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京大上海センターニュースレター
第270号 2009年6月15日
京都大学経済学研究科上海センター
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目次
○ 上海センター協力会総会のご案内
○
京都大学上海センター主催シンポジウム:中国の環境問題と循環型経済への転換
○
「中国経済研究会」のお知らせ
○
中国・上海ニュース 2009.6.8-2009.6.14
○
人民元国際化への長い道のり
○日本人(経営者)はビジネスモラルを守れ
○ 【中国経済最新統計】(試行版)
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上海センター協力会総会のご案内
6月29日(月)に上海センター協力会第6回総会を開催することとなりました。当日、下のようなシンポジウムと合わせて開催いたしますので、協力会会員の皆様方におかれましては、万障繰り合わせの上、是非ともご出席いただきますよう、心よりお願い申し上げます。
なお、シンポジウム終了後は例年どおり京都大学経済学研究科2階大会議室にて懇親会を予定しております。こちらにも是非ご出席下さい。
記
日時 2009年6月29日(月) 午後1時~1時45分
会場 京都大学経済学研究科2階大会議室
以上
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京都大学上海センター主催シンポジウム
中国の環境問題と循環型経済への転換
世界経済の後退の中で、中国経済はいっそう目立った存在になっているが、その中国経済にも多くの問題があります。そして、その最大の問題は環境汚染の問題です。これが、今回の緊急経済対策でどうなるのか、あるいはもっと地道な努力がどう積み重ねられているのか。中国での環境ビジネスに関わっておられる専門家も交えて今回はこの問題を討論します。
日時 6月29日(月) 午後2:00-5:45
会場 京都大学時計台記念館2F国際交流ホール
報告者
楊 志 中国人民大学教授 「中国経済の循環型への転換の課題」
植田和弘 京都大学教授 「中国の環境問題と持続可能な発展」
藤原充弘(孝光) フジワラ産業株式会社社長 「『水』に関わる中国での環境ビジネス」
大野木昇司 日中環境協力支援センター有限会社取締役 「中国における環境ビジネスの進め方」
共催/京都大学人文科学研究所附属現代中国研究センター、京都大学上海センター協力会
後援/北東アジア・アカデミック・フォーラム(予定)
なお、シンポジウムの後、無料の懇親会が予定されています。会場は未定。
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「中国経済研究会」のお知らせ
2009 年度第二回目の研究会は下記の要領で開催されますので、ご自由に参加してください。
記
時 間: 6月16日16:30-18:00
場 所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館108演習室
報告者: 張冬雪(京都大学経済学研究科)
テーマ: 「中国における農業ガバナンス・メカニズムの転換」
講師略歴:
2000年 中国復旦大学卒業
2003年 京都大学経済学研究科修士課程修了
2008年 京都大学経済学研究科博士課程修了、経済学博士
論文:
Transitions
of Governance Mechanisms in China’s Agriculture: Land Reforms, the People’s
Commune, the HRS and the Agricultural Industrialization,『Kyoto Economic Review』Vol76,
No2,pp225-240,Dec.2007.
Coordinating
Units: The Farmers’ Association in
Design
in Agriculture between China and Japan」“Northeast
Universities Development Consortium
Conference2007”,
注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行います。2009年度における開催(予定)日は以下の通りです。
前期: 4月21日(火)、 5月19日(火)、 6月16日(火)、7月21日(火)
後期:10月20日(火)、11月17日(火)、12月15日(火)、1月19日(火)
(本研究会に関するお問い合わせは劉徳強(liu@econ.kyoto-u.ac.jp)までお願いします。なお、同日夜に本学学長主催の留学生歓迎会があるため、いつもの懇親会を開かないことにします。)
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中国・上海ニュース 6.8-6.14
ヘッドライン
■ 中国:5月CPI、PPIそれぞれ1.4%、7.2%減
■ 中国:公営部門従業員を全面雇用契約制に移行
■ 中国:5月輸出26%減 1980年代以降で最大幅
■ 中国:5月工業生産8.9%増、専門家が疑問
■ 中国:新型インフルエンザのワクチン製造が開始
■ 中国:家電9社、台湾製液晶パネル、新たに33億元分を購入
■ 中国:小売売上高、5月は15.2%増
