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京大上海センターニュースレター
第114号 2006年6月23日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○シンポジウム「中国東北振興と日本海両岸交流」の御案内
○
中国・上海ニュース 6.12-6.18
○中国東北経済の振興について
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京都大学上海センター・シンポジウム
「中国東北振興と日本海両岸交流」の御案内
中国経済は今年1−3月期も10%を超える経済成長を果たし、この流れは沿海部のみならず、中国東北の内陸地方にも広まりつつある。問題はこの経済発展をいかに我々日本や関西経済に結びつけるかであるが、@中露関係の改善・発展はこの中国東北部からロシア経由で日本と繋がる可能性を広め、さらにA中国吉林省企業による羅津港経由の物流の可能性も開けつつある。この可能性を見極め、現実に活用するために以下のような四名の報告者を立て、集中的な議論を行う。
主 催 京都大学経済学研究科上海センター
共 催 舞鶴港振興会、京都大学上海センター協力会
後 援 北東アジア・アカデミック・フォーラム
あいさつ 森棟公夫 京都大学経済学研究科長
麻生 純
コーディネーター 山本裕美 京都大学経済学研究科上海センター長
報告者 1)小河内敏朗 元在瀋陽日本国総領事
2)権 哲男 中国延辺大学副教授(報告者が交代しました)
3)伊達俊行 舞鶴港振興会常務理事
4)小島正憲 小島衣料株式会社社長
(シンポ直後には経済学研究科大会議室で懇親会を予定しています。また、シンポ直前13:00-13:45には同大会議室で上海センター協力会総会を予定しています。協力会会員の参加を是非お願いいたします)
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中国・上海ニュース 6.12−6.18
ヘッドライン
■
中国:引き締め第2弾、預金準備率0.5%を引き上げ
■
中国:1−5月、都市部の固定資産投資が前年比3割増
■
中国: 5月、昨年月比新規融資がほぼ倍増 貯蓄の伸びは鈍化
■
上海:上海協力機構首脳会議、上海で開催
■
中国:70都市の住宅価格、5月、平均5.8%上昇
■
中国大陸・台湾:チャーター便拡大で合意、4大伝統祝日に運航へ
■
浙江:寧波市に初の国家石油戦略備蓄基地、8月完成
■ 西安:42.9度高温天気
■
北京:中国初の都市精製油パイプラインを建設
■
上海:サントリー、豪フォスターズの上海ビール事業を買収
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中国東北経済の振興について
−鉄鋼産業とR&D投入を中心に−
京都大学大学院経済学研究科院生 韓 光燦
一 東北鉄鋼産業の史的展開
建国後,中国政府は「鉄は国家なり」のスローガンの下で鉄鋼産業の確立を進めた。1953年から始まった第1次5ヵ年計画期における国家建設の重点は旧ソ連からの大規模な援助を受けた156件の重点プロジェクトであって,中心は遼寧省の鞍鋼の再建を柱とした東北重工業基地の建設であった。
鞍鋼再建の中での「重中之重」はいわゆる「三大工程」,即ち7号高炉,シームレスパイプ工場,大型圧延工場等三つのプロジェクトであった。プロジェクトの技術と設備はほとんど旧ソ連からの一括導入方式であった。「産業移植的」技術導入ともいえよう。
二 東北の鉄鋼産業の現状
東北地区は歴史的にみても、現在と将来を展望しても、中国の最大の鉄鋼生産基地ともいえる。しかも、東北経済の中での鉄鋼産業はいつも中核的役割を果たしてきた。
1 主成分分析(図表1と2)
図表1 5主成分の因子負荷量
項目 |
第一主成分 |
第二主成分 |
第三主成分 |
第四主成分 |
第五主成分 |
企業総数 |
0.057 |
0.206 |
0.915 |
0.213 |
0.106 |
工業生産総額 |
0.213 |
0.583 |
0.663 |
0.277 |
0.198 |
新規投資 |
-0.202 |
0.479 |
0.388 |
-0.006 |
0.692 |
拡大投資 |
0.34 |
0.472 |
0.69 |
0.156 |
0.203 |
