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京大上海センターニュースレター
232号 2008922
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

     上海センター・シンポジウムのご案内

     中国・上海ニュース 9.15-9.21

     北京五輪の残した重荷(上)

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上海センター・シンポジウムのご案内

 

 中国自動車産業発展に関するシンポジウムは下記の要領で開催されることになりました。ご多忙のことと存じますが、万障を繰り合わせの上ご参加くださるようよろしくお願いいたします。

 なお、シンポジウム終了後、懇親会を予定されていますので、合わせご参加いただければ幸いです。

 

 

 

持続的成長は可能か

――サステイナビリティと製品開発力,輸出競争力――

 

主催:京都大学上海センター

共催:京都大学上海センター協力会

 

2008111() 13

京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール

 

総合司会 京都大学大学院経済学研究科教授 大西 広

 

13:00-13:10

挨拶 京都大学総長 松本 紘

 

 

13:10-13:30

京都大学大学院経済学研究科 教授        塩地 洋       持続的成長のための課題

                                                       ―全体テーマと報告構成―

 

 

 

 [第1部 サステイナビリティから見た中国自動車産業]

 

13:30-13:50

関西学院大学産業研究所 准教授         ブングシェ・ボルガー  環境・燃費・事故・渋滞

 

 

13:50-14:10

フォーイン第一調査部 部長                周 政毅       次世代低公害車の技術開発動向を探る

 

 

14:10-14:30

桜美林大学リベラルアーツ学群 講師           平岩 幸弘           廃車リサイクルの現状と課題

 

 

14:30-14:50

野村総合研究所グローバル戦略コンサルティング部 部長  北川 史和           地域所得格差と需要の偏在性

 

 

14:50-15:10

東京海上日動火災保険上海支店 総経理助理     八木 健一      自動車保険の現状と課題

 

 

 [第2部 製品開発力と輸出競争力]

 

15:30-15:50

元本田技研工業                       山口 安彦            海関統計から輸出の実相を解明する

 

 

15:50-16:10

京都大学大学院経済学研究科                   李 澤建            奇瑞における製品開発組織の進化

 

 

16:10-16:30

事業創造大学大学院 准教授                        富山 栄子            なぜロシアで中国車が売れるのか

 

 

16:30-16:50

豊田汽車(中国)上海分公司 主査                 東 和男            中国自動車産業の持続的成長の道

 

 

16:50-17:00

総括

 

17:10-18:30

懇親会 法経総合研究棟大会議室  司会 京都大学大学院経済学研究科 教授 八木紀一郎

御挨拶 京都大学大学院経済学研究科長 森棟公夫

  京都大学上海センター協力会副会長 大森經徳

 

入場無料

参加希望者は塩地(shioji@econ.kyoto-u.ac.jp)まで御連絡ください

 

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中国・上海ニュース 9.15−9.21

ヘッドライン

■ 中国:低迷する株式市場にテコ入れ策を打ち出す

■ 中国:汚染粉ミルク事件で死者3人、患者6244人に

■ 中国人民銀行:貸出金利と預金準備金率を下げる

■ 中国:中国初のQDIIファンド、リーマン破たんで大損

■ 中国:長江デルタをアジア太平洋地域の代表的都市群に

■ 不動産:70都市の8月建物価格、前年同期比5.3%上昇、伸び率逓減

■ 上海:農薬工場から除草剤を漏れ出し、市街地異臭漂う

■ 山西:土石流事故で孟学農省長が更迭

■ 安徽:北部で大規模な病虫害が発生

■ 天津:海水淡水化工場を建設中、アジア最大規模

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北京五輪の残した重荷(上)

                                           10.SEP.08

                                         香港:美朋有限公司 董事長 小島正憲

 

