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京大上海センターニュースレター
第25号 2004年10月4日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 11/13・14自動車シンポジウムのご案内
○ 上海マート日系企業勉強会(SJS会)のご案内
○ 中国・上海情報 9.27-10.3
○ 上海センター戦前期東アジア経済資料整理プロジェクトのご紹介
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前回からお知らせの京都大学上海センター主催のシンポジウムです。しばらくお知らせ
をさせていただきます。

11月13日・14日上海センター主催講演会・研究会
中国の自動車産業―その過去・現在・将来を探る―のご案内

講 演 会
日  時●11月13日(土)午後2時〜6時
場  所●京都大学法経総合研究棟大会議室
挨  拶●金田章裕 京都大学副学長・理事
司  会●本山美彦 京都大学大学院経済学研究科教授
講演1 ●丸川知雄 東京大学社会科学研究所助教授  中国式自動車製造法:日本との対比
講演2 ●嶋原信治 元トヨタ自動車中国事務所首席総代表 トヨタ自動車の進出過程
講演3 ●塩地 洋 京都大学大学院経済学研究科教授 中国における自動車流通
     ●懇親会

研 究 会
日  時○11月14日(日)午前9時30分〜午後5時
場  所○京都大学法経総合研究棟大会議室
報 告1○高山勇一 現代文化研究所中国研究室室長  自動車産業政策
報 告2○孫 飛舟 大阪商業大学総合経営学部助教授  3S・4S店と自動車交易市場について
報 告3○山口安彦 元本田技研工業中国業務室主幹  中国自動車企業の自主開発能力
報 告4○大原盛樹 アジア経済研究所研究員       オートバイ産業の競争環境
報 告5○上山邦雄 城西大学経済学部教授        日系メーカーの対中国戦略

さらに今回は、中小企業家同友会上海倶楽部様より以下のご案内を受けました。上海での開催
ですが、ご関心の方は是非ご参加ください。

上海マート日系企業勉強会(SJS会)のご案内

日 時 : 2004年10月13日(月) 17:30~19:00
場 所 : 上海マート5階B36 上海偉馳諮詢有限公司内中小企業会同友会上海倶楽部会議室
※ 出席者多数の場合は上海マート内の別会場に変更する場合があります
講 師 : 上海錦天城律師事務所   李培良弁護士
   内  容 :  商業型企業設立に関する動向、今春以後の金融引締め後の経済動向、その他
           最近の中国ビジネス情報
   参加費 : 無料
※ 参加者多数により、別途会場を使用する場合には、会場費用を参加者で按分
★参加ご希望の方は、10月11日(月)17時までに、企業名・参加者氏名・役職名および連絡先を
  電話・FAX・メールのいずれかで下記までご連絡ください
<連絡先>  上海マート日系企業勉強会 「SJS会」 事務局 白井勝
TEL 021-3228-8254  FAX 021-6236-0355  E-MAIL shirai@kjm.dion.ne.jp
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中国・上海情報 9.27−10.3
ヘッドライン
■ 消費者物価:第3四半期ピーク、その後下落の可能性
■ 中国:G7で「より弾力性のある人民元レート」を示唆
■ 中央銀行総裁:「利上げ予定はない」
■ 国家統計局:今年の成長率8−9%と予測
■ 石炭液化プラント計画:南アから間接液化技術を導入
■ 中国政府:循環経済を公的投資の柱に
■ 上海:IT廃品処理工場が着工
■ 上海:来春にかけ電力不足が依然深刻
■ ハウス食品、壱番屋:上海でカレー屋を開店
■ 日中間の国際結婚:「大量結婚、大量離婚」
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         上海センター戦前期東アジア経済資料整理プロジェクトのご紹介
 
 京都大学経済学部には、次のような来歴で戦前の東アジア経済にかかわる大量の資料が所
蔵されています。京都大学創立時から法学部において拓殖務省が管轄する北海道と台湾の資
料の収集が始められました。当初は他の都府県と同じように処理されていたようですが、その
後日本の支配領域(植民地)の拡大にともなって包括的な分類に改められていきます。1905年
韓国統監府、1906年関東都督府(19年関東庁)、同年南満州鉄道株式会社、10年朝鮮総督府、
22年南洋庁、32年満州国、37年中華民国臨時政府、38年中華民国維新政府等の機関創設に
ともない、それらの資料・出版物が、「外地」「東亜」資料としてまとめて収蔵されるようになりまし
た。当初は日本の各植民地機関からの寄贈によるものが大部分でしたが、1919年経済学部が
創設された頃から、次第に東アジア経済資料の収集に主体的に取り組むようになりました。これ
は、明らかに経済学部の発展方向として「東亜研究」を軸にするという方針に基づく結果だと思
われます。