改造投資 |
0.443 |
0.759 |
0.104 |
0.251 |
0.126 |
粗鋼生産量 |
0.173 |
0.792 |
0.449 |
0.145 |
0.224 |
鉄鉱石生産量 |
-0.075 |
0.91 |
0.29 |
-0.035 |
0.074 |
厚板 |
0.482 |
0.54 |
0.007 |
0.239 |
0.475 |
中板 |
0.696 |
0.331 |
0.093 |
0.413 |
0.414 |
熱延 |
-0.02 |
0.253 |
0.208 |
0.887 |
-0.044 |
冷延 |
0.602 |
0.299 |
0.558 |
0.327 |
-0.175 |
電磁鋼板 |
0.905 |
0.033 |
0.032 |
-0.062 |
0.04 |
メッキ鋼板 |
0.841 |
0.382 |
0.21 |
0.046 |
-0.049 |
塗装鋼板 |
0.905 |
-0.079 |
0.134 |
0.122 |
-0.022 |
シームレスパイプ |
0.354 |
-0.182 |
0.384 |
0.656 |
0.337 |
出所:筆者が作成。
図表1における第一主成分は全変動の約27%、第二主成分が全変動の24%、第三主成分が全変動の18%、第四主成分が全変動の12%、第五主成分が全変動の8%を説明して、合計が全変動の約89%を説明している。
図表1をみると、冷延以下(ハイエンド製品)が非常に高いプラス、企業総数が比較的小さいプラスに対し、工業生産額と粗鋼生産量が比較的高いプラスであるため、大手企業集中の可能性を示している。したがって、第一主成分はハイエンド製品生産地域を抽出する指標であることがわかる。
鉄鋼石が非常に高いプラスを示している。また、粗鋼生産量が高いプラス、企業総数が比較的小さいプラスを示しているため、大中型企業が集中する可能性を示している。したがって、第二主成分は伝統的鉄鋼基地を抽出する指標であることがわかる。
粗鋼生産量に比べて、企業総数が非常に高いプラス、拡大投資も比較的高いプラス、しかも全ての項目がプラスになっているため、中小一貫製鉄所が乱立している可能性を示している。したがって、第三主成分は中小零細企業乱立地域を抽出する指標ともいえよう。
特定の品目(熱延、シームレスパイプ、冷延、中板)が他の品目に比べて、高いプラスを示しているため、圧延工程に特化した企業が集中している可能性を示している。したがって、第4主成分は特定工程特化企業集中地域を抽出する指標ともいえよう。
新規投資において、5つの主成分の中でも最も高いプラスをしめしていることから、現在新規参入がもっとも活発な地域であることを示す。したがって、第五主成分は現在新規参入が活発な地域を抽出する指標ともいえよう。
図表2をみると、主なハイエンド製品生産基地は宝鋼、武鋼、鞍鋼等が立地する上海、湖北省、遼寧省が挙げられるが、伝統的鉄鋼生産基地としては、立地も原料立地型である河北省、遼寧省、安徽省等が挙げられる。中小企業乱立する地域は、江蘇省、浙江省、河北省等の地域で、これらの地域は三大経済圏(珠江三角区、長江三角区、京津冀北)等の経済成長が著しい地域で、いわゆる消費地立地ともいえよう。特定工程特化企業が集中する地域は、天津、安徽省、江蘇省など、活発な新規参入が行われている地域は山東省、内モンゴル、河南省等が挙げられよう。
図表2 主成分スコア
ハイエンド 製品基地 |
|
伝統的 鋼材基地 |
|
中小零細 乱立 |
|
特定工程 特化企業 |
|
活発な新規参入地域 |
|
上海
|
4.36939 |
河北
|
3.89538 |
江蘇
|
3.80021 |
天津
|
3.96669 |
山東
|
3.82126 |
湖北
|
1.82257 |
遼寧
|
2.83853 |
漸江
|
1.61442 |
安徽
|
2.05276 |
内モンゴル |
1.95732 |
遼寧
|
1.51013 |
安徽
|
0.88622 |
河北
|
1.20681 |
江蘇
|
1.58315 |
河南
|
1.29121 |
江西
|
0.13582 |
北京
|
0.39596 |
山西
|
0.98108 |
河南
|
1.00137 |
河北
|
0.59088 |
福建
|
0.12039 |
山東
|
0.22426 |
四川
|
0.979 |
