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京大上海センターニュースレター
第218号 2008年6月19日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
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上海センター・シンポジウムのご案内
○中国四川省大地震被災者に対する義捐金募集のお知らせ
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中国・上海ニュース 6.9-6.15
○陝西省・京都府友好提携25周年記念環境・省エネビジネス交流促進会議に参加して
○「Chinese Economists Society 2008」会議(於:天津)に参加して
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上海センター・シンポジウムのご案内
「”アジア共同体”を京都から構想する」
2002年1月、シンガポールで当時の小泉首”相が「東アジア共同体」を提唱して以来、日本でも「東アジア共同体」の枠組みに関する議論が日本国内で、また多国間で交わされています。「ASEAN+日中韓」なのか、さらにインド、オーストラリア、ニュージーランドを含めた「ASEAN+6」なのか、などが論点となっています。今回は、これらの論点に加え、共同体の必要性、条件、現実性などの問題について、中国、韓国の関係部門の研究者に論じていただきます。日本側からも、この分野の研究書を最近出版された板東慧国際経済労働研究所会長、また本上海センター設立に貢献された本山美彦京都大学名誉教授・大阪産業大学教授のご報告をいただきます。
なお、本シンポジウムに先立ち、13:00-13:45には上海センター協力会総会を経済学部大会議室で開催、シンポジウム終了後には、再び当会場にて懇親会を開催します。合わせご参加いただければ幸いです。
会場 京都大学時計台記念館2階国際交流ホール
挨拶 森棟公夫 京都大学経済学研究科長
総合司会 山本裕美 京都大学経済学研究科上海センター長
討論司会 大西 広 京都大学経済学研究科上海センター副センター長
報告者
@張 燕生 中国国務院発展改革委員会対外経済研究所所長「東アジア共同体-中国の視点-」
A安 乗直 ソウル大学名誉教授「東アジア共同体-韓国の視点-」
B板東 慧 国際経済労働研究所会長「東アジア共同体かアジア共同体か」
C本山美彦 京都大学名誉教授、大阪産業大学教授「日本は米国の軛から逃れることができるか」
共催 京都大学上海センター協力会 京都大学人文科学研究所中国研究センター
後援 北東アジア・アカデミック・フォーラム
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中国四川省大地震被災者に対する義捐金募集のお知らせ
去る5月12日、中国四川省で発生した大地震は、なお広範な地域に深い爪痕を残しており、復興までにはなお時間がかかるものと考えられます。
我が京都大学大学院経済学研究科上海センターといたしましても、近年研究・調査を通じて、中国内陸部との密接な関係を構築してきておりますところ、被害に遭われた方々のご冥福をもお祈りしつつ、一刻も早い現状回復に向けて、何らかの貢献をしたいと考えておりました。
この度、学内においても義捐金募集及び送付の体制が整いましたので、下記要領にて義捐金を募り、在大阪中国総領事館に送付することといたしました。
中国経済に関心をお持ちで、弊センターを平素より応援してくださる皆様方の、暖かい御理解と御支援につき、心よりお願い申し上げます。
平成20年6月13日
京都大学経済学研究科上海センター長/教授 山本 裕美
記
1.主催:京都大学経済学研究科上海センター
2.募金方法:
(1)口座振込:銀行名 京都銀行百万遍支店
口座番号 普通 4062664
口座名 京都大学上海センター(キョウトダイガクシャンハイセンター)
(2)シンポジウム時の募金:
6月30日に当センター主催予定の上海センター・シンポジウム「”アジア共同体”を京都から構想する」においても、受付に募金のための箱を設置させていただきます。(場所:京都大学時計台記念館2階国際交流ホール前)
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中国・上海ニュース 6.9−6.15
ヘッドライン
■ 中国:5月CPI上昇率7.7% 前月比で伸び鈍る
■ 日中:東シナ海ガス田、決着へ
■ 中台:直行チャーター便、7月から週4日運行
■ 中国:70都市、5月の住宅価格9.2%上昇
■ 中国:人工林保存面積、8億ムー(5300万H)を超える
■ 中国:1−5月、都市部固定資産投資が25.6%増
■ 中国:華南各省の大雨、経済損失260億元
■ 上海、上海総合指数、17日急落、18日急反発
■ 上海:初の手足口病児童患者の死亡が確認
■ 四川:5月の宿泊・飲食業小売総額8%減
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陝西省・京都府友好提携25周年記念
環境・省エネビジネス交流促進会議(2008年5月23日)に参加して
上海センター副センター長/経済学研究科准教授 宮崎 卓
同 運営委員/経済学研究科教授 劉 徳強
本ニューズレターでも先般お知らせいたしましたとおり、去る5月22日、中国の西安交通大学公共政策・管理学院と本学経済学研究科、更に西安交通大学西部発展研究中心と本センターの間において、学術交流協定が締結されました。これにより、西安交通大学との、学術・教育面での交流が始動するに到っております。
一方、今年は陝西省・京都府が友好提携を開始して25周年という節目の年にもあたっており、中国の内陸部=西部の開発における拠点でもある西安市を擁する陝西省と京都府の間においても、産学公連携の動きが出てきており、今後本センターも上記学術面でのチャンネルを活用、貢献していく所存です。
