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京大上海センターニュースレター
第113号 2006年6月14日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○「SMBC経営懇話会ビジネス交流会―京都大学上海センター&京都大学ビジネス交流会」のご案内
○国際セミナー「中国の産学連携について」の御案内
○シンポジウム「中国東北振興と日本海両岸交流」の御案内
○ 中国・上海ニュース 6.5-6.11
○CGEモデルを用いた炭素税の効果分析
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「SMBC経営懇話会ビジネス交流会―京都大学上海センター&京都大学ビジネス交流会」
の御案内
この度SMBCコンサルティング社と上海センターが「中国における産学連携」をテーマに講演会および交流会を下記の要領で共催することになりました。積極的なご参加をお願いいたします。(参加料は無料です)
会場:SMBCコンサルティング大阪オフィス
大阪市北区中之島2−2−7 中之島セントラルタワー17階
(御堂筋線淀屋橋駅・四ツ橋線肥後橋駅徒歩3分)
開催日:平成18年6月20日(火)13時―17時
第一部講演会
講演1:「中国の産学連携について」
京都大学経済学研究科上海センター長 山本裕美氏
講演2:「上海の産学連携」
復旦大学管理学院教授 胡建績氏
講演3;「復旦大学の事例―復旦復華科技股份有限公司」
復旦復華科技股份有限公司総経理 王可炯氏
講演4:「京都大学の産学連携」
京都大学国際イノベーション機構 機構長 松重和美氏
第二部 交流会
復旦大学、京都大学上海センター、京都大学国際イノベーション機構との交流会
*申し込み方法:6月16日(金)までに以下の上海センター事務局までご連絡下さい。
上海センター事務局 TEL/FAX: 075-753-3514 E-mail:
shanghai@econ.kyoto-u.ac.jp
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上海センター・国際セミナー「中国の産学連携について」の御案内
中国の大学は「校弁企業」という大学発の多数のベンチャー企業を育成しており、これらの企業の中には既に株式市場に上場を果たしている企業も出現している。今回のセミナーでは中国の産学連携の動向及び復旦大学発の企業として全国的に著名な上海復旦復華科技股份有限公司について報告する。
日時: 2006年6月21日(水)14:00−17:00
場所: 経済学研究科総合研究棟2F大会議室
コーディネーター 山本裕美 京都大学上海センター長
報告者 胡建績 復旦大学管理学院教授
王可炯 上海復旦復華科技股份有限公司総経理
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京都大学上海センター・シンポジウム
「中国東北振興と日本海両岸交流」の御案内
中国経済は今年1−3月期も10%を超える経済成長を果たし、この流れは沿海部のみならず、中国東北の内陸地方にも広まりつつある。問題はこの経済発展をいかに我々日本や関西経済に結びつけるかであるが、@中露関係の改善・発展はこの中国東北部からロシア経由で日本と繋がる可能性を広め、さらにA中国吉林省企業による羅津港経由の物流の可能性も開けつつある。この可能性を見極め、現実に活用するために以下のような四名の報告者を立て、集中的な議論を行う。
開催日時 2006年7月3日(月)14:00-17:00 会場 時計台記念館2F国際交流ホール
主 催 京都大学経済学研究科上海センター
共 催 舞鶴港振興会、京都大学上海センター協力会
後 援 北東アジア・アカデミック・フォーラム
あいさつ 森棟公夫 京都大学経済学研究科長
麻生 純 京都府副知事(舞鶴港振興会を代表して)
コーディネーター 山本裕美 京都大学経済学研究科上海センター長
報告者 1)小河内敏朗 元在瀋陽日本国総領事
2)権 哲男 中国延辺大学副教授(報告者が交代しました)
3)伊達俊行 舞鶴港振興会常務理事
4)小島正憲 小島衣料株式会社社長
(シンポ直後には経済学研究科大会議室で懇親会を予定しています。また、シンポ直前13:00-13:45には同大会議室で上海センター協力会総会を予定しています。協力会会員の参加を是非お願いいたします)
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中国・上海ニュース 6.5−6.11
ヘッドライン
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中国:5月の貿易黒字44%増の130億ドルで過去最高に
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中国:1−5月、技術導入契約額が大幅増加、111億ドルに
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中国:5月の消費者物価、1.4%アップ
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自動車:輸入車関税率、7月から25%に引き下げ
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北京:「生活の腐敗と堕落」を理由に、副市長を解任
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上海:中古住宅物件の取引件数が減少
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天津:世界最大のエレベーター工場を建設
