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京大上海センターニュースレター
第22号 2004年9月13日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 中国・上海情報 9.6−9.12
○ 「北東アジア平和と発展 国際学術会議」参加報告
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中国・上海情報 9.6−9.12
ヘッドライン
■ 中国:社会保険白書発表、農村部普及と高齢化対策を急ぐ
■ 中国高官:日中間の「政冷経熱」に警戒すべき
■ 上海:1−8月輸出額43%増、1000億ドル間近
■ 中国:1−8月自動車販売328万台、通年目標が困難に
■ 上海:2人目出産の申請が増加 新条例に効果
■ 上海:市民の不動産投資意欲が減退、利上げ望む声
■ 温州:銀行預金激減、民間銭荘に流出
■ 中国:ロシアと国境地帯に新たな経済区域を設立
■ 上海市、人口の規模と密度で全国一
■ わいせつ電子情報の法的解釈、最高で無期懲役
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            「北東アジア平和と発展 国際学術会議」参加報告

 8月19〜20日に吉林省の省都、長春にて吉林大学北東アジア研究院(中国語では「東北亜研
究院」)主催による「北東アジアの平和と発展 国際学術会議」が開催された。同会議は既に11回
を数える。参加者は120名余り、日本よりは西原春夫学校法人国士舘理事長(元早稲田大総長)、
吉田進環日本海経済研究所理事長、近藤和明広島修道大学商学部長、張南同大経済学部教
授、小川雄平西南学院大学商学部教授、安達義弘福岡国際大学教授、児嶋祥悟とっとり政策
総合研究センター副理事長らが参加した。ロシア、韓国からもチタレンコ極東問題研究所所長、
アン・ヒュンド国際経済政策研究院(KIEP)北東アジア経済協力センター所長らが参加した。

 現在の吉林大学は旧吉林大学を含む5つの大学が統合されて2000年に誕生した教育部直属
の国家重点大学である。学生6万3千名(うち博士課程3千3百名、修士課程1万名、成人教育は
含まない)、教職員1万5千名を擁する中国最大の大学である。尾池総長が出席した8月の日中
学長会議には吉林大学よりも7月に着任したばかりの周其鳳学長が参加している。吉林大学北
東アジア研究院の歴史は1964年に設立された日本問題研究室、朝鮮問題研究室に始まる。
1994年に現在の北東アジア研究院に整備された。1999年には教育部より重点学科に指定され、
同研究院に依託するかたちで、全国大学人文社会科学重点研究基地のひとつとして北東アジ
ア研究センターも設立された。現在同研究院は6つの研究所と53名の研究者を擁する。

 周其鳳学長らの開会の辞の後、キーノート・スピーチを行った王勝今副学長(北東アジア研
究センター主任)は、現在中国政府が力を入れている東北振興が北東アジアの経済協力を推
進する役割を果たすことを強調した。本会議は「北東アジアの経済協力と中国東北振興」、「北
東アジアのエネルギー開発と協力」、「北東アジアの安全と朝鮮半島」の3つのセッションから構
成され、合計24本の論文発表があった。

 論文発表の数からも本会議の中心テーマとなった「北東アジアの経済協力と中国東北振興」
のセッションについて筆者が関心をもった発表をいくつか紹介すると、「21世紀アジア学部」を
発足させた国士舘の西原理事長は、早稲田大学ヨーロッパセンターの館長としてドイツに3年
間滞在した経験をもとに、文明論的な視点から東アジア共同体形成についての提言をおこな
った。吉田理事長は、最近の北東アジア経済協力の動向をレビューした上で、中国の東北振
興政策と北東アジア経済協力との結合の必要性を述べた。何剣東北財経大学教授は、東北
振興には東北3省の連携強化の必要性を指摘し、3省の連絡調整機関新設の提案を行った。
小川教授は、日韓FTAの障害が当面克服できる目途が立たないことから、北部九州・山口と
釜山を中心とする韓国東南圏とで構成される「日韓海峡経済圏」において国家レベルではな
く地方自治体レベルの地方版FTAの締結を提案した。張南教授は、東アジアの資本がネット
でみると域外に流出している現状を分析し、東アジア域内での資金循環メカニズム強化の重
要性を指摘した。チタレンコ所長はロ中経済関係に言及し、中国が対ロシア投資に消極的な
ことを指摘し、中国の積極的取り組みを求めた。これに対し、黒龍江大学の李伝教授は、
ロシアの制度整備面、治安面等さまざまな問題が中国の対ロシア投資を妨げている旨を述
べた。筆者は、北東アジアの経済協力における「持続可能な発展」の重要性と、地方自治体、
大学、NGO、企業等多様なステークホルダーが参画する「連携型WINWINアプローチ」の可能
性について対中円借款を事例に論じた。
                                              (文責 北野尚宏)
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