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京大上海センターニュースレター
第37号 2004年12月27日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○ 上海センター講演会のご案内
○ 中国・上海情報 12.20‐12.26
○ 中国オートバイ産業の競争環境と企業間分業関係の変化
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上海センター講演会のご案内
日時 2005年1月24日(月) 14:00〜16:00
場所 京都大学百周年時計台記念館 2階国際交流ホール
演題 「最近の中国事情と今後の日・米・中関係における日本の積極的役割について」
講師 日中経済貿易センター名誉会長 木村一三氏

木村氏は、1954年に故高碕達之助氏の紹介で日中貿易に参画され、日中国交正常化にも民
間人として尽力されました。日中交流の最古参として故周恩来首相から胡錦濤総書記にい
たるまで、中国側有力者と親密な友人関係をもたれています。奮ってご参加ください。
参加を希望される方は、北野(kitano@econ.kyoto-u.ac.jp FAX:075-753-3492)までご一報く
ださい。
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中国・上海ニュース 12.20−12.26
ヘッドライン
■ 中国:「穏健財政」へ移行、05年国債発行額は約800億元
■ 中国:知的財産権保護を推進・刑罰を強化
■ 国家統計局:05年から地方のGDP独自発表を廃止、一本化へ
■ 中国:失業保険を全面的に推進し、「一時帰休」に終止符
■ 中国:1-11月期汚職事件3万6千件、4万人以上を検挙
■ 中国:渤海湾の原油埋蔵量205億トンも、採掘可能量は不明
■ 上海:税関収入1000億元突破、ここ5年で大幅拡大
■ 広州:日産がエンジン工場建設、投資額325億円
■ 上海:万博に向けて交通システムと旧市街整備開始
■ 中国:白物家電3品目の需要が世界最大
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中国オートバイ産業の競争環境と企業間分業関係の変化
                        
                                  アジア経済研究所研究員 大原盛樹

1990年代末から現在までの中国オートバイ産業の競争のあり方の変化とその背景を、製
品開発を巡る企業間分業関係のあり方に注目し、嘉陵工業集団公司(集団)(以下、嘉陵)、
中国軽騎集団(以下、軽騎)、宗申摩托車集団(以下、宗申)の3社と各社の重要サプライ
ヤー20数社でのヒアリングに基づき、実証的に検討した。
1990年代後半の企業間分業関係は、規律のない「孤立発展型」分業システムと名付ける
ことができる。製品開発については各社とも「マイナーチェンジ型開発」、即ち「基本モデル」の
業界全体での共有と改造に明け暮れており、それを遂行する企業間分業関係は、分散した取引先、
リスク転嫁行為(開発リスクのサプライヤー負担、代金未払い等)の横行、
情報共有の不足、共同での能力形成努力の欠如等の特色を伴っていた。日本でリスクを共
同で負担しながら共通目標を達成するため能力を向上させようとする「共同発展型」分業
システムが形成されているのとは異なるものであった。
一方、1990年代末からメーカー、サプライヤーとも製品開発体制が改善され、同時に、
取引関係には規律が回復し、協調的な行動が多々見られるようになった。メーカーの製品
開発体制を見ると、「マイナーチェンジ型開発」が急増しているが、全体的にコストと
リードタイムは減少している。設備、人材の強化、組織改善(部門間協調、開発部門の改革)、
サプライヤーの開発能力活用の増加がそれを支えている。サプライヤーの製品開発体制を
見ても、リードタイム、コストとも低下し、開発の失敗率は減少している。いわゆる
「承認図」取引が増えるなど開発の内容も高度化している。企業間分業については、メーカー
は取引を有力サプライヤーへ集中させ、開発リスクの共同分担化が顕著で、あからさまな
リスク転嫁は減少している。取引に規律が回復していると見るべきである。一方、情報共
有とコミュニケーションは未だ本格化しておらず、メーカーはサプライヤーの技術につい
ては全体的に未把握のままである。メーカーからサプライヤーへの支援も乏しい。その点
で、基本的に共同努力よりも個別企業の機会主義が優先する「孤立発展型」システムの本
質は変わりない。しかし、双方の開発能力が向上し、取引に規律が回復することでより効
率的な開発が行われているという意味で、中国のオートバイ産業の分業組織は環境変化と
個々の企業の能力蓄積に応じて進化していると言うべきである。
この背景にある重要な要因は、市場の変化である。品質向上と素早い製品開発が求めら
れていること、政府規制の厳格化、流通インフラの改善等の競争環境の変化、高度化が見
られる。
(本稿は11月14日に開催された上海センター「自動車シンポジウム」でのご講演をまとめ
ていただいたものです。)
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