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京大上海センターニュースレター
147号 200727
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 1.29-2.4

○中国鉄鋼産業における再編の動きについて

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中国・上海ニュース .29−2.

ヘッドライン

                     中国:ザンビアに初のアフリカ経済貿易協力パークを設立

                     中国:06年加工貿易額8000億米ドル超、黒字1900億米ドル

          中国:経済発達地域に高い土地使用税率を適用

          中国:06年鉄鋼業純利益が過去最高

          鉄道:西部を貫く蘭州−重慶鉄道が年内着工

          自動車:完成車、44.1億米ドルの輸入超過

          自動車:上海GM、奇端汽車、1月乗用車販売台数1,2

          上海:外国人留学生に政府奨学金制度を創設

          上海:暖冬一段と、最高気温が23.4度に

          北京:外国人の不動産購入を制限 

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中国鉄鋼産業における再編の動きについて

            京都大学大学院学生 韓光燦

中国鉄鋼産業の集中度について

出所:『中国鋼鉄工業年鑑』各年版。

 図が示すように、ここ数年、中国の鉄鋼産業の上位4社集中度は継続的低下の傾向を示している。産業の集中状況を示す上位4社集中度は、1999年の31%から2004年には18.52%まで大きく低下している。これは、日本と欧米などの鉄鋼先進国での産業の寡占化の流れとはちょうど逆ともいえよう。

 

中国鉄鋼産業の再編

 20058月、粗鋼生産量において中国の国内第2位の鞍鋼(鞍山鋼鉄集団)と第5位の本鋼(本渓鋼鉄集団)は正式に経営統合し、粗鋼生産能力2000万トン、総売上高1000億元の巨大一貫製鉄メーカーが誕生した。新会社鞍本集団は、2010年までの積極的な設備投資を通じて、粗鋼生産量3000万トンを実現し、世界のベスト500企業へのランク入りを目指している。そして、20068月、粗鋼生産量第6位と第7位の済南鋼鉄集団と莱芜鋼鉄集団が経営統合に向けての原則的な合意達成を発表した。もし、統合が実現すれば、鞍本集団と並ぶ巨大メーカーがまた誕生することになる。

鞍鋼と本鋼の経営統合以外、近年、政府主導の産業再編は加速化している。例えば、宝鋼の上海地区の鉄鋼企業の吸収、邯郸鋼鉄と舞陽鋼鉄の合併、攀鋼と成都シームレスパイプの合併、重慶鋼鉄と重慶特殊鋼の合併、東北の特殊鋼メーカー3社(大連、撫順、北満)の経営統合による東北特殊鋼集団の誕生等が挙げられる。

こうした近年の統合の背景には、まず、中国の鉄鋼産業の産業再編政策が挙げられる。周知のとおり、中国の鉄鋼産業の国際競争力は低く、規模の経済性が低い。WTO加盟後、市場の全面開放を迫られている中国にとっては、上の図が示すように、鉄鋼先進国と比べて大きく遅れている産業の寡占化を押し進めるのが急務であると考えられる。「冶金工業第105ヵ年企画」では、中国全土を東北、華北、華東、中南、西部の5つの地区に分け、今後数年間にこれらの地区の国有鉄鋼企業を鞍鋼、首鋼、宝鋼、武鋼、攀鋼を中核とする5つの国際的な競争力を持つ巨大企業集団に再編する方針を打ち出した。

次に、中国の鉄鋼企業の立地分布の歴史的要因ともいえる「三大、五中、十八小」の是正が挙げられよう。(「三大、五中、十八小」とは、中国の冶金工業部が1950年代に打ち出した鉄鋼発展戦略を指す。三大とは、鞍鋼、武鋼、包鋼という三大鉄鋼企業を指す。五中とは、五つの省に中型の鉄鋼企業を建設することを指す。十八小とは、その他の十八の省にそれぞれ小型の鉄鋼企業を建設することを指す。いわば、鉄鋼産業のブロック供給体制を確立する指針ともいえよう。)要するに、歴史的要因によって、全国展開ができてない中国メーカーにとって、広大な中国での輸送コストや地域ブロック供給体制の歴史的経緯を考慮すれば、中国の実情を踏まえた再編戦略ともいえよう。

そして、世界の鉄鋼産業はグローバル再編の動き(日本でのJFEの誕生、ヨーロッパでのミタルとアルセロールの合併)が加速化しており、既に「二つの市場、二種の資源」(国内外の市場と資源)の戦略を掲げている中国鉄鋼産業の世界進出への布石の一環とも考えられよう。つまり、国内市場での熾烈な市場シェア競争における当面の生き残りのための延命策だけではなく、近い将来必至ともいわれる過剰供給能力の打開策の一環ともいえよう。