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京大上海センターニュースレター
126号 2006916
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 9.4 -9.10

京都舞鶴港の現状と対岸交流新時代への展望

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中国・上海ニュース 9.4−9.10

ヘッドライン

                     中国:1−8月貿易額が1兆米ドルを突破

                     中国:8月の消費者物価指数、1.3%上昇

          中国財政部長:人民元改革に「積極的な姿勢で臨む」

          中国:2005年石油輸入量13600万トン、世界全体の6%

          中国:1−7月ワイン輸入量88%増

          中国:8月の社会消費財小売額、13.8%増

          天津:浜海新区、国家金融改革の先行地区に指定

          自動車:中国ブランドのCUV、イタリア向け初の大口輸出

          自動車:1−8月自動車販売4割増

          上海:上海万博、66カ国・8団体が参加確約

          上海:国有企業のTFT−LCD生産を政府が支援

 

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京都舞鶴港の現状と対岸交流新時代への展望

舞鶴港振興会常務理事 伊達俊行  

本日は京都府における唯一の国際貿易港である京都舞鶴港の現状および将来への展望につきまして対岸交流新時代という流れの中でご報告させていただきます。

 まずは京都舞鶴港の港湾としての位置づけですが、近畿地方日本海側では国が指定した唯一の重要港湾となっています。また、その背後圏は現状のコンテナ貨物などにおきましては北近畿すなわち京都府北部・兵庫県北部・福井県西部など周囲50KM圏内にとどまっております。昔の国名で言えば丹後丹波但馬若狭というところでしょうか。ただし現在就航している北海道フェリー航路での貨物の背後圏は近畿以外に中四国含めた西日本全域に及んでおり、京都舞鶴港が今後日本海側での対岸貿易を膨らませ主要窓口港湾としてその機能役割を大きく発揮すると想定した場合には、その背後圏は近畿2府4県まで達するものと考えます。

 次に京都舞鶴港と関西主要都市とのアクセスですが車では京阪神それぞれ1時間半から2時間程度の時間距離にあります。神戸大阪方面には舞鶴若狭道、京都方面には京都縦貫道が走り渋滞の少ないスムースなアクセスとなっています。

 次に京都舞鶴港と北東アジア諸国との地理的関係ですが、日本海を挟んで南北逆さまの地図にしてみますと、対岸地域から見た京都舞鶴港の位置がよく分かります。そして、これらの国々との航路ですが、先ずコンテナ貨物につきましては韓国釜山との間に週二便の定期航路が開設されており、韓国ローカル貿易の他、釜山を中継港として中国・東南アジア・欧州方面との交易にも活用されております。コンテナ以外の在来貨物につきましてはロシアナホトカとの定期船の他、北東アジア対岸各港とを結ぶ不定期船が往来しております。

 中国の主要港である上海、青島、大連とは1300KMから1600KMの距離となり航海日数も通常の貨物船で3日近くかかります。しかし釜山であれば1日以内、ロシアや北朝鮮の港でも1日から1日半程度で到達できる極めて近い距離にあります。京都舞鶴港がいかにこれら対岸諸国特にロシア沿海州、朝鮮半島東岸に対して近いかがご理解いただけると思います。

ここで本日の主題に上げられた中国東北部その中でも吉林省とりわけ延辺自治州と近隣の港の関係について若干のご説明をいたします。中国東北部は日本海に近いながらも海に面しておりません。現在例えば琿春地域の貿易貨物の輸出入を行うためには1300KM離れた大連港まで運ぶしかないのが実状です。この地域からですと将来的には100KM以内の距離にあるロシアのザルビノ港か北朝鮮の羅津港に出る方がより経済的ではないかといわれています。中国東北部からは今後他国の港を借りて海に出るいわゆる借港出海策が打ち出されるものと思われます。

次に北東アジア対岸諸国との貿易実績であります。2005年度の京都舞鶴港での輸出入総額は620億円でありました。そのうち北東アジア4カ国で287億円約46%を占めており、