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天津:地下鉄1号線、試験営業開始
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深圳:最低賃金2割引き上げ・全国最高に
■ 上海:株急落、1カ月ぶり安値
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CGEモデルを用いた炭素税の効果分析
中国と韓国の比較分析
京都大学大学院学生 表正賢
1.研究の目的
本研究は、2005年2月16日にロシアの批准によって発効した京都議定書の温室ガス削減義務を中国と韓国に適用する場合、その削減政策として挙げられている炭素税の波及効果を一般均衡分析に基づいたCGEモデルにより分析する。すなわち、削減目標を達成するための炭素税を計算し、そのような炭素税が賦課された際のマクロ・ミクロ経済に及ぼす影響を分析する。その上で炭素税を導入するための政策提言を行う。
2.研究の方法
CGE(Computable General Equilibrium)モデルは抽象的な一般均衡モデルに生産技術、選好関係、生産要素、政府の経済政策などについての具体的な仮定を導入し、経済を一般均衡を描く方程式体系として表現するもので、一般均衡理論の現実的な形であると見なされる。
ここでの分析は黄愛珍(2004)「移行期における中国環境政策の一般均衡分析」京都大学大学院経済学研究科博士論文と表正賢(2005)の論文の比較である。モデルでは黄のモデルの構造を少し修正して韓国の炭素税分析を行った。
3. シミュレーション
シナリオは三つである。CO2排出量を5%、10%、20%削減する際のミクロ・マクロ経済に与える影響、そしてエネルギー需要とCO2排出量の変化などを分析する。
4.マクロ経済に対する影響
中国と韓国を単純比較すると、中国は韓国より実質GDPで2.5倍以上、総生産で1.5倍以上の損失を受ける。これは、中国にとっては、二酸化炭素排出量を削減するために必要な経済の負担が韓国よりもかなり大きいことを意味している。
5.炭素税の計算結果
計算された炭素税は、中国の場合は各々24.16、52.35、124.81中国元である。
韓国の炭素税は各シナリオ別に8023.25、17575.05、42973.42韓国ウォンになる。韓国の炭素税を2000年の為替レートで換算するとシナリオ別に65.22、142.88、349.87中国元になる。
6.産業部門別の経済効果
1)中国は建設業部門以外のすべての産業部門の生産が減少している。その影響の度合いは産業部門によって差が大きい。特に、エネルギー産業の場合(石炭、石油、ガス)、二酸化炭素を削減するための費用が他の産業より著しく大きいことが分かる。
2)中国と韓国ともに、二酸化炭素の削減率を5%から10%へ上昇させる時と、10%から20%に上昇させる場合を比較すると、各産業の受けるマイナスの影響が削減率の上昇率以上に増加し、排出削減費用も高くなっていく。
3)韓国も産業別に正と負の結果を見せている。
4)炭素税を賦課することによって価格体系が変化し、生産者はその価格体系に反応して代替効果がもたらされ、生産と消費の需要が切り替わることになる。この効果によって、各産業別のこのような差が示されることになる。
5)韓国の場合は、特に鉱業、非金属鉱物、電気精密機械、建設、ガスではその生産量が増加している。生産量が増加する理由は、炭素税を賦課することによってエネルギー投入自体は全産業で減少したが、それ以外の労働所得と資本所得そして代替的な中間材の投入の増加がエネルギー投入の減少分を上回っているためである。
7.エネルギー需要とCO2排出量の変化
エネルギー需要の変化
1)炭素税の導入によって、すべての化石燃料の需要量が減少すると共に化石燃料の種類によって減少の度合いに差があることが読み取れる。そのうち、石炭に対する需要の減少率が一番高い。炭素税の導入によって、化石燃料の相対価格が上昇し、特に石炭の相対価格はその他のエネルギーよりも高くなったためである。
2)中国は各化石燃料の需要量のうち、9割以上が産業部門による中間需要であるため、炭素税の導入がもたらした化石燃料の価格の上昇によって、化石燃料に対する需要は家計部門より産業部門が受ける影響がはるかに大きい結果となっている。
3)韓国の場合、ガスの結果が正である。これはガスの需要の中で約70%を占めている中間需要が正であることからすぐ分かる。消費者価格の変化を見れば分かるように、ガスの価格は他のエネルギー価格に比べてその上昇率が著しく低いためである。
各化石燃料のCO2排出量の変化
1)中国の場合、石炭の消費による排出分が断然大きいことが特徴的である。これは中国のエネルギー消費構造が石炭を中心としていることによるものである。
2)韓国の場合、石炭は需要が著しく減少するため、その割合も減少していく。反面、ガスの場合はその需要が増加することによって総排出量に占める割合は各シナリオにおいて5.714%、11.933%、26.723%となり、石油も増加の傾向を示している。これは石炭の相対価格が大きく上昇することによって排出量が顕著に減り、その分を石油とガスが埋めることを意味しているのである。
8.政策提言
中国と韓国は、二酸化炭素排出量を減少させるために大きな経済的損失を受けなければならない。また、中国は石油確保のために、そして韓国はエネルギーの大部分を輸入に依存しているため、エネルギー安保を優先的に考慮しながら、政策を樹立しなければならない。さらに、ここで提示した炭素税の導入だけでなく各種の義務負担シナリオに対する多様な政策実験を通じて経済-社会的な被害を最小化する交渉戦略を樹立しなければならない。
(本稿は前号「ニュースレター」で報告した今年2月の上海でのセミナーでの報告の要約である)