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京大上海センターニュースレター

260号 200946
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   「中国経済研究会」のお知らせ

   中国・上海ニュース 2009.3.30-2009.4.6

   日系食品工場の衛生管理連雲港味の素の場合

   西郷隆盛と毛沢東  

   【中国経済最新統計】(試行版)掲載のお知らせ

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「中国経済研究会」のお知らせ

 

世界的な金融危機が深刻さを増す中で、中国経済は今まで以上に注目されるようになりました。一方、激変する中国経済も我々に多くの新しい課題を提起してくれました。中国経済を研究し、そして、それに関心を持つ研究者や学生同士の交流を深めるために、京都大学経済学研究科上海センターでは、「中国経済研究会」をこの四月から立ち上げることにしました。

この研究会は中国経済に関する学術研究報告を中心として、必要に応じて経済情勢の報告や日本をはじめとする他の国に関する研究報告も行うことができます。また、研究会には何方でもご自由に参加できますので、幅広い方々のご参加を歓迎します。開催時期は原則として授業期間中の毎月第3火曜日としますが、2009年度では、以下の日程を予定しています。

    前期:421日(火)、519日(火)、616日(火)、721日(火)

   後期:1020日(火)、1117日(火)、1215日(火)、119日(火)

現在予定されている研究報告は下記の通りですので、大勢の方のご参加をお待ちしております。

 

世話人:京都大学経済学研究科教授  劉 徳強

 

 

第一回報告:

  時 間: 4月2116301800 

  場 所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館108演習室

  報告者: 智偉(京都産業大学教授)

テーマ: 「中国における地域間収束について(仮題)」

 

(なお、研究会終了後、有志による懇親会が予定されています。)

 

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中国・上海ニュース 3.30-4.5

ヘッドライン

■ 中国:景気判断に回復期待増

■ 中国:IMF機能強化で400億米ドル拠出

■ 中国人民銀行:アルゼンチンと通貨スワップ協定

■ 中国:ハッカーが国務院のコンピューターに侵入か

■ 鉄道:合肥-武漢高速鉄道開通

■ チベット:海抜5100Mでの水ビジネスが好調

■ 四川:南充市、市民数千人が街頭抗議

■ 山東:菏沢市、手足口病患者激増、11人死亡

■ 北京:葬祭業界の「暴利」に規制

■ 天津:大型観光船の専用港を建設

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日系食品工場の衛生管理連雲港味の素の場合

大西 広

 昨年は天用食品事件のために中国からの加工食品の輸入が急減したが、これで打撃を受けたのは日本人でもあった。この3月に私はこの様子を調べようと「日中友好経済懇話会」の視察団員として連雲港にある味の素の日本向け冷凍食品工場を訪問したが、やはりここでも特に日本向けの家庭用冷凍食品の売れ行きは激減。打撃の少ない業務用と問題のなかった対米輸出のために売り上げはようやく半分をキープしているが、それでも工場はやや閑散とした様子であった。問題の天洋食品はさておき、同業種の他の加工食品企業は衛生管理に絶対の自信を持っている。なのにどうしてこのように信頼されなくなってしまったのか。普通の場合は同業他社の失敗は自社のチャンスであるはずである。が、ここでは完全に他者の失敗がそのまま自社への打撃に直結した。このことをナマの声で聞き、不合理を感じた訪問でもあった。

 

中国でしかできない衛生管理

 もちろん、人の口に入る商品を作っているのであるから衛生管理は極めて重要であり、そのことは食品企業が最も力を入れているものである。そして、このため、「工場見学」も本来謝絶のところを無理を言って受けていただいた。そして、そのはず、食品工場の衛生管理たるものは想像以上に厳格なものであったからである。

 たとえば、見学の服装であるが、写真のような「重装備」であった。頭については、まずマスクをかぶり、その上に頭、ひたい、のどを覆うサポーターをかぶる。そして、その上にさらに写真にある頭巾のようなものをかぶった。また、下半身のズボンは一旦パンツ姿にさせられてから履き替えたもので、これにも驚いた。そして、その上に、手の消毒も厳格で、作業場に入る前にまず石鹸で洗う、消毒液に30秒漬ける、それをもう一度水で落とす、乾かすという手順を踏んだ上に、全身の空気洗浄、全身ローラーによるほこり取り、最後に現場でもう一度消毒、というものであった。ついでに言うと、腕時計や指輪もはずすよう指示され、またこの一ヶ月以内に中国以外の外国に行ったことがあるかどうかもチェックされるというほどであった。

