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京大上海センターニュースレター
116号 200676
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   中国・上海ニュース 6.26-7.2

○ ○開業中国 vs ●廃業日本

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中国・上海ニュース 6.267.2

ヘッドライン

           中国:1−5月、財政収入が1兆6千万元突破

           中国:新規着工プロジェクトを厳しく制限

     中国: 対外債務残高2879億ドル、短期外債5割以上

     中国:1−5月国有重点企業の利益10.1%増

     中国:南シナ海に大規模なガス田、埋蔵量1千億立方メートル超

     中国:水産品の輸出額、4年連続の世界一

     中国:6月30日から企業向け中心に電力値上げ

     自動車:上海汽車、SUVの共同開発車を年末に発売へ

     江蘇:中国最大の風力発電プロジェクトが始動

     遼寧:東北初の原発、本格的な着工準備が開始

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○開業中国 vs ●廃業日本

                                         03.JUL.06

                                         株式会社小島衣料 小島正憲                                                           

 

・ 現代経済は会社を基本単位として成り立っている。したがって会社数の増減がその社会の盛衰を決する。

○中国は今、空前の脱サラ・起業ブームであり、全土で無数の会社が開業されており、それが経済大躍進の活力源となっている。

●日本は今、会社の廃業率が開業率を上回り続けている。加えて数年後、団塊世代経営者の一斉引退期を迎えており、それに伴い会社数は激減し、経済は衰退の一途をたどる。                         

                                                                     

中国の中堅経営者の勉学熱は異様である。主要都市の大学には、多くのMBAコースがあり、そこでは30〜40代の現役経営者が真剣に学んでいる。それは中国の現在の脱サラ・起業ブームの反映でもある。

私の中国の会社では、この数年間、幹部の独立起業が相次いでおり、その数は二桁にも及ぶ。ひところ中国での労務管理の特殊性について、よくジョブホッピングが話題に上ったが、今ではそれよりも脱サラ・起業の方が大きな問題となっている。これは日系会社だけの問題ではなく、欧米系や地場企業にも等しく生じている現象である。独立していく幹部の多くは、経営者としての能力を持ち合わせていない。いつも私はその人たちに起業の難しさを説明する。しかし彼らは、まったく聞く耳を持たない。そして熱病に冒されたように、親戚中から資金を借り集めたり、住んでいるマンションなどを担保に入れ銀行から融資を受けたり、はなはだしい場合は民間金融組織から高利で借金し、開始する。彼らの脳裏には、マスコミなどで報道されるチャイニーズドリームが描かれている。たしかに彼らの周辺で、すでに起業し、成功し派手な生活をしている人々がいることは事実である。さらに人手や場所など、起業しやすい環境が整っているので、彼らは安直に踏み出していく。今、彼らは起業の難しさについて、冷静に判断する能力を失ってしまっている。

このような脱サラ・起業ブームは、中国全土、あらゆる業種で生起している。しかしこれは中国の会社の開業数の統計数値としては、表面化してきていない。なぜならそれらはもぐり営業が多いからである。彼らは起業しても会社の登記などはしない。できるだけ税金やその他の法的負担を少なくするためである。一般にこれらの中国の経営者は若く、30〜40代が多い。彼らは文化大革命後の世代であり、改革開放の波に乗って登場したが、しっかり経営学などを学んでいるわけではない。彼らの中から、運良く大儲け組が現れたので、だれもがそれを夢みて突っ走っているだけである。会社の幹部となり、少し経営をかじった連中がこぞって起業へと走り、にわか経営者となっているのである。当然のことならが彼らは、会社経営に行き詰まる。そして彼らは、打開策を求めて、大学のMBAコースの受講にむらがっているのである。それでもその彼らの熱情が中国経済の底辺を支え、高度成長を続行させているのである。

今、日本の廃業率は開業率を上回っており、その差は3%を越えている。したがって単純に掛け算をすれば、今後30年で日本から会社が消えてなくなるわけである。これは少子化や2007年問題よりはるかに深刻である。それにもかかわらず、この廃業ブームが注目されないのはどうしてなのだろうか。現代の日本の若者は社長をやりたがらない。社長は個人資産を担保にまで入れて、経営に全責任をとっているにもかかわらず、薄給で累進課税率が高いので、手元に残る給与は少ない。しかもことあるごとに責任を追及され、テレビの前で頭をさげなければならない。こんな割りに合わない職業を選択する若者はいない。これが日本の実状である。アメリカのように社長の給料は社員の100倍というならば、また話は別であろうが。

数年後には、団塊の世代の経営者の一斉引退が始まる。これらの企業には後継者がほとんどいない。借金のある企業を喜んで継ごうとする若者は皆無である。また逆に、無借金の優良企業は、株価が高くて相続できず、これまた続行できない。つまり赤字会社も優良会社も、いずれも廃業への道を歩まざるを得ない。これが日本の実状である。数年後、まちがいなく日本の中小企業は飛躍的に廃業率が高くなる。よほどのことがないかぎり、15年後には日本から会社が半減し、失業者が巷にあふれることになる。そのときになって、経営者を優遇しても遅い。今、少子化対策よりも、経営者対策を優先すべきである。