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京大上海センターニュースレター
145号 2007124
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 1.15-1.21

○中国青海省及び青海民族学院のことなど

○研究会情報

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中国・上海ニュース .15−1.21

ヘッドライン

                     中国:金融工作会議招集、金融業が6大任務に直面

                     中国:年平均人口8万−1千万増、一人子政策強化

          国際:1−11月中国−アセアン貿易額が24%増の1452億米ドル

          中国:土地増値税の課税徹底、最高税率60%

          中国:12月の全国平均建物物件価格5.4%上昇

          投資:日本の対中投資額3割減

          中国: 07年、鉄道建設に2560億元投じる 

          上海:4日間日本ツアー、チャーター便利用で低料金実現

          北京:自動車の数、5月に3百万台突破か

          上海:06年GDP総額1兆296億元に達した

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中国青海省及び青海民族学院のことなど

京都大学上海センター協力会 副会長 大森經コ

  私は昨年7月と11月にご縁があって2度中国青海省の省都西寧市を訪れました。5年半前、西安交通大学留学中に初めて訪問して以来約5年振り、2度目、3度目の連続訪問でした。

7月の訪問は、青海省政府より招待され、元米国スタンフォード研究所(SRI)のパートナー(役員)をしていた友人と、北京の清華大学卒で京都の日本企業に勤務している中国人女性の3人で西寧市へ行き、そこで日本に10年以上留学され、名古屋の中京大学で、日本の商法の研究で法学博士号を取得された青海民族学院(大学)の王作全院長(学長)と親しくなり、請われて同学院の顧問に就任しました。

 そういう訳で今回は、青海省と青海民族学院のPRと、京大上海センター及び同協力会との交流状況等をご報告させて頂きます。

 2001年7月の初訪問は、丁度5年半前の2001年7月1日の中国共産党創立80周年の記念日を期して、西部大開発4大プロジェクトが同時着工された月に当たり、ここ青海省ではゴルムドからチベットのラサ迄約1,200qの青蔵鉄道の着工記念式典が西寧市の西約800qにあるゴルムド市で盛大に行われた。この状況を西安交通大学の留学生寮のテレビで見た直後の訪問でした。

 当時の発表では3年間で開通させるとのことであったが、結局5年かかり、2006年7月1日の開通となったものです。

 昨年7月の2度目の訪問は、丁度この青蔵鉄道の開通式典に合わせ、青海省西寧市で5年に1度の大きな経済貿易協力会議である青洽会(国際見本市+各種会合)に青海省政府より招待されたためでした。

 胡錦濤主席が来て開通式を行った直後であり、また夏の一番青海省がにぎわう時でもあり、盛大な青洽会で西寧市が多勢の来場者でわき返っていました。実際には青洽会の式典後、翌日からラサ行きの拠点であるゴムルドへ行きたかったのですが、開通直後で希望者が殺到しており、ホテルも帰りのチケットも日程確定が遅かったため省政府役人方の努力をもってしてもムリで、結局時間的制約もあり、こちらは来年か再来年にしようと断念せざるを得ませんでした。

 青海省は人口約530万人(内 省都西寧市約180万人)内漢民族55%、少数民族45%。

少数民族の中ではチベット族が最も多く約116万人22%、回族(イスラム系)約84万人16%、あとトウ族3.9%、サラ族1.9%、蒙古族1.7%、満州族が青海省の主要少数民族です。省都西寧市は標高2,200m、シルクロードの起点である西安から西方へ約800q、終点のカシュガル迄約4,000qで、このルートはシルクロードの南ルートと言われ、西の方は唐の昔玄奘三蔵がインドよりの帰途通った西域南道でもあります。昨年9月にはホータンからカシュガル迄この道を約550qバスで西行しましたが、道路わきの道程標識はこの西寧を起点として、西寧からのキロ数が3,600q、3,601q等々と1q毎に立っていたのが印象的でした。尚西寧―北京は約2,000q。ゴルムドをほぼ真北に上がると敦煌です。又西安―西寧―ラサ(チベット)迄の道は、唐の時代から唐蕃古道と言われ、唐の名君太宗李世民の公女文成公主がチベット王へ降嫁した時に通った道としても有名です。

 この今回開通した青蔵鉄道は現在北京からラサ迄約4,000q48時間毎日、成都から約3,400q約48時間隔日、西寧から約2,000q25時間隔日の他、蘭州、重慶から夫々隔日に列車が走っています。

