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京大上海センターニュースレター
235号 20081014
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

     上海センター・シンポジウムのご案内

     中国・上海ニュース 10.6-10.12

     最近の上海の話題

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上海センター・シンポジウムのご案内

 

 中国自動車産業発展に関するシンポジウムは下記の要領で開催されることになりました。ご多忙のことと存じますが、万障を繰り合わせの上ご参加くださるようよろしくお願いいたします。

 なお、シンポジウム終了後、懇親会を予定されていますので、合わせご参加いただければ幸いです。

 

 

持続的成長は可能か

――サステイナビリティと製品開発力,輸出競争力――

 

主催:京都大学上海センター

共催:京都大学上海センター協力会

 

2008111() 13

京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール

 

総合司会 京都大学大学院経済学研究科教授 大西 広

 

13:00-13:10

挨拶 京都大学総長 松本 紘

 

 

13:10-13:30

京都大学大学院経済学研究科 教授        塩地 洋       持続的成長のための課題

                                                       ―全体テーマと報告構成―

 

 

 

 [第1部 サステイナビリティから見た中国自動車産業]

 

13:30-13:50

関西学院大学産業研究所 准教授         ブングシェ・ボルガー  環境・燃費・事故・渋滞

 

 

13:50-14:10

フォーイン第一調査部 部長                周 政毅       次世代低公害車の技術開発動向を探る

 

 

14:10-14:30

桜美林大学リベラルアーツ学群 講師           平岩 幸弘           廃車リサイクルの現状と課題

 

 

14:30-14:50

野村総合研究所グローバル戦略コンサルティング部 部長  北川 史和           地域所得格差と需要の偏在性

 

 

14:50-15:10

東京海上日動火災保険上海支店 総経理助理     八木 健一      自動車保険の現状と課題

 

 

 [第2部 製品開発力と輸出競争力]

 

15:30-15:50

元本田技研工業                       山口 安彦            海関統計から輸出の実相を解明する

 

 

15:50-16:10

京都大学大学院経済学研究科                   李 澤建            奇瑞における製品開発組織の進化

 

 

16:10-16:30

事業創造大学大学院 准教授                        富山 栄子            なぜロシアで中国車が売れるのか

 

 

16:30-16:50

豊田汽車(中国)上海分公司 主査                 東 和男            中国自動車産業の持続的成長の道

 

 

16:50-17:00

総括

 

17:10-18:30

懇親会 法経総合研究棟大会議室  司会 京都大学大学院経済学研究科 教授 八木紀一郎

御挨拶 京都大学大学院経済学研究科長 森棟公夫

  京都大学上海センター協力会副会長 大森經徳

 

入場無料

参加希望者は塩地(shioji@econ.kyoto-u.ac.jp)まで御連絡ください

 

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中国・上海ニュース 10.6−10.12

ヘッドライン

■ 中国:0.27%の利下げ、利息税一時免除

 中国:中国共産党第17期中央委員会第回全体会議開幕

■ 中国:国慶節連休の国内消費21%増

■ 中国:改革開放30年、農民純収入年平均7.1%増

■ 中国:高齢者人口、世界の5分の1に

■ 上海:2010万博、アジアの45カ国すべてが出展へ

■ 上海:10日の上海総合指数、一時2000点割れ

■ 河北:「南水北調」プロジェクト、石家荘・北京区間で送水開始

■ 上海:史上空前の結婚ブーム、連休中に2.5万組

■ チベット:M6.6の地震 青蔵鉄道の運行ほぼ正常

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最近の上海の話題:防空警報・地下鉄移動図書館・無料貸出自転車

          09.OCT.08

                                         香港:美朋有限公司 董事長 小島正憲 

 

1.防空警報

9月初旬、私の住んでいる上海のマンションの告示板に、「920日:防空警報訓練」という張り紙が出た。

それを見て私は、その告示版にはいつも停電とか断水の類の張り紙ばかりなので、びっくりした。さらに、多くの上海市民の携帯電話にも、「上海人民政府の批准により、9月20日午前10時00分から23分までの間に、全市範囲内鳴防空警報を行います。広範な市民に積極的協力と、正常な仕事と生活秩序を保持することをお願いします」との事前予告のショートメールが配信された。

これらの情報に接し、私はなぜ今頃、防空警報訓練なのだろうかと思った。さらに20年以上前に、ソウルで工場経営をしていたとき、1か月間に1度、防空警報訓練があって、警報発令と同時に道行く人々までが、いっせいに退避した光景を思い出した。上海でもこのような光景が再現されるのかと思い、それを見るのを楽しみにしていたが、残念ながら急遽帰国しなければならなくなったので、わが社の数名のスタッフにその日をウオッチしてもらうように頼んだ。

彼らによれば、当日はかなり広範囲で警報が鳴り、予先警報・空撃警報・解除警報の順位で23分間続いたという。翌日のネット上では、「上海で建国以来最大の防空警報訓練 1000台以上の警報機が鳴る」と、題して、「20日午前10時、上海で1000台以上の警報機が鳴り、建国以来、最大規模の防空警報訓練が行なわれた。浦東と虹橋国際空港など一部の地区以外、警報が鳴ると同時に、各地の演習参加者は市民防空避難所に入った。関係者によると、これから上海市の警報訓練の範囲は広くなるという。“普通、夜に空襲になる可能性が高いため、必要があるなら、午後や夜に警報を鳴らすこともある”とのことだ」と報じた。

もともと9月20日は、2001年の第9回全人代で決められた、毎年1回の「全国民国防教育日」であり、今年は第8回目に当たるという。しかしこの日についての全国民の関心は低く、今まで知らない人が多かったという。今年、上海では全市でこの日を防空警報訓練日として設定し、上記のような訓練を行なったわけである。

