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京大上海センターニュースレター
158号 2007425
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 4.16-4.22

1920年代から1930年代までの上海商業儲蓄銀行の横領問題

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中国・上海ニュース 4.16−4.22

ヘッドライン

■ 中国:1−3月、物価上昇幅が拡大、インフレ加速の懸念

■ 日中:中国、日本最大の貿易相手国に

■ 中国:第1四半期、GDP成長率は11.1%

■ 中国:農地、穀物に重金属汚染が深刻

■ 北京:伊勢丹が進出、日系小売同士の競争が激化か

■ 広東:対インド貿易が8割増、機械など輸出9割増

■ 上海:コンテナ取り扱い量、上海が香港を追い抜く

■ 上海:市内の南市、閔行両発電所が閉鎖

■ 上海:1−3月社会消費財小売が13.2%増

■ 上海:上海モーターショー開幕へ、新型車多く登場

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ニュース詳細

■ 中国:中国:1−3月、物価上昇幅が拡大、インフレ加速の懸念

『人民網』4月20日付けによると、中国国家統計局は19日、07年3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.3%上昇したと発表した。食料品価格は7.7%増となったことが注目されている。

 なお、1−3月期の物価上昇幅の拡大について、国家統計局の李暁超報道官は19日、「全体としては安定、一部項目では急速な上昇、上昇圧力は継続」との大枠を示した。

 急速な価格上昇を示したのは第一に食料品価格で、1−3月期の上昇率は6.2%に達した。うち穀物価格は6.7%の上昇であった。肉類とその加工品は飼料の輸送コストや労働力コストなどの値上がりを受けて価格が上昇した。また、住宅関連価格も急速に上昇し、同期の上昇率は3.8%に達した。 

 李報道官は、今後も継続的な価格上昇圧力が存在するとし、主な原因として(1)消費者物価価格に上昇の可能性がある(2)国は今年、資源価格の形成メカニズムを改革する(3)国際市場で銅、アルミ、化学肥料、鋼材などの一次製品の価格上昇幅が拡大している――の3点を挙げた。

■ 日中:中国、日本最大の貿易相手国に

『日経新聞』4月25日付けによると、日本財務省が25日、日本の06年度貿易統計(速報、通関ベース)を発表した。それによると、香港、台湾を除く中国との貿易総額は前年比16.5%増の25兆4276億円で、戦後初めてアメリカを上回り、国別で最大になった。

 対中輸出額は21.2%増の11兆3145億円、輸入は13.0%増の14兆1131億円で、共に8年連続の増加。貿易赤字は−11.2%の2兆7986億円で、赤字幅は3年ぶりに縮小した。

 輸出品目では半導体などの電子部品が49.9%増、非鉄金属が75.3%増などで、輸出の伸びに大きく貢献。輸入品目では通信機が74.1%増であったほか、音響映像機器は7.5%減であった。また、農作物輸入では穀物類が23.5%減、野菜が4.8%減であった。

■ 中国:第1四半期、GDP成長率は11.1%

『東方早報』4月20日付けによると、国家統計局の李暁超報道官が19日記者会見で、今年1−3月期のGDPは5兆287億元で、前年同期比11.1%増加し、増加率は前年同期を0.7ポイント上回ったことを明らかにした。

 なお、国家統計局の発表によると、同期には農業生産が安定傾向を示した。通年の穀物栽培面積は1億610万ヘクタール(同0.5%増)に達し、4年連続で増加傾向を維持する見込み。

 また、一定規模以上の工業企業の同期の生産額は同18.3%増加し、増加率は前年同期を1.6ポイント上回った。投資面においては、固定資産投資の伸びが鈍化した一方、中・西部地区への投資は急速に増加した。

 さらに、人民網の報道によると、国家統計局の発表を先にして、中央政府は18日、国務院常務会議を招集し、1−3月期の経済運営状況を分析するとともに、当面の経済政策を策定した。

 温家宝総理は会議で、現在の経済運営において、いくつかの際立った矛盾や問題点がなお存在することを直視しなければならないとの指摘。重点課題として、次の7項目を挙げた。

(1)農業生産と農民増収を大々的に促進

(2)省エネ・汚染物排出削減事業を適切に強化

(3)固定資産投資の調整を引き続き強化

(4)流動性過剰の矛盾を確実に緩和

(5)貿易黒字の急伸を効果的に抑制

(6)物価水準の基本的安定の維持に努力

(7)国民生活における際立った問題の真剣な解決

■ 中国:農地、穀物に重金属汚染が深刻

『サーチナhttp://www.searchina.ne.jp』4月25日付けによると、中国国土資源部は22日のアースデイに合わせて、現在、中国国内で汚染されたり固形廃棄物が堆積して使用できなくなった農地が全農地の1割以上に当たる1230万ヘクタールに上るとのデータを発表した。