 次に青海省の環境、資源、産業について簡単にふれておきます。

先ず草原が多く、牧畜業が盛んです。又、薬用、香料になる野生植物も多く、特にここの冬虫夏草は中国一の品質と言われていて有名です。その他拘杞、鹿茸、麝香等もとれます。鉱物資源も極めて豊富。塩湖が30余カ所もあり、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、マグネシウム塩などはいずれも確認埋蔵量で全国首位。鉛、金属銅、亜鉛、タングステン、錫、水銀等の非鉄金属類も多いです。

一方黄河上流の水力発電資源も青海省の大きな強味で、竜羊峡水力発電所、李家峡水力発電所が有名。この結果、電力多消費型の産業であるカリウム肥料工場、アルミニュウム生産工場、マグネシウム生産工場などが順調に稼動しています。

そのほか、鉄鉱石、石炭、石油、天然ガスも豊富。太陽熱、風力、地熱などのエネルギー資源も豊富。これらの結果、産業としては、資源開発型と生産型企業が全体の60%以上を占めています。その他は伝統的な牧畜業や軽工業、紡績業等です。

 これだけ非鉄資源を中心に、石炭、石油、天然ガス等の資源に恵まれていても、省の一人当たり年間GDPは7,277元(2003年)で全国31省、直轄市、自治区中20位の貧しい省に入っています。その人口は省全体で530万人で、西安市の人口約700万人より少ないです。ちなみにこの西安市の属する陝西省の省人口は約8000万人で、日本の総人口の6割位もあります。

この項の最後に青海省の観光資源についても簡単にご紹介しておきます。

青海省の有名な観光地としては、省名にもなっている青海湖があります。湖面は、海抜3,200m、中国最大の湖であり、塩水湖としても有名。周囲約360qで面積は琵琶湖の6倍。

ベストシーズンは夏で、7月の湖岸は一面菜の花の黄色で埋めつくされており、湖の青さ、藍色とのコントラストは素晴らしいです。途中の湖畔の草原で、羊や山羊やヤクの群れがのんびりと草をはんでいる景色は、のどかで心が安らぎます。

もう1つは西寧市の南西近郊にタール寺があります。チベット仏教ゲルク派六大寺院の1っで、その規模の大きさには圧倒されます。

更に、青海省には黄河や長江の源流があり、途中の上流の水のきれいな黄河を観るのも素晴らしいです。西寧市から一番近い黄河は西寧の南約100q強の貴徳市に行けば観れます。又、その貴徳市迄の景観もあちこちに絶景があります。西寧から30分も走ると拉鶏山を越えますが、ここが海抜3,820mで、周囲の山々は4,000 m以上。しかも3,820 mの峠を越えた辺りから海抜2,500m辺り迄は、緑の大草原で、ヤクや羊がのどかに草をはんでいる風景はこれまた素晴らしいです。 約1時間半で黄河に着きますが、その途中の山々もすごいです。 トルファンの火焔山の小型版の様な赤茶けた草木も1本もない山々もあり、結構楽しめる手頃なコースです。

このほか、中国西北地区の四大モスクの1つのイスラム寺院・東関清真大寺や北山の中腹にある北禅寺等もありますが、特に大きなものは以上の2っです。こう言った所へ、今回超ど級の観光資源=ゴルムドからラサ迄約1,200qの青蔵鉄道が加わりました。その結果、7月から10月頃迄、西寧市は多くの観光客で賑わいました。

 7月に訪問した際、青海省旅遊局の韓 王英副局長にもお会いし、いろいろ会話しましたが、同副局長の話では、ラサは標高3,650 mで日本の富士山の頂上に近い位の高さです。

又、そこ迄の途中の青蔵鉄道は1,000q近くが標高4,000m以上、最高は5,068mの唐古拉峠です。全体にこういう世界最高地を走る列車なので、空調は、航空機仕様にしてあります。それでもラサ到着後に高山病になる方もいますので、我々は先づここ海抜2,200mの西寧に来て、2〜3日身体を高地に慣れさせた上、ラサへ行かれることをお勧めしています。今迄でも慎重な方はそうされていましたよ、とのことでした。

 余談ですが、この韓副局長は、50才前後の品のいい女性でしたが、私が5年前に1年間西安交通大学に語学留学していた、と話すと、私も西安交通大の工学部の卒業生です。従って、大森先生は校友(同窓生)だ、と言って非常に喜び、親しくいろいろ話して下さいました。

 青海省及び西寧の観光案内、PRがやや長くなりましたので、この話はここで打ちきらせて頂きます。

 最後に昨年11月に京大上海センター長の山本裕美教授及び宮崎卓助教授ほかの皆さんと合計5人で西寧市の青海民族学院を往訪し、経済学部の教授、助教授方との交流会及び経済講演会を実施しましたので、その模様を簡単に報告しておきます。

