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京大上海センターニュースレター
150号 2007229
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 2.19-2.25

○なぜ、中国発ウィルスが多いのか?

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中国・上海ニュース .19−2.25

ヘッドライン

                     中国全人代:『就業促進法』草案を審議

                     中国1月貿易総額が前年同期比30.5%増 

          中国:マイカー所有数2千万台を突破

          中国:07年春節大型連休消費額、前年同期比15%増

          長江デルタ:16都市GDP、全国の18,9%を占める

          上海:地下鉄3路線、年内完成を予定

          上海:中国初の海上風力発電所の建設開始 

          上海:春節に海外旅行に出かけた市民が4年前より4割以上増加

          山東:今後5年間で海水の淡水化事業に36億元を投入

          新疆:砂嵐で列車転覆、4人死亡

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なぜ、中国発ウィルスが多いのか?

25.FEB.07   小島衣料社長小島正憲

注:今回提起するのは、鳥インフルエンザなどのウィルスではなく、インターネット上のウィルスのことである。

最近、わが社の日本の本社のパソコンに、相次いで中国から大量のウィルスが入ってくる。情報通信担当がその駆除に追われている。それらは中国の各会社から送信されてくる無数のメールに貼りついてくるので、本社の社員に注意させていてもすりぬけてしまう。日本の本社での事後対応だけでは、このウィルスを撲滅することはできない。つまり発信源の中国の各会社の管理体制を厳重にするしかない。そう考えて私は、わが社の情報通信担当と共に、中国に入り、各関連会社の通信部門を徹底的に調査し、監督してみた。するとそこで、いろいろとおもしろいことがわかってきた。

中国の関連各社を回ってまずわかったことは、普通の中国人事務員が会社の日本語環境のパソコンに、勝手に自分の中国語版ソフトをインストールして、中国のウェブに入って行くので、想定外のトラブルに巻き込まれているという実状だった。そのような状況に陥った場合、たいてい彼らは慌ててそれを修復しようとしていじりまわし、その結果、さらに迷路に入り込み、最後にはお手上げになってしまう。はなはだしい場合はパソコンのハード部分まで損傷させてしまう。私はさっそくそれらに対して罰則規定をともなう厳重な規制を作った。このように管理しなければ、この部門は無法地帯となってしまうからである。このような体制を作ってみて、私はふと、中国人は日本人に比べて、はるかにパソコンについて詳しいのではないかと思った。

1カ月ほど前、私は所用で自動車の運転手の控え室に入った。そこでわが社の運転手のやっていることを見てびっくりした。彼が一生懸命パソコンの組み立てをしていたからである。彼がパソコンに興味を持ち、教室に通い始めたのは知っていた。しかしまさかパソコンを組み立てはじめるとは思っていなかった。彼に聞いてみると、教室の仲間は老いも若きも男も女も、みんなパソコンを組み立てに熱中しているという。それを聞いて私は、中国のパソコン教室は日本のそれとは講義内容がかなり違うのではないかと思った。そこで次の機会に、彼について教室へ参観に行ってみた。

中国の巷のパソコン教室では、1回2時間・週2回・半年コースで、1000元(15,000円)の一括払いが相場なようで、その講義内容はコンピューターの歴史からはじまって、パソコンの原理、組み立て方などを教え、驚いたことに違法コピーのソフトをインストールすると安価で済むということを堂々と教えている。さらにネットワークの設定、ウィルスに対する詳しい情報、修理や保守などまで、懇切丁寧に教えている。日本ではパソコンの組み立てなどは大学の情報工学科などで教える内容である。ましてや違法コピーなどは、巷のパソコン教室でもそれを行わないように教えるし、もともと日本のユーザーは善良な人が多く、自ら違法なことに手を染めようとする人は少ない。ところが中国では、巷の教室で違法なことを当たり前のように教えている。なぜ中国では巷のパソコン教室が組み立てや違法コピーの使い方まで教えるのか。それには以下のような事情がある。

中国人は、ソフトはほとんど偽物を使う。したがって自分で本体を組み立ててしまえば、ウィンドウズなどのソフトは20元(300円)ぐらいで手に入るので、本当に安くつく。日本でも、パソコンの好きなマニアは自分で組み立てるが、マニアだから性能優先でコストをかけて作る。そしてソフトは正規版を使う。一般人も違法なことはせず、最初からウインドウズなどが正規にインストールされたものを購入する。したがって組み立てまで勉強する必要はない。中国人は、とにかく金額を安くということを考えるので、パソコンを自分で組み立て、違法コピーソフトを平気で使う。だから、パソコン教室ではそれを教える。教えない教室には、生徒が集まらない。つまりこのような仕組みが、にわかIT技術者の大量供給の背景としてできあがっているのである。

さらに日本では若者の主要な通信手段が携帯電話になっているのだが、中国ではお金の節約のために、会社のパソコンを私物化し、それを個人的な通信の手段にしていることが多い。休憩時間など管理者のいない時間を狙って、いろいろなものをインストールして勝手に使用しているというのが現状である。また、違法サイトから音楽を入手して、自分の手持ちのプレイヤーに入れているのをよくみかける。これらにくっついてウィルスが飛び交っているのである。

インターネットの速度が遅いことについては、インフラの原因もあるが、日本とは違って、上記のような情報入手のために流れるデータ量が半端ではないということがあるのではないか。しかもインターネットの世界は匿名性であり、それが中国の人たちのストレス発散の場所にもなっている。今や中国のインターネット利用者は激増しており、そしてそれらのにわかIT愛好者が、中途半端な知識で違法行為を行い、ウィルスを撒き散らしている。それが現状である。日本向けスパムメールの発信元は、95%までが中国という話しである。

一般に中国人は新しいものが好きであり、違法であろうと安くておもしろければとにかくやってみようとする。そこでは遵法や秩序維持の精神は二の次である。その活力が中国を急成長させているわけだが、その結果、社会が混乱に陥る。いろいろな意味で、ネット上の世界はまさに中国の縮図でもある。