=================================================================================
京大上海センターニュースレター
第24号 2004年9月27日
京都大学経済学研究科上海センター

=================================================================================
目次
○ 11/13・14自動車シンポジウムのご案内
○ 中国・上海情報 9.20-9.26
○ 中国新疆自治区とカザフスタンとのコルガス・ルート国境貿易について
=================================================================================
京都大学上海センターでは,11月13日および14日に下記の講演会と研究会を開催します。
御多忙の折りとは存じますが,御参加お願い申し上げます。なお,11月13日の講演会終了後には,
上海センター協力会の懇親会を予定しております。

11月13日・14日上海センター主催講演会・研究会
中国の自動車産業―その過去・現在・将来を探る―のご案内

講 演 会
日  時●11月13日(土)午後2時〜6時
場  所●京都大学法経総合研究棟大会議室
挨  拶●金田章裕 京都大学副学長・理事
司  会●本山美彦 京都大学大学院経済学研究科教授
講演1 ●丸川知雄 東京大学社会科学研究所助教授 中国式自動車製造法:日本との対比
講演2 ●嶋原信治 元トヨタ自動車中国事務所首席総代表 トヨタ自動車の進出過程
講演3 ●塩地 洋 京都大学大学院経済学研究科教授  中国における自動車流通
     ●懇親会

研 究 会
日 時○11月14日(日)午前9時30分〜午後5時
場 所○京都大学法経総合研究棟大会議室
報 告1○高山勇一 現代文化研究所中国研究室室長 自動車産業政策
報 告2○孫 飛舟 大阪商業大学総合経営学部助教授
                               3S・4S店と自動車交易市場について
報 告3○山口安彦 元本田技研工業中国業務室主幹
                               中国自動車企業の自主開発能力
報 告4○大原盛樹 アジア経済研究所研究員 オートバイ産業の競争環境
報 告5○上山邦雄 城西大学経済学部教授  日系メーカーの対中国戦略
*********************************************************************************
中国・上海情報 9.20−9.26
ヘッドライン
■ アジア開発銀行:今年の中国GDP成長率は8.8%
■ 温家宝総理:利上げに言及も否定的、米追随は「ない」
■ 中国:1−8月不動産価格14%上昇、東西格差2倍
■ 上海:万博の施設建設、予算50億元増の300億元
■ 北京:ソフト産業全国一、主な輸出先は日本
■ 周小川人民銀行総裁:G7参加など来週渡米、人民元改革も焦点
■ 日立:中国の統括会社を拡充
■ 国土資源部:大型石炭基地13カ所が確定 
■ 北京:1−8月外資の製造業投資16億ドル
■ 北京:国慶節から燃料にも「EUROU」規制へ
=================================================================================
        中国新疆自治区とカザフスタンとのコルガス・ルート国境貿易について

 8月21日から9月3日まで、少し長い出張で中国北京市と新彊ウイグル自治区及びカザフスタン
に行って来た。北京では、人民大学、社会科学院経済研究所、中央堂校、首都経済貿易大学、
国務院対外経済研究院、国家情報中心、中国経済出版社と有益な交流をし、また新彊自治区
では新彊大学での講演、南新彊貧困農村地帯の「調査」をしたが、ここではこの期間で最も魅力
的な情報を得た新彊自治区コルガス国境からカザフスタン・アルマトイ間の国境貿易について少
し紹介することにする。
 これは、国境検問所のカザフ側でつかまえたバスが、「かつぎ屋」で満員のもので、それについ
てアルマトイまでの片道400km=6時間を一緒に過ごす中で得られた情報である。といっても実は、
この国境検問所通過自体が大変なものだった。日本で得られたVISAを持って歩いて検問所に渡
ったものの、出国検査で1時間、その後とったバスのカザフ側検問所への順番待ちの時間が1時
間、カザフ側への入国検査で1時間、それに最後のバスへの再度の乗り込みで1時間というもの
で、通過人数の多さとバスの荷物の出し入れの手間が長引かせる原因だった。ともかく、このコ
ストをかけて「かつぎ屋」の人々が輸出入に携っているということである。私のバスは約25人が「
かつぎ屋」として乗っていましたが、言語の違うカザフとの貿易ということで、漢族一人も居ず、
全員がウイグル族ないしカザフ族だった。但し、アルマトイの取引所では若干数の漢族も居た。
 が、ともかく、この意味で検問所の通過時間4時間+イリ⇔アルマトイ間の乗車時間8時間=
12時間というコスト及び往復乗車料金200元をかけてどの程度もうかるかと聞くと100元の物を
持って来て120元で売れる程度ということである。その量を推し測るのは大変困難ですが、私の
乗ったバスは乗客席の2倍程度の荷物のスペースはあって、1人当たり200〜400kgだろうか。も
ちろん、この全てを「かつぐ」事はできないが、国境通過時には何故か積載荷物の1/2〜1/3程
度しかおろす必要がなく、結局この程度を運んでいる。 他方、この取引量を金額でどう計算す
るかの問題について、次のような試算をしてみた。
 すなわち、アルマトイでの宿泊代(コンテナのような所で泊っているらしい)や食事代を含めて
バス代金の倍は利益を上げるとすると、各人は1回の往復で400元÷0.2(おおよその「利潤率」)
=2,000元は物を運ばなければならない。1台のバスに25人が乗っていたからバス1台で5万元。
また、コルガス国境ではおよそ1時間に4台のバスが通過していたから、通過可能時間を10時間
と仮定すると、40台×5万元=200万元=3000万円/日の通過量となる。したがって、概算では
年間に6億元=80億円の取り引きが行われていることになる(日曜日は通関業務なし)。これは
「かつぎ屋」ルートの取り引きであるから、トラックによるものは除く。なので、もしトラックのもの
が「かつぎ屋」のそれの6倍あるとすると(1台当り2倍の積載量で台数が3倍)、42億元=560億
円の取り引きということとなり、これは1998年の落合信彦氏の調査6億元を大きく上回っている
こととなる。以上の推計は1人当りのもうけなどは低目に見積もっているから、それ程多すぎる
ものでもないだろう。このルートの貿易量は北方の鉄道ルートが便利になってしばらく縮小した
と聞いていたが、相当程度に回復し、更に発展していると見た。中国経済のパワーはこうして西
方にも拡張しつつある。

 なお、取引き品目は中国側からは、衣服、電気・ガス器具、陶器、ガラス器、建材、クツと多
岐に渡る工業製品が主であり、カザフ側からはジュースやジュウタンなどが輸入されていた。
が、前者の物質の多さに比べ、持ち帰る物のないのが悩みという。実際、私の乗ったバスも持
ち帰る物質を探してバザール裏の集荷場で待機したが、私の見ていた数時間の内には何の
積み込みもなく、また中国への「帰国」時に見たカザフ側からの入国の人々の持ち物は殆どな
かった。 また、もう一つ付け加えると、「かつぎ屋」たちのパワーである。実は私のバスがアル
マトイに着いたのは現地時間の夜中の2時半で、その夜中に荷降ろしと点検をし早朝にはバス
が前述のバザールに移動した。また、一緒に行った「かつぎ屋」が少し離れたバザールで一生
懸命仕事をしている姿もチラリと見る事が出来た。なお、この「同行」のかつぎ屋達は中年の男
性というより初老の男性、それに20前後の学生風の女性や60才位の女性も居た。「かつぎ屋」
の人々の姿を間近に見て、その生きるが為の精一杯さに心打たれた旅でもあった。
(2004.8.23)
                                                   (大西 広)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++