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京大上海センターニュースレター

266号 2009518
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

   京都大学上海センター主催シンポジウム:中国の環境問題と循環型経済への転換

   「中国経済研究会」のお知らせ

   中国・上海ニュース 2009.5.11-2009.5.117

   義烏市の近況

   【中国経済最新統計】(試行版)

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京都大学上海センター主催シンポジウム

中国の環境問題と循環型経済への転換

 

 世界経済の後退の中で、中国経済はいっそう目立った存在になっているが、その中国経済にも多くの問題があります。そして、その最大の問題は環境汚染の問題です。これが、今回の緊急経済対策でどうなるのか、あるいはもっと地道な努力がどう積み重ねられているのか。中国での環境ビジネスに関わっておられる専門家も交えて今回はこの問題を討論します。

 

日時 629() 午後2:00-5:45

会場 京都大学時計台記念館2F国際交流ホール

 

報告者

楊 志 中国人民大学教授  「中国経済の循環型への転換の課題」

植田和弘 京都大学教授 「中国の環境問題と持続可能な発展」

藤原充弘(孝光) フジワラ産業株式会社社長 「『水』に関わる中国での環境ビジネス」

大野木昇司 日中環境協力支援センター有限会社取締役 「中国における環境ビジネスの進め方」

 

共催/京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター、京都大学上海センター協力会

後援/北東アジア・アカデミック・フォーラム(予定)

 

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フォームの始まり

「中国経済研究会」のお知らせ

 

2009 年度第二回目の研究会は下記の要領で開催されますので、ご自由に参加してください。

 

 

  時 間: 51916451815 

  場 所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館108演習室

  報告者: 沈金虎(京都大学農学研究科講師)

テーマ: 中国の格差拡大と環境悪化問題

―これまでの経済改革の「陰」と成熟する近代国家を目指すための課題―

 

講師略歴:

1961年 中国無錫市生まれ。1982年 南京農業大学農業経済管理学部卒1989年 京大農学研究科農林経済学専攻博士課程修了、農学博士。南九州大学講師、助教授を経て、1998年〜現在、京大農学研究科生物資源経済学専攻講師。

専門領域: 農業経済学、中国の農業・農村・農民問題

  著  書:『日本の大豆生産・消費に関する経済分析』中国農業出版社、2003

        『現代中国農業経済論−近代化への歩みと挑戦』農林統計協会、2007

 

注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行います。2009年度における開催(予定)日は以下の通りです。

 前期: 421日(火)、 519日(火)、 616日(火)、721日(火)

  後期:1020日(火)、1117日(火)、1215日(火)、119日(火)

 

(この件に関するお問い合わせは劉徳強(liu@econ.kyoto-u.ac.jp)までお願いします。なお、研究会終了後、有志による懇親会が予定されています。

 

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中国・上海ニュース 5.11−5.17

ヘッドライン

■ 中国:北京、成都、済南で新型インフル感染者確認

■ 中国:1−4月貿易額24%減、4月減少幅拡大

■ 中国:4月CPI、PPIともに下落幅拡大、小売総額14.8%増

■ 中国:照明電力減量作戦、年内に省エネ照明1億個を普及

■ 中国:住宅販売価格1.1%下落、大都市の住宅取引が高水準

■ 造船:1−3月期の船舶輸出額51%増の58.9億米ドル

■ 吉林:化学工場から有毒ガス、1000人余りが中毒

■ 内蒙古:1−3月期の原炭生産量、国内トップに

■ 新彊甘粛・酒泉:1000万KW級の風力発電基地を建設

■ 新疆:中央アジア諸国からの留学生が3300人余りに

 

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義烏市の近況

14.MAY.09

小島正憲

中国浙江省の義烏市については世界中にその名がとどろいているので、今さら私がレポートするまでもないと思っていた。しかし国際情勢がかなり変化し新局面が現れてきたので、主に下記の2点を調べるため、義烏市に行ってみた。

@宮崎正弘氏の「イスラム村」情報は本当か。

A金融危機・経済恐慌の影響がどのように現れているのか。

※義烏市は上海南駅から特急で2時間ほど南下した場所である。この点で言えば宮崎氏の上海近辺とか上海郊外という表現は妥当ではなかった。義烏市は上海からはかなり離れた場所で、15年ほど前は田舎町であった。

 

@宮崎正弘氏の「上海近辺にイスラム教の集落ができつつある」という情報はほぼ正確であった。

宮崎正弘氏は、「北京五輪後、中国はどうなる?」(並木書房刊) P.92〜93において、上記の見出しで下記のように書いている。中途半端に引用して、宮崎氏の本意を外すと申し訳ないので、あえて長文を引用する。

「上海郊外に義烏という町がある。世界的に有名な理由はここがニセ物工場のメッカだからだ。

観光客もグッチやディオールのニセ物を買い込むためにわざわざやってくる。あれほど著作権侵害を強調してやまないアメリカ人がバスツアーで一番多いのも矛盾した話。インドやアラブからのバイヤーも多い。

異変は2年ほど前からはじまった。

アラブ系ムスリムが次々と中国にやってきて義烏に住みついたのだ。資源重視外交をとる中国がアラブ諸国との交流を深化させようと留学生を大量に受け入れた動きに連動している。

