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京大上海センターニュースレター

256号 200939
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

  シンポジウムのお知らせ

  中国・上海ニュース 2009.3.2-2009.3.8

  「北京松下」に争議発生?

  最後の人民公社?

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シンポジウムのお知らせ

 

京都大学経済学研究科上海センター/経営管理大学院関西アーバン銀行寄付講座

中国企業シンポジウム

「中国の内需拡大政策下における日本のビジネスチャンス」

 

2009316()13:00-17:45

京都大学時計台記念館2F国際交流ホール

 

改革開放以降、中国経済は外資を積極的に取り入れることにより急速な成長を遂げ、GDPや対外貿易大きく拡大させ、世界経済におけるその存在感の高まりには目を見張るものがある。こうした中で、最近起きた世界的な規模での金融危機・経済危機は外需依存の強い中国経済を直撃し、輸出の急速かつ大幅な落ち込みにより、中国経済は急激な縮小傾向を示している。こうした事態を受け、中国政府はこれまでの外需依存体質を改め、内需依存への転換を目指して4兆元とも言われる大規模な内需拡大策を打ち出し、鉄鋼、自動車、造船、石油化学、紡織、設備製造、電子情報などの主要産業を対象として「重点産業進行計画」を策定中である。すでに飽和点に達している日本の内需と異なり、中国の内需は拡大の余地が膨大であり、そこに日本のビジネスチャンスがある。

本シンポジウムでは、中国政府が現在策定しつつある「重点産業振興計画」の内容を明らかにし、外需依存から内需依存への転換を図る中国経済に日本はどのように対応していくべきかを検討する。その上で、そこに日本にとってどのようなビジネスチャンスが存在しているのかについて、内外の研究者や実務家をお招きして検討していきたい。

 

報告内容()

杉本孝:大阪市立大学大学院創造都市研究科教授/京都大学経営管理大学院客員教授

「経済危機下の中国産業振興政策 −鉄鋼業の事例−」

稲田堅太郎 :法円坂法律事務所弁護士「中国の内需拡大策と対中ビジネス」(仮題)
山本晃:信永中和会計師事務所会計士「経済危機下の中国会計制度が直面する諸課題」(仮題)
宮崎卓:京都大学大学院経済学研究科准教授「京都環境企業の対中協力の可能性」

懇親会 18:00-19:30(会場検討中)

協力 京都大学上海センター協力会

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中国・上海ニュース 3.2−3.8

ヘッドライン

■ 中国:全人代開幕、「積極財政と適度な通貨緩和」で発展維持

■ 中国:09年国防予算14.9%増の4806.86億元

■ 中国:耕地面積約1.2億ヘクタール、危険ラインまで減少

■ 鉄道:上海−昆明が10時間以内に、滬昆高速鉄道を年内に着工

■ 産業:ネットゲームの売上高が激増

■ 自動車:マイカー保有台数、約1.3億台

■ 台湾:台北のパンダ館、見物客が50万人突破

■ 浙江、1億元の旅行券を発行しで消費拡大を狙う

■ 北京:五輪大会で1億元の黒字決算

■ 上海:08年暖冬、気温・降水量ともに過去最高

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「北京松下」に争議発生?

                                             05.MAR.09

                                                              小島正憲

2月27日付けNNAは、「パナソニック工場で数百人抗議か 希望退職の補償金めぐり」という見出しで、「北京松下電子部品有限公司」での従業員の抗議事件を報じた。それから1週間、その後の事態の推移についての報道はほとんどない。私も北京に飛んで取材したいのだが、現在上海近辺にも取材対象が多発しており、残念ながら身動きが取れない。したがってこの事件に関しては、真偽を確認できないままである。

私はこの事件は他の日系大企業に波及することも想定される深刻な事態であると考えている。この際、北京大使館、商工会議所、ジェトロなどを含めて、この事態に俊敏に対応し、「北京松下」に情報公開をしていただき、それを深く検討し、他企業ではこのような事態を回避できるようにすべきである。日本的経営を貫いている「北京松下」でさえ、責任者が軟禁されるような事態に陥っているのであるから、ましてや他企業では憂慮すべき事態が生起すると考えるべきである。「北京松下グループ」では、かつてSARSが発生したとき、工場内で数名の患者を出した。そのとき私は取材を申し込んだがあっさり断られた。今回はそのような態度を取らないで、ぜひとも「北京松下」は北京在住の日本人だけにでも情報公開をしていただきたいものである。

そのような願いを込めて、ひとまず下記に、京華時報のニュースを翻訳転載しておく。 

2009226日:京華時報より≫       翻訳者:中村香央里

25日の午後、松下希望退職者への補償金の金額に対して600人あまりの職員が抗議の意を表した。事務所にいた日本方総経理佐藤社長など三名の管理職を6時間あまりにわたり封じ込めた。当日夜11時ごろ佐藤社長などは外部からの援助のもと裏門から抜け出し、取り囲んでいた職員も順次解散していった。職員は26日労働局に直訴しに行く模様だ。松下はこの事について詳しい事情説明はしていない。

