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京大上海センターニュースレター
135号 20061116
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      「国際シンポジウム 近代上海像の再検討」のご案内

      中国・上海ニュース 11.6-11.12

○中国における日本政治の報道について

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京都大学経済学研究科上海センタ−主催

「国際シンポジウム 近代上海像の再検討」のご案内

 19世紀後半から20世紀前半の中国を、単なる遅れた半植民地とみるのではなく、経済発展をともなった歴史として把握する研究潮流はすでに定着している。しかし、きわめて個性的な中国近代史を、普遍的な歴史認識のなかでどのように位置づけるべきかについて、多くの見解は収束していない。実証研究の進展にもかかわらず、全体としての共通の中国史像が構築されつつあるとはいえないようである。

 そこで、京都大学上海センタ−は、近代中国史研究の前進に資すべく、広く専門研究者の協力を得てシンポジウムを開催することにした。多様な側面を持つ中国近代史に対しては、多くの研究視角を設定することができる。そこで、本シンポジウムは中国最大の経済都市である上海をとりあげ、その歴史像を総合的に検討することによって、中国近代史研究の新しい前進の道を開こうとするものである。その視角はつぎの3つである。

 第一は、都市上海の発展の特質自体を明らかにすることである。近代の短い期間に、上海の経済や産業がどのようにして急速に発展し得たのかを、比較史の手法も含めて明らかにする。第二は、上海が中国の各地と取り結ぶ分業関係を解明することである。近代中国の個性を明らかにするために、中国一国で見るのではなく、上海を中心として形成された経済関係の変遷とその特質を分析することが有益だからである。第三は、上海の発展と世界経済との関係を検討することである。上海の経済発展が世界経済の動向とどのように繋がっていたのか、また逆に世界経済が上海のあり方をどのように規定していったかを分析する。つまり、国境をこえた広い視野で見ることが、近代上海の発展を把握する上で不可欠の作業であると考えるからである。

 このように、3つの視角から上海の経済発展史を検討することによって、近代中国史の研究にいささかなりとも新たな議論を呼び起こしたいと考えている。多くの皆さんのご参加を期待している。

■主催 京都大学上海センター

日時 2007121日(日)午前9〜午後6時

■会場 京大会館(京都市左京区吉田河原町15-9 電話075-751-8311

■プログラム

午前9時〜12時

◇張忠民(上海社会科学院) 「近代上海の都市総合競争力」

◇陳計堯(東海大学)  「近代上海食糧市場の変遷――米穀と小麦粉の比較研究 1900-1936──

堀和生(京都大学)  「上海の経済発展と日本帝国」

午後1時30分~6時

◇李培徳(香港大学)1920年代から1930年代まで上海銀行家の横領上海商業儲蓄銀行を事例として─」

◇蕭文嫻(大阪経済大学) 「中国幣制改革と外国銀行」

小瀬一(龍谷大学) 「開港場間貿易と中国の市場統合」

◇木越義則(京都大学) 「両大戦間期上海における貿易物価構造」

午後6時〜7時半 記念レセプション

■事務連絡先 606-8501 京都市左京区吉田本町 京都大学大学院経済学研究科  堀 和生    

       電話 075−753−3438 ファックス 075−753−3499

       e-mail      hori@econ.kyoto-u.ac.jp

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中国・上海ニュース 11.6−11.12

ヘッドライン

                     中国:10月CPI上昇率1.4%

                     中国:住民預金残高、5年ぶり減少

          中国:10月社会消費財小売14%増、9月の伸びより1.2%拡大

          中国:06、07年間発電能力、それぞれ8000万、7500万キロワット増へ

          中国:06年前半、鉄鋼輸出量が世界首位に

          中国:1週間4回炭鉱事故、死者・行方不明者104人

          中国:改正個人所得税法実施、年収12万元超は申告を義務付け

          自動車:奇瑞汽車、南米で小型車生産

          鉄道:武漢・広州間高速鉄道、2010年開通

          上海:マレーシアと液化天然ガス購入契約

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中国における日本政治の報道について

南開大学大学院経済学研究科  古森崇史

<1・小泉内閣時代の報道>

 (1)小泉内閣の時代、日中関係は日中国交回復(?)以来最悪の状態になったと言われ、日本で中国関係の内容がよく報道されていましたが、中国で実際に生活してみると、日本であまり報道されないことに遭遇する事がありました。

具体的には、第一に、20054月の上海領事館へのデモの時、「大学の近くの公園でデモがある」という情報がありましたが、留学生は普段通りの生活していました。この留学生達の大半は、(直後の)連休中に各地を旅行していましたし、多くの駐在員の方たちも、日本料理屋での食事・クラブ・ゴルフ等をいつもと同じように楽しんでいましたし、町の中国人と普通に接していました。(もちろん、中国滞在の日本人は皆デモや報道規制等の事を知っていました。)

