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京大上海センターニュースレター
159号 200752
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 4.23-4.29

○中・ロは本当に手を組むのか?

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中国・上海ニュース 4.23−4.29

ヘッドライン

■ 中国:預金準備率引き上げ、半年内で4回目

■ 中国メーデー連休、航空機・列車ともラッシュに

■ 中国:科学技術部長に非共産党員を登用

■ 中国:1−3月、石炭輸入が輸出を超過

■ 中国:平均結婚費用56万元、うち33万元が新居費

■ 広東:広交会が閉幕、輸出成約額360億米ドル超

■ 上海:スイス科学センター、上海に設立

■ 上海:第7回原子力発電工業展覧会開催

■ 上海:上海モーターショー閉幕、延べ50万人来場

■ 北京:日本学術振興会、北京に研究センター

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中・ロは本当に手を組むのか?

−モスクワ開催「中国国家展」に参加して−

04.APR.07

株式会社小島衣料代取締役社長 小島正憲

胡錦涛主席とプーチン大統領が、壇上でがっちりと握手した。この光景は、すぐさま両国のマスコミによって、いっせいに報道された。それは昨今の米国一極集中時代に、中・ロが手を組んで対極を構成し、冷戦時代を再現しようとするかのようだった。3月26日から29日まで、モスクワ市内のクラコスにおいて、中ロ友好年の行事の一環として、「中国国家展」が開催された。私は吉林省の代表団の一員として、この国家展に参席した。前出の光景は、27日に行われた開会式で私が目にしたものである。私は吉林省の琿春市と敦化市の経済顧問という立場を利用して、ロシアの内販市場やシベリア鉄道の物流の調査も兼ねて、この展覧会の参観に同行させてもらったのである。

26日に私は、「赤の広場」へ足を運んでみた。そしてそこで驚いた。そこには「中国国家展」の巨大な看板が立っていたからである。それは幅10m、長さ100mに及ぶもので、ロシアの「赤の広場」の壁に対抗して、中国が「万里の長城」を移設したような感じを与えるほどであった。またこの看板からは、この展示会に賭ける中国の意気込みを見てとることができたし、同時にこのような巨大な看板の設置を、ロシア政府が許したという事実から、中ロ両国政府の蜜月関係を読み取ることができた。

クラコスの展示会場には、広さ2万uの場所に、中国の主要企業約200社が出展していた。この展示会は中国が国外で開催するトレードフェアとしては最大規模とされていた。しかしそこには中国内資のものだけで、外資関連のものはなかった。したがって一般に中国を代表しているような著名企業が意外に少なく、派手さが感じられなかった。またそれは足早に歩けば、2時間もあれば回りつくせるほどであり、国家の総力を挙げた展示会にしては、貧弱な感じを受けた。しかし外資抜きのこの姿が、真の中国の実力なのであるとも考えられた。

それでも吉林省からは展示関係者も含めて、300名ほどが参加しており、中国全体では5000名ほどの参加者があった。また主催者側の発表によれば、この展覧会へのロシア人の企業関係者は1万人を越えたという。さらにこの期間中の成約額は43億ドルに及んだと報告されており、この面での中・ロ主催者の企図は十分に果たせたといえよう。それ以上に、中国側から政財界の重要人物が大挙してモスクワを訪問し、それぞれに密議を交わし、以後の発展のための礎を築いたことは疑いの余地がない。今月11日からの温家宝首相の来日の際の経済分野の随行員が100名程度であることと比較すれば、5000名という人数が、いかに大きな意味を持っているかがよくわかる。まさにこの展示会は中ロ関係の歴史上、特筆すべき出来事なのである。現在、中・ロは上海協力機構を作って、政治的に米国一極集中態勢への対極を作ろうとしている。この展示会は、それを経済面から大きく補強しようとするものである。その意味で、後日、この展示会が歴史の転換点であったと評価されるにちがいない。中・ロのマスコミ関係者はそのことを十分承知していて、大々的に報じたのである。

しかしながら日本の報道では、この「中国国家展」は意外に注目されていなかった。もちろん会場では、日系のジャーナリストとおぼしき人物にはお目にかからなかった。また日本経済新聞でも、「ロシアで中国年 両首脳が式典へ 友好ムード演出」(3/27付け)、「中国大商談会 モスクワで開幕 中ロ首脳が出席」(3/28付け)という見出しの小さな記事が出たのみであった。おそらく日本では、この展示会が歴史的意味を持っており、上海協力機構の経済的背景になるだろうという認識が薄いからだろう。しかしこれは結局、今後の情勢を見誤ることにつながり、また日本の世論をミスリードすることにもなる。

私は25日に、シベリア鉄道の実質的運行会社の社長と会い、中ロ間の物流事情について詳しく聞くことができた。また30日、サンクトペテルブルグで、在ロ華僑と会い、詳しく当地の経済情報を入手することができた。それらを総合して判断すると、すでに中・ロの経済面での蜜月は相当に深いものになっており、政治面での米国への対極の構成も着々と進行していると思われる。サクトペルブルグのピョートル大帝の冬宮の近くに、昨年サミットが開催されたホテルがあり、そのすぐ隣に「上海明珠城」との看板があり、50万uに及ぶ土地が、中国資本の手で開発中であった。これがなにより中ロ蜜月の証拠である。