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京大上海センターニュースレター
第268号 2009年6月1日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○
京都大学上海センター主催シンポジウム:中国の環境問題と循環型経済への転換
○
「中国経済研究会」のお知らせ
○
中国・上海ニュース 2009.5.25-2009.5.31
○
残念!活かせなかった「東寧」の地縁
○
北京での「被隔離」記
○ 【中国経済最新統計】(試行版)
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京都大学上海センター主催シンポジウム
中国の環境問題と循環型経済への転換
世界経済の後退の中で、中国経済はいっそう目立った存在になっているが、その中国経済にも多くの問題があります。そして、その最大の問題は環境汚染の問題です。これが、今回の緊急経済対策でどうなるのか、あるいはもっと地道な努力がどう積み重ねられているのか。中国での環境ビジネスに関わっておられる専門家も交えて今回はこの問題を討論します。
日時 6月29日(月) 午後2:00-5:45
会場 京都大学時計台記念館2F国際交流ホール
報告者
楊 志 中国人民大学教授 「中国経済の循環型への転換の課題」
植田和弘 京都大学教授 「中国の環境問題と持続可能な発展」
藤原充弘(孝光) フジワラ産業株式会社社長 「『水』に関わる中国での環境ビジネス」
大野木昇司 日中環境協力支援センター有限会社取締役 「中国における環境ビジネスの進め方」
共催/京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター、京都大学上海センター協力会
後援/北東アジア・アカデミック・フォーラム(予定)
なお、シンポジウムの後、無料の懇親会が予定されています。会場は未定。
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「中国経済研究会」のお知らせ
2009 年度第二回目の研究会は下記の要領で開催されますので、ご自由に参加してください。
記
時 間: 6月16日16:30−18:00
場 所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館108演習室
報告者: 張冬雪(京都大学経済学研究科)
テーマ: 「中国における農業ガバナンス・メカニズムの転換」
講師略歴:
2000年 中国復旦大学卒業
2003年 京都大学経済学研究科修士課程修了
2008年 京都大学経済学研究科博士課程修了、経済学博士
論文:
Transitions
of Governance Mechanisms in China’s Agriculture: Land Reforms, the People’s
Commune, the HRS and the Agricultural Industrialization,『Kyoto Economic Review』Vol76,
No2,pp225-240,Dec.2007.
Coordinating
Units: The Farmers’ Association in
Design
in Agriculture between China and Japan」“Northeast
Universities Development Consortium
Conference2007”,
注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行います。2009年度における開催(予定)日は以下の通りです。
前期: 4月21日(火)、 5月19日(火)、 6月16日(火)、7月21日(火)
後期:10月20日(火)、11月17日(火)、12月15日(火)、1月19日(火)
(本研究会に関するお問い合わせは劉徳強(liu@econ.kyoto-u.ac.jp)までお願いします。なお、同日夜に本学学長主催の留学生歓迎会があるため、いつもの懇親会を開かないことにします。)
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中国・上海ニュース 5.25−5.31
ヘッドライン
■ 中国:北朝鮮の核実験を強烈非難
■ 中国:新型インフルエンザ感染者28人に
■ 中国:天然ガス需要、2010年に1100億立方メートル
■ 中国:初の「火星探査機」、年内にロシアで打ち上げ
■ 中国:65歳以上の高齢者人口は1.1億人、上海、年金不足
■ 産業:1−4月の鉄鋼業の赤字額が51.8億元