一説には、上海市政府が2010年の上海万博を前にして、市民の防災意識を高め、同時に暴動やテロ行為などを未然に防ぐことを狙っているのではないかとも言われている。

なお9月20日には全国各地で、多彩な行事が行なわれた。

 

2.地下鉄9号線:移動図書館

9月初旬、上海の新聞を読んでいたら、そこに地下鉄9号線の駅に移動図書館ができたというニュースが載っていた。私は10月6日に、その移動図書館を見に行ってみた。ちょうど開館から1か月間が経過して、おもしろい結果が出ているだろうと思ったからである。

地下鉄9号線は、桂林路駅から松江新城までを、約45分間で走っており、途中に駅が12箇所ある。私は桂林路駅でその移動図書館を探したが、なかなかみつからなかった。駅員に尋ねてみると、目の前のブックラックがそれであるという。それは移動図書館というネーミングとは、ほど遠いものだった。さらにかたわらにゴミ箱のようなものが置いてあったのでよく見てみると、そこには書物回収箱と書いてあった。さっそく私はそれらをカメラに収めようと思ったが、ラックにはほとんど本がなかったので、わざわざ駅員さんから雑誌を借りてきて、写真を撮った。そうしなければ、チラシ置き場にしか見えないと思ったからである。

その後、駅員さんにいろいろと聞いてみた。移動図書館というのは、乗客が駅で乗るときに本を無料で借りて、降りるときに返すというシステムのことであった。私は日本のように車にたくさん本を積んで、各町を巡回するようなシステムを想像していたので、肩透かしを食ったような感じがした。また貸し出されるのは、本ではなくて、ほとんどが雑誌の類であった。私はだまされたような気がしたので、そのネーミングについて駅員に聞いてみると、彼は真顔で、「乗客が本を持って移動する。だからそれは移動図書館だ」という。私はそれを聞いて思わず大声で笑ってしまった。

駅員によれば、開始直後の9月最初の1週間ぐらいで、1日平均500冊がなくなった。1か月間で12000冊がなくなりロス率は50%であった。しかたがないので、「必ず返すのがマナーです」というポスターを貼ったところ、30%ぐらいに落ちてきたという。それでも好評なので、地下鉄の運営公司はこれを続行するという。私はその雑誌は宣伝用で、もともと無料のものでなくなってもかまわないものではないかと勘ぐった。それでも上海地下鉄9号線のこの試みは、おもしろいと思った。

ちなみにカナダのバンクーバーでは駅ごとに無料の新聞が毎日、山と積まれていた。たくさんの人がそれを手にして行く。もちろんその紙面の半分以上が宣伝である。日本の駅にも置いてあるタウンページや求人雑誌、マンションなどの宣伝物のような感じである。逆に有料の新聞を買う人はほとんどおらず、その販売所にもめったにお目にかかれなかった。カナダには中国人が多いので、バンクーバーには中国語と英語、モントリオールでは中国語と仏語の新聞が無料でたくさん至る所に置かれていた。

 

3.無料貸出自転車

時事速報に、9月から浦東地区で無料貸出自転車の会社ができるとの記事が載っていた。浦東地区といっても広いので、どこの町で開業するのかを上海事情に詳しい知人に聞いてみたがわからなかった。ネット上で検索したところ、その場所は地下鉄2号線の終着駅の張江高科駅にあることがわかった。私は10月6日にそこに行ってみた。これもちょうど開業から1か月間を経過したころであり、一定の結論が出ていると思ったからである。その会社は駅を下りてすぐのわかりやすく便利な場所にあった。私は係員に頼んで、さっそく試乗させてもらった。オレンジ色に統一されており、かなり派手で乗るにはちょっと気恥ずかしい自転車だったが、頑丈な作りで乗り心地も悪くなかった。

係員にシステムを聞いてみたところ、自転車を借りるには、まず担保金200元を支払い、専用カードを作り、そこに150元を前払いで振り込まなければならないという。いわばプリペイドカードのようなものが必要なのである。その手続き後、自転車を借りることになるのだが、30分間は無料であるが、その後は1時間経過するごとに1元を支払うことになっており、それはカードから自動的に引き落とされるようになっている。前払い金を使い切ったら、また新たに150元を投入しなければならない。つまり無料貸出自転車といっても、実際には完全な無料ではなくて、担保金と前払い金が必要で、しかも無料なのは30分間だけであった。

このシステムを聞いて、この商売は現在の中国によく見られる得意な羊頭狗肉商売のような気がした。しかし同時に新品の自転車は1台200〜500元ぐらいするわけだから、これは大儲けできるようなビジネスではないとも思った。それでもその後に、係員からこの無料貸出を行なっている会社が、上海でも有名な自転車製造会社であるということを聞いて、自転車の仕入原価そのものがかなり安いことがわかり、儲かるビジネスに成長するかもしれないと思い直した。係員が現在の保有台数は30台と話してくれたが、そこには5台しかなかったので、確認したところ、あとは貸し出し中であるという。また今のところ紛失した自転車はなく、好評なので10月末には100台に増やすという。

この会社が今後、大儲けできるかどうかは不明だが、このようなアイディアをすぐに企業化していくという起業家精神をうらやましく思った。さらに前掲の移動図書館を含めて、中国人の中に、このようなおもしろいアイディアで次々と起業をしていくバイタリティがある間は、中国経済は安泰であるとも思った。

ちなみにカナダのバンクーバーでは、バスの前に自転車乗せ場が作ってあって、サイクリングを楽しむ人たちがそれをうまく活用していた。これもおもしろいアイディアだと思った。日本人も放置自転車に頭を悩ましているだけでなく、斬新なアイディアを出してそれを企業化し、社会を活性化していく意欲が、今こそ必要なのではないだろうか。

 

                                                      以上