 北京松下電器部品株式会社は北京朝陽区の望京科学技術園にあり、スピーカ部品などを生産している。当時25歳だった職員郭さんが入社後、今日で16年になった。「私の全ての青春時代をこの会社に奉仕した。もちろん退職までここで働く予定だった」。しかし三日前、突然口頭通知でこの会社が閉鎖の準備をしていることを知った。

25日の午後2時、日本側の佐藤社長が全体職員会で、「希望退職」をつのることを発表、その条件は、職員に一定の経済保障をするというものだった。佐藤社長の保障の方法は、男性職員50歳以上の保障標準では勤続年数×月収×係数1.3、また女性職員40歳以上の標準は勤続年数×月収×係数2.0、そのほかに額外の保障も行うとした。

郭さんの場合、月収が1050元、この保障方式に当てはめて計算すると多くとも4万元しかもらえないということになる。しかし、科長以上の中間管理職以上の職員は月収が1万元に近く、この計算によると普通職員の10倍ぐらいの補償金がもらえることになる。職員は勤続年数に基づいて計算するのが妥当だし、一人職員1年あたり2万元程度の保障金になるのではと考えた。このような情報が流れた後、400名あまりの職員が会場におしかけ、佐藤社長にこの保障案を変更するよう求めた

「もし会社が直接解雇をすれば、多くの法規制を受け、もっと保障を渡す必要があるだろう。」一人の職員代表はこう語った。職員に「希望退職」を求めるのは、会社の責任逃れであり、「もし我々が同意した場合は、社会保障金も受け取れない」。また張職員代表も、会社の福利分配、資金管理にはいろいろ問題がある、と語った。

午後5時半、職員は佐藤社長に自分達の案を提出したが、受け入れられなかったことを受け、怒りが爆発。午後7時、佐藤社長は「保障方法を検討する」といい、弁護士、会計士と事務所にこもり、表にでることを拒絶した。

職員によると、この工場では去年の下半期以降、注文が減少。スピーカ部門では通常毎月1000万個の生産が、去年の6月以降減少し、11月には300万個まで減少した。「去年12月、会社は70%の職員カットをするといううわさも流れた」。国家機関部門の調査を受けずに現在に至り、その上職員の「希望退職」を奨励した、と述べた。

また、佐藤社長は当日の午後の全体会で、市場の不景気により会社は「希望退職」を行う、と述べたといわれている。記者に対しては、副社長らは「希望退職」に関しては今後少しあるだろうが、具体的な内容に関しては、佐藤社長に聞くよう取材を拒否した。中間管理職たちは、自分達も仕事が保障されない状況だ、「すべて会社の配慮にしたがう」と答えた。

松下電器は北京でブラウン管、コンデンサー、部品工場の三つの支工場を有しており、ブラウン管工場では5000人、コンデンサー工場では600人、部品工場では1200人あまりが就業している。その他二つの会社も近いうちに閉鎖されるともいわれている。

午後1115分、佐藤社長など三人が乗った車が隠れて会社の裏門から出て行った。その後、囲んでいた職員達もその場を離れた。職員は26日に労働局に直訴にいく予定である。

260時、松下中国は「現在グローバルな角度から研究を行っている。現段階では各地区の状況に関しては回答できない。」と表明した。

現在中国で松下グループ傘下には81企業、200841日の統計によると、10.4万人が就業しているとされている。

228日:京華時報より≫            翻訳者 : 中村香央里

松下の行った「希望退職」保障に不満として、600人あまりが6時間に及び抗議の意を表した事件で、2712人の職員代表の説得のもと、全ての職員が元の職場に復帰した。職員と管理職の間の会談は来週の水曜日行われる予定である。

職員代表によると、現在職員の要請は以下の四点となっている。

1、雇用側が提出した賠償法案に基づいた場合、普通職員と中間管理職の職員の補償額が大きすぎる。

2、職員は会社の福利分配があまり公平でないと考えているので、公開すること。

3、労働組合会費に対して会計監督を行うこと。

  4、職員達は鉛、ベンゼンなどの有毒物質の中で作業をおこなっている。それらに危険作業に携わる職員に相応の保障をすること。 

 北京松下総本部の責任者は、松下部品は正式に解雇をし始めたのではない、「離職保障案」もこの工場の佐藤社長が第一回の調査を行ったのみである。会社は職員の態度を理解し、同じような職員に離職に伴う意見を求める。

ではなぜこのように国家補償標準よりよい条件に不満を表したのか、この主たる原因は松下中国が「終身雇用」をスローガンに企業文化をはぐくんできており、職員の会社に対する誠実度も高く、多くの職員が松下で一生働く予定だったことから、「解雇」を大変受け入れがたく考えているからだ。

                                                                  以上

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