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京大上海センターニュースレター
第13号 2004年7月11日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 京セラグループの中国事業戦略
○ 協力会理事範雲涛さんが本を出版
○ 中国・上海情報 7.4-7.10
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                  京セラグループの中国事業戦略
     (7/2上海センター・シンポでの京セラ株式会社執行役員常務前田辰巳氏のご報告)

京セラグループの紹介

 京セラは稲盛和夫氏が1959年4月1日に資本金300万円、従業員28人で始めたが、その後め
ざましい躍進を遂げた。グループ企業としては、日本だけでなく、アジア、北米、ヨーロッパ、南米
にも活動拠点を拡大している。この中で、半導体素材から事務機、携帯電話など素材から完成
品に至るまでの幅広い業種に拡大をしている。

京セラグループの経営戦略

 経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢
献すること」とし、経営方針は「21世紀に、さらに成長し続ける創造型企業」をめざすとしている。
その中で、@3つの産業分野(市場)にグループの総合力を結集する。Aそれぞれの産業分野
(市場)で価値ある事業を創造する。という経営戦略を持つに至っている。 その3つの産業分
野とは、環境保全産業市場、生活文化産業市場、通信情報産業市場で、それぞれ今後20年
間に、11.8%, 8.2%, 8.3%の成長が見込まれている。京セラグループは、ファインセラミックス事業
から半導体部品事業、電子デバイス・機械工具事業、宝飾応用商品・太陽電池事業、バイオ
セラム事業、通信機器・情報機器事業、光学精密機器事業、通信サービス事業、事務機器
事業などに拡大することで価値ある事業の多角化を進めて来た。事業の拡大が利益率の低
下に繋がらないために「価値ある事業」を構築するという戦略となっているのである。
 現在、京セラケミカル、京セラミタ、KDI、京セラエルコ、JMMCなど多くのグループ企業がシ
ナジー効果を発揮して、「価値ある事業の集合体」となっている。今後、「21世紀に、さらに成
長する創造型企業」をめざして、価値ある事業の構築、さらに各事業での売上拡大と利益率
の向上、そしてそのために日本においては、徹底した生産性の向上、新商品・新事業の創出
を、海外(中国)においては、成長するマーケットの攻略、低コスト・高品質のモノ作りを目指し
ている。

京セラグループの中国展開

 中国市場はここ5年の自動車生産台数が2.4倍、携帯加入者数が7.9倍、GDPが40%増とい
うよう成長している。この市場への開拓を京セラは、1974年に香港に販売会社を設立して以
来ずっと続けてきた。1987年に広東省東莞市でカメラの委託生産を開始、1995年に上海京
セラ電子を設立、1996年に東莞石龍京セラ光学を開業、1999年京セラ北京事務所を開設、
2000年に京セラミタ香港が石龍鎮で委託生産を開始、2001年京セラ美達弁公設備(東莞)、
京セラ振華通信設備を設立、2003年京セラ(天津)商貿、京セラ(天津)太陽能を設立した。
現在のグループ従業員は13500人である。特に、京セラ(天津)商貿は外資系メーカーとして
は世界で初めて中国におけるグループの生産品と輸入製品を中国国内で総合的に販売する
ことを目的として設立されたものであり、一部は中国の資材メーカーの製品を世界の京セラ
グループに供給する役割もになっている。現在、150人の従業員がアフターサービスを含め
た事業を進めている。
 今後は販売拠点の拡充および代理店網の構築、現地中国人の積極的な登用、積極的な
広告宣伝によるブランド認知度の向上、ローカル顧客の開拓を行なっていきたい。とくに、
最後の点では、北京、天津、上海等での看板、新聞等の宣伝活動に重点を置いている。
 また、中国における生産拡大のために、中国の優秀な作業者およびリーダーの育成、間
断なき生産性向上をもって究極の低コスト、高品質生産体制の確立を目指している。とくに
上海京セラ電子は4500人の従業員を擁し、工場の拡張も行なっている。素材から完成品ま
での一貫生産がその特徴である。ただし、部品生産はその市場の変化が激しく、部品事業
における製品及び事業の移管促進、中国人リーダーの登用(中国人主体の製造展開)、日
本からの継続的な生産性向上支援による歩留まり100%のモノ作りを目指している。この結
果、2000年に中国電子部品業界で24位に位置していたのが、2003年には11位になった。
2006年には1位を目指している。
 報告ではこの他、東莞石龍京セラ光学(従業員4600名)、京セラ美達弁公設備(東莞)(従
業員3700名)の詳しい紹介もされた。素材から完成品までの一貫生産という点では、先の上
海京セラ電子と同じやり方をとっている。また、京セラ(天津)太陽能の太陽光発電事業の
説明もなされた。

まとめ

 京セラは以上のように「自利・利他の精神(自分が利益を得るためにとる行動は、他人も
利するものでなくてはならない)」によって、日本と中国の共生を前提に、お互いの成長発展
を目指している。すなわち、@日本においては、新技術、新市場を創出し、かつ生産構造改
革を行う。A総合販社を活用し、成長拡大する中国市場で、京セラグループビジネス展開
の拡大を目指す。B低コスト・高品質のモノ作りを実現し、中国に進出している各分野での
No.1を目指している。
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          センター協力会理事、範雲涛さんがご本を出版されました!
 
 上海センター協力会理事、範雲涛さんが本を出版されました。「中国ビジネスの法務戦略
――なぜ日系企業は失敗例が多いのか」とのタイトルで、定価3675円、日本評論社からの
発行です。これは、上海センターの二月のセミナーでもご報告いただいた内容で、それをよ
り詳しく展開されたものです。出版社の宣伝文では、
・9年にわたって行われた法律家としての実務経験に基づく、上海に進出した日系企業のた
 めの提言。
・日本企業がこの間もったおびただしい数の失敗と成功の経験を収録。失敗・トラブル事例を
 中心に具体的に解説・分析。
・WTO加盟後の「法治政策」の 帰趨、中国からの資本進出、「中国特需」・・・、激変する投資
 環境を見据えたリスク回避のための法務戦略を公開。
・日中の法律事情のみならず、政治経済、社会文化、ものの考え方にも精通した深い分析・
 解説
となっています。立石信雄オムロン株式会社相談役や天児 慧早稲田大学教授の推薦もあり、
読者の皆様も是非ご覧ください。
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中国・上海情報 7.4−7.10
ヘッドライン
■ 上海向け海外直接投資:台湾系資本が13%を占める
■ 中国:湾岸協力会議諸国と自由貿易協定交渉へ
■ 三峡発電所:今年の発電量を375億kwhに上方修正
■ 中国:1−5月:携帯電話輸出が倍増
■ 広州:新空港8月5日に開港
■ 上海:最高気温35度超の日、ライトアップ停止へ
■ 上海:95%の新規大卒者が就職一年で転職を考え
■ 6月の乗用車販売:1位上海GM、2位広州ホンダ
■ 上海:天然ガス使用世帯数100万超
■ 中国の半導体優遇税制撤廃、米中間紛争が和解
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