■ 湖北:大雨で各地で洪水が発生
■ 重慶:炭鉱でガス爆発事故が発生、30人死亡
■ 吉林:北朝鮮の核実験で延吉や琿春で揺れを感じ
■ 上海:初のツアー客24人、北朝鮮入り
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北京での「被隔離」記
協力会会員・北京在住 小林治平
一時帰国をして5月20日に関西空港から北京に戻ったが、運悪く、としか言いようがないと思うが、搭乗席が近くの乗客が発熱状態にあると検疫当局者に判断されたため、2日間「隔離専門」のホテルに宿泊させられてしまった。その状況をご紹介したいと思う。尚、今回の当方のこのケースの場合、正式には医学観察措置と言い、正式な隔離の場合は病院に入る事になる事をあとで知った。
19日に関西空港に向けて故郷の兵庫県北部の片田舎の街を離れる際には、ここも既にこのA型インフルエンザの事の騒ぎの最中であり、学校(幼稚園から高校まで)は全て休校、公的な施設は全て休館・閉鎖扱い、マスクはほとんど手に入らない状況となっていたので、自分自身の体調は良好で健康な状態にはあったが、今回のような事態に遭遇するという「悪い」予感はあった。
利用した東方航空(MU)の便の利用客はそれでも6割程度はあったと記憶する。座席を決める際に席の希望を行ったところ、係りから北京行きの乗客は前列にかたまって座らせるよう指示されているというので、ここでもいやな予感がした。通常だとそのような事はない。搭乗便は青島経由北京行のため青島で検疫検査、入国審査手続きをする。大阪発北京行きの搭乗者は僅か7名であったが、その際にこの中に体温が高いと判断された人が一名いたようである。
(ようである、というのは事態がこのようになっている、という説明を全くしない、検疫担当者も航空会社の係員もしない・してくれないので推測、漏れ聞く話から推測するしかないのでこのような表現になる)青島到着後機内に乗り込んできた検疫担当が赤外線なのかビームを発射する小型の拳銃のようなものを額に照射して体温を測定した。これで即座に体温がわかるようである。
ここでこの一名の発熱者は収容されたのか、どこかに行ってしまい、6名がトランジットゆえに航空会社の先導の下にまとまって手続きをこなして出発ゲート近くまで案内されたのだが、ここでMUの係員が託送荷物があるか確認し、その託送荷物の番号を控えの記録票(CLAIM TAG)を提示させていちいち控えていたので、奇特な事をする、中国の航空会社としては珍しいとは感じたが、後になって思うとこの段階で北京に到着後は6名に対して観察措置を取る事が既に決まっていたようである。しかし、そのような説明は一切なかった(荷物は収容翌日の午後に航空会社がホテル迄直接配達をしてきた、旅具通関手続きはなし。)青島−北京間は機材は同じだが国内線扱いとなるため青島から乗り込んで来る国内の移動の乗客もある。それらの人々への影響を恐れてか、6名は一番後列の席に横並びで座らせられた。
北京到着後は白色の上下つなぎ式の防護服(デュポン社製)にゴーグル・マスクをした係員3名が乗り込んできて、6名の体温を同じくビーム照射式の器具で検査した。この段階でまた6名中一名の乗客の体温が高いと判断された。
余談だが、北京に到着後機内アナウンスで「この機材は大阪発の国際便で青島経由北京に到着した、従い検疫検査官が機内に入るので協力願いたい、暫くそのままお待ち願う」と中国語で放送するが、英語ではやらないのである。なぜ他のアナウンスと同じく英語もやらないのか、外国人(所謂西欧人、外観でわかるから)も前方に座っているではないかと乗務員に言ったところ、タリフ(アナウンス用の文例集)にないから英語がうまい人でないと出来ないのだ、と言ったのにはあきれた。MUという会社はこの程度のレベルである。
青島から搭乗した乗客は先に全て降り、体温も高くないので、この段階で放免されるのかなと期待もしていたが(あなたはこのような状況にありますよ、というような説明は一切なし、かつ使用言語は中国語のみ)暫く待てというので待っていたら、機体に救急車が横付けされて(運転手も全身の防護服とマスク・ゴーグルを着用していた)全員に乗れとの指示で、そのまま空港から10分程度のところにある医学観察処置指定の京林大廈というホテルに収容された。ここで氏名・旅券番号・北京での滞在先・自覚症状の有無・感染者との接触の有無等を確認する書式を渡されて記入をして部屋に入る事になった。
後で思うと在中国大使館発信のインターネットのMLによる情報で、隔離検査的な扱いを受ける場合の具体的内容がホテル名も含めて情報が出ていたので、それによりある程度の心の準備的なものが出来ており、心理的・感情的にあわてる事がなかったと思う。