北京五輪の開会式で、ズラリとひな壇に並んだ中国首脳の顔はいずれも自信満々のように見えた。しかしながらその裏舞台で、急遽彼らは北戴河に集合し、五輪後の経済立て直しを検討する重要会議を行なっていたのである。そして閉会式では再び壇上に平然としてその姿を現し、米国をはるかにしのぐ金メダル獲得を誇示した。

この数年、中国首脳は北京五輪を成功させることに、全力を注いできた。中でも、彼らが絶対に避けなければならないと考えていた事態は、大会期間中に中国人民の不満が爆発し、暴動に発展することであった。さらに彼らは、世界各国に「中国が人権弾圧のない民主的な国であり、環境問題も少なく、すべての面で先進国並みである」ということを示さなければならないと考えていた。だから中国首脳は、あえて経済成長のスピードを落としてでも、インフレ退治や人民慰撫、環境保護政策などを打ち出す必要があった。

中国首脳は、破竹の勢いで成長し、幾多の経済指標で世界のトップに踊り出た中国の経済力を背景にすれば、それらの政策を実行し、北京五輪を見事に成功させることが可能だと考えていた。しかし彼らの打ち出した幾多の政策は、すでに北京五輪を前にして経済の大変調をもたらしていた。遅まきながら、その事態に気がついた中国首脳は、急遽、経済再生政策を打ち出した。北京五輪が終了した今、中国首脳は経済失政の重荷と格闘することになったのである。

韓国は1988年にソウル五輪を開催した。そのとき韓国首脳は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済急成長を背景にして、急速に民主化を進め、軍事独裁国家から脱皮した。ソウル五輪を契機にして、韓国は名実ともに民主主義世界へ仲間入りしたのである。ちょうどそのころ、私はソウル市内で小さな縫製工場を稼動させていたので、民主化の結果、急に労働者の権利意識が強まり、近所の工場でストライキが続発したことをよく覚えている。私の工場でも賃上げが続き、採算が合わなくなって工場操業を中止し撤退せざるを得なかった。

中国首脳の今回の一連の政策は、中国を民主主義国家へと押し進めることであろうが、同時に経済大変調という重荷を背負ったことにもなる。以下に上記の事情を、3項目に分けて分析する。

1.急成長経済への過信と経済失政  2.08年上半期:経済大変調  3.緊急経済政策出動

 

1.急成長経済への過信と経済失政

2006年2月、中国の外貨準備高は日本を抜いて世界最大となった。このとき中国のほとんどのマスコミは、「中国経済が日本経済を凌駕した」と大々的に報道した。中国の外貨準備高はその後も増え続け、08年6月末には、1兆8千億ドルを超え、日本(5月末で9千900億ドル強)の2倍近くになった。

2007年8月29日、上海・深圳の両株式市場の時価総額に、香港株式市場に上場している中国本土企業分を加えると、4.72兆ドルとなり、日本の株式市場時価総額4.70兆ドルを上回った。このときもほとんどの中国のマスコミが、「中国企業は日本企業をすべて買収できる」などとセンセーショナルに報道した。

この他、中国のマスコミでは、さまざまな分野で「世界一」あるいは「日本を上回りアジア一」の経済データが報道され始めた。さらに中国の各地方からそれを裏付けるような情報が中央に寄せられた。実際に税収も大幅にアップした。中国首脳はその数字や実績を根拠として、昨秋から矢継ぎ早に新政策を打ち出した。  

2007年度中国政府は、新たに労働契約法を制定し、すべての企業に社会保険への加入を強制実施し、全国で最低賃金をいっせいにアップさせた。さらにインフレ退治のため、全国の銀行に金融引き締めを強化させた。さらに環境規制を強化し、基準を満たせない多くの企業を廃業させた。毒入りギョーザや鉛入り玩具の問題が噴出したことを契機に、行政機関による検査監督を厳格に実施させた。民営企業からの不満を考慮して、外資などに与えられていた各種優遇策などを撤廃した。沿岸部からの労働集約型産業の締め出しを狙って、加工貿易の制限や禁止政策を打ち出した。 

