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京大上海センターニュースレター
第146号 2007年2月1日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
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中国・上海ニュース 1.22-1.28
○中国の大学における日本人と中国人の交流
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中国・上海ニュース 1.22−1.28
ヘッドライン
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中国:中央農業問題担当者、土地私有化の可能性を否定
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国家発改委:07年は経済引き締めを強化する必要がある
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中国:粗鋼生産量4億トンを突破
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中国:機械産業初の貿易黒字
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貿易:06年大陸部と台湾の貿易額、初の1千億米ドル超
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中国:06年発電容量32%増、使用量14%増
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中国:新幹線式「弾丸」列車が、28日朝運行開始
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上海:金融機関の不良債権率が2.51%に低下
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上海:フグ食の試験地区になる
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北京:高所得者の個人所得税の自主申告、1万人に止まる
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中国の大学における日本人と中国人の交流
株式会社大協 企画室
中国・南開大学大学院経済学研究科 古森崇史
(1)日本語学部の生徒との交流
日本と中国の経済関係は年々緊密になりつつありますが、それと同時に中国における日本人留学生も年々増加し、日中の学生の間でいわゆる「草の根交流」が活発に行われています。
中国にいる日本人留学生のうち90%以上が、(たいてい外国人専用の)中国語学部で学び、その中の何割かの学生が日本語を勉強している中国人とお互いに一時間ずつ会話を練習する「相互学習」という勉強法を行っています。
毎週定期的に一緒に勉強していると、自然と仲が良くなり、色々な事について話し合ったりするようになります。文化等様々な面で異なる事に気付いたり、今まで気付かなかった中国人の考え方が分かったりして驚く事も多くあります。いずれにせよ、中国における最近の日本語ブームのおかげで、日本人の学生は、中国人の学生と知り合う機会が多く大変恵まれていると思います。
留学生の中で一番多い韓国人は、日本人のように中国人と一緒に勉強する機会は多くありません。なぜなら、中国で韓国語学部は少ないですし、韓国企業への就職もあまり人気は無いからです。(人気は、@欧米企業・中国の国家公務員、A日本企業、B中国企業、C韓国企業の順番です。)
以前天津外国語大学中国語学部で勉強していた頃、私も毎日夜2時間様々な学生と相互学習をしていました。大変多くの学生が日本への留学を希望しており、実際に大変多くの中国人学生に、日本の大学に送る書類の訂正などを頼まれました。彼らの文章を読んで感じた事は、とにかく日本に行きたいという熱意を感じる文章が多いという事でした。
ただし、私は相互学習を最後までし続けましたが、なぜか多くの人が途中で相互学習をやめていました。私の見る限り、中国人が時間を守らない等のケースはほとんど無く、日本人が時間を守らなかったり、突然会いに行かなくなったりするケースが多いような気がしました。大変残念だと思いました。
また、相互学習をする相手がいない中国人学生の中には、とにかく日本人と話をしたいという事で、(外国人専用の)中国語学部の教室の外に休み時間等にわざわざ来る学生も多くいました。
