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京大上海センターニュースレター
104号 2006412
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   中国・上海ニュース 4.3-4.9

○中国東北地域港湾物流の現状と展望()

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中国・上海ニュース 4.34.9

ヘッドライン

           中国:2006年の消費市場が急速拡大と予測

           国際:日本の2005年対中投資、過去最高の65億ドル  

     中国財政部長:「中国の発展は世界経済の成長に貢献」

     中国:日韓ステンレス冷延薄板、反ダンピング課税を継続

     中国:1−3月乗用車販売100万台で記録更新

     中国:10年内に豪からウラン鉱石計2万トンを輸入

     北京:首都鋼鉄の唐山移転を正式承認

     新疆:中国最大の風力発電所、投資額5年間75億元

     上海:2005年海外への旅行者数198.5万人

     上海:シーメンスなどの出資で中独友好病院を建設

 

 

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中国東北地域港湾物流の現状と展望()

−図們江出海物流を中心に−

                   中国延辺大学経済管理学院教授 玄東日

2.東北地域の物流における諸問題

(1)大連港の問題

1)大連港の建設とサービスの一層の向上が必要

大連地域には、低いレベルで重複建設された港が多く、競争力が低い。したがって、各港が低価格競争に走ったため、営利能力と拡張能力の低下を招いており、市場によるいっそうの調整が必要である。古い港区は都市部に囲まれて発展の余地がなく、道路と鉄道の輸送能力も輸送量増加の需要を満たせない。新しい港区は道路と鉄道の輸送網が今だ完備されていないため、港の発展を制約した。

内陸部における中継輸送能力も市場の需要を満たしていない。現在瀋陽、長春、ハルビンなどの内陸港は、狭い敷地、施設の老朽化、機能不全、能力不足、低い効率などの情況が普遍的で、貨物輸送に悪い影響を与えている。

サービスにおいても、商品の集散、配送過程における高い付加価値の創出を無視した。さらに、過度に繁雑となった国家建設プロジェクトは、プロジェクトの正常な施工を妨げ、重点基礎施設の建設と補充に直接影響を及ぼしている。 

2)東北地域経済の移行と貨物種類における大きな変化

 東北地域の経済回復に伴って産業構造も変化し始め、従来の単純な資源輸出型から原材料の輸入と製品輸出の貿易構造へ、雑貨のばら積みからバルク、コンテナ積みへと変わった。しかし、産業構造の最適化と高度経済成長の実現には、一定の過程が必要となるため、他の貨物種類はしかるべき補充が実現できず、コンテナ積みに適切な貨物が実際にコンテナにより輸送される割合も比較的低く、貨物供給源の増加が緩慢である。同時に、東北地域経済総量の不足も港の発展を制約している。

(2)延辺図們江出海物流に存在する問題

1)通商口の設計能力と実際輸送量との大きなギャップ

さる『第95ヶ年計画』と『第105ヶ年計画』時期に、中国の中央政府と地方政府は、累計50億人民元を投資して、重点的に通商口及び関連の道路と鉄道などのインフラを整備した。しかし、インフラの規模に比べ、貨物通関量は比較的少ない。現在延辺地域の各通商口を合わせると、設計貨物通関能力は610万トン、設計旅客通関能力は290万人次であるが、貨物の通関実績と設計通関能力とのギャップは非常に大きい。2004年の貨物の通関実績は144.2万トンと設計通関能力の23.6%、人員の通関実績は75.5万人次と設計能力の25%しか満たしていない[1]

2)延辺地域における完全持続的な物流鏈の未形成

輸出品生産基地建設の遅れは、延辺地域における輸出関連製品の製造業の未発達と関係している。積極的に国内外の資本を導入して、延辺地域の港の建設と経営に関わらせることが必要であるが、この目標を実現するためには、必ず良好な市場環境を基礎と前提にしなければならない。したがって、政府機能、管理体制、投融資体制、企業行為などの生産関係を調整し、漸次的に統一、規範、公平競争の市場体系を確立し、商業化経営と管理の範囲を拡大することが必要となる。