ことに労働契約法の実施については、中国政府の中でもかなりの異論があったようである。しかし2007年6月山西省のレンガ工場の奴隷労働が発覚したことを契機に、海外からの人権問題批判をかわすために、胡錦涛主席の決断で実施になったという。またインフレに悩む庶民への慰撫政策として、最低賃金も各地で大幅アップの競争が起きるような状況になった。社会保険についても、それを先進各国のように労使双方半々で負担するのではなく、企業側に7割弱の負担を押し付け、強制実施に踏み切った。

中国首脳は中国経済絶好調という認識を背景に、人民に安心感を抱かせ、北京五輪を成功させるためには、少々の中小企業ぐらいつぶしてもかまわないという荒業に出たのである。ところがこれに電力やエネルギー高、原材料高などが加わり、さらに人民元高や人件費の大幅アップ(下記の労働関係ニュース参照)などが追い討ちをかけた。しかも昨年夏には、米国でサブプライムショックが起き、外需の大幅減退という予期せぬ事態も生起してきた。このような状況下で、中小企業は塗炭の苦しみを味わうことになった。それでも中国首脳はこれらの状況を無視し、幾多の新政策を予定通り実施した。

 

≪最近の労働関係ニュース≫

・時事速報 7/18 シーメンス、解雇した管理職に135万元の賠償金=上海で最高額。 独総合電機大手メーカーの中国法人シーメンス(中国)有限公司上海分公司が理由を明らかにせず管理職の謝氏を解雇した問題で、同公司は謝氏に賠償金135万元を支払い、労働契約を解除することで双方が合意した。解雇にからむ賠償額では上海市で最高額だという。謝氏は1995年、上海シーメンス移動通信有限公司に入社。2003年から、シーメンス(中国)有限公司の安徽省総経理を務め、05年には同公司と無期限労働契約を結んだ。しかし、上海分公司勤務中の今年4月、一方的に解雇されたという。謝氏はこれを不服として、浦東新区労働争議仲裁院申し立てていた。

・時事速報 7/22 深圳平均賃金、7年で倍に。 深圳市労働社会保障局は、5年内に市の最低賃金を倍以上に引き上げるとともに、段階的に平均賃金の4割の水準にまで高める方針を示した。同時に、平均賃金を7年以内に倍に引き上げる目標も明らかにした。

・時事速報 7/28 ウオルマート、9%賃上げへ=待遇改善で合意文書。 米ウオルマート・ストアーズの中国法人「ウオルマート(中国)投資」の広東省深圳事業部門で行なわれていた従業員の待遇改善をめぐる団体交渉がこのほど妥結し、労使双方の代表が24日、合意文書に調印した。それによると2008,9年の両年の平均賃上げ率を9%とすることなどが決った。

深圳市の労組組織である深圳市総工会は、「ウオルマートでの団体交渉の実戦を契機に、市内に進出している世界上位500社の企業でも団体交渉工作を推進する」と述べた。

・時事速報 8/21 瀋陽市統計局はこのほど、同市の2008年上半期の国有企業と郷鎮企業従業員の平均賃金が前年同期比15.4%増の1万4,415元だったと発表した。

NNA 9/01 済南の基準は15%、今年の昇給ガイドライン。 山東省済南市はこのほど、今年の同市の賃金ガイドラインを発表した。昨年の平均賃金2万2,766元を基準に、賃上げの基準を15%に設定、上限は22%、下限は7%としている。ガイドラインには法的拘束力はないが、同市は企業が賃金を決定する際の目安として、各社の業績を考慮しながら同範囲内で賃上げを実施するように求めている。

NNA 9/01 今後5年は最低賃金引き上げ=浙江省。 浙江省政府は8月30日までに、同省の最低賃金を今後5年間にわたり毎年10〜15%の幅で引き上げて行く方針を示した。今後、5年間で50%を超える大幅な引き上げが見込まれることになる。