■ 自動車:新車販売、09年1000万台突破の公算
■ 金融:景気刺激のため、5月の銀行融資大幅増
■ 産業:政府支援で風力発電能力を20年に8倍に
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人民元国際化への長い道のり
伊藤忠商事理事 石田護
中国が人民元国際化へ動き始めた。国際化とは人民元が国際経済取引に広く使用されることである。
中国は、広東省の香港、マカオ、台湾との貿易、及び、広西、雲南のアセアン諸国との貿易で人民元を決済通貨とするテストを始める。また、上海、広州、深圳、珠海、東莞で人民元貿易決済を行う。金融面では、韓国、マレーシア、インドネシアなどと締結した総額6、500億人民元の双務通貨交換協定を発動して、貿易と直接投資に流動性を供与する。中国の輸出企業は人民元で輸出代金を回収するので、為替リスクを回避できる。
新華社は、今回の措置の背景について、金融危機でドルとユーロが大きく変動したので、中国と貿易相手国双方の企業が相対的に安定している人民元建て取引を希望していると伝えている。
取り分け、中国は中国経済の基盤である東アジア地域に為替安定を取り戻す必要がある。従来から中国はアセアンとの関係強化を図ってきた。アセアンと中国の自由貿易区は来年に実現する。中国経済の大きさと東アジア経済一体化の現実から考えて、今回の試みが成功すると、東アジアには人民元を中心とする為替安定圏が形成されることになる。
人民元国際化は東アジアにおける人民元の中心通貨化から始めるという中国経済学界の主張に沿う動きである。首都経済貿易大学李婧教授は、人民元が地域の取引通貨とることによって取引コストが削減される「一つの市場一つの通貨」の役割を人民元に期待している。また、それはドルに過度に依存する従来の国際通貨体制の改革につながる。
中国が金融危機の今、人民元を貿易決済に使用する試みを始めた理由はよく理解できるが、なぜ経済大国化した中国は今まで人民元国際化に踏み出せないでいたのだろうか?
人民元国際化過程は、1996年の経常取引における人民元交換性実現に始まる。資本取引における人民元の交換性実現計画は1997年のアジア金融危機で中断した。資本取引を自由化すると資本の流出入が人民元為替レートを不安定化するからである。
先ず、人民元がまだ潜在的に不安定な通貨であることを認識する必要がある。高度成長期の新興工業国では固定相場制の下で通貨の過小評価と輸出拡大が急速に進展する。切上げを要求する国際世論が高まるが、1970年代初頭の日本も、今世紀初頭の中国も、時期尚早を理由に切上げを先延ばした。その間にも、通貨の過小評価が更に進展した。日本が1973年に固定相場を離脱した時、政府も市場も円相場の落ち着き所の見当がつかなかった。1ドル360円であった円は、乱高下を繰り返しながら1995年4月の1ドル80円の水準にまで上昇した。
中国は、2005年7月、人民元を、1ドル8.2765人民元から8.11人民元へ2.1パーセント切上げ、対ドル固定から管理変動相場制に移行した。人民元は2008年9月までに対ドルで累計20パーセント強上昇したが、輸出は増加を続けた。円の体験から判断して、市場が人民元の為替水準について一定の評価を見出すまで、潜在的に不安定な状況が続くだろう。
こうした情勢の中で、中国人民銀行が人民元の漸進的上昇の誘導に成功したのは、資本取引を規制していたからである。注目すべきは、資本取引を規制していても大量の「熱銭(ホットマネー)」が流入したことである。資本取引が自由であったなら、一層大量の「熱銭(ホットマネー)」が流入して、人民元レートの安定を脅かしていただろう。
人民元為替レートの安定は、中国が目指す「経済の安定的で比較的早い発展」の前提条件である。人民元国際化も中国経済の発展と成熟のために避けることができない課題である。今まで中国は人民元の国際化より安定を重視して来た。中国のディレンマは、人民元安定のために必要な資本取引の規制そのものが人民元国際化を妨げることである。中国は、人民元の安定と国際化の両立という困難ではあるが、不可避な課題に直面している。
しかし、人民元安定と資本取引自由化は常にトレード・オフ関係にあるわけではない。長期的には、資本自由化により経常収支の黒字を資本輸出する市場メカニズムの整備を考慮すべきであろう。資本が市場原理で輸出されるようになると、総合収支はよりバランスが取れたものになり、市場での人民元上昇圧力が減少する。現在は、中国人民銀行が市場で余剰ドルを買い上げる形で資本を輸出している。
以上が、今般の人民元国際化への一連の措置の文脈である。張軍復旦大学経済学院副院長は、人民元国際化は貿易決済から始め、金融取引を経て、最後には人民元が世界の準備通貨の一つとなる三段階説を唱え、長い過程であるが、人民元国際化が国家戦略となった以上、急ぐことなく進められると語っている。
今般の人民元国際化への第一歩は、限定された貿易取引で人民元を試用する初期段階の始まりの話である。人民元国際化は、人民元の準備通貨化など壮大な将来像を語る大局着想段階から、技術的細部を詰めながら一歩一歩国際化への階段を上り詰める小局着手の段階に入った。筆者はそれを歓迎し、成功を強く念願する。
以上
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日本人(経営者)はビジネスモラルを守れ
06.JUN.09
小島正憲
最近の中国では、ビジネスモラルに欠ける日本人(経営者)が目立つようになってきた。
1.日本人が中国人を騙す?