そのうち中国が116億円、ロシアが84億円、北朝鮮46億円、韓国41億円となっております。2004年度は中国151億円、ロシア74億円、北朝鮮58億円、韓国43億円北東アジア4カ国合計326億円その他合わせた総額は510億円でした。これらの地域諸国の貿易総額に占めるシェアは2005年度は中国19%、ロシア13.5%、北朝鮮7.4%、韓国6.6% 4カ国合計では46.5%となっております。ちなみに2004年度は合計で63%でした。いずれにしても貿易額の半分近くないしはそれ以上を4カ国で占めております。これらの数字によりまして、いかに京都舞鶴港と日本海対岸諸国との交易比率が高いかをご理解いただけたことと思います。

 次に京都舞鶴港の説明にまいります。京都舞鶴港は湾口が日本海に向かい幅700Mから2KMにおよぶ水路が東西南北複雑に屈折しています。東西2方向に分かれて港が作られており水深は10MTRから20MTRと深く、リアス式海岸を利用した、まさに天然の良港であります。

 舞鶴西港には海上保安庁第八管本部が利用している以外は、主として国際貿易港としての役割があります。在来貨物船・コンテナ貨物船などが接岸可能な埠頭を4つ合計12バース持ち、さらに和田地区に新たに多目的ターミナル埠頭を建設中であります。これが2010年代初頭に供用開始されますと、埠頭総面積12ha、水深14MTR5万トン級の船舶が接岸可能となり、コンテナ・在来貨物いずれもが取り扱い可能な多目的ターミナルとなります。現在は、中古車積み込み、右はガラス原料である珪砂の陸揚げなどがされていますが、税関や植物防疫所、検疫所、入国管理局など貿易に必要な公的機関が隣接して設置されております。また貨物の荷役や通関を担う港湾物流関連企業も西港を拠点に営業活動しております。なお、1992年には輸入拡大を狙ってFAZ(フォリンアクセスゾーン)法が制定され1995年当地にも株式会社舞鶴21が設立されました。1997年には写真のようなFAZオフィスビルと倉庫が舞鶴西港区域に建設されました。現在も京都舞鶴港における貿易関連インフラとしてその役割と機能を発揮させていただいております。

 舞鶴東港は戦前から軍港としての役割がありました。現在も海上自衛隊舞鶴地方隊が設置されています。さらにユニバーサル造船がある他、北海道小樽と京都舞鶴を毎日20時間で結ぶ新日本海フェリーが就航しています。また内航貨物船は東港を利用しております。

さて今まで京都舞鶴港の現状を見ていただきましたが、京都舞鶴港はその役割と展望について今後どうあるべきでしょうか?

その地理的優位性やこれまでの実績から環日本海時代すなわち対岸交流新時代に対応した港湾インフラを整備するとともに新規航路・新規荷主の開拓と振興にあると言えます。

 港湾インフラ整備の目玉は数年先に供用が予定される和田埠頭であります。また日本海新時代のニーズに合った供用体制であります。また新規航路・新規荷主の開拓とはすなわち従来の航路では対応できなかった物流航路インフラの構築であります。現実的な問題としては政治経済情勢など日本海をめぐる外的環境が今後より良い方向に向かって行く前提での話にもなりますが、たとえばロシア・韓国・北朝鮮等の日本海対岸地域から日本海を横断し京都舞鶴港に直航する航路の開設など荷主企業のニーズに応じた物流インフラや、将来的には貨物とともに旅客も運ぶフェリー船の就航なども考えられるのではないかと思われます。

そのように京都舞鶴港が日本海交易通商においてその真価を発揮できるならば、近畿圏北部のみならず関西背後圏全体に大きな経済効果をもたらすものと信じております。

 最後に今回の報告の中では中国吉林省琿春市HPおよび京都府港湾課、国土交通省舞鶴港湾事務所からの資料を一部転用させていただきました。