東北地域はエネルギーと鉱物資源が比較的に豊富で、建国初期から改革開放前までの特定な歴史背景の下、伝統工業分布は大分内陸地域に偏り、臨海工業の発展は相対的に遅れた。今の国内外市場の統合が進み、産業競争がますます激しくなる開放的な環境の下、グロバル的な原材料、製品市場と離脱したデーメリットはますます表面化し、企業競争力と持続的発展の動力の不足を招いた。まさに伝統的な工業分布への固執は、地域経済と工業発展を制約する大きなネックになっている。したがって、積極的に輸出工業を発展させ、産業政策を強化し、輸出産業基地と臨港産業基地の形成を加速させ、地域経済の持続的発展のエネルギーを増強し、内陸地域への波及能力を高めなければならない。

3)朝鮮とロシアの通関インフラ整備の遅れ

 延辺地域の琿春市は、すでに3億人民元を投資して通商口への道路を建設したが、北朝鮮が今だ羅津先鋒地域の道路工事を施工しなかったために、雨や雪の日には通行不能の状態が続いている。琿春−ザルビノ港鉄道は、その標準軌(レール)の敷設がカムショーパヤで終わってしまったため、ザルビノ港から50km離れたところでの荷役を余儀なくされた。日本と韓国はもともとこの鉄道を利用して、中国東北地域の石炭、穀物、稲草、特産物及び外資系企業の製品を輸入し、自国の輸出品と外資系企業の生産に必要な原材料の一部を輸出する計画であったが、鉄道軌道の差異により取り消した。

4)通商口管理の国際慣例との不一致

国際慣例によると、通商口では入国管理局が入国と出国の人員をチェクし、税関が物質の出入りをチェク(边检管人,海关管物」)するが、現在中国、北朝鮮、ロシア3カ国は依然と社会主義通関方式を維持している。すなわち、通関の時に、衛生検疫、国境警備隊のチェク(「边检」)、税関、動植物検疫などの繁雑な手続きが必要で、効率が低い。

 

3.展望

(1)世界経済のグロバル化の進展と発展のチャンス

 中国のWTO加盟は、中国経済が全面的に世界経済秩序に入ることを意味する。世界経済のグロバル化に伴って、北東アジア地域、特に中国、日本、韓国3カ国間の経済交流はますます深まるはずである。中日韓間のFTAテンポの加速、東北地域の港湾が中国の大市場を背後に、地理的に近い日韓の区域優勢を十分に活用して、東北地域、ひいては中国の対外貿易がもたらした新しい商機をつかむ。図們江流域における物流の発展は、世界経済と地域経済の発展趨勢と合致する。東アジア地域における主な港のコンテナ輸送量は、2005年に1.8TEU2010年には4.06TEU、そのうち、北東アジア地域の中国大陸(香港を含まず)が2005年と2010年にそれぞれ8,460TEU2.1TEU、日韓両国がそれぞれ3,000TEU4,560TEUに達すると予測されている[2]。日増しに発展する港湾物流業は、東北地域の物流業の発展に良好な発展チャンスを提供している。

(2)東北地域経済の回復に伴う物流量の増加

資源豊かな東北地域は、東北地域の通商口の発展基礎で、将来東北アジア地域が重要な国際海運センターへ浮上する戦略的な頼りである。2003年の上半期に、中国政府は「東北老工業基地振興戦略」を制定し、相次いで一連の重要な政策を公表した。東北地域振興計画の第一段階では、100個の重点プロジェクトに610億人民元を投資するが、そのうち、プロジェクト数においては遼寧省が52個、黒龍江省が37個、吉林省が11個を占め、投資額においては遼寧省が440億人民元と総投資額の72.5%を占めた。この計画の遂行は、東北地域経済に新しい活気をもたらし、経済の回復と振興に役立つ。経済の更なる発展は、巨大な物流、人流、資金流を形成して、物流センター港湾に新しい発展のチャンスをもたらす。さらに東北地域への国際製造業基地の移転と集積を加速化させ、巨大な物流需要を引き起こすだろう。