 1930年代日本による満州・中国侵略が進行するという時代を背景にして、本学の東アジア研
究は飛躍期を迎えます。日中戦争開始後には、本学部は国家機関東亜研究所と満鉄調査部
と協力して、中国の実態調査をおこなうプロジェクトを始めました。満鉄調査部による満州・華
北農村調査は著名ですが、本学部は1939年末から上記2機関と協力して、「支那経済慣行調
査」を担当することになりました。その予算は通常の文部省とは別のルートで、かなり潤沢な資
金が供給されていたようです。また、1940年に本学は学部内に「東亜経済研究所」を設立し、
機関誌「東亜経済論叢」の発行を始めました。この時期、日本では国策の時流に乗った類似の
研究所が数多く設立されましたが、本学の「東亜経済研究所」は規模と予算で群をぬく大きな
研究機関でした。1930年代後半から本学は中国経済関係資料の収集に本格的に取り組み、
膨大な資金と労力が投入され、現地中国で大量の一次文献が集められました。その収集文献
の一端は、京都帝国大学経済学部支那経済慣行調査部編『支那金融に関する主要文献目録』
ほか全12巻の刊行に表れています。
 私自身の経験でも、本学図書室書庫の中で、1943、44年の中国奥地の経済統計資料に遭
遇した時には、どうしてこのような本がここにあるのであろうと、驚きのあまり我が目を疑ったこ
とさえありました。戦前期中国の近代経済資料としては、本学図書室の所蔵資料はその量質
の両面から、全国の3つの機関の一つであるといえると思います。当時本学部の教官は皆の
中国研究に取り組み、スタッフ全員が何らかの形で中国・東アジアに関わる研究成果を公表し
ていました。1930年代末から40年代にかけて、本学はまさに「東アジア研究」の中心でありまし
た。
 しかしながら、この本学のアジア研究の伝統は不幸な形で終焉してしまいます。戦後本学の
東アジア研究は国策協力=戦争協力であったとして、その学問的価値は理念的に否定され、
東亜経済研究所は何の総括もなく曖昧な形で解散されてしまいました。学部長以下教官の過
半が大学を去るというような事態のもとでは、東アジア研究は純粋な学術対象として持ちこた
えることはできなかったようです。余談ですが、日本は戦前中国において、非常に精緻な現地
調査を数多く行っていましたが、日本の敗戦でそれらの伝統は完全に消滅してしまいました。
例えば、当時中国現地調査に加わっておられた、A氏やH氏などは、戦後中国農業史や朝鮮
中世史の各分野で大家となられましたが、若い時期の中国現地調査を引き継いで研究された
わけではありません。それら中国の現地調査の伝統は、「新中国の成立」によって、すべて完
全に切られてしまったのです。学問的には、実に不幸な中断であったといわざるを得ません。

 「羮に懲りて膾を吹く」の諺の通り、戦後本経済学部においてアジア研究は殆どおこなわれ
なくなり、アジア関係の図書の新規収集はおろか、先述の貴重な資料さえ、あちこちの書庫を
転々と移転させられ、整理補修も充分にはおこなわれていませんでした。1990年私がアジア経
済史の教官として着任するまで、本学図書室ではアジア経済の専門雑誌「アジア経済」さえ購
入されていないほどでした。
 
 本学所蔵の戦前期中国と東アジア経済資料は、本学部スタッフの利用は多くはありませんが、
全国の研究者や外国研究者によって、その貴重な価値が注目され、その閲覧来訪者はかなり
の数にのぼっています。本学が所蔵する東アジア関係資料とは、まだ未整理のものが概数2000
点、カードにはとられているが目録化されていないものが11,000点あります。国内外の多くの研
究者から所蔵資料の目録をつくってほしいという要望を何度も受けており、その件について学部
の同僚と相談していました。
 
 この度、学部の特別の配慮によって、上海センタ−の事業の一環として、上記約13,000点の
東アジア経済資料の整理と目録の作成、および破損資料の補修等に取り組むことができるよ
うになりました。実用的な研究目録の作成方法について、形態をいろいろ模索しています。そ
して、内外の専門家の援助・助言をいただき、国際化時代にふさわしい有益な研究のツール
をつくりたいと意気込んでいます。また、可能であれば、本学図書室のみならず、京都大学の
他部局において東アジア資料がまとめて収蔵されている資料について、現在作成中の目録に
収録合体して、「京都大学東アジア資料総合目録」の様なものを編集して、多くの研究者の便
宜をはかりたいと、現在各方面と折衝しています。現在、ほぼ毎日書庫で作業をおこなってい
ますので、興味のある方は私の方まで連絡をくだされば、ご案内いたします。
 
 この作業にあわせて、本学部における中国・東アジア研究の歴史についても調査を始めて
います。戦前の本学における中国・東アジア研究がどの様なものであり、如何なる成果をあ
げたのかを明らかにしたいと思います。また、先述の東亜経済研究所の廃止とその後の処
理についても、何ら記録が残されていないので、この点何かご存知の方はぜひ情報をお寄
せください。よろしくお願いいたします。
                                                   (堀 和生)
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