遼寧
|
0.58084 |
広東
|
0.48203 |
江蘇
|
0.11178 |
湖北
|
0.19726 |
内モンゴル |
0.80334 |
吉林
|
0.12893 |
天津
|
0.47086 |
山東
|
0.1094 |
河南
|
0.03152 |
広東
|
0.51605 |
広西
|
0.08722 |
江西
|
0.35009 |
重慶
|
0.0887 |
甘粛
|
-0.04947 |
貴州
|
0.31446 |
山東
|
0.01138 |
重慶
|
0.33267 |
広東
|
0.01628 |
雲南 |
-0.06065 |
遼寧
|
0.27499 |
四川
|
-0.02096 |
山西
|
0.31799 |
四川
|
-0.11799 |
山西
|
-0.08053 |
福建
|
0.17037 |
上海
|
-0.0781 |
広西
|
0.31418 |
山西
|
-0.12135 |
吉林
|
-0.10368 |
山東
|
0.09828 |
江西
|
-0.11667 |
湖北
|
0.29621 |
甘粛
|
-0.17422 |
江西
|
-0.12203 |
上海
|
0.03337 |
重慶
|
-0.18129 |
上海
|
0.24521 |
天津
|
-0.1971 |
広東
|
-0.17697 |
雲南
|
-0.19408 |
漸江
|
-0.26902 |
甘粛
|
0.11128 |
北京
|
-0.2389 |
広西
|
-0.17799 |
陝西
|
-0.35044 |
河北
|
-0.3338 |
漸江
|
-0.26918 |
広西
|
-0.3191 |
新彊
|
-0.2253 |
新彊
|
-0.38637 |
青海
|
-0.33841 |
北京
|
-0.30007 |
西蔵
|
-0.3238 |
海南
|
-0.25706 |
黒竜江
|
-0.41573 |
雲南
|
-0.33885 |
四川
|
-0.31971 |
青海
|
-0.33527 |
四川
|
-0.27726 |
広西
|
-0.44957 |
北京
|
-0.358 |
黒竜江 |
-0.5141 |
寧夏
|
-0.34402 |
重慶
|
-0.27977 |
寧夏
|
-0.48307 |
甘粛
|
-0.39969 |
雲南
|
-0.53301 |
海南
|
-0.35076 |
陝西
|
-0.30212 |
湖北
|
-0.50174 |
西蔵
|
-0.40932 |
青海
|
-0.53304 |
陝西
|
-0.35507 |
黒竜江
|
-0.33324 |
青海
|
-0.5169 |
湖北
|
-0.42743 |
新彊
|
-0.54028 |
雲南
|
-0.35615 |
西蔵
|
-0.35164 |
甘粛
|
-0.58076 |
海南
|
-0.43776 |
貴州
|
-0.54612 |
黒竜江
|
-0.36591 |
寧夏
|
-0.37344 |
河南
|
-0.58932 |
寧夏
|
-0.45126 |
福建
|
-0.59608 |
新彊
|
-0.37307 |
青海
|
-0.43862 |
吉林
|
-0.60647 |
黒竜江
|
-0.4995 |
寧夏
|
-0.62639 |
漸江
|
-0.45064 |
上海 |
-0.44554 |
天津
|
-0.63312 |
陝西
|
-0.50996 |
西蔵
|
-0.65288 |
貴州
|
-0.45492 |
福建
|
-0.44865 |
海南
|
-0.64221 |
新彊
|
-0.54551 |
陝西
|
-0.66652 |
吉林
|
-0.48296 |
貴州
|
-0.50421 |
西蔵
|
-0.66047 |
内モンゴル |
-0.56236 |
海南
|
-0.68661 |
安徽
|
-0.51794 |
内モンゴル |
-0.72305 |
北京
|
-0.82887 |
貴州
|
-0.62248 |
吉林
|
-0.7285 |
河南
|
-0.56176 |
江蘇
|
-0.8334 |
江西
|
-0.83326 |
広東
|
-0.64183 |
安徽
|
-0.85696 |
内モンゴル |
-0.731 |
天津
|
-0.85129 |
重慶
|
-0.85839 |
福建
