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京大上海センターニュースレター
227号 2008819
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

     中国・上海ニュース 8.11-8.17

     オリンピック開催中の北京から 

〜海外メディア情報の制限解除と今後の報道のゆくえ〜

     温州商人と浙江省騒動()

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中国・上海ニュース 8.11−8.17

ヘッドライン

■ 中国:コークス輸出税また引き上げ、40%に

■ 中国:7月CPI上昇率が6.3%、7カ月ぶりに6%台に低下

■ 中国:7月貿易総額1兆4千億米ドル超、貿易黒字9.6%減

■ 中国:7月の社会消費財小売総額23.3%増、伸び加速

■ 中国:7月工業増加値同期比14.7増、前月比初のマイナス成長

■ 中国:水価格を08年内に引き上げ

■ 自動車:9月1日から新しい自動車消費税率を導入

■ 新疆:バス転落事故、高校新入生を多く含む24人死亡

■ 上海:7月の新規住宅の取引面積は前年同期比56.9%減少

■ 上海:生活ごみの処理が有料化へ

 

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 オリンピック開催中の北京から 

〜海外メディア情報の制限解除と今後の報道のゆくえ〜

                   協力会会員 北京在住 小林治平

 

 既にメディアでも報じられているように、オリンピック開会を機に7月30日前後より、それまで全くできなかったBBC(中国名:英国広播公司)、VOA(美国之音)、ドイチェベレ Deutsche Welle(徳国之声)の英語・中国語・ドイツ語サイト等へのアクセスができるようになった。 日本では全く問題のない事が中国ではできない事に、私自身も閉塞感を感じ息苦しく思っていたが、ここにきてかなりの「解放感」を感じている。北京でこれらの情報に接する事ができるようになるとは全く思っていなかった。願わくは、この措置がオリンピック終了後も続きますように。

 

 8月8日にオリンピックの開会式が行われ、その際の約一時間にわたる、高名な映画監督張藝謀(Zhang1 yi1mou2)氏による出し物の演出に関してさまざまな意見が出ている事は既に報道されており、これまたご承知の通り。

8月15日に当地で聞いたNHKラジオ『NHKジャーナル』@は、「開会式の評価についての報道の流れが変わってきている」と表現していたが、確かに開会式に対する当初の好意的な評価は、一連の「演出」が明らかになった後は、冷ややか、かつ厳しいものになってきている。

 一つは『歌唱祖国』という中国人なら知らぬ者のない愛国歌を歌った赤いワンピース姿の少女は、実は自前の声ではなく予め吹き込みをした他の少女の声であった事(「口パク」と複数の日本の新聞が形容)、二つ目は打ち上げた花火等や特殊効果の映像が予め取り置きされたものだった事、三つ目に国旗を持って運んだ「56民族の代表」の子どもたちが、実はほとんどが漢族であり衣装を着ただけだった等である。

 報道によると既に共産党宣伝部の通知で、この「口パク」の件に関しては報道しないように指示が出されたとの事であるA。しかし上記のように「解禁」となった国外のメディアが、オリンピック特集の中で詳細に報じている事もありB、既に国内で事実が広く知れ渡っているようだ。

 

 私はこの一連の出来事を見て、2つの事を思い出した。一つは1976年9月の毛沢東主席の逝去とそれに伴う葬儀に出席した「四人組」の記録写真である。現実には葬儀に出席した「四人組」が、「打倒」された後に発行の刊行物には参加しなかったものとして記録写真から「抹消」され、「修正」されたものが掲載された。もう一つは1945年以後の中国の内戦(解放戦争)に従軍した元日本兵の記憶を書いた本で、それによると○○市が解放された時の記録フィルムが撮れていないという理由で、後日大衆を動員してその解放日の状況を再現し、記録におさめた事があったというC。

 メディアの役割を党の「喉と舌」にたとえて規定する中国共産党の立場で考えると、今回の開会式の「演出」もなんら不都合なもの・不適当なものとする見解は出ないのかもしれないD。しかし、それは世界のスタンダード、或いは常識的な考えからはずれているのではなかろうか。