アラブ人は早くも2千人に達しており、数年以内には2万人にふくれあがる勢いだという。

彼らは半年間有効のビジネスビザで中国に入り、安い繊維製品を買い付けて中東の物流拠点であるドバイに輸出し、半年経つと香港へ出国してビザを更新して義烏に戻ってくる。中国を出る気配がまったくない。

しかも中国内のムスリムと連帯して新しいイスラム教のコミュニティを形成しつつある」

この宮崎氏の記述はほぼ正確であった。義烏市の生活雑貨卸売りセンターからタクシーで南に20分ほど走ったところに、アラブ人街があった。そこにはアラブ人の貿易公司が20社ほど、アラブ人向けレストランが10数軒、アラブ人が多く宿泊するホテルが10数軒、かたまっていた。夜などはレストランにアラビア語のネオンが輝き、店の前ではアラブ人男性だけがテーブルを囲み、水タバコをふかしアルコール抜きで談笑している。そこはアラブ世界に迷い込んだような錯覚に陥るほどである。ただし長期滞在のアラブ人は一定の場所に集中して住んでいるということではなくて、義烏市中心部のマンションに中国人と混在しているという。

義烏市にはもともとイスラム教徒はいなかった。2000年に260人ほどのアラブ人が商品買い付けのため、アラブ諸国から義烏市に来て住みついた。その後、年を経るごとに増え、07年には2万人を超えるようになった。それとともに、中国内の回族もここに集まってきて、ペルシャ料理のレストランなどアラブ人向けの商売を始めるようになった。義烏市政府は中国イスラム教協会を通して北京からイスラム教指導者を招聘して、モスクを建て、国内外のイスラム教徒に便宜をはかった。その後、モスクは数度の引越しを経て、現在は一度に5000人がお祈りできる大きな寺院となった。金曜日の礼拝日には、アラブ人と中国人回族が同じモスク内でお祈りを捧げるという。たしかにこの面から考えると、ここに国籍を超えたイスラムコミュニティが成立しているわけであり、中国政府ならずとも不気味な感じがする。

なお、そのモスクに礼拝に訪れるイスラム教徒は、40%が中国人回族で、残りはイエメン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラク、クウェート、パレスチナ、イラン、レバノン、シリア、ヨルダン、リビア、エジプト、マリ、スーダン、パキスタン、アフガニスタン、インド、マレーシア人などだという。

最近ではこのアラブ人街にも金融危機・経済恐慌の波が押し寄せており、09年に入って帰国するアラブ人が若干増えているという。それに加えて地方から義烏市来ていた商売人や出稼ぎにきていた農民工が帰郷したので、マンションなどに空室が目立つようになり、家主が賃貸広告を出すようになった。義烏市のあちこちには、壁一面の広告欄があって、昨年まではそれらが求人広告で埋まっていたそうだが、今では部屋の賃貸広告で90%が占められていた。なお生活雑貨国際卸売りセンターの標識には漢字、ハングルと並んでアラビア文字が書いてある。なぜか日本語はなかった。

A義烏市:生活雑貨国際卸売りセンターの景気はまだら模様。

義烏市の生活雑貨国際卸売りセンターは通称:福田市場と呼ばれている。最近になって市政府は呼称を「国際商貿城」に統一するように指導している。センター内には各所にその指示が貼り出されている。

義烏市には100万人以上の外来人が流入しており、市周辺の人口を含めると200万人ほどになるという。市の中央部に6万2千を超える卸売り店が集中している生活雑貨国際卸売りセンターがある。売り場面積は400万平米を超え、その規模は世界一となっている。日本の100円ショップなどで売られている商品も、ほとんどここで調達されているようだ。そのために日本人経営のミニ商社がたくさんあり、仕入れの代行業などを行っている。もちろん中国各地はもとより世界中からバイヤーが押し寄せている。

義烏市の李旭航副市長によると、金融危機後、義烏市の労働コストが12〜13%上昇し、それに人民元高と原材料の高騰が重なって08年後半から売り上げが落ちてきているという。それでも義烏市はこの逆境をはねかえすべく、売り場面積を2010年までに500万平米まで拡張する計画を立て、発表した。

建築予定地は旧卸売りセンターで、現在使用されていない建物を壊し、その跡地を使うことになっている。しかしその建物はいまだ破壊されておらず、09年2月着工計画が予定通り進行しているとは思えない状態だった。やはり金融危機の影響は深刻なのではないだろうか。                    

義烏市の生活雑貨国際卸売りセンターから、外国人が姿を消したという報道もある。この10年間、世界各地から貿易商が年間数十万人この地を訪れ、買い付けをし各国のデパートやスーパーなどに流通させてきた。この現象は「中国経済の奇跡」とまで称された。しかし北京五輪が過ぎたあたりから外国人バイヤーが激減し、その影響は深刻で、中国税関が発表した1月の輸出総額は前年同月比で17.5%減であった。私は義烏市のこの市場を訪れるのが始めてなので過去と比較することができないが、センター内には外国人の姿が少ないという感じを受けた。

