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京大上海センターニュースレター
第33号 2004年11月29日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 中国・上海情報 11.22 -11.28
○ 渤海湾地区、東北三省、北京視察見聞記(上)
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中国・上海ニュース 11.22−11.28
ヘッドライン
■ 中国:陜西炭鉱事故で胡錦涛が早急な対応を指示
■ 北京上海間高速鉄道:レール方式の採用決定
■ 胡錦涛:経済の「ハード・ランディング」否定
■ 乗用車生産:10月生産台数14%減、再び下方修正か
■ 上海-成都間:中国初の高速鉄道が着工へ
■ 中国:大陸部の04年出国者数、2700万人到達か
■ 上海:大塚食品の工場竣工、年産2000万食
■ 上海:業績不振の英ローバー、上海汽車の傘下に
■ 上海:海外企業に土地入札認可
■ 天津:チャータード銀行、渤海銀行に20%出資へ
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            渤海湾地区、東北三省、北京視察見聞記(上)                                                         上海センター協力会副会長 大森經徳
 
 10/26(火)〜11/8(月)迄の2週間、私の所属している(社)大阪能率協会「中国事業相談室」
恒例の中国工業開発区視察団の副団長として大連、煙台、威海、青島と主に華北の渤海湾
工業区を5日間視察した後、1人で(中国人ガイド付き)瀋陽、長春、吉林、天津と主に東北三
省のうちの遼寧省と吉林省の二省を中心に視察旅行をし、最後に北京で3つの国際会議に出
席して帰って来た。
 3つの国際会議は、1つは京都府、京大、立命大、龍谷大ほか環日本海の各大学、産業界
等産・官・学合同の東北アジア(環日本海)アカデミックフォーラム(小生も会員です)の10周年
記念の「東北アジア交流連携促進フォーラム2004北京」(中国側主催団体は、北京の東北アジ
ア経済研究センター、後援は国家発展改革委員会対外経済研究所)、2つ目は北京大学で行
われた「第1回日中産学公連携国際フォーラム」(団長はオムロン(株)の立石会長)、3つ目
は「2005中国石炭市場サミット」である。夫々ニュアンスの違う有益な会議で、貴重な体験をさ
せて頂いた。北京大のフォーラムでは京大の松重副学長(国際融合センター長)が講演され、
今後の大学にとっては産学連携・相互交流が大事で、京大イノベーション基金や京大ベンチャ
ーファンド等もつくりたい、等々力強い報告があった。
 ここでは、今回始めて訪問した渤海湾地区と東北三省の感想を中心に感じたままをご報告
させて頂く。

 先ず、大連、煙台、威海、青島、天津の渤海湾・黄海を中心とする工業開発区であるが、こ
こは大連、青島等古くからロシヤ、日本、ドイツ等により開発され、改革開放後も日本、韓国と
至近距離にあり、且つ優良港に恵まれ、日本語の出来る人材も多く、更に今華東、華南地区
で問題となっている電力不足の問題も殆どなく、順調に発展して来た成熟した良い工業開発
区である、といってよい。もともと風光明媚で、中国ではめずらしく空気も空も綺麗で、新鮮な
海の幸も多く、生活もし易そうでよい地域である。
 更に今後の開発に際しては、水、空気の公害防止条例等も厳しく、公害防止モデル工業開
発区の創設を目指している(大連の新開発区等)ところもある等、総じて意欲的で、かなり出
来上った、レベルの高い地域である。
 天津では、天津港の貨物埠頭に隣接する位港に近い所に広大な土地(1500m×1000m、
約45万坪)を確保して目下建設真最中のトヨタ自動車の天津第2工場の建設現場を視察した。
さすがに天下のトヨタさんだけあって、これだけ後発にも拘らず、港の目の前に長方形のこ
れだけ広い土地がよく確保出来たものだ、と感心する位の好立地で、来年春からクラウン等
の高級車を製造する予定だそうである。関連企業も近くに進出しつつあり、活況を呈していた。
 一方、問題点もあって、三井住友銀行の支店長や、1日ガイドをしてくれた天津外語大日本
語学科大学院生等の話では、このトヨタ関連の大きな企業進出のあおりで、日本語の出来
る人材の採用難になって来て、日系各社共非常に苦労していることと、ここは北京共々黄河
流域の水の不足している地域で、飲料水の水質もあまり良くなく、全体的に水不足地域だ、
ということである。
 電力事情は大連や山東省ほど良くはなく、今年の夏には一部企業で土・日への振替操業
の要請を受けたところがある、とのことであった。しかし華東地区と比較すれば、はるかにま
しで、目下のところ殆ど問題ない、と言ってよい状態である。

 もう1つ今回の出張で体験した新発見は、中国人若者(主として中卒、農民出身が多い)を
研修生として1人1回限り、3年間日本へ派遣し、日本企業で実習生として研修(日本語と工
場現場での実務研修…大半機械操作等の実習=仕事そのものに従事し、一定の給料も支
給)させる制度で、すでに何年も前からあちこちで活用されているものである。今回はこの専
門の社長が我々の「中国事業相談室」の委員でもあり、同行頂いたので、威海市ではその
採用試験に立合い、実際に面接官をして来ました。又、内定前には夫々の家庭訪問もし、
両親や妻女(既婚者の場合)にも会って決意の程を確認しているが、その家庭訪問にも二
軒立会った。その内の1人は新婚早々の奥さんを残して3年間日本へ研修に行く若者だっ
たが、3年間真面目に頑張れば、帰国後田舎であれば家が一軒建てられるし、日本語も技
術も習得して帰るので帰国後も良い仕事に就ける可能性も高く、結果として農民の最貧層
からの脱出が可能となることだ。従ってこの採用試験に合格することは、その本人のみなら
ず家族全員にとっても宝クジに当った様な大変大きな意味を持っているので、新婚の奥さん
も両親も「全く問題ない…没問題」、「家族全員大賛成しています」と明るい顔で答えてくれて、
安心もし、びっくりもした次第。
 こういう状態なので、各地方政府も外国企業の誘致にだけ力を入れているのではなく、こう
いう研修生を良い会社へより多く送り出すことにも非常に注力している。そのためもあって我
々の視察団は各地政府から大歓迎を受けた。この日本の会社は東北三省の瀋陽、長春、ハ
ルピン等の農村の青年男女も多く採用して日本へ派遣している。すでに日本には数万人のこ
ういう研修生が各地の工場で働いており、日本の若年労働力不足を補完する役割も果たして
いる。この様にこの制度は日中双方に喜んで頂いている、非常に将来性のある有意義な仕事
だということがよく分かった。
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