=======================================================================================
京大上海センターニュースレター
第205号 2008年3月20日
京都大学経済学研究科上海センター
=======================================================================================
目次
○
中国・上海ニュース 3.10-3.16
○中国経済は10年間で65万倍の成長?
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
中国・上海ニュース 3.10−3.16
ヘッドライン
■ 中国:全人代閉幕、胡主席、温総理の続投決定
■ 中国:07年農民収入4140元、9.5%増
■ 中国:07年、中小商業銀行の不良債権率は2.45%
■ 中国:1−3月、労災「重大事故」発生は前年比7割増、死者4割増
■ チベット:ラサ、大規模暴動、市民13人死亡
■ 産業:製造業企業特許出願調査発表、大手の特許出願率、全体の10%未満.
■ 市場:輸入果物の9割が密輸品
■ 北京:癌による死亡が市民の死因トップに
■ 上海:建築現場用鉄筋、品質不合格率55%
■ 広西:1月の対ベトナム貿易、前年比2.4倍に
=============================================================================
中国経済は10年間で65万倍の成長?
05.MAR.08
香港:美朋有限公司 董事長
1997年10月、私は中国政府から外国人専門家として表彰された。そして10年後の2008年2月、私は琿春市政府から金メダルをもらった。今回はこの二つの私の体験を題材にして、「中国経済が10年間で65万倍に成長した」ことを独断と偏見で論じてみたい。
1997年10月、私は北京の国際貴賓館の大広間で、当時の宋平共産党国家常務委員(元周恩来総理の政治秘書)から、じきじきに外国人専門家友誼賞の表彰盾を手渡された。その後、人民大会堂で、李鵬首相主催の晩餐会に招かれた。私はまさに13億人のトップからその功績をたたえられたわけで、これはたいへんな名誉なことであった。その式典では、中国全土の各界から推薦された50人ほどの外国人が私と同時に表彰され、晩餐会を共にした。当時、私は湖北省に4合弁工場、上海に1合弁工場を稼動させており、従業員総数は1万人に及んでおり、また外貨獲得高は湖北省のトップを3年ほど続けていた。その功績が中国政府から外国人の経済専門家として評価され、国家表彰となったわけである。とにかく名誉あるこの表彰盾は、現在、小島衣料本社の応接間に飾ってある。しかしこの盾は真鍮製の縦30c×横20cほどのもので、その名誉としての価値を取り除けば、実際の価格は1万円ほどのものである。
2008年2月、私は琿春市政府から金メダルをもらった。当日は琿春市政府の大会議室で、政府主催の2007年度経済総括会議が開催され、1000人ほどがそこに参集していた。会議は琿春市共産党書記の演説で始まり、次に2007年度の琿春市経済に貢献した人々が順番に表彰された。最初に壇上に上がったのは、火力発電所の社長であり、彼の表彰理由は税金を8000万元(約12億円)納付したことだった。彼は表彰状といっしょに200万元(約3000万円の)報奨金を共産党書記からもらった。次に鉱山会社の社長が登壇した。彼もまた高額納税者であった。私は30番目ぐらいで呼び出された。私の琿春の工場は設立後2年を経過し、やっと1000人ほどの規模になっていたが、利益を計上し多額の税金を払うまでにはいたっていなかったので、報奨金はなかった。それでも私の経済顧問としての貢献が評価され、副市長から金メダルをいただいた。私のあとにも50人ほどの人たちが表彰され、一回り小さな金メダルを手渡されていた。合計80人ほどが表彰されたが、そのうち外国人は私も含めて数名であった。その後、琿春市共産党書記主催で、近くの食堂で宴会が行われた。そのときのメーンテーブルには、高額納税者がずらりと並んだ。私の席は片隅のテーブルにあった。琿春市は人口20万人の小さな地方都市であり、今回私はそこの副市長から、金メダルをもらった。これは特別に名誉なことではない。しかしもらった金メダルは純金製で、直径は8センチあり、ずっしり重く、時価は100万円ほどになる。現在、この金メダルは小島衣料本社の金庫に保管してある。
今回、私は威張って私の受賞を披瀝しているのではない。この10年の変化に注目してもらいたいのである。まず表彰の評価基準が大きく変わったということである。10年前は外貨獲得高や労働者の雇用機会の創出などが評価の大きな対象になっていたのである。ところが現在の中国では、貿易黒字の結果、外貨がありあまるようになっており、それはもはや評価基準から外された。現在、もっとも評価されるのは納税額である。
次に表彰のときに実際に授与されるものが変わったのである。国家表彰でも1万円の真鍮製の盾であったものが、地方政府の表彰でも100万円の純金メダルに変わったのである。それだけ中国に経済力が着いたという証である。その差は100万倍である。
さらに10年前には国家表彰された私の行為が、今回は琿春市でも30番目になってしまったということである。13億人のトップから表彰されたものが、20万人のトップからの表彰に変わったのである。つまりそれだけ私のランクがさがったわけであり、表彰する側の中国の経済的地位があがったということである。その差を数字で表現してみると、6500倍(13億人÷20万人)となる。つまり、現在私が温家宝首相に表彰されようと思うと、10年前の6500倍の経済貢献をしないと無理だということである。琿春市でさえ、30番目のお情け表彰なのが実態なのだから。
100万倍×6500倍=65万倍
つまりこれが「中国経済が10年間で65万倍に成長した」という私の独断と偏見の計算根拠である。