=================================================================================
京大上海センターニュースレター
第49号 2005年3月21日
京都大学経済学研究科上海センター

=================================================================================
目次
○中国人民大学楊瑞龍教授講演会のご案内
○ブラゴベスト・センドフ駐日ブルガリア大使講演会のご案内
○中国・上海情報 3.14-3.20
○特別セミナ−「今日の東北アジアと朝鮮半島経済」のご報告
*********************************************************************************
中国人民大学楊瑞龍教授講演会のご案内
講演テーマ「グロバール経済の中の中国国有企業改革について」
講演者 楊 瑞龍 中国人民大学経済学院長
通訳  胡 霞  中国人民大学経済学院副教授
日時 4月18日(月)午後14:00-
会場 時計台記念館国際交流ホールT

ブラゴベスト・センドフ駐日ブルガリア大使講演会のご案内
講演テーマ「EUの東方拡大と東アジアの可能性-ブルガリアの視点から-」
講演者 ブラゴベスト・センドフ駐日ブルガリア大使、世界大学協会名誉総裁
通訳  田中雄三龍谷大学名誉教授
日時  4月28日(木)14:00-
会場  時計台記念館国際交流ホールT
共催  京都大学経済学会
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
中国・上海ニュース 3.14−3.20
ヘッドライン
■中国:1−2月固定資産投資、25%増の4222億元
■中国人民銀行:住宅ローンの最低利率を引き上げ
■中国:カラーTV販売量、全世界の55%
■中国:重慶−蘭州間鉄道建設計画
■中国建設銀行:首脳に“改革派”起用
■アジア開発銀:中国は炭鉱ガス有効活用すべき
■上海地下鉄:乗客激増で安全性に懸念、制限措置も
■広東:食は広州にあり、飲食支出が全国平均の7倍
■上海:浦東国際空港、2本目の滑走路供用スタート
■北京:2004年後半、住宅価格は9.8%上昇
=================================================================================
          特別セミナ−「今日の東北アジアと朝鮮半島経済」のご報告

 日韓条約締結40周年の今日、日本では韓国・北朝鮮についての関心は高まっており、情報
は量的には増えていますが、質的にはまだまだ一面的な議論が多いようである。そこで、お二
人の専門家をお招きし、現在の東北アジアにおける朝鮮半島経済に関する包括的な問題につ
いて、研究成果をお聞かせいただいた。
■日時 2月10日 午後2時〜6時 
■会場 京都大学経済学研究科総合研究棟 8階リフレッシュル−ム
■報告要旨

         「破綻した北朝鮮計画経済体制の営繕-7.1経済管理改善措置」
                                        安秉直教授(福井県立大学)

 北朝鮮政府が2002年7月1日に発表した経済管理改善措置は、従来無視していた価格とい
う基本原理を復活することを明示しており、改革開放政策につながるのではないかと多くの注
目をあつめてきた。この政策採用から2年半がたった現時点で、この政策の意味するところを
再検討する。基本資料は北朝鮮政府が発表した政策資料である。

 1994年から始まった飢餓は5年間続き、2~300万人の餓死者がでたと伝えられ、北朝鮮政府
自体が「苦難の行軍」と呼ばざるを得ないものであった。その間に北朝鮮経済は大きく萎縮し
た。この経済破綻の引き金になったのは社会主義諸国の崩壊であることは確かであるが、実
はそれに先行する国内経済の破綻があった。鉄道、道路、港湾、電力や農業のインフラスト
ラクチャーの崩壊が広範に進行していた。そのために、北朝鮮の経済の復活をはかるのには、
計画経済体制を市場経済体制に変更するのみではなく、崩壊したインフラを再構築するという
政治体制の改革におよぶ抜本的な転換が必要であった。 しかし、飢饉が一応収まった後に
北朝鮮政府が打ち出したのは、強盛大国路線というもので、そのなかの新しい特徴は核とミ
サイル開発を中心とする軍事大国化である。この政策を追求するために付随してでてきた経
済再建策が、すなわち経済管理改善措置であった。この中で農民市場を導入するとあったこ
とが大きな転換ではないかと外側の注目を引いたのであるが、これは新しい経済体制をつく
るのではなく、崩壊した既存の計画経済体制の営繕をめざしたものである。これが決して対外
関係を組み直す改革開放政策でないことは、北朝鮮政府が強く強調している。総合消費市場
という概念も配給制度を補完するものであり、むしろ社会主義社会の原理である弱者保護的
な側面を切り捨てる措置さえ含んでいる。
 結論として、この政策は金正日政権の延命措置にすぎず、北朝鮮全体の体制改革につな
がるものではない。
=================================================================================
                  「日韓FTAと東アジア経済統合」
                                       深川由起子教授(東京大学)
 日韓両国とも、FTAに取り組むべき状況になっている。日本は自由貿易政策をもってはいた
が、立案過程ではメキシコとのFTAで「実害」がでたことから、防衛的になってしまった。政治家
は積極的ではなく行政主導人にならざるを得なかった。韓国では金大中政権時に金融危機の
脱出策という点から大胆な理念を先行させたが、盧武鉉政権になって紆余曲折の国内調整で
手間取っている。
 日本のFTAは締結の優先順位を東アジアにおいているが、韓国は投資家の信頼回復のた
めに米国との交渉を先行させた。米国の攻撃的な姿勢でうまくいかなくなった後に、セカンドチ
ョイスとして日本がえらばれた。日本韓国ともに戦略はもっており、ヨーロッパが統合を目指し
ているのに対して、強いナショナリズムを特徴としている。両国はともに農産物開放反対の立
場に立っており、日本韓国という大きな市場を共有しうるなど、この組み合わせには実質的な
メリットが大きい。
 日韓FTAは、韓国にとって短期的にはマイナスがあっても、長期的にはプラスに働くと思わ
れるが、韓国内では貿易不均衡に関する不満が強い。日本は関税が低いか無い韓国やシン
ガポールのFTAが基軸になるので、日本中国の組み合わせより摩擦が少ない。今年中には
まとまることになっているが、現在は交渉が動いていない。
 日韓FTAが今後どこに広げていくのかについては、両国にスタンスの違いがあり、日本は
ASEANを向いているのに対し、韓国は中国を考えている。日韓FTAは貿易問題のみなら処
理できるが、国土開発戦略のような次元では難しい。

 結論として、日韓FTAはWTOの理念に沿ってFTAを乗り越えていくべきである。WTOより包
括的で貿易よりも深いレベルで、APECよりも目的明快なもの、日韓FTAよりも開かれたも
の、また日韓の歴史的制約をのりこえていけるような政治的内容を持ったものに発展させ
ていくべきである。                                  (文責:堀 和生)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++