|
-0.86571 |
江蘇
|
-1.01881 |
河北
|
-1.11256 |
漸江
|
-1.0532 |
安徽
|
-1.26161 |
山西
|
-1.00442 |
遼寧
|
-1.19292 |
湖南
|
. |
湖南
|
. |
湖南
|
. |
湖南
|
. |
湖南
|
. |
出所:筆者が作成。
2 鞍鋼の第二次再建と市場奪還
1980年代まで鞍鋼は中国の計画経済のシンボルであり、モデル的役割を果たしてきた。しかしながら、計画経済体質からの脱皮の遅れ、国有企業改革の進展の遅れなどにより、逆に東北現象ともいえる改革・開放から取り残された東北経済のマイナス意味でのシンボルになったのである。
1994年より、鞍鋼は極度の経営不振を打開するために、経営メカニズムの転換を柱とする企業内改革を実施した。具体的には、まず、大幅な人員削減と組織スリム化を断行した。次に、生産現場と支社の請負制度など生産性と効率を向上させるための制度を徹底した。そして、積極的な設備投資、諸外国から技術導入の吸収・消化、ポスコ、ティッセンクルップ等の世界的鉄鋼企業とのハイエンド製品の合弁企業の設立などを行った。
設備投資、技術改造等に必要な巨額の資金は従来のメインバンクなどによる間接金融頼みから株式発行などを通じた直接金融に切り替えた。1997年、鞍鋼は新圧延株式会社を設立し、香港と深圳での上場を通じて、41億元の巨額の資金を調達した。2000年には、国家の債権の株転換政策に基づいて、新鋼鉄有限会社を設立し、これまで経営を圧迫してきた63.66億元の債権を株に転換し、財務体質を大幅に改善した。こうした一連のコーポレート・ガバナンスの強化は鞍鋼の第二次再建に中核的な役割を果たしたともいえよう。
鞍鋼は第二次再建によって、企業競争力が強化され、自動車用、高級家電用などのハイエンド製品のシェアを徐々に拡大している。例えば、従来第一自動車の自動車用高級鋼板の主要供給メーカーは1980年代までずっと鞍鋼であったが、品質の悪さによって、1990年代後半にはほとんど宝鋼等に切り替えられたが、近年、鞍鋼はシェアを再び拡大し始めている。(2005年の筆者の鞍鋼現地調査より)
3 鞍本集団の誕生−巨大合併
2005年8月、鞍鋼と本鋼は合併を実現し、粗鋼生産能力2000万トンの巨大鉄鋼企業が誕生した。これは中国の最新の鉄鋼産業政策である「鉄鋼産業発展政策」に基づいての大規模産業再編の一環ともいえよう。
鞍鋼はまた、構内の新区に500万トン級のハイエンド製品基地建設を急速に推進すると共に、天然良港である遼寧省の営口港近くに1000万トン級の大規模臨海一貫製鉄所建設を計画している。(2005年の筆者の鞍鋼現地調査より)これで、鞍本集団は2010年には、粗鋼生産能力3000万トン級の巨大製鉄所に急成長することになる。
三 東北のR&D投入
1 主要省市との比較
東北経済は改革・開放以前は中国経済の牽引車であったが、改革・開放以降から1990年代までは制度の硬化、企業設備の老化、近代企業システムの未確立などの東北体質の形成によって、経済成長が著しい東南部沿海地域との経済格差が次第に拡大しつつある。例えば、2004年の東北三省合計GDPは広東省の約9割しかない。
沿海地域との経済的格差の要因としては、色々挙げられるが、R&D投入の格差が最大のポイントの一つともいえよう。したがって、東北振興策として、いかにR&D能力を高めるかが、一つの大きな課題ともいえる。
図表3の上段は基本的に投入指標と努力指標、下段は成果指標ともいえよう。投入指標には研究開発人数、研究開発経費、GDPに占める研究開発経費の割合が含まれている。図表3が示すように開発人数と開発経費共に北京がトップで、それぞれ東北三省合計の約1.2倍と1.8倍、GDPに占める経費の割合も北京がトップで、遼寧省の約4.8倍である。
努力指標としては、地方財政支出に占める科学研究費の割合(地方政府の努力)、消化吸収費用対技術導入費用の割合(企業側の努力)が挙げられよう。地方財政支出に占める科学技術研究費の割合は広東省がトップで、遼寧省の約1.4倍、消化吸収費用対技術導入費用の割合も広東省がトップで、東北三省トップの黒竜江省の約1.5倍である。
