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京大上海センターニュースレター
第187号 2007年11月15日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○第7回京都大学―慶北大学共同国際シンポジウムのご案内
○
中国・上海ニュース 11.5-11.11
○国際コンファレンス「東アジア経済のガバナンス問題」のご報告
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第7回京都大学―慶北大学共同国際シンポジウムのご案内
京都大学経済学部は、韓国の慶北大学経済通商学部およびソウル大学経済学部と交流協定をむすび、それぞれと交互にシンポジウムを開催するなど活発な学術交流を行ってきました。このたび京都大学上海センターの主催で、下記の要領で国際シンポジウムを開催いたします。公開の催しなので、ふるってご参加下さい。
会場 京都大学経済学部 総合棟2階大会議室
主催 京都大学上海センター 共催 慶北大学通商経済学部
後援 京都大学上海センター協力会
■12月6日(木曜)9時〜11時半
第Tセッション(経済) 使用言語……日本語・韓国語 司会 岩本武和(京都大学)
宇仁宏幸(京都大学)「輸出にかたよった生産性上昇と為替体制一東アジアとヨーロッパの比較」金 煕 鎬(慶北大学)「外国為替のリスクプレミアムの測定誤差」
■12月6日(木曜) 1時〜3時
第Uセッション(経営) 使用言語……日本語・韓国語・英語 司会 菊谷達弥(京都大学)
若林直樹(京都大学)「日本の企業間関係におけるネットワークと信頼」
崔 種 a(慶北大学)「IOSsの情報流通にもとづいた組織間関係の構造」
■
12月6日(木曜)3時半〜5時半
第Vセッション(経済) 使用言語……英語 司会 大西広(京都大学)
村瀬哲司(京都大学)「アジア通貨制度への展望と課題」
河 仁 鳳(慶北大学)「韓国通貨危機のマクロ経済的要因」
■レセプション 6時〜7時半 於 時計台記念館第3会議室
■12月7日(金曜)9時〜11時半
第Wセッション(経営) 使用言語……日本語・韓国語・英語 司会 曳野孝(京都大学)
若林靖永(京都大学)「顧客第一主義の崩壊と再構築」
文 桂 完(慶北大学)「知識の創出空間における実践共同体の効果的な実現
― 一つの事例研究(サムソン電子)」
連絡先
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中国・上海ニュース 11.5−11.11
ヘッドライン
■ 中国:10月、消費者物価指数6.5%上昇
■ 中国:1−10月貿易総額24%増、黒字2124米億ドル
■ 中国人民銀行:預金準備率を0.5引き上げ、13.5%に
■ 中国:エイズ感染者の入国規制を撤廃へ
■ 中国:1−10月、外資導入額が539億ドル突破
■ 中国:「市民と親密に」をテーマに、上海万博中国館は来月建設開始
■ 内蒙古:オルドスで超大型炭田発見
■ 上海:違法持ち込み日本産牛肉を押収
■ 上海:1−9月GDP13.4%増の8591億元
■ 上海:10月の建物物件7.9%高、値上がり顕著に
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国際コンファレンス「東アジア経済のガバナンス問題」のご報告
コンファレンス組織委員会(八木紀一郎)
9月18日および19日に、京都大学の21世紀COEプログラム「先端経済分析のインターフェース拠点の形成」と上海センターと協力して、百周年時計台記念館2階の国際交流ホールで、国際コンファレンス Governance Problems of East Asian Economies – as an interface of advanced economic analysis−を開催しました。
これは、上海センター協力会の会員も含め公開されたコンファレンスですが、会議の使用言語は英語で、配布されたペーパーも英文でした。そこでは、統合に向かいつつある東アジア経済の諸問題(国際通貨・金融協力、FTAおよび経済統合、中国の経済成長の特質と影響、環境ガバナンス、企業ガバナンス、政府の財政とガバナンス構造、地域格差問題)をガバナンス問題という視角から検討するために、ドイツ、中国、韓国、台湾からの学者も含めて約50人が参加し、20のペーパーが読まれました。
