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京大上海センターニュースレター

257号 2009316
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   中国・上海ニュース 2009.3.9-2009.3.15

   北京の近況

   09年2月:暴動情報検証

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中国・上海ニュース 3.9−3.15

ヘッドライン

■ 中国:2月のCPI−1.6%、6年ぶりのマイナス

■ 中国:温家宝総理、「米国債の安全性にやや心配」

■ 中国人民銀行:ベラルーシと通貨スワップ協定

■ 中国:人民銀副総裁「デフレ傾向に通貨政策で対応」

■ 中国:2月の輸出額25.7%減、4カ月連続落ち込み

■ 中国:1−2月の社会消費財小売総額15%増

■ 自動車:2月の自動車販売数、80万台超

■ 中国:毎年7000人の女性が出産時に死亡

■ 中国:海賊版取締まり強化、08年度取扱店1万4千店を閉鎖へ

■ 上海:万博主催側、金融危機の「影響は軽微」と主張

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北京の近況

             協力会会員 小林治平(北京在住)

.チベット動乱50周年

「両会」(全人代と全国人民協商会議)が先週まで行われていた事もあり、街には警備の公安・武装警察の係官や解放軍の兵士、ボランティアの治安維持志願者が街角のあちこち、陸橋の上、地下鉄駅入り口などに立って警戒している。

 そんな中、310日の「チベット動乱50周年」の日に民族文化宮で行われているチベット展覧会−「西藏民主改革50年大型展覧」を見に行った。入場無料であるが一般人というより、軍服を着た解放軍関係者、組織の学習会、といった感じの入場者が中心である。内容は従来の中国共産党の立場を超えるものでは全く無いように感じる。展示内容からはチベットでの大衆の生活の様子やチベット仏教が生活に根付いている状況などをうかがわせる内容はない。文化大革命時の寺社の大規模破壊の紹介もない。『過去の農奴制を持つ遅れたチベット−解放軍による平和解放−武装反乱の平定−民主改革−50年来の分裂主義者との戦い−経済的社会の発展と人権施策の成果』、と言う流れの展示である。その内容は「西蔵人権網」www.Tibet328.cnで見る事ができる。この「網」は3月10日にスタートしたもので、CCTV中央電資台の7時のニュース番組「新聞聨播」で紹介していたのを見て知った。名前は「人権」が入っているので一見中国のサイトらしくないが、要するに中身は中国共産党の西蔵政策の正しさを宣伝するものという域は出ていない。展覧会の趣旨・内容と全く同じである。サイトの使用言語の中−英−独−仏、というのはそのままチベット問題に対するコミットの多い国を示しているようで興味深い。

 中国は、ダライ・ラマが西側の諸国で評価が高いのは氏が一部の政界人士を惑わしているからであり、西側もダライ・ラマの存在を利用している、チベット仏教がチベット人に広く信仰されているのはその民族の文化的レベルが低い水準にあるため、という態度をとっている。

 大西広教授のご著書『チベット問題とは何か ”現場”からの中国少数民族問題』(かもがわ出版)を過日一読したが興味深い内容であった。少数民族問題を経済的な観点から考察するのはユニークと言うだけでなく重要な視点・指摘であろう。『中国統計年鑑2007』によると中国各省の一人あたりのGDPは最高が上海市で7000米ドル近く、最低が貴州省で700米ドル以下でその差は10倍以上あるが、なぜ貴州省なのかと言う点を疑問に思っていた。チベットのように産業のない省が最下位でないのは中央政府からの補助金がかなりの額にのぼっているという事を考えると納得がいくのである。また、同じく大西教授の指摘の通り、中国の中央政府が大衆の反感・反発を恐れて「中央政府はチベット自治区にこんなに支援・援助をしていますよ」と大きな声で言えない所・ジレンマも確かにあるだろうと思う。低階層に位置する漢族、特に農民層も少なくないのであるから。

 

.“非誠勿擾”之旅:北海道旅行が’熱点’(ホットスポット)に

 年末年始の娯楽映画(賀年片)として公開された”非誠勿擾”(fei cheng wu rao)[誠実でない人お断り]は、当地で大きな反響を呼んでいる。私も昨年12月の末、一時帰国前に見たが、これは北海道の観光案内映画ではないかとそのときに思った。撮影地が北海道のどこかわからないが、とにかく風景をていねいに、きれいな色彩効果を出してゆっくりと撮っている。従来の中国革命映画全盛の頃学生時代を過ごした身には軽すぎて「中国らしくない」と感じ、日本で上映されたとしても違和感のないものと思った記憶がある。

 今、この撮影地を「巡る旅」まで出てきていて希望者が殺到し、既に旅行の価格が高騰しつつあるとの事。この映画に関係なく以前から北海道旅行を計画していた中国人の知人が不満そうにそう漏らしている。彼ら夫婦は方向を変えて沖縄行きを目下計画中である。上海から那覇への直行便があるのでその気になればいく事はそう難しくない。

 当地の日本政府観光局(正式名:JNTO国際観光振興機構)の話では08年暦年の中国人(香港・台湾除外)の訪日者人数が初めて百万人を超えて、世界的金融危機の影響のある今年の中国人の訪日動向が注目の的である。注目ポイントの一つがこの北海道旅行、どこまで伸びるかで、そしてもうひとつがまさに始まろうとしている桜前線を追いかける花見の旅である。昨年からこの花見を楽しむ中国人が急増しているそうである。また、薬などの販売促進の「褒章旅行」として船(旅客船である、過去の密航船ではない)で日本にやってくる旅行企画も昨年は数件あり、訪日人数の百万人突破に貢献した。不景気の折、日本の観光地にとっては中国からの観光客は大切なお客様である事は想像に難くない。よい印象を持って帰ってもらえるよう、各地でさまざまな努力がなされていると聞いている。

 前段のように、省市ごとの所得格差が10倍以上あるこの国中国では、日々の生活をかつかつで過ごす人もいれば、海外旅行をエンジョイする層も人数としては少なくないのが現在の実情である。

                                 (09.3.15)

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