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京大上海センターニュースレター
206号 2008327
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

      中国・上海ニュース 3.17-3.23

○上海訪問記

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中国・上海ニュース 3.17−3.23

ヘッドライン

 

■ 中国:林・世銀副総裁、五輪後不景気にならない

 上海07年平均賃金2892元

■ 中国:商業銀行、金の先物取引が許可 

■ 中国人民銀行調査:物価高「耐えられない」49%、過去最高に

■ 市場:石油製品の小売価格制度、当面は現行を維持

■ 電信:携帯電話契約件数、5億6500万件に

■ 北京:自動車保有量320万台に

■ 上海:最低賃金が月額960元に引き上げ

■ 上海:浦東国際空港、第2ターミナルが26日に使用開始

■ 上海:すべての職場、室内禁煙へ

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上海訪問記 

ダイキン工業(株)元中国担当役員 八木貞憲

上海へ春節明けの20日から5日間、5年ぶりに行ってきた。中国事業立ち上げのため、1995年訪問した当時の上海は、白かグレーのみすぼらしい服装の人ばかりで、建物も灰色が殆んど、提携先国有企業の工場は古色蒼然とした設備で足踏式ミシンを細々と作っていた。それから12年後の今の上海は大阪と殆んど変わらないカラフルな服装の若者たちが街を闊歩し、地下鉄に乗っている。高層建築が林立し、巨大ショッピングモールにも商品があふれている。12年間の変貌振りはすざましいが、次ぎの12年後はどうなっているかを想像すると、末恐ろしい気持ちになる。

 最初に訪問したダイキンの現地法人「大金(中国)投資有限公司」は外資系エアコンメーカーの中でダントツの業績を挙げていて、民族系メーカーのトップクラスと比較しても売上高で遜色なく、利益は上位にある。高級住宅、マンションなどに設置される高機能エアコン分野では他社が全く追従できない地位を築いている。中国事業成功の要因はダイキンが日本で数十年かけて創出してきた事業システムをそっくり移植したことにある。そのうえ今回の訪問でわかったことは、この5年間で中国市場にマッチした独自のビジネスモデルを創って、大胆に実行していることが飛躍の要因になっている。

中国のエアコン産業を概括すると、需要量は自動車と同様、アメリカに次いで世界第2位である。遠くない将来アメリカを抜くことは確実とおもわれる。大金(中国)総経理の談話では「中国市場を制覇するメーカーが、世界市場の覇者になるだろう」とのこと。小型住宅用エアコン分野では、民族系の格力、美的(広東省)が双璧で、家電製品全体では首位の海爾(山東省)はシェアを落としている。日系メーカーの多くは、市場から退出の瀬戸際に立たされている。高機能エアコンはダイキンの独壇場で、小型住宅用に強い民族系メーカーとの棲み分け状況となっている。高層ビルなどで使われる大型業務用は米系が強い。民族系、外資系に共通して言えることは、エアコンに特化している企業がシェアを上げているのに対し、総合電機メーカーは苦戦しており、この傾向は今後も続くとおもわれる。

 2日目は復旦大学を訪問。管理学院、市場管鎖系の韓中和副教授および京大上海センターの曾憲明経済学博士と、筆者が問題提起した中国製造業の生産性上昇、自社技術開発力強化見通し等について意見交換した。電機、電子、情報関連製造業トップ10で、2006年の利益率が最も高いのは華為技術(有)6.3%で、他の9社は4%に満たぬ低収益である。自社技術開発力が乏しいため高付加価値製品が生み出せぬことが低収益の原因ではないかとの筆者の問いに対し、国有または集団所有の企業が殆んどであるため、利益を低く抑えていることも起因しているとのことであった。今後の自社技術開発力上昇見通しについては、中国は技術後進国なので、コピー等の手段で、安価な労働力を使って商品の大量生産が可能なため、先進国へのキャッチアップは後れるであろうとの答えであった。筆者の事前問題提起に対し、中文の関連資料を頂いたが、その内容報告は別の機会にさせていただく。

 45日目は地下鉄を利用して浦東新区などビジネス街、ショッピングモールなどを視察した。地下鉄のどの車両にも老人は全く見当たらず、筆者がすべての車両でおそらく最高齢者だった。そのためか、若い女性が満員のドア付近で車内へ入れるよう通路を空けてくれたり、学生と思われる若者が自動発券機の使い方を教えてくれたりした。12年前は街の随所に「唾を吐くな」と云う注意書きがされていたが、今回は2日間で唾を吐く人を見たのは一度だけだった。「衣食足りて礼節を知る」が進んでいる様である。上海市は中国のなかで所得水準が抜群に高く、労働力人口の比率も高いので当然かも知れぬが、「人口ボーナス」の恩恵を最もうけている地域であることを実感した。                         2008.2.26

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訂正 先週号でお送りした小島正憲氏「中国経済は10年間で65億倍の成長?」の文章は「中国経済は10年間で65万倍の成長?」に訂正願いたいとのご本人からの連絡がありました。訂正後の文章は京大上海センターのホームページに掲載されていますので、ご覧いただければ幸いです。