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京大上海センターニュースレター
170号 2007718
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

○国際コンファレンス「東アジア経済のガバナンス問題」のご案内

      中国・上海ニュース 7.9-7.15

○中国株とトランプ賭博

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国際コンファレンス「東アジア経済のガバナンス問題」のご案内

前号でもお知らせしましたように、京都大学21世紀COE経済学プログラムは、上海センターと共催で、「東アジア経済のガバナンス問題」をテーマとした国際コンファレンスを9月18−19日に開催します。会場は、京都大学百周年時計台記念館の2階国際交流ホールです。

 コンファレンスの目的は、従来以上に緊密な相互依存関係をもつようになった東アジア諸国民のかかえる経済問題を「ガバナンス」の視角から検討することです。この目的で、地域空間経済学、国際通貨・金融、コーポレート・ガバナンス、地域・公共政策、環境保全などのさまざまな領域での研究の発展を統合するとともに、制度と組織の経済分析の成果を生かす必要があります。

コンファレンスにはこの地域の指導的研究者を招くとともに、提携関係にある大学に積極的な参加をよびかけています。また、経済学研究科と提携関係にある東アジア4大学からは、若手研究者も参加して、京都大学の若手研究者とともに、引き続く9月20−21日に開催されるヤング・スカラーズ・ワークショップで研究報告するとともに交流を拡大します。なお、使用言語はコンファレンス、ワークショップともに英語です。詳細は前号「ニュースレター」ないし、経済学研究科COE支援室(tel. 075-753-3452: coe-jimu@econ.kyoto-u.ac.jp)にお願いします。

(組織委員:八木紀一郎)

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中国・上海ニュース 7.9−7.15

ヘッドライン

■ 中国:食品会社52社、安全性で輸出を差し止め

■ 中国:対東アジア貿易が貿易額全体の3割占める

■ 中国:夏期穀物生産量2億3000万トンへ

■ 中国:主要港湾の貨物取扱量が15.5%増

■ 中国:農産物価格、軒並み上昇

■ 中国:1−5月期、機械産業の生産高は2兆6600億元

■ 上海:日系企業向け電力制限をしない

■ 上海:飲酒運転による交通事故の死亡率が最高

■ 上海:大和総研の現地法人が開業

■ 広東:電力不足さらに深刻

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中国株とトランプ賭博

  20.JUL.07

                                  株式会社小島衣料代表取締役社長  小島正憲

 

数年前、上海市内の私の会社の隣に、証券会社が店を構えた。その会社は、昨年中ごろまで、閑古鳥が鳴いていた。ところが今年初めから、にわかに騒がしくなり、3月には顧客が道路にまであふれかえるような有様となった。5月に入って、ちょっと空いてきたので、私は中に入って様子を見てみることにした。

店内は薄暗く、タバコの煙が充満していた。そんな中で、最初に目に入ってきたのは、片隅でパソコンの画面にかじりついている人だった。その数およそ30人。次いで、立ったまま、壁面の大型電光掲示板をにらんでいる人が、ざっと50人。さらに奥の方に、なにやら書類手続きをしている人が10人ほど。そしてやっと目が慣れてきたときに、私の目に飛び込んできたのは、異様な光景だった。

部屋の中央に、テーブルを囲んでトランプに興じている人たちがいたのである。5組で、合計30人ほど。

目をこらしてみていると、彼らは賭けトランプに興じながら、ときおり壁面の電光掲示板の数字の動きに目を投じ、なにやらわめき声をあげていた。彼らはそこで、株の売買とトランプ賭博を、器用にも同時に成立をさせていたのである。私はこの光景を見て、中国人大衆の頭の中には、株の売買もトランプ賭博もまったく同列で存在しており、彼らにわざわざ、「株は賭博同様である」と、警鐘を鳴らす必要はないと思った。

6月中旬、上海のわが社の車の運転手が、「銀行の定期預金が満期になったので、崩して株を買いたい。どの株を買えば儲かるのか」と、聞いてきた。私は中国株には詳しくなかったので、それには答えなかった。逆にかつての日本のバブル時代の失敗者の話をして、「軽々に株に手を出すべきではない」と、説教をした。彼は不承不承それを聞いていた。そして1か月後、再び上海を訪れた私に、彼は恨めしげに、「あのとき小島社長の話を聞いて株を買わなかったので、みすみす損をした。兄は1万元の元手で、この1か月間で2000元を儲けた」と、話かけてきた。そのとき私は黙って彼の言い分を聞いていたが、心の中では、彼に申し訳ないことをしたと頭を下げた。私が余計なことを言ったばかりに、彼のせっかくの儲けのチャンスを実際に奪ってしまったからである。

その晩私はベッドに横たわりながら、「私の頭の中が日本のバブル崩壊の影響で、羹に懲りて膾を吹くの類になっているのだろうか」、「いや、やはり株は危ない。一般大衆がそれにのめり込むべきではない。私は正しかった」と、自問自答した。そしてさらに、「おそらく今後、多くの中国人から同様の相談が私に寄せられるだろう。その場合、私はどのように答えたらよいのだろうか」と考えた。「本来、株はトランプ賭博同様で、いつかは損をするものである」といっても、今回のように、眼前で周囲の人たちが株を買って大儲けをしていれば、それはミスリードになる。それかといって賭博を勧め、彼らが大損をする道へ進むのを見逃すわけにもいかない。

その後1か月ほど、私は頭の中でこんな問答を繰り返していた。するとある日、同友会会員さんからも、中国株についての質問が、寄せられてきた。さすがにこれは会員さんからの要望だったので、中途半端にしておくわけにもいかなかった。そこで「同友会上海倶楽部で専門家を呼び、勉強会を行います」と答え、すぐその準備に入ることにした。ところがなかなか講師の適任者がいなかった。現在、上海で株に明るい人は、銀行や企業から引っ張りだこだという。それでも証券会社幹部に頼み込んで、やっと8月中旬に勉強会を開くまでにこぎつけた。

日本人からの依頼ということもあってか、中国人講師から、「どのようなことについて聞きたいのか」との質問があった。他の中国人の講演会場では、やはり個別銘柄についての株価の変動に、興味が集中しているという。私は、次の4つの視点から、講演をしてもらうように頼み、時間が足りなければシリーズにしてもよいと付け加えた。じっくり中国株を勉強してみたかったからである。

1.株式発行者つまり株式公開を果たそうとする企業家は、現在の株ブームをどのように考えているのか。

2.証券会社および証券市場の立場から、このブームをどのように考えているのか。

3.政府は、このブームをどのように考え、どのように誘導しようとしているのか。

4.株購入者は、このブームが今後どこまで続くと考えればよいのか。あるいは個別銘柄はなにを買えばよいのか。ファンドはどのように選んだらよいのか。

5.なぜ2006年度から、それまで長期間低迷していた株価が高騰し始めたのか。

                                                     以上