 

2.08年上半期:経済大変調

2007年度の経済失政の結果、中国経済に大変動が起こった。これらの傾向は、すでに07年末から08年旧正月の期間にすでに出現していた。多くの中小企業は閉鎖に追い込まれ、外資がなだれを打って撤退したのである。私は1/21:「激変する中国の工場経営環境」と題する小論で、下記のように予見しておいたが早くも半年後に、それは的中したのである。

「私の周辺の民営企業でも、労働契約法で労働者からいじめられ、金融引き締めで銀行からは見放され、環境問題や加工貿易の制限で現地を追い出され、困り果てている経営者が多い。彼らと話していると、“いっそ、この際閉鎖してしまいたい”という言葉がよく聞かれる。きっと旧正月明け(2月20日前後)には、かなりの工場がなくなっていることだろう。しかしこれらの零細企業は、もともとモグリ営業が多く、今までも統計にはあらわれてきていないし、今後もあらわれてこないだろう。したがってこれらの事態に中国政府が驚愕するのは、かなりあとのことになるだろう」

日本の7/22付けエコノミスト誌も「中国大失速」と題してこの傾向を報道している。ところが中国首脳にとって、不幸なことに08年に入って、華中華南大雪害、四川省大地震、華南大洪水などの自然災害やチベット暴動が起きた。これらへの対策におおわらわであったため、経済大変調への対応が遅れたのである。6月になって、深刻な悲鳴が各地から起こった。このときになって中国首脳は事態の深刻さに気がついたのである。そして中国首脳はいっせいに各地へ現地調査に入った。

そこで中国首脳が見たものは、多くの中小企業の残骸であった。中国は自力更生型経済ではなく、他力依存型経済であり、現実の経済成長は幾多の外資の中小企業に依存して成立していた一面が大きい。世界的に有名な巨大企業は簡単には撤退しないが、名もない中小企業は危険を察知すればすぐに撤退してしまう。中国首脳はそれらの中小企業が中国経済を支えてきたという事実を誤認したのであろう。労働契約法や社会保険への強制加入、最低賃金の大幅アップなどの企業いじめに加えて、金融引き締めで貸し渋りや貸しはがしが行なわれ、資金繰りに窮した中小企業は一目散で中国から逃げ出したのである。中でも韓国企業の派手な夜逃げは格好の話題となった。これらの実状は、統計上にはまだ現れてきていない。しかし日常のニュースをつぶさに見て行くと、異常な事態が進行していることがわかる。以下にその一端を列挙する。

 

≪景気減速を報じるニュース≫

・時事速報 7/24 民営給油所300店が閉鎖=価格統制で利益出せずー広東省。 中国広東省ではこれまでに民営企業が経営する給油所約300店が閉鎖に追い込まれた。石油の国際価格が上昇する一方、国内価格が当局に統制されているため、利益を出せない状況になっていることが原因。このほか、石油の供給が不足する中、2大石油会社が傘下の給油所に優先供給し、民営給油所が必要な石油を確保することが困難になっていることも、大量閉店の原因だという。この担当者によれば、閉鎖に追い込まれる民営給油所は今後さらに増える見通し。

・時事速報 7/25 7割以上の中小企業が融資難。 山東省経済貿易委員会は22日、金融引き締めを背景に企業の資金繰りが悪化、同省の経済運営に大きな影響を及ぼしているとの見解を示した。中小企業への影響が深刻で、7割以上が融資獲得が困難になっているという。金融機関の企業向け融資利率は一般に25〜50%上昇し、このため企業財務コストも20%以上アップ、一部の企業は資金を維持するために、高利のコール資金に手を出す傾向も顕著だとしている。同委によると、今年に入り、融資残高の増加分1468億6000万元のうち、中小企業分はわずか9%、省内8市の調査では、今年500万元以上投資した中小企業の資金不足は748億元に達する。中小企業は融資を受ける際に差別を受ける傾向があり、工商など4大国有銀行の中小企業向け融資利率は約25%アップ、都市商業銀行と農村信用協同組合は50〜100%上昇している。