18日午前は、はじめに、西村周三副学長と森棟公夫経済学研究科長の挨拶を受けたあと、河合正弘アジア開発銀行研究所長の招待講演があった。河合所長は、制度よりも市場主導で発展してきた東アジアの経済統合において、1997年のアジア通貨危機以降通貨・金融協力やFTAが形成されはじめ、新しいガバナンスの機構が生まれつつあることを豊富なデータを示しつつ論じられました。それに続くセッションでは、藤田昌久教授(本学COEメンバー)が空間経済学の視点から東アジアの経済統合を論じ、ヴェルナー・パシャ教授(デュイスブルク・エッセン大学)が東アジアで導入されはじめているピアレビュウ(政策の相互モニタリング)が機能する条件について考察し、シェン・ホン天則経済研究所長(北京)が経済統合の制度化のための合意形成と文化的基盤のあり方について問題提起をおこないました。午後のセッションでは、リン・チーアン国立政治大学教授(台北)の制度派経済学の視点からするASEAN(+3)の制度進化、大西広本学教授(上海センター)によるアジアとくに中国の地域格差問題についての概観があり、またソウル大学ムーン・ウーシク教授による東アジアでの地域共通通貨についての問題提起、さらに本学村瀬哲司教授による東アジアの経済サーベランスの考察がありました。また、中国人民大学(北京)のロー・デイク教授は中国の新しい発展モデルの探求、アジア経済研究所の今井健一所員は中国の市場経済移行過程における国有企業の経営の変貌について報告しました。
河合所長が講演のなかで描いた国際的ガバナンス形成の課題は、藤田教授の空間経済学的構図、パシャ教授のピアレビュウについての考察と村瀬教授のサーベランスの進展についての報告によって補足されるとともに、他の報告によって、そうした調整プロセスの基礎をなすべき通貨単位や文化的・政治的要素が探求されました。これは東アジアにおける経済統合とそのガバナンス機構の探求の前進を示したもので、このコンファレンスの最も重要な第1の成果といえるでしょう。この点では、翌日のリー・ジョンウー慶北大学教授(デグ)の韓国のFTA政策についての報告、本学宇仁宏幸教授の輸出主導型成長とそれを支える為替レートのバイアスについての報告も重要でした。
コンファレンスの第2の成果は、地域的な視点からする環境ガバナンスの意義を確認したことです。これは第2日の午前に報告と討論がおこなわれました。本学の植田和弘教授(COEメンバー)は東アジアにおける持続可能な成長のための環境ガバナンスの形成について論じ、慶北大学のキム・ジョンダル教授はエネルギー資源移行の課題と結びつけて持続可能な成長のための課題を論じました。
第3の成果は、東アジアにおけるコーポレート・ガバナンスについて、新しい探求が開始されたことです。本学下谷政弘教授(COEメンバー)は、持株会社による統合と直接的な合併の相違の究明をもとめたが、チェン・ピン北京大学教授はコース的な取引費用概念を基礎としたコーポレート・ガバナンス論について批判を加えました。中国の現実の企業において、国有企業がかなり残存し、民営化された場合でも政府の影響力はなお大きいことについては、上述の今井健一アジア経済研究所所員の報告とともに、不測の事態によって来日できなかったレスリー・ヤン香港中文大学教授によって提出されたペーパーが実態を究明しました。さらに、国立政治大学(台北)のチョウ・テユー准教授の(新)儒教的なビジネス倫理についての考察、中国人民大学のチェン・ホワ准教授の民間貨幣(EdyやMilageなど)とそのネットワークについての考察という興味深い報告がありました。
第2日の最後には、本学の掘和生教授(上海センター)による歴史的視点からのコメント、山本裕美教授(上海センター)の農業政策論的な視点からのコメント、コンファレンス組織委員の八木の総括がありました。コンファレンスの翌日翌々日には、引き続いて復旦大学、中国人民大学、国立政治大学、慶北大学、デユイスブルク-エッセン大学、京都大学の博士号取得前後の若手研究者によるワークショップが開催されました。
このコンファレンスの成果は、これから京都大学の国際英文誌 Kyoto Economic Review (サイトhttp://www.jstage.jst.go.jp/browse/ker/_vols/-char/ja/から無料閲覧・ダウンロード可能)の特集号などで公表していきます。
最後にこのコンファレンスの開催にあたっては、参加者一同が会した初日のパーティの経費などについて、上海センター協力会の支援をいただいたことを記して感謝します。