 重金属で汚染された穀物の収穫量は年間約1200万トンで、直接的な経済損失は200億元以上とされる。ただし、汚染の実態については詳細なデータがないため、国土資源部と環境保護総局が今後3年半に10億元を投じて全国調査を行う。

■ 北京:伊勢丹が進出、日系小売同士の競争が激化か

『第一財経日報』4月21日付けによると、日系デパート伊勢丹はこのほど、北京店を開設する計画を発表した。北京進出は初めて。店舗面積は35000平方メートルで、同社の国内店舗としては最大規模。出店時期は来年秋を予定している。

 北京では三越系の新光天地が19日に開業したほか、イオンも来年夏にも大型ショッピングセンター(SC)をオープンすると発表したばかり。来年以後、北京で日系小売大手同士の競争が激化しそうである。

 伊勢丹の総務部広報担当によると、上海店と同様、食料品まで含むフルラインの百貨店を想定しており、出店する西単エリア周辺の居住者・通勤者、外国人まで含めた幅広い客層を見込んでいる。同社は上海に2店、天津市と山東省済南に各1店を展開。現時点では上海市南京西路にある梅竜鎮店の売上高が最も大きい模様。

■ 広東:対インド貿易が8割増、機械など輸出9割増

『中国新聞網』4月20日付けによると、広東省税関は20日、同省の07年1−3月の対インド貿易額が前年同期比77%増の約13億米ドルであったと発表した。輸出額は7.9億米ドル、輸入は5.2億米ドル。貿易額の伸び率は同省の対外貿易全体の伸びを53ポイント上回った。

 同省の対インド貿易額は2000年から年平均で35%増え、06年には38億米ドルになった。

 インド向け輸出の8割は機電製品(機械設備、電子製品、電器製品、計器等)で、07年1−3月の輸出額は前年同期比86%増の6.3億米ドル。インドからの輸入では銅、ステンレス、プラスチック材料、鉄鋼砂などが大きく伸びた。

■ 上海:コンテナ取り扱い量、上海が香港を追い抜く

『東方早報』4月23日つけによると、上海市の2007年第1四半期(1−3月)におけるコンテナ取り扱い量は前年同期比28.1%増の589万TEU(20フィート標準コンテナ)で、香港を抜いて世界第2位になった。取り扱い量の世界第1位はシンガポールで658万TEU。香港は2.3%増の550万TEUであった。

  上海市のコンテナ取り扱い量増加をけん引したのは、2005年に新規操業を開始した洋山港で、07年第1四半期の取り扱い量は122万TEUであった。

■ 上海:市内の南市、閔行両発電所が閉鎖

『東方網』4月24日付けによると、上海電力システムは省エネ・環境保護の新型発電ユニットを採用し、エネルギー消耗が高く、汚染の重い旧式・小型火力発電ユニットを止めるという「小・大交替、省エネ・排出ガスを減少させる」プロジェクトが全面的にスタートした。23日、上海電力と上海電気集団は、同プロジェクトの主要設備の購買契約に調印した。同プロジェクトの4台の発電ユニットは、2009年、2010年に稼動する予定である。これによって、百年にわたった市内にある南市、閔行両発電所は閉鎖される予定である。

■ 上海:1−3月社会消費財小売が13.2%増

『東方網』4月18日つけによると、上海市統計局は17日、07年1−3月期の市内社会消費財小売総額が前年同期比13.2%増の933.3億元であったと発表した。伸び率は前年同期より0.4ポイント上がった。飲食業の小売額は26.8%増の133.92億元、家電・音響機器は23.1%増の54.4億元であった。

■ 上海:上海モーターショー開幕へ、新型車多く登場

『第一財経日報』4月23日付けによると、上海新国際博覧センターで24日、第12回上海国際自動車工業展覧会(上海モーターショー)の一般公開が始まる。会期は28日まで。マスコミ向け公開は20日から、業界関係者向けが22日から。

 今回のテーマは「人、車、自然の完全なる調和」で、20カ国・地域から自動車や部品のメーカーなど1300社が出展。テーマにちなんで、海外メーカーだけでなく国内企業からも、新燃料技術を応用した新型車両が多数展示される。