・日本経済新聞 7/25 中国、内需拡大へ減税検討。 中国政府は北京五輪後の景気下振れを防ぐため、減税など財政による景気刺激策の検討に入った。これまで高成長の外需の減速が鮮明になり、個人消費など内需を拡大しなければ景気が急減速する恐れもあるからだ。インフレが収まらない中で金融政策は引き締めを続けざるをえず、財政政策を通じて景気を下支えする難しいかじ取りを迫られている。日本企業の対中ビジネスにも影響が出るのは必至だ。

・日本経済新聞 7/29 中国、揺らぐ金融引き締め。 中国の胡錦涛政権内で、金融引き締め政策の見直しを求める声が強まっている。外需の落ち込みで景気の減速傾向が鮮明になり、沿海部の輸出企業などの経営が急速に悪化しているためだ。共産党・政府はなおインフレ抑制を最優先する姿勢を見せるが、北京五輪後の経済・物価情勢によっては、銀行に対する融資規制緩和など引き締め策を一部修正するとの観測も浮上している。

・時事速報 8/04 税還付率上げ、「焼け石に水」=繊維産業の苦境を続くー深圳業界団体。 中国政府は繊維メーカー支援策として同日付けで製品輸出時の税還付率引き上げを実施したが、深圳市の業界団体幹部によれば、生産コストが大幅に高まっている状況下では「焼け石に水」程度の効果しかないようだ。深圳加工貿易協会の陳永漢会長は「繊維産業では今年に入ってから資金調達コストが10−15%、原材料費が10−20%、労務費が約30%上昇した」と指摘。全体としてコストは15−20%高まっており、わずか2%の税還付率引き上げでは経費増加分をカバーできないと指摘した。

 中国政府は同日付けで、繊維製品輸出時に適用する増値税還付率を11%から13%へ引き上げた。  

・時事速報 8/01 深圳の製造業者、5割近くが移転か倒産に直面=外商協会調査。 31日付の中国系香港紙・文 報(B4面)によると、広東省の団体「深圳外商投資企業協会」がこのほど同市の企業を対象に行なった調査で、製造業者の5割近くが移転を計画しているか倒産に直面していることが分かった。8.4%の製造業者が廃業準備を進めており、36.3%が移転もしくは域外に生産拠点を造る意向だと回答。また、83.4%の企業がコストが10%以上上昇した、企業の存続が難しくなっており、11.7%が貿易業への転換を決め準備を進めていると答えた。同協会の担当者は「実際にこれほど多くの貿易業への転換が実行されれば、深圳の工業生産額などに重大な影響を与えるだろう」と懸念を示した。この調査結果は許宗衡市長にも報告されている。

・時事速報 8/08 福建省の繊維輸出、大幅減速=米国、香港向けが落ち込む。 福建省福州市の税関当局の統計によると、2008年度上半期に輸出された繊維・アパレル製品は34億2000万米ドルだった。前年同期比7%増となったものの、伸び率は21.5ポイント縮小し、大幅に減速した。

NNA 8/11 広東省の靴メーカー、淘汰進み値上げ傾向。 広州税関の統計によると、今年上半期の同省の靴輸出企業は昨年同期の5811社から3924社に大きく減少した。ところが靴製品の一足当たりの輸出単価は3米ドルで、昨年同期比30%増加した。コスト上昇や国際的な不景気などの影響を受け、これまで安値で競争力を上げていたメーカーが淘汰されたことが最大の原因とみられている。