 結果、中国の報道は「オリンピック賛歌」一色で、金メダル獲得をした選手や家族の模様や周囲の賞賛が多い(この点は日本も同様な事は起こるが)、海外の評価を伝える記事・報道も当然ながら肯定的なもののみとなっている。

 

 BBCVOA等のみがメディアを代表する存在とは思わないが、その中国における影響力は小さくないようだ。それを「解禁」した事は、今後の中国のメディアの報道のあり方にも影響を与える、与えざるを得ないのではないかと思う。そして当然その情報の「受け手」の意識も変えるだろう。

「オリンピック後」は株価・地価等物価の動き、景気の動向等が注目されており論議を呼んでいるが、この中国の報道の姿勢のゆくえも要注目点ではないかと私は思う。

08年8月17日記)

 

 

@NHKラジオ第一。当地では短波による放送が受信可能。通常はNHKHPから音声を取り出せるが、8月は夏期のメンテナンスのためとしてNHKはこのHP経由のサービスを中止している。

 

A08年8月15日 日本経済新聞 「開会式「口パク」報道禁止」

 

BBBC 8月13日 奥運開幕式作假、明星女孩假唱

 同  Aug,13  China Olympic ceremony star mimed

  VOA 8月13日 奥運開幕式造假能為中国争面子?

 同  同    国家利益高于一切就可以造假嗎?

 同  同    奥運”假唱”到底誰假?

 同 8月15日 開幕式56民族少年都是漢族扮演

 

C(目下書名著作者名不明につき確認後お知らせします)

DBBC 8月13  北京奥組委為開幕式女孩替唱辯護

 同  同    China defends Olympic show miming

 

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温州商人と浙江省騒動()

                                          08.AUG.08

                                         香港:美朋有限公司 董事長 小島正憲

 

3.7月下旬の各地の暴動

上記の評価基準に従い、7月下旬に起こった中国各地の暴動を分析すると下記のようになる。ちなみに貴州省瓮安県の暴動は暴動レベル2、浙江省玉環県の暴動は暴動レベル1

@7/21:時事速報。 広東省恵州市で17日、治安当局者が市民を殴り殺したといううわさが流れ、これに抗議する数百人が政府施設を襲撃する暴動が起きた。警官3人が死亡したとの情報もある。殴り殺されたといわれるのは、バイクで人を運ぶ仕事をしていた湖南省出身の男性。治安当局者に拘束され、釈放の条件として200元を要求されたが、拒否したため殺されたという。その後、政府施設や警察車両などが破壊される事態となったことから、数百人の人民武装警察部隊が出動して鎮圧した。

→ 暴動レベル4 (殺人がなかったとしたら、暴動レベル2

A7/21:時事速報。 少数民族地域の雲南省孟連県で19日に発生した暴動について、地元公安当局が住民20人を拘束したと伝えた。暴動では警察のゴム弾発射を受け、住民2人が死亡。衝突拡大を阻止するため、数百人の武装警察隊が現地に投入された。この日、1000人以上の農民らと100人以上の警察隊が衝突。同県政府が、地元で栽培されるゴムをめぐり、農民が独自に販売することを禁じ、県の関係部門が一括して買い上げた上で売るように命じたことをきっかけに農民が不満を高めた。政府の買い上げ価格は独自に販売するよりも40%低いという。死亡した2人と重症の1人はすべてタイ族。→ 暴動レベル4 

B7/21:時事速報。 河北省広宗県公安局で今月9日、爆弾事件が発生した。庁舎内のガラスが割れ、10人が負傷し病院に搬送された。爆弾事件の背景は不明だが、「県内のある村民の警察官に対する不満が原因である可能性もある」と地元タクシー運転手が証言している。 → 暴動レベル4