それから、朝6時半位から大変多くの学生がキャンパスの至る所で、毎日日本語の教科書を音読していました。
さらに、ある日本語学部の学生は、6000元(当時7万5千円位)の学費が準備できず困っていました。その学生は、大変真面目で性格も良く、成績なども良い人物でした。みんなで何とかしたいという事で、中国人学生・留学生などが少しずつお金を出し合って学費を用意しました。その時の、その学生の嬉しそうな姿は忘れる事ができません。
このように、一生懸命日本語を勉強し、日本に留学する事を希望する人達を見て、「中国人にとって日本は憧れの国なんだなぁ。」と感じていました。
(2)日本語学部以外の生徒との交流
私は、現在南開大学経済学院の大学院生ですが、経済学院の大学院に在籍する外国人は大変少なく、私の入学した年には修士課程には私と韓国人1人(それと短期で帰国したモンゴル人1人)、博士課程にはベトナム人1人しか入学しませんでした。そのため、一年目大学側が私に用意した寮は、中国人と全く同じ建物の中の一室でした。留学生が中国人学生と同じ寮に住む事は普通考えられないので大変驚きました。しかし、その分色々な中国人学生と知り合う事が出来ました。(ただし、週末等はマンションに帰っていました。)
経済学院で中国人学生と交流していて感じる事は、もちろん生活面や学習面などで色々と手助けをしてくれますが、「日本人」という理由で特別に扱われるという事はあまり無いということです。私は、大学院に入学してすぐに相互学習する相手を、クラスメートの中から見つけ、勉強を開始しましたが、日本語は難しすぎるといって、簡単にあきらめてしまいました。結局クラスメート達が協力して探してくれて、南開大学の日本語学部と経済学部を両方卒業した金融学専攻の学生等と相互学習する事が出来ました。この時みんなに、「もしあなたがアメリカ人だったら、今すぐにでも一緒に勉強したいけど、みんな日本語を勉強する興味も時間もないからなぁ。」と何度も言われました。
また、日本の企業に興味あるかと聞いてもあまり興味は無く、学生の目は欧米の企業か、中国の国家公務員になる事等に向いています。日本経済へのイメージも、「確かに現在は先進国で経済水準などは高いけど、これから上昇するかどうかは不明。」等と否定的な感じです。
実際、多くのクラスメートがアメリカ等の大学の博士課程に進学しようとTOEFL,GRE等の試験に参加しています。TOEFLは、中国では一回参加するのに大卒の初任給以上の1200元(18,000円位)かかるため、本当に一生懸命勉強しています。執念のような物さえ感じる事があります。そのためか、TOEFLのスコアが650以上という学生も多く存在します。
大学側も、それを意識してか海外で博士号を取った教授等に授業を全部英語で行う科目を開講させています。また、中国政府としても、2005年末世界各国に93.34万人存在する中国人留学生、および20万人以上の海外留学からの帰国者に祖国への貢献を期待しているようで、各種の政策等を打ち出しています。
具体的には、@新たに国家派遣の留学ブームを巻き起こし、現在よりさらに高レベルな大学・学術機構で研究・仕事をさせる、A国家発展のために極めて不足している分野(情報・農業・生命科学・健康・エネルギー・環境・上級通訳等)の人材の育成等に力を入れる、B西部地区の発展に有利になるような留学の選抜をする、C優秀な若い大学の教師に海外での研修をさらに支持する、D優秀な自費留学生のための奨学金制度等の設立を行う、E自費留学のためのアドバイス・サービス等をさらに充実させる等です。
なお、<青年参考>2006年10月27日号によりますと、すでに海外留学を終えた者の内、92.8%は海外の国籍を取得しておらず、海外国籍もしくは永久居住権の取得を重要と思う人は40.1%という事です。さらに、現在海外に留学している留学生のうち、留学している事について26.7%は光栄と感じ、13.4%は反感を感じ、59.9%はどっちでもよい・特に考えは無いと答えています。(反感を感じているのがどのような人なのかについては、大変気になる問題であります。)
中国語学部に留学した日本人学生は、前述したように中国では日本語を勉強する人が急増中ですし、日本語学部の学生等が日本人を特別に扱ってくれるので、それが当たり前と思ってしまうかもしれません。しかし、中国で日本に興味を持って日本語を勉強している人はまだ少数ですし、中国にとって日本は、世界の中で「存在感がある国」の一つに過ぎないのです。ですから、日本語学部の生徒等が日本人を特別に扱ってくれたりする事はありますが、それは中国では例外的な事なのだと思います。
それだけに、中国で我々一般の日本人留学生は中国人との「草の根交流」をさらに活発にして行く事が必要だと思いますし、日本に留学している「正規の」中国人留学生には是非とも日本を好きになってもらいたいと思います。