こうした流れの中、去る5月23日、陝西省代表団が入洛され実施された諸交流活動の一環として、標記ビジネス交流会が開催され、関心を有する日本側企業、行政、大学等が参加、陝西省側の行政関係者と情報・意見交換を行ないました。本センターよりは、劉、宮崎の2名が参加いたしました。まさに西安にて上記学術交流協定締結とほぼ同時期に、京都でビジネス面での交流が行なわれたことになります。
同会議は経済交流全般をテーマとする経済交流会と、特に環境分野に焦点を絞った環境・省エネビジネス交流促進会議の2つの分会に分かれて進行しました。両会議ともに、両代表団の責任者の挨拶、陝西省各市の紹介、日本側企業の活動状況の紹介といった形で進められましたが、参加した印象は以下のとおりです。
【経済交流会】
中国全体では、外資政策の見直しを進めている中で、内陸部の陝西省、特にその下の市では、依然として外資に対する期待が大きく、積極的な姿勢を感じ取れます。これは沿海地域の「先発組」において、産業構造の調整などが行われ、外資に対する選別が進んでいるのに対して、これまで外資企業があまり進出していない内陸地域では、外資企業に積極的な姿勢を示すことで、この機会を捉えようとしているものと思われます。
また、中国では、外資企業を誘致する時に、ハイテク企業や大企業を歓迎してきましたが、内陸部においては、むしろ中小企業や労働集約的な企業を積極的に取り入れるべきではないかとの考えが示されました。例えば西安近郊の地方の担当者は、このような労働集約的な企業でも、規模の小さい中小企業でも積極的に誘致したいと明確に述べていたのが印象に残りました。京都府は、今年秋に、希望する企業を対象とした現地視察を検討しているとのことです。
【環境・省エネビジネス交流促進会議】
中国側からの報告は、恵まれた自然環境を生かしたエコツーリズムに関する誘致に主眼を置くものが散見された一方で、日本側からのプレゼンは、汚染対策・省エネにかかわるものが中心的でした。
日本側は環境への影響など面で優れた技術を多く有していますが、一方でこうした技術およびそれらを応用した製品導入に要するコストも、沿海部に比べより経済力が弱く、厳しい財務基盤に立つ内陸部の企業から見れば重要なファクターとなりうるものです。
また、中国で納入実績がある日本企業の担当の方からは、中国国内でも、例えば環境保護部門(環境保護局)の認証を獲得する必要のある企業においては、多少高価であってもクオリティの高い技術にニーズがあり、そうした場合に受注が成立した実績ありとのお話もあり、環境政策(及びその実施)が製品導入の際のスペックに及ぼす影響も無視できないものです。
このように、環境分野における日中ビジネス協力については、コスト・政策といった要素にも留意しつつ、如何に「win-win関係に基づくビジネスモデル」を構築していくか、という点が最重要の課題かとの印象を持ちました。
本年10月頃には、京都府を中心に、ジェトロ地域間交流支援(RIT)事業も活用して、環境・省エネ分野、特に水処理技術の移転を目指し、関西の環境・省エネ関係企業に参加を呼びかけ、中国北京市中関村・陝西省への環境訪中ミッション派遣も予定されているとのこと。また近く、オール京都の産学公連携によるプラットフォームとして「京都産業エコ推進機構」が立ち上げられるとのことであり、環境・省エネ分野において、企業間のビジネスマッチングと支援のしくみづくりがより具体化していくことと思われます。
京都大学としても、この産学公の連携の動きに対し、全学レベルでは産官学連携本部、工学研究科などを通じ関わってきた経緯がありますが、我が経済学研究科/上海センターとしても、上記のとおり政策・コスト面での研究・調査の深化とその成果の還元という方向から、その持てるリソースを活用し、上記連携関係の強化に貢献していきたいと考えております。
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「Chinese Economists Society 2008」会議(於:天津)に参加して
京都大学経済学研究科講師 マスワナ ジャン・クロード
本会議は,中国およびアメリカ合衆国を中心とした研究者250名以上が参加して2008年4月17日-21日に開催された。会議のテーマは「中国経済開発の新たなステージ」というものであった。2008年は,中国における経済改革30年目という節目の年である。中国経済を新たに方向付けるため,国務院は2006年6月に天津濱海新区(Binhai New Area)を認めている。実のところ,濱海プロジェクトは,深圳および浦東プロジェクトと同じレベルの国家優先事項となっている。地理的観点から,中国は南の深圳から始め,中央海岸にある浦東と北にある濱海の開発を行い,海岸側の開発を完全に行うことを目指している。深圳と浦東と同様に,濱海も今後,中国の経済成長の起爆剤となることが予想される。この観点から,そして大会のテーマに沿って,会議ではほとんどの発表が中国の経済開発に関わる諸問題と新たな開発ステージにおける改善の必要性について議論したものであった。収入格差,土地・住宅市場,今日の中国における公的サービスの役割,濱海新区の今後の展望,食品安全と移住,今後の労働者,人的資源の形成と生産性向上,高齢化する人口,環境保護と中国貿易と今後の発展といった多岐にわたる話題の研究発表がなされた。
招待講演では,収入,台湾―中国経済,国際貿易システムにおける中国の役割について議論された。開会講演では,国家財政と福祉経済に高名なArnold Harberger教授 (カリフォルニア大学)が,中国は競争の優位性を得るために為替レートを操作しているという主張を覆し,会場を驚かせていた。
最後に,大会の総括として,中国経済開発のさらなる研究の必要性と,中国が世界経済において果たす役割とその意味についてのより深い理解が必要であることが強調された。