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京大上海センターニュースレター
148号 2007215
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 2.5-2.11

○日中学長会議─第1回日中大学学術フォーラムに参加して

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中国・上海ニュース .5−2.11

ヘッドライン

                     中国:1月対外貿易総額30.5%増、黒字64.7%増

                     中国:国レベルの腐敗防止専門機関設置へ

          中国:1月CPIは2.2%上昇

          中国:ステンレス生産量が世界一、輸出も激増

          中国:杭州・成都・大連、観光都市トップ3

          上海:06年の1人当たりのGDP、7千ドルを突破

          上海:06年の不動産価格が前年より3.2%下降

          上海:外国人留学生、3万人を突破

          上海:外資の不動産市場への流入を抑制

          広東:偽造通貨の全国9割が広東製

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日中学長会議─第1回日中大学学術フォーラムに参加して

上海センター運営委員・助教授 宮ア 卓

中国の北京大学、復旦大学、日本の慶応大学および本学の4校の提案により、昨年128、9の両日にわたり、上海復旦大学において、「イニシアティブとパートナーシップ─21世紀における日中両国大学の使命─」とのテーマによる標記学術フォーラムが開催されました。

日中学長会議は200010月に第1回が開催されて以来、これまでに4回にわたり開催され、日中の大学間の協力をめぐり、積極的な交流の場となってきましたが、今回のフォーラムは、この学長会議の枠組みの下、20065月に西安で開催された第4回日中学長会議で合意された内容に基づき、双方の大学の研究者間においても、関心の共通する分野における交流を促進すべく開催されたものです。

上記4校の提案校を含め、両国の主要な27大学からの代表(学長・副学長及び各専門分野の研究者)が参加しました。提案校以外の参加大学は以下のとおりです。

日本側(五十音順):

大阪大学、九州大学、神戸大学、筑波大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、広島大学、北海道大学、立命館大学、早稲田大学

中国側(中国語発音表記順):
北京航空航天大学、東北大学、吉林大学、南京大学、南開大学、清華大学、上海交通大学、武漢大学、西安交通大学、新疆大学、浙江大学、中国科学技術大学

本学からは尾池総長、西村理事、遠藤国際交流課長が参加されたほか、当上海センターを代表し、筆者が参加いたしました。会場となった復旦大学側の窓口は当上海センターのカウンターパートでもある日本研究中心であり、今回の学術フォーラムの協力の枠組の下で復旦側との関係をより一層緊密化するとともに、フォーラム参加諸大学、特に中国側の諸大学とのチャンネルを広げることに努めて参りました。

本フォーラムにおいては、はじめに提案校4校の代表より基調スピーチがなされ、それを受け、学長円卓会議、および二つの分科会に分かれる形で討論が進行しました。

1.                          基調報告(提案校4校の学長:中国語発音表記順。なお以下役職については本フォーラム席上配布資料に従い、適宜中文和訳の上表記。)

北京大学 許智宏学長

復旦大学 王生洪学長

京都大学 尾池和夫総長

慶應義塾大学 安西祐一郎塾長

本基調報告においては、冒頭本学尾池総長から、世界が直面する共通の課題についての説明、これに対する日中の大学の、漢字文化を共有の基礎とした、西洋と東洋との融合のリード及び漢字をもちいた自然科学の先端的知識の広範な層への普及といった面での協力の必要性を訴えました。

北京大学の許学長からは、同大学の日本を含めた国際的な交流の現況、及び今後文化交流の共同体を大学間で形成していくべき、といった今後の戦略につき紹介がありました。

安西塾長からは、慶應義塾大学と中国との広範な面にわたる協力実績、および今後の展望につき紹介があり、最後に復旦大学の王学長からは、両国間の歴史、およびアジアにおける二つの大国としての役割を踏まえ、大学から知の発信をすべきとの提案がなされました。

2.                        学長円卓会議

上記基調報告者に加え、他参加校から以下の代表が参加しました。
(中国語発音表記順)

大阪大学 鈴木直 副学長、東北大学(日本) 大西仁 副学長

東北大学(中国) 姜茂発 副学長、立命館大学 長田豊臣 学長

名古屋大学 山本進一 理事、南京大学 張栄 副学長

上海交通大学 陳剛 副学長、神戸大学 野上智行 学長

武漢大学 呉俊培 副学長、西安交通大学 徐宗本 副学長

新疆大学 塔西甫拉提・特依拝 副学長、筑波大学 泉紳一郎 副学長

早稲田大学 江夏健一 副学長、中国科学技術大学 朱清時 学長

この学長円卓会議での議論を踏まえ、また総括の会議を経て「日中大学学長フォーラム第一回学術シンポジウム共同宣言」が参加各校間で共有されることとなりました。その内容につきましては後述します。