①取り込み詐欺か?
5月13日付けの上海新民晩報で、日本人経営者の夜逃げ未遂事件が報じられた。従業員の給与総額200万元を未払いのまま日本へ夜逃げしようとした日本人経営者が、昨年10月浦東空港で阻止された。しかしこれに懲りずに11月に長春空港から出国しようとして再びつかまり、観念したその経営者は残余財産を処分して支払いを完了したという。
私たちのような善良な日本人経営者にとっては、中国の新聞にこのような記事が掲載されることは、日本人経営者の信用が一挙になくなってしまうのでたいへん困ることである。これは興味本位のデッチ上げ記事かもしれないが、新聞記者に格好の題材を提供しないように、日本人経営者は襟を正しビジネスモラルを守って、経営に携わるべきである。
私はこの記事を読んで、なにか釈然としないものを感じたので、もう少し詳しくこの事件を調べてみた。すると事態はこの記事とはかなり違うということがわかった。またこの日本人経営者と中国側との間にはかなりのトラブルがあった模様で、双方の主張にはかなりの隔たりがあった。その会社はA(上海)有限公司といい、上海の外高橋に登録住所があり、営業事務所は徐匯区にあった。また日本の本社名は株式会社B、所在地は東京都内であるということが判明した。
ネット上に飛び交っていた≪中国側の言い分≫を読んでみると、このA公司が中国で取り込み詐欺を働いていたような印象を受けた。さっそく営業事務所のあったビルに行って、周辺で聞き込み調査を行ったところ、このA公司は2008年2月にこの場所から転居しており、どうも現在、仕入先との間で裁判中のようであるという。そこでその仕入先の一軒に電話をかけてみた。するとそこの営業課長つまり実際の取引関係者が事件について詳しく話してくれ、この件については5月末に判決が出る予定だが、ひとまず債権者リストをFAXで送るという。そのFAXには24社の名前が列挙してあったので、私はこれは本当に取り込み詐欺ではないかと思った。
その営業課長の話によれば、A公司は1998年に中国に進出した。当初のビジネスはまともであったという。ところが数年後から、商品を仕入れしても代金の一部を支払うだけで残金を滞らせるようになり、請求してもなにかと文句をつけ支払わなくなった。そしてA公司はどんどん仕入先を変え、次々と代金を踏み倒していったので、上記のような多くの債権者が出る始末となった。踏み倒した総額は800万元(約1億1千万円)に上るという。
私は元従業員にも話を聞いたみた。A公司の従業員数は30人ほどで、200人という新聞報道は誤りであった。しかし未払い給与や退職金、長年の出張手当などを含め労働債務200万元(約2800万円)は一部未解決であり、従業員の中にはあきらめて故郷に帰ったものもいるという。元従業員や債権者は、このような日本人経営者の仕打ちにたいへん怒っており、私は彼らから「ぜひとも日本国内でマスコミなどに訴えてもらい、この問題が早く解決できるように協力して欲しい」と頼まれた。
日本の東京都内の本社Bを訪ねてみたところ、B社の社名を示す看板が入り口にも郵便受けにもなく、どことなく不自然な感じを受けた。大家さんが事務所内ではいつも5~6人の社員が働いていると話してくれた。なおその事務所内には関係者しか立ち入れなかったので、電話をかけてみたところ、社員は落ち着いた雰囲気で、とても取り込み詐欺を働くような会社には感じられなかった。ちょうど社長が在社されており、電話口に出てしっかり応対してくれた。
≪日本側の言い分≫として、社長は「2年前に上海法人の責任者であった日本人社員が横領などの事件を起こしたので解雇した。ところが彼が中国人女性と組んで、A公司の名前を無断で使い、中国法人を設立し引き続き悪事を働いた。それが今回騒がれている一件ではないか。またその後、買い付けを担当させていた中国人社員が賄賂を取ったり、商品の横流しをしたりしたので解雇をしたところ、彼がネット上で誹謗中傷をし始めたのである。私はこの数年で中国ビジネスについてはこのような理不尽なことがたくさん起こるということがよくわかったので、ネット上での悪口にもしばらくの間、静観することにする」と冷静に話してくれた。なお、社長は浦東空港でも長春空港でも足止めされたことはないと強調した。
私は両社の言い分を聞いて、できうれば日本人社長に軍配を上げたいと思った。事態が少し落ち着いてから、社長自らの口で、新民晩報に異議を申し立ててもらいたいものである。なぜならそれが日本人の信用回復につながるからである。