成果指標としては、特許申請量、特許保有量、新製品売上、技術市場取引数、ハイテク企業生産額が挙げられよう。特許申請量は広東省がトップで、東北三省合計の約4.7倍、特許保有量も広東省がトップで、東北合計の約2.8倍、新製品売上も広東省がトップで、東北合計の約2.5倍である。技術取引数は浙江省がトップで、東北合計の約2.3倍、ハイテク企業生産額では広東省がトップで、東北合計の約9.6倍という非常に興味深い結果が出ている。
図表3 主要省市とのR&D投入比較(2004年)単位:万人、億元、%、件、億元、件、億元
地区 |
研究開発 人数 |
研究開発 経費 |
経費/国内総生産 |
科技費/地方財政支出 |
消化吸収/導入 |
北京
|
15.15 |
317.33 |
7.41 |
2.63 |
0.91 |
天津
|
2.96 |
53.75 |
1.83 |
2.66 |
4.84 |
河北
|
3.48 |
43.84 |
0.5 |
1.26 |
13.52 |
遼寧
|
6 |
106.91 |
1.56 |
2.53 |
4.83 |
吉林
|
2.22 |
35.51 |
1.2 |
0.91 |
1.67 |
黒竜江 |
3.92 |
35.35 |
0.67 |
1.75 |
21.01 |
上海
|
5.91 |
171.12 |
2.3 |
2.82 |
14.78 |
江蘇
|
10.33 |
213.98 |
1.38 |
2.04 |
11.59 |
漸江
|
6.31 |
115.55 |
1.03 |
3.61 |
23.13 |
福建
|
3.18 |
45.89 |
0.76 |
2.29 |
15.28 |
山東
|
7.23 |
142.12 |
0.92 |
1.91 |
25.17 |
広東
|
9.31 |
211.21 |
1.32 |
3.53 |
32.12 |
地区 |
特許申請量 |
特許保有量 |
新製品売上 |
技術市場 取引数 |
ハイテク企業生産額 |
北京
|
1377 |
987 |
965 |
35549 |
1539.8 |
天津
|
2977 |
632 |
1303 |
8002 |
1519.6 |
河北
|
975 |
453 |
343 |
2622 |
250.7 |
遼寧
|
809 |
447 |
879 |
11504 |
610.9 |
吉林 |
378 |
139 |
148 |
3599 |
155.4 |
黒竜江
|
643 |
468 |
188 |
2485 |
155.4 |
上海
|
3879 |
705 |
2657 |
27327 |
3259.7 |
江蘇
|
3878 |
1639 |
2414 |
31020 |
5029.7 |
漸江
|
4078 |
1953 |
1530 |
39974 |
1379 |
福建
|
802 |
559 |
765 |
5656 |
1292.4 |
山東
|
4064 |
1543 |
2226 |
26154 |
1203.5 |
広東
|
8571 |
2939 |
3055 |
11328 |
8838.3 |
出所:中国国家統計局と科学技術部のホームページに基づいて、筆者が作成。
2 日中製造業のR&D投入比較
図表4 日中製造業比較(R&D費用/売上高、1995−2003)単位:%
注:日本は全製造業、中国は大中型企業。
出所:(財)日本統計協会『科学技術研究調査報告』各年版、中国科学技術部ホームページに基づいて、筆者が作成。
これまでみたように、東北三省と広東省との経済格差の主な要因の一つがR&D投入ともいえる。国際的にみても、日本と中国の製造業の技術競争力格差の源泉の一つがR&D投入ともいえよう。売上高に占めるR&D費用の比率では、日本と中国は製造業全体において約4.6倍、鉄鋼業では約2.3倍のR&D投入格差が存在する。
他方、図表4で示すように、1995年−2003年にかけて、製造業全体での日本と中国のR&D投入格差は約5−7倍である。
四 課題と展望
東北振興において、中核産業である鉄鋼産業の振興が必要条件であるともいえよう。鉄鋼産業の振興には、ハイエンド製品の開発と研究開発能力の更なる強化などが挙げられる。そして、根本的に経済格差を縮小し、キャッチアップを果たすには、R&D投入力度においてのキャッチアップが先決条件であり急務である。更に、環日本海経済圏において、東北の独特の位置づけと役割も大変重要なポイントになるであろう。
(本稿は2006年5月24日の吉林大学での京大上海センターと吉林大学経済学院とのジョイントセミナーでの報告の要約である。)