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京大上海センターニュースレター
103号 200645
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   中国・上海ニュース 3.27-4.2

○中国東北地域港湾物流の現状と展望()

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中国・上海ニュース 3.27−4.2

ヘッドライン

           国際:日中間税関協力協定調印、知財権保護など強化へ

           中国人民銀行:海外アウトソーシング、貿易黒字拡大要因 

     中国:1−2月国有軽工業大手37社が35%の増益、伸び率拡大

     中国:有色金属生産量が4年連続で世界1位、利益急増

     中国:2006年の消費者物価は安定基調、上昇率1−2%前後と予測

     中国:北京上海間高速鉄道、旅客専用線で2010年完成へ

     産業:長虹のチェコ工場が着工、国外最大の薄型テレビ生産拠点

     自動車:奇瑞汽車とマレーシア企業と提携か、ASEAN市場へ

     上海:80万人規模の臨海新都市を建設へ 

     企業:千趣会が上海新会社を設立、中国全土向け卸売・小売事業を展開

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中国東北地域港湾物流の現状と展望()

−図們江出海物流を中心に−

                   中国延辺大学経済管理学院教授 玄東日

 中国のWTO加盟と国内改革テンポの加速にしたがって、港湾業は新しい発展の段階に入った。すなわち、港のサービス市場は次第に独占的な市場からますます激しくなる競争的な市場へ変わっている。2002年東アジア地域(北東アジア、東南アジア)における主な港のコンテナ輸送量は、12,130.2TEUとアジア地域の91.4%、さらに全世界における主なコンテナ港100ヶ所のコンテナ輸送量の53.8%を占め、世界最大のコンテナ集散地域となった。中国の経済成長を支えている珠江デルタ、長江デルタ、環渤海地域の三大港群は基本的に形成された。中国の港は、その世界中での地位を大幅に上昇させただけでなく、多元的な競争体制を形成し、その重心も次第に北へ移動している。

 

1.中国東北地域の港湾物流情況

 遼寧省の沿海港群は、大連と営口を主力港、丹東と錦州を地域レベルの港、盤錦と葫芦島を補充的な港として形成された。2004年遼寧省の各港の貨物輸送量は24,160万トン、そのうち、大連港と営口港の貨物輸送量がそれぞれ60%と25%を占めた。

(1)大連と営口を始めとする遼寧省の港群

1)大連港の発展現状

大連港は東北地域の最も重要の港として、ずっと東北地域の海運貨物の輸送を担ってきた。現在黒龍江省、吉林省、内モンゴル東部の海運貨物の約95%、67%、70%が大連港を通じて輸送されている。遼寧省の海運貨物のうち、その一部が営口、丹東、錦州、錦西などの中小港を通じて輸送され、それ以外は基本的に大連港を通じて輸送される。

大連港はまた北東アジア地域の油類輸送の中継センターで、主に原油、加工油、液体化学工業製品の貯蔵と輸送を行っている。15万トン級のタンカー、さらに20万トン級タンカーも17.5万トンを積載した場合には接岸可能で、アジア最先進のバルク液体化学工業製品の海運基地である。また、北東アジア地域における最大のバルク穀物の中継港であり、中国最大の海上客運港でもある。

 中国内陸部から港を通じて移出入される主な貨物種類は、石油、穀物、雑貨(コンテナ貨物も含む)であるが、それぞれ総輸送量の47.4%、16.1%、16.0%を占める。金属鉱石、鋼鉄、石炭、化学肥料および非金属鉱石などの毎年輸送量は、それぞれ100250万トンで、主にカナタ、アメリカ、日本、ロシアなどに輸出される[1]

 長年の市場育成を通じて、大連港の海運中継網は次第に成熟している。現在は主に環渤海地域の中継輸送を展開しており、天津、錦州、畑台、威海、龍口、営口など環渤海諸港との航路を持っている。また、大連港は瀋陽、長春、長春南、ハルビン、延吉に至る五つのコンテナ輸送ルート持ち、海陸連運網は東北地域の主な都市に及んだ。水路、鉄道、道路などの輸送手段より組織された現代的な交通網は、環渤海地域と東北内陸地域に及んでいる。

 大連港の発展は大まかに以下の三つの時期に区分できる。第一、1991年以前の港輸送能力が相対的不足し、滞貨状態がひどかった時期である。この時期に東北地域の輸出が主に資源輸出に偏っていたため、港において貨物の滞貨状態が続いた。輸送量はずっと中国海港の中で前三位を維持し、そのうち、輸出入貨物の輸送量は一度第一位を占めた。

 第二、19911998年の輸送量が緩慢に増加した時期である。この時期は、東北地域経済の移行期が始まり、重工業中心の国有大中型企業の困窮、さらに港の建設が船舶大型化発展の需要に適応できなかったため、輸送量は緩慢な増加を余儀なくされた。