②代金踏み倒し。
先日、私の知人の日本人コンサルタントのところに、瀋陽の中国民営企業(B公司)から、日本に商品を輸出したが代金が送金されてこないので、日本で債権を回収して欲しいとの依頼があった。彼はすぐに日本で該当企業(C社)を訪ねたが、そのときにはその企業がすでに自己破産したあとで、手の打ちようがなかったという。
彼から聞いたC社の手口は次のようであった。取引当初、C社の日本人経営者は、中国のB公司に製品の委託加工を依頼した。そのとき資材は日本からの輸入で無償提供であった。半年ほどは順調に仕事が回った。そのうち中国資材に変わったが、前回までと同様に無償提供であった。あるときから資材の購入依頼があり、取引形態が製品商売になった。しかし支払いはそれまで通り、製品輸出後の現金決済であった。それでも最初の2~3回分の支払いは順調であった。ところがだんだん支払いが滞るようになり、とうとう総額100万元ほどになった。仕事も極端に薄くなってきたので、心配になったB公司の総経理がC社に支払いを強く請求すると途端に仕事が切れ、現地に派遣されていた日本人技術者も姿を消した。結局、製品の代金は未払いのままとなった。
2.日本人が日本人を騙す。
①寸借詐欺。
最近では、日本で倒産した企業が中国に逃げてくる例も出てきた。日中両国で経営を行っていた企業が日本側で倒産した場合、日本の債権者が中国にある企業にまで債権回収を迫ることはかなり難しい。したがって経営に行き詰った企業の中には、日本にある企業を計画的に倒産させ、中国にある企業のみを存続させ、その後一族郎党こぞって中国側に移住してくるような例がでてきているのである。
また上海などの都会では、経営者だけでなく営業マンや技術者が酒や女で身を持ち崩し、日本の会社や妻子から見放され、日本に帰国できなくなっている日本人も少なくない。日経新聞の高樹のぶ子氏の連載小説「甘辛上海」は少々オーバーだが、「紅子さん」はともかくとして、「松本氏」ならば容易にそのモデルの名前を、私はすぐにたくさん思い浮かべることができる。これらの日本人は今、日本に生活拠点を失い、まさに戦前の大陸浪人ならぬ、大陸浮浪者となっている。そして彼らが中国で正常に生活している日本人の間で、寸借詐欺を働いている話をときどき耳にする。いずれ彼らが、いろいろな悪事に手を染めていくのは時間の問題であろう。
今や、ビジネスモラルを守らねばならぬのは、経営者だけでなく、技術者や営業マンなど中国へ来ている日本人全員である。したがって私は今回のテーマに日本人(経営者)と、わざわざかっこをつけることにしたのである。
②知的財産権の侵害。
日本の大手コンビニチェーン(L社)の中国の合弁公司が、こともあろうに日本企業(N社)の商標登録済みの「招き猫」のコピーを中国で作り、それを大量に景品として使った例もある。N社の社長が中国にあるL社の合弁公司の日本人副総経理に抗議を行ったところ、彼は「それは中国のオリジナルのものなので、知的財産権の侵害ではない」と強弁した。その商品は「招き猫」であり、どう考えても中国人のオリジナル作品であるとは言い難いものであったので、納得できなかったN社の社長は、次いで日本の本社に抗議を申し入れたが、それは握りつぶされた。仕方がないので、N社の社長は中国で裁判に訴えた。裁判所はひとまず受け付けたが、資料などが未整備であるという理由で再提出を求め、事実上審議には入らなかった。この間に、そのコピー商品は中国で大量に出回り、日本にも逆流してきたので、N社の経営は大きく圧迫され倒産してしまった。このように日本でならば絶対に行わないような破廉恥な行為を、海を隔てて、日本の大企業が堂々と行っている例がある。
③銀行や商社を手玉に取る。
海を隔てると経営状況がつかみにくため、企業実態が誇大に伝わり、それに日本人が騙されることもある。
中国に、同業者でやり手の美人女性社長で有名な会社がある。彼女は先日もある出版社から、「輝く女性経営者32人」として紹介されたばかりである。その本には彼女は1995年に中国へ工場進出し、自力で幾多の困難を乗り越え、大成功したと書かれていた。それを読んで私は、彼女が最初に中国へ工場進出したとき、彼女の頼みで北京や広東省の湛江などに同行し工場適地を探して回ったことを思い出した。結局、浙江省で合弁工場を作ることになり、ひとまずそこの幹部を数人、私の上海の工場に受け入れ養成することになった。ところがこの幹部連中のレベルがきわめて低かったので、私は彼女にこの工場との合弁を再考するように提言した。彼女はこの私の意見を無視し合弁工場を開始に踏み切った。私も無料奉仕だったので、それ以上の深入りをしなかった。そして数年後その合弁工場は見事に失敗した。
