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京大上海センターニュースレター
第7号 2004年6月6日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 7/2国際シンポジウムのご案内
○ 中国・上海情報 5.23−5.29
○ 2004年4月の北京・上海での自動車流通調査
○ 上海センター5月期の活動報告
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7/2国際シンポジウムのご案内
 何度もご案内して恐縮ですが、7月2日に予定の上海センター協力会発足記念国際シンポジ
ウムのご案内をしばらくさせていただきます。
 なお、この日はシンポジウム終了直後に「上海センター協力会総会」を、さらにその直後には
懇親会を予定しております。その方もよろしくお願いします。
                記
日時 7月2日(金) 午後2:00-5:00
会場 京都大学百周年時計台記念館二階国際交流ホール
全体テーマ 「中国特需--脅威から"マーケット"に変身する中国」
挨拶  西村周三 京都大学経済学研究科長
司会  山本裕美 京都大学上海センター長
報告1 京セラの中国戦略      前田辰巳 京セラ株式会社常務取締役
報告2 中国市場の拡大と高度化について 于 同申 中国人民大学教授
報告3 日本企業にとっての中国市場   大西 広 京都大学教授
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中国・上海情報 5.23−5.29
ヘッドライン
■ 中国が石油の戦略備蓄に着手、まず30日分目指す
■ 独BMW:招商銀行と提携、自動車ローン業務展開へ
■ 中国:原子力供給国グループに正式加盟
■ 甘粛省:4億トン級油田を発見
■ 中国の私営企業数、300万社突破
■ 4月工業製品出荷価格5%増
■ インドネシアAPPグループが上海で大型製紙工場を建設
■ 上海市:生活ゴミ回収を有料化
■ 上海市:今夏大型空調システムの使用に制限
■ 外資系銀行の88支店に人民元業務取扱いを認可
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            2004年4月の北京・上海での自動車流通調査

今回で十二度目の中国自動車流通調査である。これまでと異なるのは,たんなる学術調査では
なく,日本国内の自動車ディーラーの経営者が参加したことによって,彼らがビジネスチャンスを
見いだす,いわばフィージビリティスタディの前段階を埋めていく調査となった点だ。従って,取材
の重点は下記のような項目におかれた。(1)中国自動車市場の今後の成長の見込,(2)外国資本
が中国自動車流通業に参入する際のアドバンティージ,(3)外資参入に対する規制およびWTOの
履行状況、の三点である。以下,それぞれの項目について重要なポイントを述べよう。

中国自動車市場の今後の成長

 悲観論はほとんど聞かれなかった。2008年北京オリンピックまでに自動車市場が絶対的にシュ
リンクする可能性はないという見解が多数を占めた。ただ,金融引締によって,現在既に大都市で
は30%を超えているローン販売が停滞,縮小する可能性は充分にあるとの指摘があった。とは
いえ,他にも排ガスによる環境汚染問題,都市での交通渋滞問題,原油の入超拡大問題,ある
いは次に述べる供給過剰問題等,自動車市場の拡大に伴う数々の深刻な問題があるとしても,
市場自体が絶対的にシュリンクすることはないとの見方が多かった。2006年頃には販売台数では
米国に次いで世界二位,生産台数では米国,日本に次ぐ三位の地位にまで成長することは誰の目
にも明らかであろう。

 他方で,供給過剰問題は確実に起こる。既に起こりつつある。とくに産業全体ではなく,個々の
メーカーのレベルで供給過剰問題を見ると,販売力のないメーカーは,過剰生産設備問題が顕
在化し,倒産あるいは他のメーカーによって吸収合併されることは確実である。外国資本が中国
自動車流通業に参入する際のアドバンティッジ全体的な流通システム,マーケティング戦略,販
売手法等で見ると,日本のディーラーが国内でおこなっているそれらが中国よりも圧倒的に優位
であることは誰の目にも明らかであった。しかし最大の問題はコスト問題である。日本国内でおこ
なわれている販売手法を日本のディーラーが参入(現地ジョイントベンチャ-等)という形で持ち込
むことは不可能であろうという見解が多数を占めた。例えば,日本人経営者1人を現地の店に常
駐させるだけで,現地のスタッフの20人以上の人件費に相当する。その20人分のコスト増に見合
った成果が生み出せるかは疑問であろう。ジョイントベンチャーでなく,他の進出形態(コンサルタ
ント業務,人員派遣の伴わない投資等)を考案する必要性があろう。