 第三、1999年から内陸の経済が回復し始め、港の建設と輸送量も高い成長期に入った。この時期は、東北地域経済の移行期が終盤に入り、国有大中型企業も次第に困窮から抜け出し始め、港の貨物量も大きく増加した。1999年から2003年までの5年間、大連港の貨物輸送量は5,100万トン近く増加し、年平均増加率は13.6%に達した(表1)。

2)営口港の発展現状 

 営口港は、遼寧省の中部都市群と最短の距離にある。すなわち、中部都市群はすべて半径250km以内に位置しており、輸送距離が最も合理的である。したがって、陸路輸送からすると輸送コストが一番安い。

 また、営口港は東北内陸地域と内モンゴル東部地域からも最短の距離にある海港で、大連港に比べ180kmほど短く、陸路輸送コストも約1020/トン安い。営口港鲅鱼港区は瀋陽−大連高速道路、ハルビン−大連国道、長春−大連鉄道と連結され、北の瀋陽までは210km南の大連までは180kmと交通が非常に便利で、比較的高い貨物集散能力を備えている。特に、陸路輸送コスト差異の影響は、海運距離が短い貨物ほど顕著にあらわれる。

 現在営口港には、生産性バース25個、1万トン級以上のバース17個あり、各種のばら積み貨物の荷役が可能であるだけでなく、コンテナ、加工油、液体化学工業製品、自動車などの専門バースも備えるなど、港湾施設が完備され、機能も万全である[2]。東北地域からの非金属鉱石の移出は、ほぼ営口港を通じて行われる。また、東北地域における毎年100万トンの化学肥料の大部分も営口港を通じて輸送され、鉄鉱粉、鋁粉も主に営口港を通じて輸出される。

(2)吉林省延辺地域の図們江出海物流の現状

吉林省の東部に位置している延辺地域は、吉林省から水路を通じて日本海に至る唯一のルートである。中国政府の積極的な後押しの下で、1995年に「借港出海」(港を借りて海に出る)の歴史的な第一歩を踏み出し、延吉―琿春―圏河―羅津(北朝鮮)―釜山(韓国)のコンテナ陸海連運ルートを開通した。さらに1996年に琿春―ザルビノ港(ロシア)―尹予三島(日本)の陸海連運ルート、1999年に琿春―ポシェット(ロシア)−秋田(日本)のコンテナ陸海連運ルート、2000年に琿春―ザルビノ―束草の貨客陸海連運ルートを開通した。また、琿春―ザルビノ鉄道を通じて、ロシア極東地域の各海港に至り、さらに日本の新潟、韓国の束草まで輸送できる。図們−南陽(北朝鮮)−清津鉄道を通じて、清津港も利用できる。

 図們江出海物流ルートは、輸送距離において優位に立っている。琿春の長嶺子通商口からロシアのポシェット港を通じて、日本の秋田に至るルートの輸送距離は、道路54km、海上500海里と、大連から日本に至るルートより約674海里近く、輸送時間は47時間短縮でき、運賃もコンテナ一個当り100ドル節約できる。

2から分かるように、延辺地域の「借港出海」のルートは、大連港と比べて、日本海沿岸地域および太平洋沿岸地域との距離を大きく短縮した。もし延辺を経由してザルビノ港に、さらに新潟、横浜、バンクーバー、サンフランシスコまで至る航路は、大連港経由の航路より1000海里以上短縮できる。

 1990年代の前半期、延辺地域の辺境貿易は黄金の時期を迎えていた。当時中国国内における建設ブームは、大量の鋼材、セメントなど生産資料の需要を引き起こした。延辺地域は北朝鮮とロシアから大量の鋼材とセメントを輸入して、大きな貿易利益を得た。

 図1をみると、19921994年、延辺地域の輸出入額は毎年3億ドルを超え、1993年には4.7億ドルに達した。しかし1995年には、中国経済の緊縮、北朝鮮の経済危機などの国内外経済環境の悪化により、輸出入額が1.5億ドルまで落ち、1993年に比べ70%減少した。その後、緩やかな増加を続けていたが、2000年以降から、朝鮮経済の回復とロシア経済の好景気により、延辺地域の貿易は急速に増え始め、2004年には1993年を超え、2005年には7.2億ドルに達した。

表3から、延辺地域の各通商口の情況をみると、南坪通商口の輸出入貨物の通過量は61.3万トンと最大で、延辺地域の輸出入貨物通過量の42.5%を占めた。第二位は図們鉄道通商口で、輸出入貨物通過量は44.2万トン、延辺地域の輸出入貨物通過量の30.6%を占めた。

 延辺地域から羅津に輸出される主な品目は、主に特産品、木材、薬材、工業製品、紡績、牛肉、農産物、原材料などがあり、延辺地域が各通商口を通じて輸入する主な品目は、外資系企業用の原材料、機会設備、家電製品、中古建築材料設備、輸送機材、電子製品、粗加工食品、生活必需品と化粧品などである。

 

 



[1] 王志新『2005年港航物流市場発展報告』、遼寧省航海学会。

[2] 『営口港務股份有限公司投資価値分析報告』、上海証券報、2004518日。