C7/22:時事速報。 広西チワン族自治区の欽州市で15日、失業した労働者や強制立ち退きの対象となった農民1000人以上が市政府庁舎前で抗議デモを行なった。さらに数百人の農民が合流しようとしたが、人民武装警察に阻止され10人以上が拘束された。デモ隊は当局側が対話に応じたため解散した。→ 暴動レベル2

D7/24:時事速報。 雲南省昆明市で21日に起きたバス連続爆破事件で、同市公安局は23日、爆発物が入っていた手提げ袋を公開した。普洱茶の会社の袋で、最初に爆破された路線バスから見つかった。一方公安局は有力情報の懸賞金を10万元から30万元に引き上げると発表した。 → 暴動レベル4

E7/28:時事速報。 2週間後に迫った北京五輪の競技チケットの最終分の販売が25日午前、北京市内で始まり、5万人以上が長蛇の列をつくった。五輪本番では観客らが押し合いで将棋倒しになったり、長い待ち時間に不満が続出したりするトラブルが懸念されるため、公安当局と武装警察はこの日、「予行演習」も兼ねて1万人以上を動員、厳戒態勢を敷いた。しかし、「われ先に」と急ぐ人たちで現場は混乱状態に陥り、警官による暴行が相次いだ。競技会場に近い五輪センター区の野外広場には、多数の徹夜組を含めて数キロに及ぶ列ができ、公安や武装警察が包囲する形になった。公安当局者は列の中で騒ぐ者や不審な人物を見つけると、列から引きずり出して公衆の面前で殴る蹴るの暴行を加えるなど、暴力で秩序を維持しようとの強硬姿勢をあらわにした。 → 暴動レベル1

F7/30:時事速報。 雲南省の昆明空港で29日朝、航空機の出発が遅れて一夜を過ごした乗客が宿泊や食事の手配がなかったことに怒り、制止しようとした警察と衝突、机やパソコンを壊すなどの騒ぎがあった。同空港では28日夜中国南方航空の長沙や貴陽行きの3便が悪天候のため離陸できなかった。29日未明、同航空は一部の乗客にホテルでの宿泊を通知したが、車の手配はなく、ホテル側も宿泊の連絡を受けていなかった。乗客はホテルまでタクシーで往復した揚げ句、空港ターミナルで一夜を過ごさざるを得なかった。昆明では21日に連続バス爆破事件が起きて空港の警備も厳重になっていたが、警察は騒ぎを抑え切れなかった。 → 暴動レベル1

 

4.最近の政府の暴動対応

過去において、一般民衆の行動に対する警察の対応は武力の過剰行使の時代が長かった。これは法律を守らず傍若無人に振舞う民衆を統御するために、必要な方法でもあった。しかし政府当局側からも数年前から、その行過ぎた武力行使に対して、見直しの傾向が出ていた。たとえば、私が3年ほど前、上海の地元の公安幹部と恒例の情報交換をしていた際、その幹部が、「われわれもだんだんやりにくくなった。今までは悪い奴をみかけたら、すぐに殴りつけることができたが、最近ではしっかり尋問して証拠を取ってからしかできなくなった。このようなわれわれの態度を弱腰と見て、悪い奴らがのさばり始めなければよいのだが」と話していた。

最近、中国共産党中央規律検査委員会や国家陳情局などは、「陳情工作違反に関する規律処分暫定規定」を公表した。規定は、警察が違法に武器を携帯または使用し、暴動など民衆集団事件に対処した場合、直接の責任者を最高で免職処分にすると定めた。中国では、政府機関に不満を訴える地方の農民や民衆の陳情が暴動に発展するケースが増えている。今月19日には、雲南省孟連県で住民と警察隊が衝突。警察の発砲したゴム弾で住民2人が死亡している。規定公表には、警察の腐敗や横暴に民衆の不満が高まる中、暴動鎮圧のため警察が権力を乱用し、ますます社会矛盾が深刻化することを防ぐ狙いがありそうだ。同規定は、違法に警棒や手錠などを使用して集団に対して強制措置を講じたりした場合も、処分の対象になるとしている。(時事速報:7/25付け)

