のGDPの4割を占める可能性をも我々は計算しておく必要がある。 2003年の対中貿易を検証する 貿易では2003年日中貿易を詳しく検証することが大切だ。通関ベースでは、中→日貿易が87311億円であったのに対し、日→中貿易は66355億円とまだ日本の入超であった。が、伸び率では前者が13.0%であったのに対し、後者は33.2%と、日本からの輸出の増加が著しかったことが分かる。とりわけ、後者の増加額16539億円は同年の日本の対世界の輸出増加額の79%を占め、この部分にその波及効果を含めれば、この年の日本のGDP成長率の0.3%程度は中国のおかげであったことなる。本年の第一四半期の全世界への輸出は年率で16.7%増であったが、この内の半分が対中であったと低めに計算しても、やはり年率GDP成長率の1%相当は対中輸出のおかげであったこととなる。 が、品目別ではどのような特徴となるのか。2003年の品目別通関実績を分析すると多くのことが分かる。 たとえば @金額的にこの年に輸出を増やした産業は電子・機械・自動車以外に、鉄鋼、有 機化学品、プラスチック、ゴム、塗料・染料、ガラスなどの素材系が目立つ A中国からの輸入価格に対する輸出価格の高い品目でも大きく輸出を増やして いるものが多い Bというより、相対価格の高いものほど2003年の輸出増加率が高かった Cただし、(対中輸出−輸入)/(対中輸出+輸入)で競争力を測るとやはり輸出価 格が高いと輸出競争力が高くなる ということが分かった。しかし、ここで最も重要なのは、AとBである。 こうした国際競争力の変化は実はかなり予測されていたものであった。Cと同じ指標で中国の輸出競争力を1992年と1996年と2000年のデータで測ると素材系で競争力の低下ないし停滞を観測できる。また、応用一般均衡モデルの結果でも、機械・自動車・電機部門での輸入増、繊維や製紙、化学素材、建築材料での輸入増は予測されていた。ただし、金属は輸入減を予測していて、現在の事態と大きく異なっている。 ハイエンド市場とローエンド市場の対照性 この原因を探るために、中国の産業別の外資:国内資本の市場シェア比率の検討が意味を持ってくる。家電やオートバイなどでは外資のシェアが圧倒的に低く(ないし低下し)、一方、携帯電話や鉄鋼では外資ないし輸入品の比率がまだかなり残されている。つまり、過当競争状態にあるローエンド市場で中国企業が席捲する一方で、ハイエンド市場では外資(特に日本企業)が頑張っている。鉄鋼の場合は、自動車の外壁薄板は全部が日本からの輸入品となっており、こうした特殊技術の必要な分野では高価格でも相当に対中輸出を増やすことができている。というより、高価格を維持できるほどの高品質のものだけが輸出を増やすことができているという方が正確だ。 ただし、サントリーが中価格帯のビールに力点を置いて上海地域の市場を制覇したり、携帯電話に対するPHSという「ローエンド」市場で三洋電機が成功しているというようなケースもある。この分野の今後の動向も注目を要する。 (文責:大西 広) |