上海センター講演会

「グローバル経済の中の中国国有企業改革について」

 共催  京都大学21世紀COE

 日時  2005年4月18日(月) 14:00〜

 会場  京都大学時計台記念館国際ホールT

 講師  楊 瑞龍(中国人民大学経済学院長)
   通訳  胡 霞(中国人民大学経済学院副教授)


 講演概要
 去る4月18日、京都大学経済学研究科上海センターと同21世紀COEプログラムが共催で上記テーマの講演会を開催し、中国人民大学経済学院院長楊瑞龍教授の講演を拝聴した。楊院長の講演内容は概略次のようなものであった。

 中国国有企業改革は、以下の三つの段階を経て進められている。
 @「放権譲利」、つまり、企業の持っている権利を手放させ、利益を企業に譲った
   段階(1979-84年)
 A株式制度を導入し、近代企業制度を構築した段階 (1985-98年)
 B現在の国有経済戦略の調整段階(1998年以降-現在)
である。

 この結果、2003年のGDP 11.7万億元、2004年のGDP 13.65万億元=16500億ドルとなり、そのうち私営企業は25%、国有は25%、混合経済は30%、三資企業(外資企業)は20%を占めている。約9%の年平均GDP成長率の中、非国有経済の貢献率は6-7%となっている。

 こうした中で特に近年は、WTOへの加盟などがあり、グローバル経済の中の国有企業は以下の挑戦に直面するようになっている。すなわち、
 @制度規則からの挑戦
 A規制緩和からの挑戦
 B海外企業との競争の挑戦
 C知識経済時代の挑戦
である。

 その中で特に緊急の課題となっているのは、以下のようなものがある。すなわち、
 @企業の行政からの切り離し
 A国有資産の流失問題
 B国有企業に過剰な社会負担を軽減する問題
 C独占的な企業の規制緩和問題
 D国有商業銀行の改革問題
 E2000万人に及ぶ失業者と現役職員の生活保護の問題
 F国有株の保有率を減らし、資本市場を整備する問題
である。

 また、グローバル経済の中で中国国有企業改革についてなお深めなければならない構想として、以下のようなものがある。すなわち、
 @国有企業を分類して改革すること
 A企業構造の再編成
 B完全な企業の技術メカニズムを打ち出し、知識経済的時代の挑戦を迎えること
 C改革は管理を促進すること
 D企業改革のために必要とする外部環境の整備
である。

 具体的には、まず、社会保障制度の構築と整備を行ない、資本市場を徐々に整備し、また企業行動に関する法律制度を「公司法」や「国有資産法」「不公正競争制限法」などという形で整備することである。

 講演会では、以上の報告を受けた後、30分余りの時間を割いて、以下のような討論を行なった。

質問)1998年段階の「国有企業」と「混合企業」の比率はいくらか。
回答)40%と20%である。ここで、「混合企業」とは、株式会社のことで、国有部門ない
    しその子会社の株式保有が少しでもあるものを言う。以前「集体企業」と呼ん
    だものは、今は「地方国有企業」と呼んでいる。
質問)以前は「公有制主体」が「社会主義」のメルクマールとされた。今後、非国有
    部門が増えても「社会主義」と言えるのか。
回答)全部門を「国有」ないし「公有」とする必要はなく、公共施設、自然独占の資源
    ・エネルギー部門、軍需産業さえ「公有」であれば「社会主義」と言える。それ
    は今後20%まで縮小するだろう。
質問)コーポレート・ガバナンスの方法はどの国を今後モデルとするか。
回答)中国は現在アメリカ型を目標としている。が、もっとも理想的なのは、日本型
    とドイツ型をミックスしたものと考えている。
                                       (文責:大西 広)