=======================================================================================
京大上海センターニュースレター
118号 2006720
京都大学経済学研究科上海センター

=======================================================================================
目次

   中国・上海ニュース 7.10-7.16

○在天津日本人留学生からの手紙

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

中国・上海ニュース 7.10−7.16

ヘッドライン

           中国:06年1−6月のGDP伸び率10.9%

           中国:台風4号で2000万人が被災、164人死亡

     中国:1−6月物価上昇率1.3%、インフレに警戒

     中国:1−6月の輸入原油量が15.6%増

     中国:外貨準備高、9411億ドルに 

     中国:土壌汚染深刻、全耕地の10%以上に

     中国:6月の対日農産物輸出額が18%減

     自動車:南京汽車、MGブランド車を英国工場で生産へ  

     広東:最低賃金17.8%引き上げへ

     上海:1−6月のGDP成長率12.4%

=============================================================================

在天津日本人留学生からの手紙

南開大学日本人留学生 古森崇史

1・中国の不動産事情について

中国の不動産は、ご存知の通り大変早いスピードで価格が上昇しており一般の人にとって手の届かないものとなりつつあります。

例えば、天津では2000年前後では、1uあたり2000元位で普通の住宅が買えましたが、2006年現在では1uあたり5000元位になっています。

しかし、公式の報道では、去年の同時期に比べて(たった)5.8%上昇したにすぎないと述べています。

先日あるテレビ番組では、中国社会科学院金融研究所の研究員や北京市の物価局の方たちが、「政府の公表する土地の価格は公正で、信頼性が高いものだ。」と言って、大変難しい統計の方法や土地価格算定の理論などを述べていました。(それと同時に、一般の人は、「政府の言うような安い物件はない。」と言っていました。)

ある住宅地域では、売買価格は上昇しているのに、賃貸価格は下降するなど不思議な現象も起きています。

また、ある市の担当者の話では、最近建てられた住宅の60%以上が110u以上の大型の住宅ですが、普通の中国人にとって一番望ましい広さは6090uです。そのため、6090u位の住宅は供給が少ないが需要が多く、大型の住宅ではなかなか買い手がいなくて困っているということです。

更に、ある報道によれば、住宅ローンの返済額が一家の収入(中国では共稼ぎが一般的)2050%である家庭は54.1%、50%以上の家庭は31.75%だそうですから、エンゲル係数が日本などより高い事等を考慮すれば、かなり無理をして住宅を購入している家庭が多い事が分かります。

 政府関係部門の人が、世界の先進国等では住宅の購入代価は年収の36倍が一般だと人々に知らせ、無理のない計画を立てて住宅を購入するように呼びかけたり、政府は、一軒屋(别墅)建築のための土地供給を止めたりするなど様々な政策を打ち出したりしています。

 ある政府の高官の方が以前、「中国でバブルの発生も一部見られるが、バブルをはじけさせるわけにはいかない。少しずつ中身の空気を抜き、上手くマクロコントロールし経済成長を続けさせる」と述べておりましたが、中国政府の政策はまさにその通りであり、あらゆる手段を使って不動産バブルを解消しようと必死になっているという印象を受けます。

私個人の感想としては、バブルの発生は政府が起こしたのではなく、一般の人々が不確かな情報を信じ、市場の特性などを理解しなかったために起こったものだと思っています。

2・中国における韓国人について

中国で生活して気付くことは、韓国人()が、公式の数字以上に多いという事です。天津では、正式に登録されている韓国人の数は日本人の56倍です。しかし、少なく見積もっても10倍はいるのではないかと思います。

また、韓国料理店に行くと、韓国語()は話せるのに、中国語は話せない従業員が大変多くいます。彼女達がどこの出身()の人なのかは、よく分かりませんが大変気になる問題であります。

さらに、韓国人の間では、相互に扶助することが大変多いようです。天津市の南開区には韓国人がたくさん集まっている地域があります。留学生などは、その地域に共同でアパートを借りて一緒に暮らし、当番制で毎食韓国料理を作ったりするなど協力し合って生活している人が多くいます。

最近では、韓国人が旅行や出張に行きたい時、韓国人会等で現地の知人を紹介してもらう他に、インターネット上に氏名、職業、連絡先などを書くと、現地の韓国人から連絡がありその人の家で泊まったりするようです。(学生などはこれを利用して、色々な場所に旅行に行くとの事です。)

日本人とは、比べ物にならない結束力のようなものを感じます。

3・中国の旅行会社について

中国でも、5月1日前後からから一週間位休日ですので、その間に「中国の旅行会社のツアー」に中国人の友人と参加して、青島などへ行きました。

当初は、大連に行く予定でしたが、出発の直前に旅行会社から電話があり、日本人が行くなら「もし、事故などが起こっても旅行会社とは関係ない」という念書を書くように請求された上、「(私が、日本人であるため)あまりツアーに参加してほしくない」というようなニュアンスのことを言われました。(旅行の保険などは、当然すでに旅行会社に支払っていました。)

そこで、別の会社のツアーに参加しました。しかし、そこでも日本人は南京、西安、大連(旅順)などのツアーには、参加できませんと言われました。結局大連は諦め、青島に行くことにしましたが、ツアーの参加者の中で外国人は、私一人だけでした。

ツアーの最中は、ずっと中国語で話していましたので、周りの人は、私の事を「日本人のような気がするけど、日本人という証拠がない」と思っていたと思います。

帰りの寝台列車の中で、私が日本人であることを近くの人に言うと、すぐに「日本と中国の政治体制」や「教科書問題」や「小泉首相」や「天皇」のことなどについて色々聞かれました。その中に外国で生活した経験がある人がいて、「ごみ問題やトイレなどの生活環境に関しては問題を感じるが、それ以外は中国が世界で一番いい」と言っていた事は大変印象に残っています。

彼らと話していて感じたことは、「いわゆる一般の人」でも日本に対する知識が相当あると言う事です。

中国では、年々旅行したりする人が増えており、今回の休日だけでも450万人以上が旅行に行き(近距離を含む)、過去最高だということです。しかし、この数を見ていただければ分かるように旅行に行く人は、中国の中では裕福な人たちです。

しかし、個人的な感想を言えば、一般の日本人が気軽に中国の旅行会社のツアーに参加するのはまだ遠い未来のような気がしました。

日中関係が悪いこともあり、他の中国人と何か問題が起こらないとも限りませんし、交通手段も日本では見たこともないような古い列車やバスが多く、その中の状態も良くありません。(私も含めたツアー参加者全員が、天津に帰る時、旅行会社の用意した列車に乗りたがらず、飛行機やきれいな寝台列車のチケットを現地で買いました。)

また、2ツ星ランクのホテルを用意するといわれましたが、現地に行くと中国の一般的なホテルが用意されていましたので安全面でも問題がありました。

なお、中国の最も裕福な人たちの間では、香港に旅行に行くことが流行しています。だいたい値段は、1人当たり5日位で30005000元前後(42000円〜70000円位)です。また、天津の人も、日本に2004年から旅行へ行けるようになりましたが、1人当たり1週間位で6000元〜9000元前後(85000円〜130000円位)と値段が高いこともあり一般の人にとっては、まだまだ高嶺の花のようです。

(本稿は天津の南開大学に留学中の日本人留学生からいただいたメッセージです。 事務局)