================================================================================
京大上海センターニュースレター
第6号 2004年5月24日
京都大学経済学研究科上海センター

================================================================================
目次
○ 7/2国際シンポジウムの報告者が確定しました!!
○ 中国・上海情報 5.16−5.22
○ 韓国でのシンポジウムに参加して
********************************************************************************
7/2国際シンポジウムの報告者が確定しました!!

 先週号でお伝えしました上海センター協力会発足記念国際シンポジウムの中国側報告者が
確定しました。中国人民大学の于同申教授です。したがいまして、シンポジウムの報告者全体
は次のとおりとなりました。京セラの前田常務など実際にこの分野でご活躍の方をお招きし、現
在話題の「中国特需」を各方面から考える機会にすることができました。是非ふるってご参加の
ほどよろしくお願いします。
 なお、この日はシンポジウム終了直後に「上海センター協力会総会」を、さらにその直後には
懇親会を予定しております。その方もよろしくお願いします。以下、シンポジウムの概要です。

                          記

日時 7月2日(金) 午後2:00-5:00
会場 京都大学百周年時計台記念館二階国際交流ホール
全体テーマ 「中国特需--脅威から"マーケット"に変身する中国」
挨拶  西村周三 京都大学経済学研究科長
司会  山本裕美 京都大学上海センター長
報告1 京セラの中国戦略      前田辰巳 京セラ株式会社常務取締役
報告2 中国市場の拡大と高度化について 于 同申 中国人民大学教授
報告3 日本企業にとっての中国市場   大西 広 京都大学教授
********************************************************************************
中国・上海情報 5.16−5.22
ヘッドライン
■ 中国の原油輸入量:1―4月期は33%増
■ 中国:カザフスタンとの石油パイプライン建設,8月着工へ
■ 深?証券取引所:中小企業の株式取引部門を開設
■ 上海:風力発電所が年内送電開始
■ 香港資本の小売業進出規制を大幅緩和
■ 上海:下水処理料金は値上がりの見通し
■ 日産の中国合弁会社:広州で年産15万台の新工場稼働
■ ホンダ:天津二輪車工場着工,年産30万台規模
■ 「国際市場が中国食糧安保の脅威に」 FAO事務局長
■ 上海:超大型地下街建設で人口密集問題を解消
================================================================================
                 韓国でのシンポジウムに参加して
 
5月9日(日)、韓国のソウル大学において、シンポジウム(韓日共同研究会) 「高度経済成長の
韓日比較研究」が開催され、報告を行うために出張した。
 報告者とテーマは以下の通りである。

1. 日本の高度成長期における自動車産業の展開とサプライヤシステム 
  植田浩史(大阪市立大学)
2. 戦後日本紡績業の復興・発展・衰退??日米繊維摩擦の考察を中心に
  渡辺純子(京都大学)
3. 1960年代韓国の経済成長と政府の役割
  金洛年(東国大学)
4.  1960年代韓国産業政策の形成 : 化学繊維および鉄鋼産業の事例
  李相哲(東北亜経済中心推進委員会)

 日本側の参加者は、原朗教授(東京国際大学教授・東京大学名誉教授)を代表とする現代日
本経済史研究会のメンバーが中心である。通常は日本で定例研究会を開催しているが、同研
究会の山崎志郎氏(東京都立大学教授)と宣在源氏(韓国・平沢大学助教授)が現在韓国で研
究・教育活動を行っているため、お二人のコーディネートにより、定例研究会を拡張するかたち
で、韓国でのシンポジウム開催が実現した。
 韓国では研究会が日曜日に開催される例はほとんどないそうであるが、それにも拘わらず、
錚々たる研究者たちが出席してくれた。かつて京都大学で留学生生活や在外研究生活を送っ
たという方たちにもお会いした。
 韓国側の参加者は日本留学組が多かったため、使用言語は日本語を原則とし、必要に応じ
て通訳が加えられた。4本の報告のうち第2報告から第4報告までは、経済成長の過程におけ
る政府・産業政策の役割に関する分析である。私の報告(第2報告)も、いわゆる「産業調整援
助政策」と呼ばれる政策体系が各国で登場した経緯について考察したものである。第1報告は、
日本の高度成長期に自動車産業が拡大していった際に、市場取引ではなく「組織」が活用され
たことを実証したものである。いずれの報告も、「市場メカニズム」一般には還元できない、各国
の具体的な経済発展のありようを示唆するものであった。白熱したディスカッションを通じて、歴
史分析や各国比較の重要性を改めて認識した。こうした韓日交流は、双方にとって大きな刺激
となり、研究のさらなる進展を促すものと考えられる。

 なお、このシンポジウムの開催にあたっては、落星台(ナクソンデ)経済研究所の李栄薫所長
(ソウル大学校社会科学大学経済学部教授)に大変なご助力をいただいた。同研究所は経済
史研究を目的とする法人組織であり、専任研究員のほかに、事務スタッフも抱え、ソウル大学
近くにオフィスを構えている。一橋大学がかつて手がけた『長期経済統計』シリーズの韓国版を
作るという大規模なプロジェクトが現在進行中である。
 シンポジウムの翌日には、国史編纂委員会を見学し、所蔵資料の状況や公開ポリシーについ
ての説明を受けた。「上海センターニュースレター第5号」に堀和生教授が書かれていたように
(「韓国社会の情報化」)、韓国の文書館では、現在、文献情報の電子化、閲覧利用施設のIT化
が精力的に進められている。検索により資料の所在を体系的に把握できるようになりつつあり、
戦前の歴史文書が次々とテキスト化されて、ウェブ上で公開されている。
こうしたプロジェクトを進めるためには予算も人手も必要であるが、国史編纂委員会でも、それ
は1997年末に発生した通貨危機の時代に集中的に行われた。発生した失業者に対する政府の
雇用対策であったという説明を聞き、一同は、韓国の懐の深さに改めて感動した。
 今回の出張により、韓国における経済史研究が着々と進展しつつあることを肌で実感した。日
本もそれに共鳴し、連携していくことによって、経済史研究の国際的なネットワークを築いて行き
たいと思った。
                                                 (渡辺純子)
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++