私は中国語はそこそこ解するつもりでいるが、重大な事態が発生したときに重要事項を聞き漏らす事を恐れる。知ったかぶりをして後で面倒な事になる、という経験はよくあることだからである。そこで部屋に入るための手続きをした際に自らの手持ちの紙に中国語で、検疫の重要性は理解するが@当方の受け入れる事の出来る言語による事態の説明を望む A在中国日本大使館領事部の領事相談員と連絡を取ってほしい、と電話番号を書いて渡した。しかし帰宅が許される迄の間に何らの説明はなかったし、領事部と連絡は翌日ホテルの服務員(と思われる、全員が白衣を着用しており名札等はつけていないので所属が不明)が部屋の電話がつながっている、利用できるのだから自分で連絡するようにと「断り」を言ってきた。
ホテルでの状況:
・ホテル:通常の普通のホテル。部屋内部に特別の道具等がある訳ではない。
・食事は三食ともに弁当とスープを部屋まで配達。果物の差し入れもあり。味は悪くはないが、中国での生活経験のない外国人には食べにくい内容と感じた。
・インターネット:可能。部屋に入るときにパソコン保持の確認もせず、接続の線のみの提供をしてきた。
・電話:可能。この電話で大使館のA型インフレ対策の担当者に連絡をし、この担当から事態の説明を教えてもらう。北京市衛生局が処置の担当部門であり、日本人の場合は大使館に通知が来ることになっているとの事を聞く。
・テレビ:通常の中国のチャネルの視聴が可能。衛星放送受信による外国語チャネルはなし。
・ラジオ:空港が近いためか少し雑音が入るがNHKの短波による日本語・中国語放送が明瞭に聴取できる。
・午前、午後の体温検査を実施。しかし、その結果や全体の状況についての説明は一切なし。
・水:蛇口をひねると暫く黄色い水が出てくるという、従来の中国のホテルのレベル。
・周囲は公安・警備担当者が固めており、逃げ出す事が出来ないようになっている。
・写真:撮影可。特に規制はなかった。
終章:
二泊した22日の昼前に服務員がやってきて、午後2時発で帰宅が許されると連絡してきた。
大使館の担当者の電話による情報で、発熱した乗客の検査が終わり、感染していない事が判明すれば医学観察は終了になるだろうと予め聞いており、そのようになったのだろうと理解。
やや出発が遅れたが東直門までの送迎の乗用車で他1名の被収容者と同席で帰宅の途へ。ホテル出発前に「医学観察」を解除したという証明書を貰う(中国語による表記のみ)。
問題点 感じた事:
中国の当局が起きている事態・処置の状況の説明、法的根拠等、の説明を全くしない事、これに尽きる。
特に外国人には本国人と言語・習慣が異なる事の認識と配慮が全くといっていいほど、ない。
日本大使館の情報によると、今回の新型インフレの流行で、中国旅行に初めてきて収容された人があったそうだが、そのような場合ほんとうに心細い事で、情緒の安定に問題をきたしても無理ないのではと思えるような状況がある。
中国では「走出去」「走向世界」「面向世界」というような言葉をよく耳にするのであるが、外の世界を理解すると同時に、外の世界に自らの状況を理解してもらう、即ち「自らの情報を出す」という事に慣れていない、過度に規制をしてしまう中国と中国人の姿、失礼な言い方だが「よそを知らない田舎者」のそしりを免れぬ姿を私はこの京林大廈で見たと感じた。
とはいえ、日本・日本人がそれがうまく出来ているとは無論思わない。思わないが常に異なる文化を理解し、尊重する姿勢は持ち続ける事は提唱したいし、自戒の念にしたいと思う。今回の件では、「他山の石」中国に感謝しなければならないと思っている。
(09.05.31記)
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【中国経済最新統計】(試行版)
上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしましたが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供し、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。 編集者より
|
@ 実質GDP増加率 (%) |
A 工業付加価値増加率(%) |
B 消費財 小売総 額増加率(%) |
C 消費者 物価指 数上昇率(%) |
D 都市固定資産投資増加率(%) |
E 貿易収支 (億j) |
F 輸 出 増加率(%) |
G 輸 入 増加率(%) |
H 外国直 接投資 件数の増加率 (%) |
I 外国直接投資金額増加率 (%) |
J 貨幣供給量増加率M2(%) |
K 人民元貸出残高増加率(%) |
2005年 |
10.4 |
|
12.9 |
1.8 |
27.2 |
1020 |
28.4 |
17.6 |
0.8 |
▲0.5 |
17.6 |
9.3 |
2006年 |
11.6 |