5年ほどたって、彼女はふと私の上海の工場に現れた。わが社の工場経営ノウハウを勉強させてくれというのだ。私は彼女の厚顔にいささか驚いたが、懇切に工場を案内した。彼女はわが社のCADシステムや物流システムに興味を示し、ぜひ教えてくれという。CADの方は人材育成も含めて手伝ったが、その後上手に私の会社の人材を引き抜かれた。物流システムについてはそれが他の貿易会社との共同開発であったので、その会社を通してシステムを導入してもらうように頼んだが、彼女は勝手にわが社のシステムを模倣して独自で押し進めてしまった。本の中で、彼女の工場はITで武装し、最新鋭の設備を導入していると紹介されているが、内実は以上のようである。
なぜかこの美人社長は、銀行や商社などと付き合うのが上手であった。10年以上前に、彼女から誕生パーティーに招待されびっくりした。丁重にお断りしたが、そのときこれが彼女の商売手法かと感心したものである。3年ほど前、彼女は「チャイナビジネス」という本を出版した。中身はひじょうに立派なもので、弁護士かコンサルタントの手によるものだろうと思わせるほどであった。これがかなり売れ続編まで出た。今や彼女は並み居る中国事業のコンサルタントを押さえ、中国事業の第一人者となった。彼女の信用は天にも昇る勢いである。しかし彼女の中国の企業の現状については、だれも深くつかんでいない。銀行や商社は引き続き取引を拡大している。
3.日本人(経営者)はビジネスモラルを守れ。
中国でのビジネスは、いまだに反日意識が残っているだけに難しい面がある。それでも多くの日本人の努力によって、日本人は信用されてきた。ところが最近、その信用を逆手に取って詐欺を働く日本人が出てきた。日本に逃げ帰るにせよ大陸浮浪者になるにせよ、それは本人の勝手だが、中国の大地で根を張ってビジネスを展開している人たちにとっては、これらの行為はたいへん迷惑である。せっかく築いてきた日本人の信用がなくなってしまい、ビジネスができなくなってしまうからである。だから日本人(経営者)は、絶対にビジネスモラルを守らなければならない。
しかし現実はどんどん悪化しており、上述してきたような事態は増えることはあっても減ることはない。したがって中国におけるビジネスでも、日本国内のビジネスと同様に、信用調査を十分にするべきである。たとえ相手が日本人であっても油断してはならない。
以上
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【中国経済最新統計】(試行版)
上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしましたが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供し、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。 編集者より
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① 実質GDP増加率 (%) |
② 工業付加価値増加率(%) |
③ 消費財 小売総 額増加率(%) |
④ 消費者 物価指 数上昇率(%) |
⑤ 都市固定資産投資増加率(%) |
⑥ 貿易収支 (億㌦) |
⑦ 輸 出 増加率(%) |
⑧ 輸 入 増加率(%) |
⑨ 外国直 接投資 件数の増加率 (%) |
⑩ 外国直接投資金額増加率 (%) |
⑪ 貨幣供給量増加率M2(%) |
⑫ 人民元貸出残高増加率(%) |
2005年 |
10.4 |
|
12.9 |
1.8 |
27.2 |
1020 |
28.4 |
17.6 |
0.8 |
▲0.5 |
17.6 |
9.3 |
2006年 |
11.6 |
|
13.7 |
1.5 |
24.3 |
1775 |
27.2 |
19.9 |
▲5.7 |
4.5 |
15.7 |
15.7 |
2007年 |
13.0 |
18.5 |
16.8 |
4.8 |
25.8 |
2618 |
25.7 |
20.8 |
▲8.7 |