NNA 8/15 企業の資金難顕在化か、預金残高が大幅減。 中国人民銀行がこのほど発表した7月の金融統計で、企業の預金残高が同月だけで55億元(約873億円)減少していたことがわかった。中央財経大学銀行業務研究中心の郭田勇主任は、企業の預金残高の減少について、「証券や不動産に流れた昨年とは異なり、企業が資金繰りに苦心していることが背景にある」と分析。当局の金融引き締めで融資を受けづらくなり、預金を切り崩す企業が増加したことが主な要因だと指摘している。

NNA 8/18 下半期は求人減か、広東省の労働力市場。 広東省労働・社会保障局によると、今年上半期の同省の労働力市場は、昨年同期比43.4%増の802万4000人規模に達した。うち求人数は18.5%増の446万600人、求職者は43.7%増の356万3400人となった。ただ下半期以降は、同省経済の伸び減速で求人数が減少することも予想されている。

NNA 8/19 広東の玩具メーカー、8割がすでに撤退。 広州税関の統計によると、今年上半期に製品を輸出した玩具メーカーは1404社で、うち新規参入企業は374社となった。メーカー数は昨年同期より3618社少なく、77.8%が業界から撤退した計算になる。昨年相次いだ玩具のリコールなどの影響で受注が減少し、さらに人件費などのコスト増に耐え切れず、企業力の弱い中小企業で撤退が増えているという。

・時事速報 8/20 中国進出の中小企業ら不満訴え、代金引き出し規制で資金繰り悪化も。 中国がホットマネー(短期的投機資金)の流入を防ぐために、先月中旬から企業の輸出代金を規制したため、中国に進出している外国中小輸出企業や中国の零細輸出業者らが深刻な資金難に陥っている。中国は貿易代金に偽装したホットマネーが流入するのを防止するため、先月14日に新しい為替管理規定を導入。当局が指定した口座に輸出代金をすべて入金させた後に、輸出品通関や前払い金などに関する情報を確認した上で、代金を引き出せるように制限したため、企業は送金された代金を自由に引き出すことができなくなった。大韓貿易振興社が中国山東省に進出している韓国企業を対象に調査した結果、28件の回答のうち8割以上が「輸出代金の引き出しが難しくなった」と不満を訴えた。バイヤーから前払い金の送金を受けても、企業側が銀行で引き出せないケースもあり、資金繰り悪化で「黒字倒産」を訴える声も出ている。

NNA 8/26 下半期はわずか3%増、乗用車市場に大胆予測。 全国乗用車聯席会の饒達秘書長はこのほど、今年下半期の乗用車市場の成長について、昨年同期比で3%程度の伸びにとどまる可能性があるとの報告を発表した。今年通年での伸び幅も10%以下にとどまる見通しとしており、これまでの2桁成長から急減速する見通しとしている。乗用車の販売不振がささやかれるなか、業界団体の間でも悲観的な見方が広がりつつあることが明らかになったといえる。同会は下半期の乗用車販売不振について、燃料油の高騰が大きく響くと指摘。

・同友会ニュース 8/26 繊維・衣類産業の成長鈍化鮮明に。 海外からの需要減などを受けて、苦境が続く中国繊維・衣類産業の低迷がより鮮明になってきた。中国紡織工業協会によれば、特に化繊製品の伸び率低下が著しく、今年上半期の伸び率は4.76%で、前年同期より3.23ポイント低下した。

・時事速報 8/27 宝鋼、10月から一部製品を値下げ=自動車などの需要減受け。 中国鉄鋼最大手の宝山鋼鉄は、10月から一部鉄鋼製品の価格を前期比でトン当たり200〜300元引き下げることを明らかにした。自動車市場の冷え込みなどに伴う需要減少を受けたもので、最大手の値下げは国内市場全体にも大きな影響を与えそうだ。