 このようなものであるから、現場作業でももちろん厳しい管理がなされていた。現場は素材のチェックを行なう工程と調理と冷凍・パッケージを行なう工程とが完全に分離していて、相互に出入りするためには上記の服装の完全な着替えと手などの消毒を全面的に繰り返さなければならない。そして、その上に、たとえば、ブロッコリーのチェックでは、全ピースを目でチェックし、虫メガネでしか見れないような小さな小さな「ムシ」のあるものを見つけて取り除く作業をしていた。薄く切られたレンコンも一枚一枚目でチェックをしていた。また当然、残留農薬を取り除く作業も丁寧になされている。こうした作業はまったくの人海戦術であり、見学した私たちは「衛生管理は人海戦術」であることを知った。これは如何にしても日本ではできない。どうしても中国でしか「衛生管理」はできないのである。

 

だからこそ問題は労使関係

 したがって、改めて思うことは、こうした厳格管理のもとで残留農薬が排除されないはずは絶対にない、ということである。中国のすべての食品工業がそうであるとはもちろん断言できないが、日本に輸出する企業の管理はこのようなものであろう。したがって、天洋食品事件はやはりどう考えても悪意ある意図的なものであって、それは従業員によるものであると考えざるを得ないだろう。そして、そのため、この味の素でも従業員との関係をよくするために様々な苦労をしていた。

 たとえば、「部長意見箱」というものがあり、春節の扱いなど日本人が気づかない要求をくみ上げている。また、売り上げ激減のために行なった雇用調整でも多額の補償金を払っている。その他、厚生施設にも細かな配慮をしていた。また、素材の品質確保のためには納入業者200社の「査察」も念入りで、何と200の項目をチェックしているという。この項目の一つには「賃金がちゃんと払われているか」というものもあるということであるから、やはり「安全、安心」のポイントは労使関係にあると考えているとことになる。

 

                                                              以上

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中国経済最新統計(試行版)掲載のお知らせ

 

上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしました。ご参考にしてください。当ニュースレターに統計情報を掲載するのは初めての試みですが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供させていただき、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。また、何かお気づきの点がございましたら、ご連絡いただければ幸いに思います。

編集者より

 

【中国経済最新統計】(試行版)

 

実質GDP増加率

(%)

工業付加価値増加率(%)

消費財

小売総

額増加率(%)

消費者

物価指

上昇率(%)

都市固定資産投資増加率(%)

貿易収支

(億㌦)

輸 出

増加率(%)

輸 入

増加率(%)

外国直

接投資

件数の増加率

(%)

外国直接投資金額増加率

(%)

貨幣供給量増加率M2(%)

人民元貸出残高増加率(%)

2005

10.4

 

12.9

1.8

27.2

1020

28.4

17.6

0.8

0.5

17.6

9.3

2006

11.6

 

13.7

1.5

24.3

1775

27.2

19.9

5.7

4.5

15.7

15.7

2007

13.0

18.5

16.8

4.8

25.8

2618

25.7

20.8

8.7

18.7

16.7

16.1

2008

9.0

12.9

21.6

5.9

26.1

2955

17.2

18.5

27.4

23.6

17.8

15.9

  1

 

 

21.2

7.1

 

194

26.5

27.6

13.4

109.8

18.9

16.7

 2

 

(15.4)

19.1

8.7

(24.3)

82

6.3

35.6

38.0

38.3

17.4

15.7

 3

10.6

17.8

21.5

8.3

27.3

131

30.3

24.9

28.1

39.6

16.2

14.8

 4

 

15.7

22.0

8.5

25.4

164

21.8

26.8

16.7

52.7

16.9

14.7

 5

 

16.0

21.6

7.7

25.4

198

28.2

40.7

11.0

38.0

18.0

14.9

 6

10.4

16.0

23.0

7.1

29.5

207

17.2

31.4

27.2

14.6

17.3

14.1

 7

 

14.7

23.3

6.3

29.2

252

26.7

33.7

22.2

38.5

16.3

14.6

 8

 

12.8

23.2

4.9

28.1

289

21.0

23.0

39.5

39.7

15.9

14.3

 9

9.9

11.4

23.2

4.6

29.0

294

21.4

21.2

40.3

26.0

15.2

14.5

10

 

8.2

22.0

4.0

24.4

353

19.0

15.4

26.1

0.8

15.0

14.6

11

 

5.4

20.8

2.4

23.8

402

2.2

18.0

38.3

36.5

14.7

13.2

12

9.0

5.7

19.0

1.2

22.3

390

2.8

21.3

25.8

5.7

17.8

15.9

2009

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1

 

 

 

1.0

 

391

17.5

43.1

48.7

32.7

18.7

18.6

2

 

3.8

(15.2)

-1.6

(26.5)

48

25.7

24.1

13.0

15.8

20.5

24.2

3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注:1.①「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。

2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意

されたい。また、(  )内の数字は1月と2月を合計した増加率を示している。

  3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%2007年)を占めるている。⑥―⑧はいずれもモノの貿易である。⑨と⑩は実施ベースである。

出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。