3.                        第一分科会:知的創造とアジア太平洋地域の経済繁栄

司会: 浙江大学 胡建E副学長、復旦大学 蔡達峰副学長

発表者および発表内容

復旦大学 熊慶年教授「地域協力の推進と知的創造の促進」

東京大学 村沢義久教授「アジア太平洋地域の持続的発展と『課題先進国』日本の役割」

広島大学 吹春俊隆教授「イノベーションと利潤:経済学的シミュレーション」

北京大学 鮑威講師「高等教育の大衆化への道−中日比較の視点から」

東北大学(日本) 佃良彦教授「東アジアの経済発展と地域経済協力」

大阪大学 末永敏和教授「東アジア経済共同体の建設と大学および法学・政治学の役割─現代的東アジア版ローマ法の構築とアジア法政大学院コンソーシアムの創設」

浙江大学 徐小洲教授「大学の創造力の形成およびそれに対する評価システム」

西安交通大学 蔡虹教授「国際的技術の波及および中国の経済成長」

東北大学(中国) 陳凡教授、馬会端教授「中国におけるSTS教育およびそのモデルの形成

神戸大学 真山滋志副学長「神戸大学における国際交流活動の概要とアジア太平洋地域における国際連携教育について」

大阪大学 村川栄一教授「アジア発『生産技術革新を目指した溶接シミュレーションソフト』の開発」

東北大学(中国) 庄新田教授「知識・技術・金融制度の革新に対する研究と展望」

〜以下、上記報告を受けた自由討論〜

4.                        第二分科会:21世紀の日中友好における大学の使命と役割

司会:清華大学 謝維和 副学長 復旦大学 燕爽 副学長

慶応大学 国分良成教授「日中関係と大学」(席上配布資料にタイトル明記なし。内容に基づき記載)

復旦大学 林尚立教授「中日協力と大学教育」

京都大学 西村周三理事・副学長「日中友好における大学の使命と役割」

南開大学 宋志勇教授「国際化時代における中日の大学の交流と連携」

東北大学(日本) 大西仁副学長「グローバリゼーションと排他的ナショナリズムの時代における大学の役割と使命─日中間の安定的信頼関係の構築を目指して」

吉林大学 李暁教授「『経済主義』時代における中日関係」

名古屋大学 山本進一理事「国際連携ネットワーク活用によるワールドクラスの大学をめざして」

中国科学技術大学 楊傑教授「21世紀における中国一流大学の新しい使命」

筑波大学 永木正和教授「適正技術の確立による『底上げ型』農村開発─我われ(筑波大学大学院・生命環境科学研究科)のチャレンジ─」

吉林大学 李玉潭教授「北東アジア地域協力における大学と学者の役割─吉林大学東亜研究院を例として」

北京大学 梁雲祥教授「中日学術交流及び中日関係」

九州大学 国吉澄夫教授「アジア新時代における日中産業連携と大学の役割」

北京航空航天大学 張海英教授「21世紀中日関係における大学の役割と使命について─北京航空航天大学中仏エンジニア学院を例として」

北海道大学 鈴木賢学長補佐・北京事務所代表「日中関係強化・安定化に果たす大学の役割と課題」

〜以下、上記報告を受けた自由討論〜

上記報告者のなかでも、本学西村理事・副学長からは、日中の留学生交換の実態、すなわち中国にとって日本は重要な留学先であるが日本にとっては目下中国は主たる留学先とはなっていないという点、及び中国留学生の日本での受け入れは人文、社会系に偏っており理科系が少ないという点につき指摘があり、今後の改善の必要性につき報告がなされました。

以上、二つの分科会における各大学代表からの報告内容はテーマも広範にわたっており、紙数の関係で議論の内容をつぶさにご報告することはできませんが、限られた時間の中で活発な意見交換がなされ、学長円卓会議と分科会全体の結果を踏まえ、フォーラムの最後に参加大学間で共同提案書が提出されました。主要内容は以下のとおりです。

1、            学生間の幅広い交流を積極的に支援する。

2、            学生交流を日中学長フォーラムの枠組みに入れることを検討する。(フォーラムにおける学生交流セッションの設置など)

3、            日中の大学の研究者間における、東アジア関係と日中関係をめぐる各種の共同研究やセミナーの開催などを積極的に推進

今回参加した中国側大学は、いずれも中国において重視されている有力大学であり、211工程(10年以上の期間を通して、一部の大学と学科において教育・研究・管理レベルとも国内先進レベルに到達させ、また更に一部の大学と重点学科については世界先進レベルに到達させるべく、100校の大学の建設及びいくつかの重点学科の形成を支援するもの。)及び985工程(199854日、江沢民が北京大学創立100周年大会で、「現代化の実現のため、中国は世界先進レベルの一流大学を持つべき」と提言、これを受け、教育部が世界一流の大学とハイレベルの大学を目指す一部の大学を重点的に支援することとなった。)の対象校が多く見られます。両工程の経緯、概要および関係については、たとえば北京大学教育学院陳学飛教授による紹介http://www.he.u-tokyo.ac.jp/pdf/CRDHEWP2PP.pdfなどを参照)

共同宣言の内容からも伺われるとおり、今後日中間の大学交流は、学長会議及び本フォーラムの枠組みの下、大学組織、学生といった広範なレベルで一層の進展を見せていくものと思われます。

今回筆者(宮崎)が参加させていただきましたが、吉林大学、上海財経大学、西安交通大学などの研究者で当上海センターの活動につきご存知の方より、今後学術面などでの交流を深めたいとのご提案をいくつもいただきました。

一方、中国国内における支援が上記有力校に比べ十分な中国の内陸部の大学との交流につきましては、筆者がかつて国際協力銀行(JBIC)において担当しておりました、ODA円借款による支援を得ることができます。
(詳細については、http://www.cj-hrd.jp/jp/index.htmlを参照)

当上海センターとしましても、京都大学と、有力校及び今後のポテンシャルを秘めているその他の内陸の諸大学を含む幅広い層の中国の大学・研究機関と、学術上及び教育上など広範な面における関係促進に向け、一段と尽力していきたいと考えております。

※なお本フォーラムにつきましては京都大学サイト(129日付)にて簡単な紹介がなされています。http://www.kyoto-u.ac.jp/cgi_build/back_number/topics.htm