|
13.7 |
1.5 |
24.3 |
1775 |
27.2 |
19.9 |
▲5.7 |
4.5 |
15.7 |
15.7 |
2007年 |
13.0 |
18.5 |
16.8 |
4.8 |
25.8 |
2618 |
25.7 |
20.8 |
▲8.7 |
18.7 |
16.7 |
16.1 |
2008年 |
9.0 |
12.9 |
21.6 |
5.9 |
26.1 |
2955 |
17.2 |
18.5 |
▲27.4 |
23.6 |
17.8 |
15.9 |
1月 |
|
|
21.2 |
7.1 |
|
194 |
26.5 |
27.6 |
▲13.4 |
109.8 |
18.9 |
16.7 |
2月 |
|
(15.4) |
19.1 |
8.7 |
(24.3) |
82 |
6.3 |
35.6 |
▲38.0 |
38.3 |
17.4 |
15.7 |
3月 |
10.6 |
17.8 |
21.5 |
8.3 |
27.3 |
131 |
30.3 |
24.9 |
▲28.1 |
39.6 |
16.2 |
14.8 |
4月 |
|
15.7 |
22.0 |
8.5 |
25.4 |
164 |
21.8 |
26.8 |
▲16.7 |
52.7 |
16.9 |
14.7 |
5月 |
|
16.0 |
21.6 |
7.7 |
25.4 |
198 |
28.2 |
40.7 |
▲11.0 |
38.0 |
18.0 |
14.9 |
6月 |
10.4 |
16.0 |
23.0 |
7.1 |
29.5 |
207 |
17.2 |
31.4 |
▲27.2 |
14.6 |
17.3 |
14.1 |
7月 |
|
14.7 |
23.3 |
6.3 |
29.2 |
252 |
26.7 |
33.7 |
▲22.2 |
38.5 |
16.3 |
14.6 |
8月 |
|
12.8 |
23.2 |
4.9 |
28.1 |
289 |
21.0 |
23.0 |
▲39.5 |
39.7 |
15.9 |
14.3 |
9月 |
9.9 |
11.4 |
23.2 |
4.6 |
29.0 |
294 |
21.4 |
21.2 |
▲40.3 |
26.0 |
15.2 |
14.5 |
10月 |
|
8.2 |
22.0 |
4.0 |
24.4 |
353 |
19.0 |
15.4 |
▲26.1 |
▲0.8 |
15.0 |
14.6 |
11月 |
|
5.4 |
20.8 |
2.4 |
23.8 |
402 |
▲2.2 |
▲18.0 |
▲38.3 |
▲36.5 |
14.7 |
13.2 |
12月 |
9.0 |
5.7 |
19.0 |
1.2 |
22.3 |
390 |
▲2.8 |
▲21.3 |
▲25.8 |
▲5.7 |
17.8 |
15.9 |
2009年 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
1月 |
|
|
|
1.0 |
|
391 |
▲17.5 |
▲43.1 |
▲48.7 |
▲32.7 |
18.7 |
18.6 |
2月 |
|
(3.8) |
(15.2) |
▲1.6 |
(26.5) |
48 |
▲25.7 |
▲24.1 |
▲13.0 |
▲15.8 |
20.5 |
24.2 |
3月 |
6.1 |
8.3 |
14.7 |
▲1.2 |
30.3 |
186 |
▲17.1 |
▲25.1 |
▲30.4 |
▲9.5 |
25.5 |
29.8 |
4月 |
|
7.3 |
14.8 |
|
|
131 |
▲22.6 |
▲23.0 |
▲33.6 |
▲20.0 |
|
|
注:1.@「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。
2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意
されたい。また、( )内の数字は1月と2月を合計した増加率を示している。
3. B「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、C「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。D「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%(2007年)を占めている。E―Gはいずれもモノの貿易である。HとIは実施ベースである。
出所:@―Dは国家統計局統計、EFGは海関統計、HIは商務部統計、JKは中国人民銀行統計による。