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京大上海センターニュースレター
第181号 2007年10月3日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○京都大学上海センター
中国自動車シンポジウムのご案内
○
中国・上海ニュース 9.24-9.30
○敦化市に「木材糖化事業」をプレゼン
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京都大学上海センター 中国自動車シンポジウムのご案内
「中国におけるユーザーの購買行動―クルマの選び方・乗り方・売られ方―」
2007年11月3日(土) 12時 於 京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール
挨拶 京都大学理事・副学長 西村周三
テーマと報告構成の説明 京都大学大学院経済学研究科教授 塩地 洋
報告 フォーイン 第一調査部部長
周 政毅 中国乗用車市場における製品競争力
大阪商業大学准教授 孫 飛舟 自動車購買者の店舗選択
――2007年8月北京ユーザー調査から――
京都大学大学院学生 李 澤建 インターネット情報の影響分析
金沢学院大学講師
西川純平
ユーザーの買い方とディーラーの売り方
J.D.パワー・アジアパシフィック部長木本 卓 ユーザーのクルマの選び方
――IQS(初期品質調査)からのインプリケーション――
入場無料、終了後懇親会を予定(これも無料です)
参加希望者は塩地(shioji@econ.kyoto-u.ac.jp)まで御連絡ください。
また、本シンポジウムは上海センター協力会の後援で開催されます。
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中国・上海ニュース 9.24−9.30
ヘッドライン
■ 中国:1−8月小型石炭発電所253カ所閉鎖
■ 中国:豚肉価格3.45%値下がり、出荷量増加で
■ 中国:石炭生産量24億トンの見通し、生産量1万トン以下炭鉱廃業させる方針
■ 北京:心臓病が死因最多の23%、1万4000人
■ 広東:広州、建物物件の価格14%上昇でも販売好調
■ 広東:8月冷凍エビの輸出額78%減少
■ 山西:1−8月クロム鉱砂の輸入額3倍に
■ 上海:サンディスク上海新工場落成、世界生産能力の3割
■ 上海:虹橋−羽田定期チャーター便就航
■ 上海:地下鉄などレール交通の1日利用者数が287万人に達す、記録更新
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敦化市に「木材糖化事業」をプレゼン
07.SEP.07
株式会社小島衣料代表取締役社長 小島正憲
私は一昨年から、吉林省敦化市の経済顧問となっている。敦化市と言っても、一般の日本人にはなじみが薄く、ピンと来ない都市だと思う。しかし現在ここは、中国でも、もっともホットな地域の一つなのである。なぜならこの地には、旧日本軍の遺棄化学兵器が大量に埋まっており、その処理をめぐって日中双方の政府間で、真剣な議論が続けられてきた経過があるからである。
私はその敦化市の共産党書記から、この地域への企業進出を強く要請されている。しかし残念ながら私の本職の縫製加工業では敦化市に進出するメリットが少ないので、今までそれに応えることができないでいる。それでも、せっかくのお誘いをむげに断るわけにもいかないので、私は自分の本職以外の事業を誘致して、敦化市の経済活性化のために尽力できないかと考えてみた。そのうちの一つが、「木材糖化事業」である。
敦化市には、地元の山林を伐採したり、ロシアの原木を輸入したりして、それを加工する木材業者が大小合わせて800社ある。そこから出る廃材や屑材などから、エタノールを抽出する事業ができないかと考えたわけである。
9月6日、私は敦化市において、「木材糖化事業」のプレゼンテーションを行った。日本から、この分野の研究の第1人者である小川先生と満鉄研究家の安部先生を講師に招来した。中国側からは、敦化市政府の幹部、地元の木材業者とその業界関係者、大学教授や研究者、マスコミ関係者など、合計13名が参加した。小川先生はプロジェクターを駆使して、木材の廃材からエタノールを抽出する技術を詳細に説明された。その後、数人の参加者が興味を示し、質疑応答が行われた。中国側参加者からは、この事業の採算性についての質問が多かった。私たちはこれらに対して、参加者をびっくりさせるような儲け話をすることはできなかった。なぜなら残念ながらこのような資源再利用の事業は、もともと巨額の利益を産み出す事業ではないからである。私たちは環境問題やエネルギー問題の重要性を訴え、巨額の利益は出ないが、今後の中国のために、絶対に必要な事業であると説明した。それでも彼らを乗り気にさせるまでには至らなかった。
会議の終わりごろを見計らって、私たちは試験プラントの導入を提案してみた。小川先生の試算によれば、2千万円ほどの先行投資で済むようなので、それは中国側にも受け入れ可能だと考えたからである。ところがここで難題が出現した。意外にもこの周辺の木材業では、日本とは違って、廃材が農業などで積極的に活用されており、それが少ないことであった。この事業は廃材が大量にあることを前提としており、少ない場合は当然のことながら採算が取れない。しかたがないので、この事業については今後、専門委員会を作って継続審議をしていこうということで散会した。
私は、せっかく共産党書記に期待してもらっていても、最悪の場合、このような事態になることもありうると想定していたので、事前にまったく別の事業?提案をしておいた。敦化市で日本料理店を開業しようというアイディアである。ただしそれは事業というにはおこがましかったので、非公式にこっそり話しておいたのである。私は書記に、「これからこの街に遺棄化学兵器の処理のために、日本の関係者が多く来る予定だから、日本料理屋を開業すればきっと繁盛するとのではないかと思う」と話しかけ、「私は、この地で働く多くの日本人のために、憩いの場を提供したいのです」と付け加えておいた。敦化市共産党書記は、私のこの珍妙な事業提案に、笑いながらOKサインを出してくれた。
本音のところを言うと、私がこの敦化市で日本料理屋をやりたいのには、別の大きな理由がある。この地で、日本人が余計なトラブルに巻き込まれないようにしたいのである。かつて上海のカラオケで、日本人が日本の重要な情報を、その店の中国人女性従業員に漏らして大きな問題になったことがあったが、この地でそんなことが起こらないようにしたいのである。そのために私は、ここに日本人のしっかりした女将を置いて、従業員をきっちり管理させるつもりである。
この日も、私たちが会議を開いたホテルに、20人ほどの日本人が宿泊していた。政府の関係者に聞いてみると、やはり遺棄化学兵器の処理技術者であるという。まだ初期段階なので少ないが、本格的になった場合には100人を超えるのでないかということであった。会議後、私たちは中国側参加者と、そのホテルの食堂で昼食をとった。そこで出された中華料理は、とても油が多く、お世辞にも美味しいとは言えなかった。私は、日本人がここに長期滞在するには、絶対に日本料理屋が必要だと思った。