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京大上海センターニュースレター
第15号 2004年7月25日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 日本企業にとっての中国市場について
○ 中国・上海情報 7.18-7.24
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               日本企業にとっての中国市場について
             (7/2上海センター・シンポでの大西広教授の報告)

脅威から救世主へと変わる中国

 中国でかつどう活動している日本企業には「輸出型」のそれと「内販型」のそれがあるが、とく
に後者の利益率の改善が目覚しい。この下で、中国国内での需要増の著しい素材メーカーは
こぞって対中投資を計画している。この変化の早さにどう付いていくかが問題だ。
 この点では、たとえば、ほんの一年前に「我こそ中国市場の発展に目をつけている」と述べて
いたある文章が面白い。この文章では、「2010年頃には日本の対中貿易は対米貿易に比肩す
る」と述べていたが、その年の内に輸入総額で一気に対中貿易が対米貿易を上回り、輸出額
でも翌年には台湾・香港を含めた中華経済圏への貿易が対米貿易を上回った。つまり「我こそ
中国市場の今後を知っている」とした人間の予想をも大きく上回るスピードとなっているわけだ。
私は、ドルベースで10%以上の成長が2025年まで続くと予想し、「高すぎる」と言われ続けたが、
今後人民元の上昇が始まればこの予想をさえ上回る可能性もある。今後25年で、ドルベース
で中国のGDPが約18倍となり、世界のGDPの4割を占める可能性をも我々は計算しておく必要
がある。

2003年の対中貿易を検証する

 貿易では2003年日中貿易を詳しく検証することが大切だ。通関ベースでは、中→日貿易が
87311億円であったのに対し、日→中貿易は66355億円とまだ日本の入超であった。が、伸び
率では前者が13.0%であったのに対し、後者は33.2%と、日本からの輸出の増加が著しかった
ことが分かる。とりわけ、後者の増加額16539億円は同年の日本の対世界の輸出増加額の
79%を占め、この部分のみでGDPを0.95%押し上げたこととなる。この年のGDP成長3.2%のほ
ぼ1/3は中国のおかげであったことが分かる。本年の第一四半期の全世界への輸出は年率
で16.7%増であったが、この内の半分が対中であったと低めに計算しても、やはり年率GDP成
長率の1%相当は対中輸出のおかげであったこととなる。
 が、品目別ではどのような特徴となるのか。2003年の品目別通関実績を分析すると多くの
ことが分かる。たとえば、@金額的にこの年に輸出を増やした産業は電子・機械・自動車以
外に、鉄鋼、有機化学品、プラスチック、ゴム、塗料・染料、ガラスなどの素材系が目立つ、
A中国からの輸入価格に対する輸出価格の高い品目でも大きく輸出を増やしているものが
多い、Bというより、相対価格の高いものほど2003年の輸出増加率が高かった、Cただし、
(対中輸出-輸入)/(対中輸出+輸入)で競争力を測るとやはり輸出価格が高いと輸出競争力
が高くなることが分かった。しかし、ここで最も重要なのは、AとBである。こうした国際競争
力の変化は実はかなり予測されていたものであった。Cと同じ指標で中国の輸出競争力を
1992年と1996年と2000年のデータで測ると素材系で競争力の低下ないし停滞を観測できる。
 また、応用一般均衡モデルの結果でも、機械・自動車・電機部門での輸入増、繊維や製紙、
化学素材、建築材料での輸入増は予測されていた。ただし、金属は輸入減を予測していて、
現在の事態と大きく異なっている。

ハイエンド市場とローエンド市場の対照性

 この原因を探ることために、中国の産業別の外資:国内資本の市場シェア比率の検討が意
味を持ってくる。家電やオートバイなどでは外資のシェアが圧倒的に低く(ないし低下し)、一
方携帯電話や鉄鋼では外資ないし輸入品の比率がまだかなり残されている。つまり、過当
競争状態にあるローエンド市場で中国企業が席捲する一方で、ハイエンド市場では外資(特
に日本企業)が頑張っている。鉄鋼の場合は、自動車の外壁薄板は全部が日本からの輸入
品となっており、こうした特殊技術の必要な分野では高価格でも相当に対中輸出を増やすこ
とができている。というより、高価格を維持できるほどの高品質のものだけが輸出を増やす
ことができているという方が正確だ。
 ただし、サントリーが中価格帯のビールに力点を置いて上海地域の市場を制覇したり、携
帯電話に対するPHSという「ローエンド」市場で三洋電機が成功しているというようなケースも
ある。この分野の今後の動向も注目を要する。
                                                 (文責 本人)
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中国・上海情報 7.18−7.24
ヘッドライン
■ 中国:1−6月の原油輸入量が40%増
■ 中国:中・南部の豪雨で381人死亡・4574万人被災か
■ 上海:観光客350万人突破か
■ 上海汽車:韓国・双竜を買収へ
■ 広東:1−6月偽造紙幣の総額が3億元超える
■ 日本製自動車:輸入車国別トップの座に
■ 中国:保険収入が10.2%増、外資系が好調
■ 中国:1−6月港湾貨物取扱量26%増の15.68億トン
■ 安徽:6月の貿易総額が過去最高を更新
■ 天津市:3カ所に海水淡水化工場を建設へ
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