NNA 8/28 江デルタの印刷業、10月に倒産ピーク。 広東省朱江デルタ地区の印刷業1万5000社の多くが倒産の危機に直面している。クリスマスや年末年始用の需要が高まる繁忙期を過ぎた10月には、倒産が激増すると予測されている。受注の70%が輸出向けという企業は「この1年で人民元が9.7%上昇し、1000万元単位の損失を出した」と明かす。大多数の企業で、全体的なコストが前年比25%程度上昇しているという。このほか背景には、深圳市が今年2回にわたって引き上げた最低賃金、労働契約法の施行、紙のコスト上昇、環境保護規制の強化、などがある。アパレル、靴、玩具など印刷・包装企業の顧客の多くが経営難から倒産していることも原因の一つとなっている。

NNA 8/29 広州の不動産市場、7月も暗雲続く。 広州市国土資源・房屋管理局によると、今年7月の広州市中心部の新品住宅の成約額は、1平方メートル当たり9122元で、前月比4.7%下落した。昨年同期比では7.4%の上昇だが、専門家は引き続き下落の余地があると分析している。

・時事速報 9/01 中国企業、上半期の利益は15%増=上場145社、大幅減速。上海・深圳両証券取引所の上場企業の2008年上半期決算がほぼ出そろった。上場企業の9割に当たる1454社の純利益合計は前年同期比約15%にとどまり、7割近い伸びをみせた07年度上半期に比べ大幅減速した。

・時事速報 9/01 中国ファンドの損失合計17兆円=上期、過去最大に。 中国の基金管理会社59社が設定している投資信託など364ファンドの上半期の損失合計が1兆0800億元(約17兆円)に上り、上期では最大を記録した。上海株式が1月以降半年で5割近く下落するなど株式市場の低迷により、株式を組み込んだファンドの損失が大きく膨らんだ。

NNA 9/08 移転・廃業3万社以上=広東省で上半期。 珠江デルタ地域を中心に広東省で今年上半期に省外へ移転したり、廃業した企業が3万社余りに上ったことがわかった。広東省人民代表大会・財経委員会が4日に明らかにした。同委は、広東省が直面している新たな試練として、@経済成長の減速、特に第3次産業の伸びの全面的な落ち込み、A輸出、消費の落ち込みと、重工業を筆頭に工業生産高の成長の伸びの全面的な落ち込み、Bインフレの加速、C外国直接投資の急減、などを指摘している。

NNA 9/12 外資の撤退4千社以上=長江デルタの上半期。 これまで外資企業の進出が相次いでいた上海市、江蘇・浙江省の1市2省だけで、今年上半期に撤退した外資企業が4119社に上っていることが11日、明らかになった。ここ最近、労働コストの高騰や原材料価格の上昇、人民元高による輸出低迷など、投資環境が進出当初から大きく変化しているためだ。特に製造業での撤退が目立つようだ。 

・同友会ニュース 9/03 減税の声高まる=中小企業の倒産相次ぎ。 中央の財政収入の急増を背景に、全国人民代表大会常務委員会の構成委員の間で減税策を求める声が高まってきた。とりわけ経営難にあえぐ輸出型中小企業に対する減税を求める声が多い。華南地域を中心とした輸出企業は、人民元高や人件費上昇のあおりで経営が悪化。珠江デルタ地域では約7万社の輸出企業の1/3が08年度内に倒産、もしくは営業停止に追いやられるという。ある委員は、「中小企業は国内経済を支える屋台骨、中小企業の経営環境を改善することを真っ先に考慮する必要がある」と主張した。

・同友会ニュース 9/10 中小企業の95%が資金不足=広東省調査。 広東省中小企業局が行なった調査によれば、省内の中小企業の95%が現在、資金不足に悩んでいるという。資金不足の要因としては、銀行が融資に応じないことが挙げられる。ただし複数の銀行関係者は、中小企業の資金難は銀行の制だとの考えに反論して、「銀行自らが貸し渋っているのではなく、貸付抑制という当局の方針に従っただけ。実は銀行は融資したいと考えている」と話した。

 

                                              (つづき)