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京大上海センターニュースレター
第47号 2005年3月7日
京都大学経済学研究科上海センター

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目次
○河上肇記念シンポジウムと講演会のご案内
○中国・上海情報 2.28-3.6
○動学CGEモデルによる韓・中・日自由貿易協定の経済的波及效果分析
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京都大学大学院経済学研究科・経済学部/京都大学上海センター/京都大学21世紀COE
プログラム「先端経済分析のインターフェース」共催 
河上肇記念シンポジウムと講演会のご案内
第T部 記念シンポジウム「中国と日本の政治経済学−河上肇と中国、その後−」
 2005年3月16日(水) 午後2時から5時
 京都大学時計台記念館百周年記念ホール
パネル
三田 剛史(経済思想史研究者、『甦る河上肇−近代中国の知の源泉』藤原書店著者)
張 小金 (政治経済学、アモイ大学教授)
大西 広 (社会統計学、京都大学経済学研究科)
本山 美彦(国際経済論、京都大学経済学研究科) 
八木紀一郎(経済学史、京都大学経済学研究科)
山本 裕美(中国経済論、京都大学経済学研究科)

第U部 公開講演会「河上肇と比較経済思想」
 同日 午後6時15分から8時 京都大学時計台記念館百周年記念ホール
中野 一新(京都大学名誉教授・河上肇記念会代表世話人) 
    「あいさつ:河上肇と京都大学」
住谷 一彦(立教大学名誉教授・東京河上会代表)
    「河上肇と比較経済思想:河上肇におけるヴェーバー的問題」 
住谷氏紹介 
 1925年京都市に生まれる。立教大学名誉教授。マルクス、ヴェーバーを基礎にして、資本
主義を比較思想的に考察するとともに、日本の宗教観念・経済思想についても探求し、『共同
体の史的構造論』、『リストとヴェーバー』、『河上肇の思想』、『日本の意識』など、多数の著書
がある。
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中国・上海ニュース 2.28−3.6
ヘッドライン
■ 中国:全人代開幕、2005年経済成長率8%と設定
■ 中国全人代:農業税完全撤廃を2006年に繰り上げ
■ 五輪重点プロジェクト:北京−天津間鉄道7月着工
■ トヨタ:清華大学と研究センター設立、協調発展を促進
■ 中国:水資源の枯渇が深刻、2004年は79都市で水不足に
■ 中国:農産品貿易27%増の514億ドル、世界4位
■ 中国:初の民間航空会社、「奥凱」社の天津線が3月5日就航
■ チベット・青海間「青蔵鉄道」:来年7月から試運転
■ 上海:大規模な食糧貯蔵庫建設、供給不安を緩和
■ 上海浦東開発銀行:不良債権額18%増
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       動学CGEモデルによる韓・中・日自由貿易協定の経済的波及効果分析
                                 釜慶大學校國際地域学部ヘ授 高鍾煥

 1997年東アジア金融危機以後、 韓・中・日FTAに対する必要性が論議され始め、2002年11月
プノンペンで開催された韓・中・日首脳会談で当時中国の朱鎔基総理が韓・中・日FTAに関する
共同研究を提案した。この提案を基礎にして日本の総合研究開発機構(NIRA)、中国の中国社
会科学院工業経済研究所(DRC) 及び韓国の対外経済政策研究院(KIEP)が共同で韓・中・日
FTAに関する研究を遂行して来ている。しかし、今までの韓・中・日FTAの経済的な波及効果分
析に関する既存研究では静態CGEモデルが用いられていたため、韓・中・日FTAが行われた際、
韓・中・日3ヶ国経済に及ぼす影響の中で一部の効果、すなわち静態效果にあたる比較優位に
よる資源の再配分効果のみを把握することにとどまり、韓・中・日FTA結果、予想される動態効
果、例えば競争の深化により効率性に及ぼす効果及び資本蓄積効果などは説明できない短所
がある。
 このような静態CGEモデルの短所を乗り越えるために本研究では逐次動態(recursive-
dynamic)CGEモデルを利用して韓・中・日FTAが実施される場合、韓・中・日FTAが韓・中・日3ヶ
国経済に及ぼす影響を分析した。特に、海外直接投資(FDI)の流れをモデル化して韓・中・日
FTAが締結される場合、資本蓄積の変化が経済成長及び国際間交易に及ぼす影響を分析し
た。韓・中・日FTAに関するシミュレーションとしては既存研究では韓・中・日3ヶ国が同時に韓・
中・日FTAを締結することを仮定して韓・中・日FTAの影響を分析したが、本研究では3段階に
分けて韓・中・日FTAが成立されると仮定されている。

 第一、2006年韓・日FTAが締結されて2015年まで両国間すべての商品の輸入に賦課する関
税を無税化する。第二、2008年韓・中FTAが締結されて2017年まで両国間すべての商品の輸
入に賦課する関税を無税化する。第三、2010年中・日FTAが締結されて2019年まで両国間す
べての商品の輸入に賦課する関税を無税化するということが仮定されている。
また、関税引き下げは10年間、毎年均等に削減することで仮定した。結果的に2019年に韓・
中・日FTAが完結されて3国間すべての商品の関税が無税になることで仮定した。

 本研究の結果の中で重要な幾つかを説明すると次のようである。韓・中・日FTA 結果、韓・
中・日3ヶ国の実質GDPは、毎年持続的に増加して2021年に日本の実質GDPは0.13%増加し、
中国の実質GDPは0.94%、そして韓国の実質GDPは3.36% 増加することに分析された。一方、
韓・中・日FTAが国際収支に及ぼす影響を見ると、韓国は韓・中FTAが完結される2017年ま
で貿易収支が持続的に増えるが、その後貿易赤字の幅が減ると展望される。そして中国は
日・中FTAが完結される2019年まで貿易収支が持続的に増えるが、その後貿易赤字の幅が
減少すると予想されるのに比べて、日本の場合、韓・中・日FTAが完結される2019年まで貿
易黒字が持続的に増加するが、その後貿易黒字の幅は減少すると展望される。

 最後に<図>を通じて韓・中・日FTAが3国の産業別生産に及ぼす影響を見ると、長期的な
観点で2021年の場合、日本は自動車、機械類、電子製品、化学製品及び鉄鋼製品の生産
が大きく増加する一方、穀物類、酪農業製品、水産業、加工食品及びその他運送機械類
の生産が減少することに分析された。中国の場合、 自動車及び酪農業の生産を除いたす
べての産業の生産が増加すると展望される. 韓国の場合は穀物類とその他運送機械の生
産が大きく減少する代わりに加工食品、 纎維衣服、 酪農製品及び自動車の生産が大きく
増加すると展望される。

(本稿は去る2月14日に行なわれた上海センター・セミナーにおける報告をご本人に要約い
ただいたものです)
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