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京大上海センターニュースレター
第127号 2006年9月23日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○京都大学上海センター中国自動車シンポジウムのご案内
○
中国・上海ニュース 9.11-9.17
○私が琿春に進出した理由
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京都大学上海センター中国自動車シンポジウムのご案内
■日程 2006年11月11日(土)12時開始 17時終了
■場所 京都大学経済学部大会議室(時計台キャンパス総合研究棟2階)
■主催 京都大学上海センター、■後援 京都大学上海センター協力会
■シンポジウム・テーマ
中国民族系自動車メーカーの競争力を探る――奇瑞汽車と吉利汽車に焦点を定めて――
■報告
京都大学経済学部 教授 塩地 洋 自動車産業の発展戦略と制約条件
――民族系メーカーを中心に――
元本田技研工業中国業務室 主幹 山口安彦 産業政策と五カ年計画の指向するところ
――「自主創新」への流れをたどる――
京都大学大学院経済学研究科博士課程 李 澤建 奇瑞と吉利の車種開発戦略
現代文化研究所中国研究室 主任研究員 廖 静南 外資合弁系・民族系乗用車メーカーの競争力比較分析 ――補完関係から競合関係になるか――
J.D.パワー・アジアパシフィック 木本
卓 VOC視点から見る車両品質の現状
部長 J.D.パワーシンガポール事務所 ――IQS(初期品質調査)からのインプリケーション――
東京大学社会科学研究所 教授 丸川知雄 サプライヤー関係から見た民族系メーカーの競争力
大阪商業大学総合経営学部 助教授 孫飛舟 奇瑞と吉利の流通ネットワーク戦略
[終了後懇親会]
■連絡先 京都大学経済学部塩地研究室 ☎075-753-3428 shioji@econ.kyoto-u.ac.jp
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中国・上海ニュース 9.11−9.17
ヘッドライン
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中国:鋼材などの輸出増値税還付率が引き下げ
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中国:外国直接投資が4カ月連続減少
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中国:国有企業、来年から国家に利益還元
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中国:炭層ガスを大規模開発計画が実施
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中国:1−8月技術導入契約総金額急増
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国際:北朝鮮における中・朝合作での銅採掘事業に合意
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国際:ロシア、06年鉄道での対中石油輸出が急増
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自動車:奇瑞汽車、輸出と現地生産両面で海外戦略を実施
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江蘇:今年の陽澄湖産蟹が対日輸出停止
■ 上海:ビジネス界の過度な英語崇拝が批判される
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私が琿春に進出した理由
株式会社小島衣料代表取締役社長 小島正憲
1990年以来世界各地に工場進出し、現在2工場4000人を動かしている。去年4月からは琿春でも事業を開始し、10月からは工場も動いている。この工場はまだ赤字であるが、従業員数は今年末には1000人となり、三年後には帳尻があうのではないか。
ここに進出した理由は、華南・華中では人手不足となっていることが大きい。労働集約型産業に働きに来る若い女性の優秀なワーカーがいなくなった。もうひとつの工場は武漢周辺に持っているが、そんな内陸でもいなくなっている。もっと内陸に、との考えはあるだろうが、内陸部は輸送コストと輸送日数で問題が多く、それを選択できない。それで、「内陸でなく、かつ人手が余っている」地域と考えたら琿春に辿りついた。琿春は人手だけでなく、電力や水などの資源の制約もなく、このシンポのテーマである「中国東北振興」もこの文脈で考えるべきだと思う。
実際、琿春にきてみたら「第二次琿春ブーム」というのがよくわかる。実は2002年にもこの地を訪れ、対アメリカ向けのクォーターをすり抜けるひとつの方策としてここへの進出を検討したことがある。当時進出せず失敗したと思うのは、当時は琿春市長が広大な土地をタダで差し上げると言われたのが、今回はそうはいかなかったことだ。「第二次琿春ブーム」が韓国企業などによって起こされており、そのために多くの土地がすでにそうした企業によって取得されてしまっている。この地は中国の資源外交の結果、ロシアの石油、北朝鮮の鉄、石炭、レアメタルの輸入ルートとして重要で、西部大開発と同じ優遇政策がとられ、かつ朝鮮族自治州として少数民族の優遇政策もとられている。人材も豊富で日本語のできる人が多いのも我々にとって有利な進出先となっている。
日本海横断ルート開発については、ここからザルビノへも羅津へもともに三時間という距離にあるのが大きい。新潟、敦賀、舞鶴には最短ルートとなる。参考になるのは、ザルビノと韓国の間で通っているフェリーであるが、ここでは韓国からロシアへの中古バスの輸出が重要貨物となっている。左ハンドルのロシアには日本の中古バスは輸出できない。そこにうまく韓国が入ってきている。
「借港出海」という言葉があるが、その前に考えたいことがある。それは、豆満江を以前は船が通れたのを通れなくしたのは旧日本軍だという話である。この話を長い間理解できずにいたが、どうもチョウホコウ事件の際に、ロシア軍が川を上ってくるのを避けるために杭を打って川を浅くしたというのである。これが事実であれば、もう一度日中露で航行可能な河川とし、その暁にはこの旧日本軍の行為を書いた壁新聞などを消してもらえはしないだろうか。そんなことを考えている。
本日は歯切れの悪い話で申し訳ない。
(本稿は7月3日の上海センター・シンポジウムにおいて株式会社小島衣料小島社長が報告されたものを事務局の責任で文章化したものです)