18.7 |
16.7 |
16.1 |
2008年 |
9.0 |
12.9 |
21.6 |
5.9 |
26.1 |
2955 |
17.2 |
18.5 |
▲27.4 |
23.6 |
17.8 |
15.9 |
1月 |
|
|
21.2 |
7.1 |
|
194 |
26.5 |
27.6 |
▲13.4 |
109.8 |
18.9 |
16.7 |
2月 |
|
(15.4) |
19.1 |
8.7 |
(24.3) |
82 |
6.3 |
35.6 |
▲38.0 |
38.3 |
17.4 |
15.7 |
3月 |
10.6 |
17.8 |
21.5 |
8.3 |
27.3 |
131 |
30.3 |
24.9 |
▲28.1 |
39.6 |
16.2 |
14.8 |
4月 |
|
15.7 |
22.0 |
8.5 |
25.4 |
164 |
21.8 |
26.8 |
▲16.7 |
52.7 |
16.9 |
14.7 |
5月 |
|
16.0 |
21.6 |
7.7 |
25.4 |
198 |
28.2 |
40.7 |
▲11.0 |
38.0 |
18.0 |
14.9 |
6月 |
10.4 |
16.0 |
23.0 |
7.1 |
29.5 |
207 |
17.2 |
31.4 |
▲27.2 |
14.6 |
17.3 |
14.1 |
7月 |
|
14.7 |
23.3 |
6.3 |
29.2 |
252 |
26.7 |
33.7 |
▲22.2 |
38.5 |
16.3 |
14.6 |
8月 |
|
12.8 |
23.2 |
4.9 |
28.1 |
289 |
21.0 |
23.0 |
▲39.5 |
39.7 |
15.9 |
14.3 |
9月 |
9.9 |
11.4 |
23.2 |
4.6 |
29.0 |
294 |
21.4 |
21.2 |
▲40.3 |
26.0 |
15.2 |
14.5 |
10月 |
|
8.2 |
22.0 |
4.0 |
24.4 |
353 |
19.0 |
15.4 |
▲26.1 |
▲0.8 |
15.0 |
14.6 |
11月 |
|
5.4 |
20.8 |
2.4 |
23.8 |
402 |
▲2.2 |
▲18.0 |
▲38.3 |
▲36.5 |
14.7 |
13.2 |
12月 |
9.0 |
5.7 |
19.0 |
1.2 |
22.3 |
390 |
▲2.8 |
▲21.3 |
▲25.8 |
▲5.7 |
17.8 |
15.9 |
2009年 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
1月 |
|
|
|
1.0 |
|
391 |
▲17.5 |
▲43.1 |
▲48.7 |
▲32.7 |
18.7 |
18.6 |
2月 |
|
(3.8) |
(15.2) |
▲1.6 |
(26.5) |
48 |
▲25.7 |
▲24.1 |
▲13.0 |
▲15.8 |
20.5 |
24.2 |
3月 |
6.1 |
8.3 |
14.7 |
▲1.2 |
30.3 |
186 |
▲17.1 |
▲25.1 |
▲30.4 |
▲9.5 |
25.5 |
29.8 |
4月 |
|
7.3 |
14.8 |
▲1.5 |
30.5 |
131 |
▲22.6 |
▲23.0 |
▲33.6 |
▲20.0 |
25.9 |
27.1 |
5月 |
|
8.9 |
15.2 |
▲1.4 |
|
134 |
▲26.4 |
▲25.2 |
|
|
25.7 |
|
注:1.①「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。
2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意
されたい。また、( )内の数字は1月と2月を合計した増加率を示している。
3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%(2007年)を占めている。⑥―⑧はいずれもモノの貿易である。⑨と⑩は実施ベースである。
出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。