(3)朝鮮羅津港の巨大な潜在力

中国の協力の下、北朝鮮の羅津は現在物流センターへ邁進している。鉄道はハルビンから中国の図們と北朝鮮の南陽を経由して、羅津港に至る。北朝鮮の元汀里から羅津に至る道路建設は、20062007年の間に完成するだろう。延辺から羅津に向かう物流量は、2004年にコンテナ5,000TEU20,000TEU)、雑貨400,0001,000,000MTに達し、延辺から南陽を経由して羅津港に輸送された雑貨は200,000MTに達した。

 韓国の北東アジア地域物流センターの建設構想は、北朝鮮の羅津港と清津港を離れられない。中国の黒龍江省と吉林省の貨物は羅津港を経由して輸送される。京義線の建設も朝鮮半島縦断鉄道(TKR)の建設も北朝鮮の協力が不可欠である。北朝鮮はその西部鉄道と東部鉄道を軸に、羅津港と清津港、南浦港を両翼として、北東アジア地域の国際物流センターに発展できる。

 北朝鮮の地下資源は周辺国へ輸出できる。現在韓国と日本の磁鉄鉱石は全部輸入に依存しており、中国も約48%の500億トンの磁鉄鉱石の輸入が必要であるが、北朝鮮の磁鉄鉱石資源は非常に豊富である。さらに中国のコークス輸出において、もし北朝鮮の羅津港を利用すれば、ハルビン―羅津―釜山ルートが既存の輸送ルートの中で最短のルートとなる。

東北アジア地域は鉄鋼業が発達しており、日本、韓国、中国の鋼鉄生産量は世界全生産量の50%を占めている。無煙炭は鉄鉱業にとって重要であるため、中国の東北三省と韓国、日本の無煙炭に対する需要が大きいが、北朝鮮の平安南道と咸鏡南道には約160億トンの無煙炭資源がある。

総合すると、北朝鮮の羅津港は北東アジア地域の物流センターに成長できる潜在力を備えており、その発展は北朝鮮と北東アジア地域諸国間の経済協力に有利であるだけでなく、中国延辺地域の図們江出海物流業の発展の潜在力も示している。

(4)日本の役割

 日本はアジア地域における唯一の先進国として、直接投資、産業移転、資金の供与、技術協力、市場の提供などを通じて、アジアNIESASEAN、中国などの経済発展に大きな役割を果たしてきた。

 歴史的遺産と冷戦構造の影響がまだ残っている北東アジア地域において、経済協力の一層の強化、および国際分業体制の確立と更なる発展による地域全体の繁栄は、互いに利益をもたらすものである。その実現のためには、市場メカニズムだけでなく、関連諸国政府間の政治、経済、安全保障などを含めた緊密的な協力枠組の確立が必要不可欠となる。日本も諸障害を乗り越えて、その実現に向けて積極的な役割をはたすことが期待される。また地方間の交流と相互協力の活発化も、地域における経済協力に役立つ。日本の地方政府の積極的な取り組みが期待される。

環境問題は地域全体、ひいては地球全体の問題でもある。もともと重化学工業が集中し、さらに経済開発が推し進められている中国東北地域において、環境問題もひどい。環境の改善と保護において、多くのノウハウを蓄積した日本が積極的な役割を果すことができる。

国営大中企業中心の東北地域において、持続的な経済発展のためには、市場経済に適応した人的資源と民間企業の育成が必要となる。日本が積極的に協力すれば、市場の育成に役立つだけでなく、人的ネットワークも築き、相互の信頼と協力関係も確立できる。そうなれば、日本企業が東北地域に進出するとき、大きな役割を果せるだろう。