 第二に、今年の7月前後の(日本の)捕鯨に対する反対運動の報道の時、日本と中国の戦争の話を突然出し、「あの戦争と同じ理論だ」と述べる人がいたかと思えば、熱心に捕鯨反対について具体的に語っている人などもおり、色々な意見を持つ人がいると感じました。ただし、一般の人は、全然関心が無かったような気がしました。

  第三に、大学の構内で、時々「抗日戦争」と書いた看板等を見かけますが、学生達が、その看板の内容に対しそんなに関心があるとは思っていませんでした。しかし、最近「東京裁判」という香港の映画が公開され、重いテーマの内容であるにも関わらず、実に多くの様々な人が見ています。一度でなく何度も見たという人も少なくありません。なぜこんなに多くの人が見るのかと大変驚きました。それと、いわゆる「愛国心」が日本人に比べて極めて強い人が多くいるのに気付き更に驚きました。

 

(2)《环球GLOBE)》の916日号(28頁〜31頁)に中国の小泉内閣への総括が書いてありよくまとまっていると思いました。それによると、小泉内閣は中国に対して7つの重大な過失を犯したと書いてあります。具体的には、@6回靖国神社に参拝して日中関係の基礎を不安定にした。A「知中派(注:親中派ではない)を粛清して日中間のパイプを閉ざしてしまった。B反中感情を煽り、国民感情を悪化させた。C中国脅威論を宣伝し、中国包囲論を建立した。D日米同盟の強化は、中国を意識して行った。E台湾の事にまで口出しをし、内政問題に足を突っ込んだ。F「政冷経熱」という人を安心させる言葉を作り上げた。

Eの台湾問題は、色々な意見がある事は承知しておりますが、一般の経済活動を見る限り、台湾は事実上中国に組み込まれている事や、中国国民の陳総統に対する評価は予想以上に悪い事等は中国に住んで気付きました。

 Fの「政冷経熱」という言葉は、よく出来た言葉だと思っていたのですが、貿易を例に取って日本と中国の経済関係も少しずつ冷めたと述べています。

<2・安倍内閣時代の報道>

 (1)安倍内閣が成立してから、色々な中国人から日中関係がよくなるだろうという話を聞きました。安倍首相に対する中国国民の評価は、雑誌などで「右翼」などの表記も見られるものの、かなり良いのではないかと感じています。

 ただし、清華大学国際問題研究所対外関係予測チームによると、日中関係は改善されるが来年の初めでも相変わらず不和状態であると予測しています。このチームは、各国と@友好、A良好、B普通、C不和、D緊迫状態、E敵対のうちどのような関係なるかの予測を述べています。(ちなみに、アメリカとはB普通、ロシアとは@友好、フランスとは@友好、イギリスとはA良好、インドとはA良好となっています。フランスに対する評価は予想外でした。)

 

(2)複数の日本の政治家の、安倍内閣に対する評価などが各種雑誌に掲載されています。

例えば、《中国新闻周刊China Newsweek)》の2006925日号では、山崎拓衆議院議員が取材を受けています。肩書きは、自民党前副総裁となっています。「一般の」中国人がこの肩書きを見ると、山崎氏は日本の政治家の中でトップの一人であり、世論に大変影響力がある人だと思ってしまうのではないかと感じました。

その中で、彼は、「靖国神社の参拝を除いて、小泉氏は基本的に平和主義者だ。しかし、安倍氏はタカ派の理念の持ち主で、典型的な民族主義者だ。例えば、外交方面のスタンスでは、小泉氏は対話を、安倍氏は圧力を重視する。」、「安倍氏は、憲法改正を通じて軍事力を行使できるようにするかも知れない。」、「靖国神社問題解決のために、国立追悼施設を作るという案を安倍氏が受け入れるはずが無い」等と述べています。雑誌の内容等は、しっかり取材・調査をなされているものでした。それだけに、日本の政治家はもう少し言葉を選んで質問に答えた方がいいのではないかと思いました。

 

(3)いずれにせよ、日中の国際関係の改善が期待されているように感じているのですが、経済関係の将来についてはそんなに期待されているように感じません。私自身としては、共存共栄の経済関係が構築できないかと日々考えているだけに残念です。

雑誌の記事などで、安倍内閣の経済方面に関しては、「小泉氏と比べ、安倍氏は経済が分かっていない。」、「竹中平蔵氏のように経済を理解し、業界内に声望や影響力を持つ人を再び探すのは難しい。」、「安倍氏の言う<政経分離>という理論そのものは間違っていないが、彼が言うと何か違う感じがする。」、「財界で、安倍氏を支持する勢力は強大だ。(中略)その中でJR東日本の葛西会長は、中国に反感を持っている。」等と紹介されています。