外資参入に対する規制およびWTOの履行状況

 外資100%出資によるインポーターやディストリビューターの設置は,WTOでの公約どおり,2004
年12月までに認可される見込が大きい。ディーラーについては現状では50%出資まで認められ
ているが,今後,外資100%のディーラーが認可されるかは不明である。現在,自動車流通における
最大の問題の一つは,「ブランド問題」である。ブランド問題とは,現在,中国政府の国家発展計画
委員会は,外資とのジョイントベンチャー(例えば広州本田汽車――日本の本田技研工業50%,
中国の広州汽車50%の対等出資)で製造されたアコードのメーカー・ブランドは,「本田」ではな
く,「広州本田」ブランドと見做している。従って,本田技研工業が中国の東風汽車とのジョイント
ベンチャーで製造しているC−RVも,「本田」ブランドでなく,「東風本田」ブランドとしている。そ
の結果,この二つのブランド(「広州本田」と「東風本田」)は,異なる流通チャネルの異なった販
売店で販売するよう政府は求めている。また中国側の広州汽車や東風汽車も同じ立場を取って
いる。

他方,日本から輸入したアコードは「本田」ブランドと見做されるため,広州本田で製造したアコ
ード(広州本田ブランド)とは,異なる流通チャネル・販売店で売るように中国政府は要求してい
る。こうしたブランド政策は外資メーカーにとってやっかいなものとなっているが,現時点では,それ
を受け入れざるを得なくなっている。
                                                   (塩地 洋)
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                  上海センター5月期の活動報告

山本裕美教授、北野尚宏助教授 5月25〜27日、上海で開催された世界銀行、中国財政部主
催の上海貧困削減スケーリングアップ会合(Global Conference on Scaling Up Poverty Reduction)
に参加。本会合は、2000年の国連ミレニアム・サミットで採択された「ミレニアム開発目標(MDGs)」
(貧困削減、保健・教育の改善、環境保護等に関する2015年までの数値目標)の達成に向けて、
貧困削減の事例(政策、プログラム、プロジェクト)を世界中から持ち寄って、成功事例をいかに
普及させていくかをテーマに開催された。出席者は1,000名を越える大規模な会合となった。ウ
ォルフェンソン世界銀行総裁、金仁慶中国財政部部長が共同議長をつとめ、国家元首クラス
では、ルラ・ブラジル大統領はじめ4名が参加、中国側よりは温家宝総理、回良玉副総理、韓
正上海市市長らが出席した。日本よりは外務省荒井政務官らが参加した。会議の総括として、
上海アジェンダが公表された。
http://www.worldbank.org/wbi/reducingpoverty/

上海センターとして挨拶した出席者は、各国の政府、研究機関、大学、企業、NGO関係者、国
際機関職員など40名以上にのぼった。また、今次出張期間中、5月25日には復旦大学日本研
究センター陳建安所長と、5月28日には上海財経大学金融学院丁健教授、丁剣平教授(一橋
大学博士)郭麗虹助教授(京都大学経済学研究科博士)と面談した。

大西広教授 5月29日、台湾東呉大学にて開催された国際学術シンポジウム「Financial Market
and Industrial Growth」に参加し、「China's Capitalistic Development from 1949 to 2025」との
報告を行なった。本シンポジウムの詳細は次号ニュースレターにて報告する。
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