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京大上海センターニュースレター
第143号 2007年1月10日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
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「国際シンポジウム 近代上海史像の再検討」のご案内
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中国・上海ニュース 1.1-1.7
○ 華僑の女性観
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京都大学経済学研究科上海センタ−主催
「国際シンポジウム 近代上海史像の再検討」のご案内
■主催 京都大学上海センター ■共催 上海センター協力会
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■会場 京大会館(
■プログラム
午前9時〜12時
◇発表者 張忠民(上海社会科学院)「近代上海における都市の発展と都市総合競争力」
コメンテーター 金丸祐一(立命館大学)
◇発表者 陳計堯(東海大学)「近代上海食糧市場の変遷―米穀と小麦粉の比較研究1900-1936」
コメンテーター 城山智子(一橋大学)
◇発表者 堀和生(京都大学)「上海の経済発展と日本帝国」
コメンテーター 久保亨(信州大学)
午後1時30分~6時
◇発表者 李培徳(香港大学)「1920年代から1930年代まで上海銀行家の横領
─上海商業儲蓄銀行を事例として─」
コメンテーター 金丸祐一(立命館大学)
◇発表者 蕭文嫻(大阪経済大学)「中国幣制改革と外国銀行」
コメンテーター 城山智子(一橋大学)
◇発表者 小瀬一(龍谷大学)「開港場間貿易と中国の市場統合」
コメンテーター 古田和子(慶応大学)
◇発表者 木越義則(京都大学)「両大戦間期上海における貿易物価構造」
コメンテーター 久保亨(信州大学)
午後6時〜7時半記念レセプション
■事務連絡先 〒606-8501
電話 075−753−3438 ファックス 075−753−3499
e-mail
hori@econ.kyoto-u.ac.jp
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前々号で「日中友好経済懇話会」の「香港、広州、中山、佛山、深圳中国視察交流のご案内」を掲載しましたが、申し込み先の記載が抜けていました。今月末までの締切りで、「日中友好経済懇話会」事務局FAX 075-314-5323, TEL
075-314-5321までよろしくお願いします。
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中国・上海ニュース 1.1−1.7
ヘッドライン
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中国:金融引き締め継続、預金準備率引き上げ
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中国:1−11月鉄道貨物輸送が7%増、航空旅客15%増
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中国:高所得者の個人所得税の自主申告始まる
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中国:高速道路の総延長4.54万キロに
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石油:CNPC、石油生産に2500億元投資
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中国:06年技術導入契約金額220億ドル、過去最高
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広東:07年は交通網整備に485億元を投入
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北京:鉄道網拡充に向け、07年は4路線の建設に着工
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北京:インフルエンザ感染者 1日5千人超える
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上海:06年は16万組が結婚、3万7千組が離婚
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華僑の女性観
22.DEC.06
株式会社小島衣料社長 小島正憲
あるとき、取引中の香港華僑の会社の会長から晩餐に招かれた。豪華なレストランのきらびやかな部屋に入ると、大きく立派な円卓が用意してあった。その円卓の中央に80歳になる会長がどんと座り、彼は私を右隣りに座らせた。私は席に着き、おもむろに周囲を見回してみた。その円卓には30〜50歳代と思われる男性が7人座っていた。そのとき私には、なぜか彼らの顔が似通っているよう見え、不思議な感じがした。やがて宴会がはじまり、会長が順番にその男性たちを紹介してくれた。
「小島さんの右隣りは香港の夫人の長男のAで本社の社長。次は次男のBで財務担当。次は台湾の夫人の長男のCで情報部門。次は次男のDで繊維会社の社長。次はサイパンの夫人の長男のEで法律部門。次は次男のFで生産担当。次はフィリピンの夫人の長男のGで不動産会社の社長」
これを聞いて私は、彼らの顔が似通っているのに納得した。会長には夫人が4人いて、その子供つまり彼と血のつながった息子たちがここに同席していたわけだから、それは当然であった。宴がはじまると、彼らは私のもとにかわるがわる酒を注ぎにやってきた。また彼ら同士も快活に話し、楽しそうに酒を飲み、豪快に食べていた。彼らの間には兄弟げんかのような険悪なムードは微塵も感じられなかった。そのうちに会長が、私の皿に料理を取り分け、ニコニコ笑いながら、
「ところで小島さんは、奥さんを何人お持ちですか」
と問いかけてきた。突然の意外な質問に、私はびっくりして、思わず箸を落とすところだった。
「1人ですが‥‥」
私は口ごもりながらそう答えた。そのときちょうど次の息子が酒を注ぎに来たので、話はそこで終わった。
しばらくして会長が、今度はまじめな顔で、
「小島さんは、儒教の大学の中の≪修身斉家治国平天下≫という言葉の意味を知っていますか」
と話しかけてきた。今度は、私も得意気に、
「もちろん知っています。天下を治めるには、まず身を修めて、次に家庭を円満にして、次に国を治め、次に天下を治める、そのような順序に従わなければならないという意味です」
と答えた。すると会長は、その答えを予測していたかのように、目を細めて笑いながら、
「斉家のところの解釈が間違っています。斉家とは家をととのえるという言葉で、家の中にたくさんの妻妾やその子供たちが同居しており、その間をうまく取り仕切っていくという意味です。そしてそのような能力と力量を持った男が国を治めたときに、天下は平和となるという意味です」
と説明してくれた。私が半信半疑でいると、また次の息子が酒を持って挨拶に来た。このころには酒の影響と珍問答のせいで、私にはどの息子を見ても、同じ顔に見えて区別がつかなくなってしまっていた。
そのとき、また会長がぐっと顔を近づけ、
「小島さん、奥さんがたくさんいても、彼女たちが喧嘩しないようにするコツを教えましょうか」
と聞いてきた。頭が混乱していた私は、思わずそれにつりこまれ、素直にうなずいてしまった。
「まず奥さんたちの国を別々にすること。そして同じ言葉を話さないようにすること。そうすれば彼女たちが顔を合わせることもないし、もし会っても言葉が通じないので喧嘩にはなりません」
会長は私に、子供にさとすようにやさしくその方法を説明してくれた。私は感心し、人生で最高の教訓をいただいたような幸せな気分になった。そして会長の魅力の虜になった。つまり見事に彼の術中にはまってしまったのである。その後のビジネスが、彼のペースで進んだことは言うまでもない。
この教訓をいただいてから、かれこれ10年が過ぎた。残念ながら私は、いまだにその教訓を実地に活かすという機会には恵まれていない。最近、私は大沢昇氏が中国事情を書いた本を読んでいて、そこにおもしろい一文をみつけ、ひとりで大笑いしてしまった。そこには次のように記されていたからである。
≪「論語」や「孟子」などの儒教の経典には、セックスそのものを罪悪視する考えは見られない。いやそれどころか、儒教を信奉した一昔前の中国の紳士同士は、初めて会ったときにはこう挨拶したという。
「あなたは何人の奥さんをお持ちですか?」 これが礼儀だったのだ。
「いやひとりだけで‥‥」などと答えようものなら、よほどの変人か病弱の者と思われたという。≫
きっとあのとき、あの華僑の会長は、私のことを変人か病弱の者と思っていただろうし、私を子供のように御しやすい人物だと判断していたにちがいない。