参考文献

1.中国交通部2004年道路水路交通業発展統計公報。

2.延辺朝鮮族自治州口岸(通商口)弁公室統計資料。

 3.王志新『2005年港航物流市場発展報告』、遼寧省航海学会。

 4.大連港集団業務部資料『2004年大連港呑吐(輸送量)現状与発展展望』。

 5.年鑑編輯部『2004年中国航運(海運)発展報告』、人民交通出版社、2005年8月。

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8回「中国・新疆視察旅行」のご案内

代表取締役専務 

弊社海外事業部に於きましては、中国・新疆ウイグル自治区ウルムチ市にて、981月に地下商店街「辰野名品広場」をオープンし、昨年は第2期工事にも着工しました。この仕事に携わる中で、新疆ウイグル自治区やウルムチ市に於いては、産業の各分野で有望な数多くのプロジェクトがあり、特に日本からの協力が強く要望されていることを実感致しました。

ついては、日本各方面の方々に当地を知って頂くべく、本年も7月に第8回「中国・新疆 視察旅行」を実施させて頂きたく存じます。

各種資源の豊富な新疆ウイグル自治区は、中国政府の西部大開発の政策により大いに発展が期待されております。又、シルクロードの中国西端に位置し、観光の面でも十分楽しんで頂けます。種々ご予定もお有りかとは存じますが、この機会に是非当地を訪問頂きたくご案内申し上げる次第でございます。帰路では、発展著しい北京も訪問する予定です。

詳細のお問い合せにつきましては、弊社海外事業部(Tel06(6263)2360Fax06(6263)2791担当:大田・石(k.sekitatuno.co.jp))までご連絡下さい。

1.スケジュール

 

   

   

現地時間

交通機関

   

1

 7月15

(土)

関西空港発

    京着

    京発

ウルムチ着

1000

1210

1440

1820

CA162

 

CZ6902

 

出国手続後、北京へ

着後、国内線に乗り換えて、ウルムチへ

到着後、夕食

(ウルムチ「海徳大酒店」 泊)              

2

7月16

(日)

ウルムチ発

トルファン着

 

 

トルファン発

 

 

 

1815

専用車

 

 

列車

トルファン視察及び観光

カレーズ、火焔山、ベゼクリク千仏洞、交河古城、アスターナ古墳群等

 

N946夜行列車にてクチャへ(車中泊)

3

7月17

(月)

クチャ着

0545

 

 

 

列車

 

専用車

着後、ホテルにて朝食

キジル千仏洞、ギジリヤ大峡谷、クズルガハ烽火台、スバシ古城夜、民族舞踊の鑑賞

(クチャ「クチャ飯店」泊)     

4

7月18日(火)

クチャ発

カシュガル着

0554

1449

列車

 

専用車

 

列車にてカシュガルへ

着後カシュガル観光 エイディガール寺院、バザール、職人街、香妃墓など

(カシュガル「色満賓館」泊)

5

7月19

(水)

カシュガル発

ウルムチ着

ウルムチ発

北京着

1035

1215

1910

2230

 CZ6804

 専用車

CZ6909

着後,ウルムチ市内見学

航空機にて北京へ

(北京「国際賓館」泊)

6

7月20

(木)

 

北京

関西空港着

 

1620

2000

専用車

CA161

 

北京市内観光、万里の長城

出国手続き後、空路、帰国の途へ

 

:参加定員は30名です。定員なり次第締め切らせていただきます。

<朝食>5回 <昼食>5回 <夕食>4回 (機内食を除く)

◇利用航空会社:中国国際航空(関空⇔北京)中国南方航空 (北京⇔ウルムチカシュガルウルムチ

◇諸事情により、已むを得ず日程変更・中止をする場合もございます。

2.参加費用 :240,000(団体料金適用、一人部屋希望の際は追加料金要)



[1] 延辺朝鮮族自治州口岸(通商口)弁公室統計資料による。

[2] 前掲2005年港航物流市場発展報告』。