民衆の抗議活動に詳しい中国社会科学院農村発展研究所の乾建エ教授は「地方の民と官の関係が緊張しており、公平かつ公正な司法制度の欠如が最大の問題だ」と指摘。「具体的な当局者への疑念が政権・体制への不満に発展し、地元政府そのものを敵とみなす傾向が強くなっている」と解説する。「地方では民衆の不満が鬱積、そのはけ口を探している。誰かの小さな怒りが出れば、それに便乗する形で燃え上がる“うっぷん晴らし型”の暴動が増加。当初の抗議の原因と直接関係のない多数の民衆が暴動当事者なっているのが特徴だ」とも話している。(時事速報:7/21付け)

中国のネット上で、7/01に上海の公安局に押し入り、警官6人を刺殺した楊佳被告(28)の犯罪をどう評価するかで熱い議論が交わされている。「楊佳をたたえる。尊い暴行だ」などと英雄視する書き込みも目立つが、背景には腐敗や横暴な態度が横行する警察への民衆の不信感と怒りが潜む。「警官を殺さなければ、警察制度は100年たっても変わらないだろう」。こうしたネットの書き込みのほか、北京の専門家も「楊の怒りの矛先は警察だけではない。その独裁体制に対する憎しみがあったのは明らかである」と指摘している。北京五輪を控え、中国指導部は、一警官に対する恨みという「小事(ささいなこと)」が、共産党の一党体制への不満という「大事(大問題)」に発展し、社会不安が高まることに懸念している。(時事速報:8/04付け)

北京の人権派弁護士は「中国社会の“平静”は抑圧で作られた見せ掛けのものだ」と語る。警察による横暴の裏で、民衆の不満は底辺に溜まっている。抗議行動に対して警察が違法に武器を携帯または使用するなど権力を乱用すれば、責任者を最高で免職処分にすると指導部が緊急に規定したのは、不満の拡大を食い止めたいからだ。国営新華社通信発行の「瞭望」誌までもこう危機感をあらわにする。「個人の極端な暴力行為に伴う現実の危害程度はテロを超えており、防止もテロより難しい」。今や、「警察国家」の変革が迫られている。(時事速報:8/04付け)

 

5.温州商人とは

温州商人は中国のユダヤ人と呼ばれており、「お金が儲からなければ死んだ方がまし」という強い信念を持っている。温州人は総勢で750万人と言われており、そのうち温州以外でビジネスを行い活躍しているのが200万人、つまり4人に1人が他所で商売をやっていることになり、そのうち50万人が海外で商売をしている。温州人は全世界に展開しており、その店舗も全世界に存在している。たとえばパリ市内やローマ駅周辺には幾千の店舗があり、パリだけで温州移民が15万人住んでいる。

温州商人は勤勉で、1分たりとも時間を無駄にせず、しっかり働く。温州商人は販売がとても上手である。お客に嫌な顔をされても、いつも笑顔で応対し、一生懸命売りさばく。温州商人の目から見ると、すべてが金儲けの種であり、彼らの頭の中にはいつもビジネスアイディアが溢れている。

温州市は三方を山で囲まれており狭い地域である。温州人は昔から他所へ進出していくことに抵抗がなく、お金儲けのために海外へもどんどん出て行った。そしてその地で、温州村を形成していった。日本にも温州人のみの組織が作られているほどである。

温州人から見れば、職業に貴賎はなく、その判断基準は「お金が儲かるかどうか」である。中国の改革解放後、温州人は中国の隅々まで進出し、小さな洋服の仕立て屋、靴の修理屋、小さい床屋などの人目を引かない仕事をコツコツと続け、お金を貯めて、小商人に成っていった。そして次には温州美容、温州服装、温州電子などの分野に進出し、温州ブランドを確立していった。その後、中国の経済成長の波に乗って、儲けたお金を金融や不動産で運用し、財閥になっていった。

                                                                     以上