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1920年代から1930年代までの上海商業儲蓄銀行の横領問題

李培コ(香港大学)

 1920年代と1930年代は、上海の銀行業にとって、極めて重要であり、また複雑に錯綜していた年代であったと言える。第1に、この二つの年代に銀行業は急速に成長し、繁栄のピークに到達した。第2に、国民政府はこの期間に金融改革と経済統制政策を積極的に推進した。第3に、中国の内憂外患は、政府の銀行業との合作をいっそう容易にし、政府にとって有利に各種政策が推進された。第4に、世界経済の発展が中国に影響し、特にアメリカの銀政策は直接的に中国通貨の安定性に影響を与えた。このような流動的環境は、銀行の経営者と従業員に対して、どのような影響を及ぼしたのであろうか? 第5に、上海の銀行業は1920年代から1930年代にかけて発展すると同時に、いまだ完全に銭荘を駆逐しておらず、まだ成熟した段階に到達していなかった。中国の金融機構は、現代化への移行過程に邁進していたけれども、伝統的な要素の影響を払拭することは非常に困難であった。銀行員の横領問題は伝統的商業習慣とどのような関係にあったのだろうか?

 上海商業儲蓄銀行(以下「上海銀行」と略称)は1915年に開業した。開業当初は小規模の銀行で、資本金は10万元に満たなかった。しかし、10年後には上海はおろか全国でも屈指の民間銀行にまで一躍成長する。これまで学界は、上海銀行の成功は創始者である陳光甫の思想と経営戦略と密接な関係があると論じている。陳光甫は、銀行を健全に経営するためには「不履行なし、横領なし、取り付けなし」が原則であると認識して、企業内部の管理を重要視した。本報告執筆の目的は、第1に陳光甫の原則は絶対的には成功していな点を指摘することである。第2に、銀行の幹部の動向だけを注視するのではなく、中下層の従業員にも分析を広げることである。彼らは「行員」と呼ばれており、「銀行家」と同列の地位にはなかった。これまでの研究は銀行家と非行員(官僚・政治家など)に多くの注意を払っているため、行員が銀行業務の執行に対して与えた影響について分析の余地が残されている。第3に、行員による横領が発生した原因と経過、そしてそれに対する銀行の対策について検討することである。

 銀行家は作業効率を高め、コストを削減し、業務上の横領などのリスクを回避するために、行員に対してさまざまな措置を実施していた。例えば、職業訓練、福利厚生制度、賞罰規律の厳正さを重視した評価制度など。しかし銀行家が最も有効であると信じていた方法は、行員の思想と行動の統制であり、それによって行員と銀行をいかに協調させるかであった。そのために、「サービス社会」、「銀行は我、我は銀行」といった観念を大々的に称揚し、銀行を大きな家庭にみたて、思想教育を通じて行員を銀行の中に融合させ、彼らが全力で銀行業務に邁進するようにしむけたのである。しかし、規律厳正な人事管理方法と完全中央集権的な総経理制度は、相反する効果を生み出す可能性があった。

 陳光甫を含めた多くの近代中国の銀行家たちは、海外留学経験があり、新しい思想を背景にして、伝統と因習に対して批判的であった。しかし行員養成の面においては、まさに学者たちが指摘している通り、いたる所でさまざまな伝統文化を織り交ぜた表現がみられ、ひたすら団体(銀行)を強調し、そこには個人のかけらも認められない。それに対して、指導者層の指揮を唯々諾々と受け入れない行員が出現するという反作用がみられた。1930年代に発生した横領事件は双方の矛盾の氷山の一角が表面化したにすぎなかった。1937年に日中全面戦争が勃発すると、上海金融市場は空前の動乱にみまわれ、銀行職員の投機と横領問題が日増しに厳重さを増すようになった。下級職員の上級職員に対する不満は、職権の乱用から公私混同に留まらず、その政治立場にまで表面化するようになった。それに中国共産党の地下工作が浸透し、第二次大戦終結後の行員問題はいっそう複雑さを増したのである。

 本報告は、上海市档案館所蔵の上海銀行の一次資料、そしてすでに出版されている各種関係資料を利用して、上海銀行が1920年代から1930年代にかけて直面した企業管理問題と上海金融市場の急激な変動との関係について検討する。また先述した横領問題が、1929年から1934年にかけて陳光甫が実行した総経理制、分区管理制、管轄行制、各部門・各支店の監察強化といった銀行の企業組織改革をどのようにして引き起こしたのかを検討する。