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京大上海センターニュースレター
137号 20061130
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      「国際シンポジウム 近代上海像の再検討」のご案内

      中国・上海ニュース 11.20-11.26

『京都大学東アジア関連文献目録』上下の編集刊行について

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京都大学経済学研究科上海センタ−主催

「国際シンポジウム 近代上海像の再検討」のご案内

■主催 京都大学上海センター   ■共催 上海センター協力会

日時 2007121日(日)午前9〜午後6時

■会場 京大会館(京都市左京区吉田河原町15-9 電話075-751-8311

■プログラム

午前9時〜12時

◇張忠民(上海社会科学院) 「近代上海の都市総合競争力」

◇陳計堯(東海大学)  「近代上海食糧市場の変遷――米穀と小麦粉の比較研究 1900-1936──

堀和生(京都大学)  「上海の経済発展と日本帝国」

午後1時30分~6時

◇李培徳(香港大学)1920年代から1930年代まで上海銀行家の横領上海商業儲蓄銀行を事例として─」

◇蕭文嫻(大阪経済大学) 「中国幣制改革と外国銀行」

小瀬一(龍谷大学) 「開港場間貿易と中国の市場統合」

◇木越義則(京都大学) 「両大戦間期上海における貿易物価構造」

午後6時〜7時半 記念レセプション

■事務連絡先 606-8501 京都市左京区吉田本町 京都大学大学院経済学研究科  堀 和生    

       電話 075−753−3438 ファックス 075−753−3499

       e-mail      hori@econ.kyoto-u.ac.jp

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中国・上海ニュース 11.2011.26

ヘッドライン

                     中国:10月原油輸入量大幅減少 

                     中国:「外資系銀行管理条例実施細則」が発表

          中国:中国第3の「向家壩」水力発電所が27日着工

          エネルギー:中石油、トルクメン政府と天然ガス田を開発

          自動車:華晨「中華」、欧州へ15.8万台の輸出契約

          広東:1−10月GDP成長14.1

          チベット:中国最大規模の太陽光発電設備を擁す 

          北京:住宅価格、110月で累計8.4%上昇

          深圳:水不足に対応、海水淡水化施設2カ所を建設

          上海:GM社、初の外資系万博協力パートナー企業に

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『京都大学東アジア関連文献目録』上下の編集刊行について

経済学研究科教授 堀和生

 京都大学は中国の歴史文化研究においては世界的に著名であるが、東アジアに対する社会科学、とりわけ経済研究においても注目すべき伝統と遺産をもっている。ただし、後者の多くが戦前期日本の東アジア進出、植民地支配、戦争動員等と深く関わっていたために、戦後その伝統はあまり強調されることはなかった。今回、経済学部をはじめとして幾つかの学内図書室における東アジア関連文献の所在調査をおこない、総合目録を編集刊行したので、その事情を紹介したい。

京都大学は、日本における伝統ある国立大学と同じく、専門的な図書資料は各部局図書室が所蔵する分散的なシステムをとっている。それで、東アジア関係図書は、付属図書館をはじめ多くの部局図書室において所蔵されているが、次に述べるような事情によって、経済学部、農学部、人文科学研究所の図書室にまとまったコレクションが存在している。

 経済学部は1919年に創立された時から中国を中心とした東アジア経済研究に取り組んでいたが、日中戦争期以降その姿勢はいっそう強まった。1939年国策研究機関であった東亜研究所の委託研究を受け入れ、3年間にわたる支那経済慣行調査に取り組んだ。1940年学部に東亜経済研究所を付設し、機関誌『東亜経済論叢』を創刊した。そして、学部の全教官が中国・東アジア研究に取り組み、数多くの研究書・論文・資料集を刊行した。経済学部は満鉄調査部・東亜研究所と協力して中国研究の一翼を担い、当時現地で大量の資料を入手するとともに、自ら第一次資料の作成をおこなった。経済学部は支那経済慣行調査では、もっぱら文献調査を担当したことにより、中国文献の蓄積が特に進んだ。これら図書収集の成果として、経済学部編『支那農業に関する主要文献目録』等の目録全12巻を編集刊行するにいたっている(経済学部編『京都大学経済学部八十年史』1999年)。

 このような経緯によって、経済学部には膨大な東アジア経済関係図書のコレクションができあがった。学部図書室では、それは第15分類(移植民及び移植民地)としてまとめられている。その内容は、明治期以来の台湾、朝鮮、満州等の各植民地機関や民間が出版した資料・図書類と、戦時中に収集した中国関係の図書類が中心である。経済学部にはいまひとつ、調査資料室が管理している旧山本美越乃文庫と呼ばれているものがある。これは、山本美越乃教授の研究室にあった文献という意味であり、必ずしも山本氏の個人的収集によるものではない。第15分類の一部も混じっているが、支那経済慣行資料関係の未整理資料等も少なくない。今回私たちの取り組んだ目録作成作業では、これらはそのまま旧山本美越乃文庫として、暫定的な整理番号を振ってすべて掲載した。なお、経済学部では、戦前期東アジアに関する資料は、戦後に復刻されたものもこの第15分類に配架するようにしているので、目録でもそのまま収録した。