義烏市の繁栄と衰退は、市内を走る高級車を見てもよくわかるという。ディーラーは金融危機後、高級車の販売台数が急激に落ち込み、とくに100万元台の超高級車はまったく売れなくなったと嘆いている。08年度の販売台数は07年度と比べて20%減、ことに下半期は30%以上。09年度に入って売れ行き不振のため値引き合戦になっているという。

反面、個々の店頭で商売をしている人たちに聞くと、09年度第1四半期の義烏市全体の売り上げは、前年対比増で

景気は戻っているという。2008年度の義烏市場商品総取引額は492.3億元に達し、前年対比6.8%増加した。その中の生活雑貨国際卸売りセンターの取引額は381.8億元で前年対比9.6%の増加であった。09年2月5日の春節後初日には16.5万人がセンターを訪れた。これは前年対比10%の伸びであった。たしかに米国市場向けの商品輸出は減っているが、南アフリカ、ヨーロッパ市場は増大しているという。

それでも義烏市政府は金融危機の影響を考慮し、09年を“市場開拓年”として位置づけ、国内市場に目を向け、幾多のイベントを開催し国内各地からの集客運動を積極的に展開しているという。それらの努力の結果か、センターの店頭では最近、中国東北部からの買い付け商人が多くなったという。                                                              

4月末になって、世界をメキシコ発豚インフルエンザが襲った。これは経済恐慌に追い討ちをかけた模様だが、義烏市のマスク卸売り問屋だけは大活況を呈している。国際商貿城内には100社を超えるマスクの卸売り屋があるが、いずれも注文を受けきれないとうれしい悲鳴をあげているそうだ。5/10現在で、このセンター全体から輸出されるマスクは1日500万枚を超えているという。この売れ行きは当分続くと見込まれている。

                                                              以上

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【中国経済最新統計】(試行版)

 

上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしましたが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供し、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。    編集者より

 

@

実質GDP増加率

(%)

A

工業付加価値増加率(%)

B

消費財

小売総

額増加率(%)

C

消費者

物価指

上昇率(%)

D

都市固定資産投資増加率(%)

E

貿易収支

(億j)

F

輸 出

増加率(%)

G

輸 入

増加率(%)

H

外国直

接投資

件数の増加率

(%)

I

外国直接投資金額増加率

(%)

J

貨幣供給量増加率M2(%)

K

人民元貸出残高増加率(%)

2005

10.4

 

12.9

1.8

27.2

1020

28.4

17.6

0.8

0.5

17.6

9.3

2006

11.6

 

13.7

1.5

24.3

1775

27.2

19.9

5.7

4.5

15.7

15.7

2007

13.0

18.5

16.8

4.8

25.8

2618

25.7

20.8

8.7

18.7

16.7

16.1

2008

9.0

12.9

21.6

5.9

26.1

2955

17.2

18.5

27.4

23.6

17.8

15.9

  1

 

 

21.2

7.1

 

194

26.5

27.6

13.4

109.8

18.9

16.7

 2

 

(15.4)

19.1

8.7

(24.3)

82

6.3

35.6

38.0

38.3

17.4

15.7

 3

10.6

17.8

21.5

8.3

27.3

131

30.3

24.9

28.1

39.6

16.2

14.8

 4

 

15.7

22.0

8.5

25.4

164

21.8

26.8

16.7

52.7

16.9

14.7

 5

 

16.0

21.6

7.7

25.4

198

28.2

40.7

11.0

38.0

18.0

14.9

 6

10.4

16.0

23.0

7.1

29.5

207

17.2

31.4

27.2

14.6

17.3

14.1

 7

 

14.7

23.3

6.3

29.2

252

26.7

33.7

22.2

38.5

16.3

14.6

 8

 

12.8

23.2

4.9

28.1

289

21.0

23.0

39.5

39.7

15.9

14.3

 9

9.9

11.4

23.2

4.6

29.0

294

21.4

21.2

40.3

26.0

15.2

14.5

10

 

8.2

22.0

4.0

24.4

353

19.0

15.4

26.1

0.8

15.0

14.6

11

 

5.4

20.8

2.4

23.8

402

2.2

18.0

38.3

36.5

14.7

13.2

12

9.0

5.7

19.0

1.2

22.3

390

2.8

21.3

25.8

5.7

17.8

15.9

2009

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1

 

 

 

1.0

 

391

17.5

43.1

48.7

32.7

18.7

18.6

2

 

3.8

(15.2)

1.6

(26.5)

48

25.7

24.1

13.0

15.8

20.5

24.2

3

6.1

8.3

14.7

1.2

30.3

186

17.1

25.1

▲30.4

▲9.5

25.5

29.8

4

 

7.3

14.8

 

 

131

▲22.6

▲23.0

 

 

 

 

 

注:1.@「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。

2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意

されたい。また、(  )内の数字は1月と2月を合計した増加率を示している。

  3. B「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、C「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。D「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%2007年)を占めている。E―Gはいずれもモノの貿易である。HとIは実施ベースである。

出所:@―Dは国家統計局統計、EFGは海関統計、HIは商務部統計、JKは中国人民銀行統計による。