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京大上海センターニュースレター
174号 2007815
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

○国際コンファレンス「東アジア経済のガバナンス問題」のご案内

      中国・上海ニュース 8. 6 -8.12

○内陸部開発への日本の経済協力について

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国際コンファレンス「東アジア経済のガバナンス問題」のご案内

前号でもお知らせしましたように、京都大学21世紀COE経済学プログラムは、上海センターと共催で、「東アジア経済のガバナンス問題」をテーマとした国際コンファレンスを9月18−19日に開催します。会場は、京都大学百周年時計台記念館の2階国際交流ホールです。

 コンファレンスの目的は、従来以上に緊密な相互依存関係をもつようになった東アジア諸国民のかかえる経済問題を「ガバナンス」の視角から検討することです。この目的で、地域空間経済学、国際通貨・金融、コーポレート・ガバナンス、地域・公共政策、環境保全などのさまざまな領域での研究の発展を統合するとともに、制度と組織の経済分析の成果を生かす必要があります。

コンファレンスにはこの地域の指導的研究者を招くとともに、提携関係にある大学に積極的な参加をよびかけています。また、経済学研究科と提携関係にある東アジア4大学からは、若手研究者も参加して、京都大学の若手研究者とともに、引き続く9月20−21日に開催されるヤング・スカラーズ・ワークショップで研究報告するとともに交流を拡大します。なお、使用言語はコンファレンス、ワークショップともに英語です。詳細は前号「ニュースレター」ないし、経済学研究科COE支援室(tel. 075-753-3452: coe-jimu@econ.kyoto-u.ac.jp)にお願いします。

(組織委員:八木紀一郎)

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中国・上海ニュース 8.6−8.12

 

ヘッドライン

 

■ 中国:農村最低生活保障制度を整備

■ 中国:CPI前年度比5.6%増、10年来最高

■ 中国:国務院、低所得層向け住宅の整備に関する意見を提出

■ 中国:卵消費量、1人当たり年間22kgに達した

■ 教育:北京大学と東京大学と相互に学位認定

■ 自動車:BYD社、電気自動車を発売へ

■ 山東:石炭輸出量3割減、輸入では北朝鮮から倍増

■ 内モンゴル:石炭埋蔵量全国一に

■ 上海:13日上海総合指数、4800点台で過去最高を更新 

■ 上海:森ビルが建設中の超高層ビル、 26階から出火

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内陸部開発への日本の経済協力について

京都大学准教授 宮崎 卓

72日のシンポジウムで小生が報告した内容は日本の中国向け経済協力、特にその中でも大きな役割を占めてきた円借款の供与対象地域が中国の沿海部から内陸部に展開していく過程に焦点をあてたものである。

日本の中国向け経済協力は、無償資金協力、技術協力および有償資金協力(円借款)から構成されるが、円借款については1979年の供与開始以降2000年度まで、5年分の供与計画につきまとめて合意するラウンド制という制度が導入された。通常他の途上国では単年度毎に合意されており、本制度導入は中国向け円借款特有のものと言える。これは中国国内における5ヵ年計画をはじめとする長期開発計画に呼応しうるものであった。

1ラウンド(197985年度)においては、中国国内のエネルギー需給問題の解決のための鉄道および港湾設備の整備に主眼がおかれていたが、続く第2ラウンド(198690年度)、第3ラウンド(199195年度)を通じ、対象セクターは拡大、社会・経済インフラの領域が広くカバーされるようになり、また対象地域も拡大した。第4ラウンドに到ると、それまで実例のなかった環境対策のための事業が現れ、その比率を急速に高めていく。2001年度以降は上記ラウンド制は廃止され単年度方式に変更となり、対象地域は原則内陸に限定、また対象分野も環境保全と人材育成にほぼ限定され、現在に到っている。

中国向け円借款供与方針の策定に関して大きな影響を持ったのが、有識者により組織され、2回にわたって開催された国別援助供与研究会の報告である。1回目は大来佐武郎氏を座長とし1991年に開催、その報告書においては、中国の改革開放路線の支持、経済安定と物価安定化と並んで、インフラ・ボトルネックの解消が重点とされており、それは記述の第3ラウンドにおける供与方針と相応している。第2回目は渡辺利夫氏を座長として1998年に開催されており、報告書の内容も、貧困・地域間格差解消、環境保全、農業開発・食料供給および制度化された市場経済の構築、と第1回からは重点が変化してきており、特に地域間格差解消、環境保全の重視は第4ラウンド以降の中国向け円借款供与方針と呼応していると看做しうる。

2001年度には対中国経済協力計画が策定されたが、同計画においては日本にとっての国益のより明確な追求、ラウンド制の単年度制への転換、対象セクターの絞込みおよび対象地域を原則内陸部に限定すること等が項目として盛り込まれ、現在にいたる。

中国向け円借款の供与額に占める内陸部向け供与金額の比率を見ると、90年代前半、90年代後半、さらに2001年度以降に内陸部の比率の大きな増加が見られる。これらの比率増加原因は、90年代においては対象地域の拡大に伴うものであるが、2001年度以降のものは既述のとおり日本側の供与方針において供与対象地域を原則内陸部に限定したことに起因していると言えよう。

2008年の北京オリンピック前に新規供与停止予定、すなわち今後新規の借款契約が締結されることはなくなる予定であるが、一般に円借款事業は契約締結後5〜10年の期間にわたり実施されていくものである。したがって今後10年程度はなお実施のプロセスは継続される。上記のとおり内陸部に展開した円借款事業の効果に対する評価も、まだ効果発現にいたる過渡的状況にあると言える。

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編集メモ

 816日の夜7;30-8:45の間、NHK”NHKスペシャルとして京都の五山送り火の生中継をするという話が伝わってきました。残念ながら京都大学からの中継ではありませんが、京都大学の「すぐ隣り」の大文字山からの中継もありますので、この生中継で京都ライブをお楽しみいただければと思います。(編集部より)