その前に、青海民族学院のご紹介をしておきます。

 青海民族学院は194912月に創立された中国で最も古い民族大学です。現在、学部生を筆頭に大学院生、短大生、予科生、留学生など総勢8144名の学生が在学しており、充実した教育活動が行われています。また学生の約8割はチベット族、モンゴル族、回族、土族、サラ族などの少数民族の人々で占められています。指導には1013名の教員や専任講師の先生があたっております。

 青海民族学院は文学・理数学・管理学・法学・経済学・歴史学などの6つのジャンル、そして15の学部と51の専攻から成り立っている大規模な総合大学であります。とりわけ、チベット言語文学部は他の民族大学のなかでも評判の高い学部であり、国内ないし国際的に見ても有名な学者や専門家が在籍しております。またこの研究分野は、他の大学にはない大学院の博士課程が設置されており、チベット言語文学の研究に力を注いでいます。

 先に述べました様に私は現在この青海民族学院(大学)の顧問をしています。その関係で、昨年11月に京大上海センター長の山本教授、同宮崎助教授ほか5名で青海省西寧市の同学院を訪問、経済学部の教授方約20名の皆さんと交流を持ちました。この交流会及びその後の王作全院長との懇談の中で、現在、青海省と日本政府の間で円借款の合意が出来ているから、その範囲内での教授、助教授方との交流は可能で、その資金を活用した交流や、その他の教授間交流を今後続けていこう、ということになりました。

 青海省は中国西部の小さな省でもあり、青海民族学院経済学部の教授、助教授方も、欧米や日本へ留学や出張された方はそう多くないので、院長としては、これを機に京大経済学部その他の日本の大学との交流を積極的に進めたいので、よろしく支援願いたい、とのご依頼を受けました。今後、いろいろ交流が活発になって来るものと思われます。

 同時に、同学院と青海省社会科学院主催、京大上海センター共催、同協力会後援の「日中経済理論学術報告会」に、山本教授、宮崎助教授と共に参加、講演をして来ました。講演会は、山本教授、大森、宮崎助教授の順に3人で合計3時間30分。山本ゼミの博士課程の院生、中国人の劉さんの通訳で行いました。

山本センター長の演題は「中国経済改革の進化」でした。

宮崎助教授の演題は「対中経済協力(ODA援助)の歴史と展望」でした。

私の講演の概要は、一昨年5月に中国瀋陽の日本国総領事館で提言し、その多くが昨年3月の中国の第11次5ヵ年長期計画に盛り込まれた25項目の提言に加え、今回新たに「中国の貧富の格差解消の為の各種税制改革―大森私案」を発表。累進課税の強化や相続税、贈与税の新設等を提言して来ました。(こちらは2006.12.14付上海センターニュースレター第139号に掲載済)

 この講演会の聴衆は約600名で、大講堂が満席でしたが、青海省の共産党委員会幹部をはじめ、政府、社会科学院、発展改革委員会、青海大学等他大学の教授方、企業経営者、新聞記者等約150名、残りは学生で、青海省の識者多数が出席して下さり、京大上海センターのいいPRと充実した日中交流が出来ましたことを喜んでいる次第です。

 尚この2日前には、私が定年退職後1年間語学留学していた西部地区No.1の大学である西安交通大学で交流会を行いました。この結果、今後の交流の継続と、今年7月に予定している京大上海センターの国際シンポジウム「西部大開発の進展と中国内陸部の経済発展(仮称)」に講師の派遣を要請、快諾を得ました。この西安交通大学との交流開始は、尾池総長、西村副学長から依頼を受けていた案件でもあります。(この交流会の模様は2006.12.21付上海センターニュースレター第140号で宮崎卓助教授より報告済)

 結局、私は西安留学以来この5年半で、全中国の省、直轄市、自治区計32の内30地区を回り、中国内視察総距離は遂に10万qを突破、地球2周半以上となり、あとはチベットと江西省を残すのみとなりました。

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研究会情報

 国際アジア共同体学会関西部会から研究会情報が送られて来ました。センター運営委員会の議を経て情報としてお知らせします。ご関心の方は参加ください。

日時 2007223()13:30-17:00

会場 京都大学法経総合研究棟3311教室

(http://www.kyoto-u.ac.jp/access/kmap/map6r_y.htm#map参照)

第一報告 谷口弘行(神戸学院大学アジア太平洋研究センター長)

「日中韓の現在の問題点と今後の展望」

第二報告 大西 広(京都大学経済学研究科教授)

     「北朝鮮経済の現状について-昨夏の訪問調査報告-