上海センターブラウンバッグランチ(BBL)セミナー 第7回

「中国河南省農村経済の持続可能な発展の実現に関する一考察」

 日時  2005年 7月12日(火)12:15-13:45

 会場  法経総合研究棟1階107演習室

 報告者  張 莉(中国河南省 信陽師範大学経済管理学院教授)


 講演概要

 中国の「三農」問題は、中国の持続可能な発展を制約するボトルネックである。
「三農」問題を解決する核心問題は農業の近代化である。つまり、先端的な農業技術を導入することで、農民の収入増加をもたらすことである。
 中国のトップリーダーたちは、すでに「三農」問題の解決を最も重要な課題として位置付けた。農業税の減免をはじめ、土地徴用制度の改革、郷鎮政府の構造調整と人員削減、耕作農民への所得補填制度、農業への財政投入の拡大といった一連の政策措置がとられてきた。

 河南省は中国農村の典型である。河南省には7,000万の農民が生活している。しかし、中央の政策を有効に実施し、農業の近代化を推し進め、農村経済の持続可能な発展を実現させるには、農村に既存する矛盾や課題を解決しなければならない。今回の報告では、河南省の現状を分析し、どのようにして政府の農業に対する投資を農民の利潤に転ずるのか、どのようにして農村部の余剰労働力を、農民の収入増につなげるのか、といった農村経済における既存の問題について考察した。

 具体的には次の課題について検討した。
 農村人口の増加を抑制し、人々の教育水準を向上させること、都市部と農村部の所得格差を縮小させること、地方の役人の官僚主義的なやり方や腐敗行為をなくし、農村の法制建設を強化し、農民の権限や利益への侵害を防ぐこと、農村の土地所有権制度を改善し、農業の機械化を促進すること、耕地を効率的に利用することで耕地の浪費をなくすこと、保障制度を確立し、土地を失った農民の生活を支え、彼らの生存問題を解決すること、環境汚染対策を強化し、農村部における面源汚染を改善すること。これらの一連の課題を克服して、はじめて中国農村経済の持続可能な発展が実現できるのである。

(本稿は7月12日に開催された上海センターブラウンバッグランチ(BBL)セミナーでの講演を張莉教授にまとめていただいたものである。