 農学部では農林経済学科図書室に、旧植民地関係についての膨大な図書資料が集積されていた。それらの収集の経緯は必ずしも明らかではないが、旧植民地機関からの直接寄贈によるものと、農林学科教授層が個人的に収集蓄積し後に学科図書室に寄贈した2つの経路があったようである。もっとも最後の時期に、大量の図書を寄贈された橋本傳左衛門教授の場合をみると、植民地機関の顧問として活躍した過程で多くの資料を入手したのだと思われる(橋本傳左衛門『農林経済の思い出』橋本先生長寿記念事業会 1973年)。これらの図書資料は久しく農林経済学科図書室が管理していたが、現在は農学部図書室に移管されている。なお、農学部の東アジア図書コレクションには、中国関係の図書も含まれているが、量的には台湾、朝鮮、満州の植民地に関するものが圧倒的に多い。私たちの今回編集した目録では植民地に関するものだけ収録しており、中国関係図書は含めていない。

 現在の人文科学研究所は、戦前の東方文化研究所、人文科学研究所及びドイツ文化研究所(後、西洋文化研究所)が1949年に合併して設立されたものである。そのうち、旧人文科学研究所は、京大の法経文農の4学部の協力のもと、1939年「東亜新秩序」建設に相応する研究をめざし設立された。東方文化研究所が中国歴史文化の研究を中心としていたのに対し、旧人文科学研究所は中国を中心とする近代東アジアの政治経済文化全般を対象としていた。そして、日本の国策目標が「東亜新秩序」確立から「大東亜共栄圏」建設へと推移する中で、人文科学研究所の研究対象は東アジア全域に広がり、多くの文献資料が収集された(人文科学研究所編『人文科学研究所50年史』1979年)。これらの旧人文研の資料は、3組織合併によって新人文研が発足した後も分散されることなく、旧人文研図書として別置されている。今回の目録に収録したのは、この旧人文研図書のうちで日本を除いたアジア関係の図書である(人文科学研究所編『和漢図書目録』1973年)。新人文科学研究所が発足以後に収集した図書は同じ図書室にあるが、今回の私たちの目録には収録していないことに注意されたい。

 今回調査した3つの部局図書室以外にも、京都大学のその他の部局図書室においても東アジア関連文献は存在するが、それらは今回の目録には含めていない。つまり、私たちの目録は、京都大学が所蔵する東アジア関係図書すべてを対象とする悉皆目録ではないことに注意していただきたい。

以上のように、この京都大学3部局の東アジア関連文献は、大部分が日本の植民地支配、大陸進出、戦争政策、等と密接に関連して蓄積されたものである。その意味では、近代日本史の否定的な側面と関わっていることは否定できない。しかし、今日の東アジア研究においては、これらの文献が貴重な学問的資料となることは疑いのないことである。私たちは、アジア全体の平和と繁栄を求める今日的な視点から、これらを使い新しいアジア研究に取り組む必要がある。

目録作成の直接的な経緯は次のようである。経済学部書庫には、上述のような未整理文献が多数存在しており、その整理は久しい懸案であった。経済学研究科上海センターは、京都大学における東アジア研究の成果と伝統を調査発掘することをめざしており、その一環としてこれら未整理文献の整理に取り組んだ。実際に整理作業を始めてみると、未整理資料は既整理ずみの第15分類の図書と合わせなければコレクションとしては意味がないということになり、経済学部書庫内の全東アジア図書の整理と目録作成へと進んだ。さらに、東アジア関連文献の整理と公表という観点からすると、京大内の残る2つの大きなコレクションである農学部図書室と旧人文科学研究所図書も同様な性格を持っているので、この際3コレクションの合同目録にしてはどうかということになった。幸いに、各部局関係者の賛意を得て、2年間の作業によって、ようやくこの目録を完成することができた。今回の目録では重複図書は除いており、その収録図書数は、経済学部 15分類10,530点、旧山本文庫1679点、農学部3,967点、人文研3,327点、合計19,503点である。この目録が今後京都大学と学界全体における東アジア研究の発展に多少とも貢献できれば、作成に携わったものとしてこれにまさる喜びはない。

 上海センターがこの目録の作成事業に取り組むにあたっては経済学研究科から物心両面で支援を受けたが、西村周三前研究科長、森棟公夫現研究科長、本山美彦教授、山本裕美教授からは格別の配慮をいただいた。農学部図書室職員大月健氏は貴重な入力データを提供してくださった。実際の整理作業は、アルバイタ-として多くの学生諸君の世話になった。以上の方々、及び作業の全般にわたりご協力くださった各図書室・調査資料室職員の皆様に深く感謝するしだいである。

 

追記 今回編集した『京都大学東アジア関連文献目録』上下巻は、対象を戦前期に限定した学術的な特殊目録である(約500頁)。もし希望される方が有れば、実費負担でおわけすることが可能である。