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京大上海センターニュースレター

276号 2009727
京都大学経済学研究科上海センター

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目次

○中国経済特別講演会の最終案内

   中国・上海ニュース 2009.7.20-2009.7.26

   「中国の循環型経済と環境問題」

   09年6月:暴動情報検証

   【中国経済最新統計】(試行版)

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中国経済特別講演会の最終案内 

 

アメリカ発の世界的同時不況が深刻さを増す中で、中国政府は大規模な景気刺激策や内需拡大策を打ち出して、8%の経済成長を目指して努力してきました。果たして中国経済は世界の景気回復のけん引役になりうるのか。今、世界が中国に注目しています。

そうした中で、中国の景気対策の司令塔とも言える国家発展と改革委員会において、政策決定に大きな役割を果している楊偉民副秘書長を本学に招き、中国景気回復の実態、課題と将来の展望について講演していただくことにしました。大変貴重な機会ですので、大勢の方のご参加をお待ちしております。

 

 

時 間: 2009年7月28日(火) 15:00-17:00

場 所: 京都大学吉田校舎時計台2階国際交流ホール

講 師: 楊偉民(中国・国家発展と改革委員会副秘書長)

テーマ: 「世界的金融危機下における中国経済の回復」

 

 (後援会終了後、17:30より経済学部大会議室にて懇親会が予定されています。参加費無料。)

 

講師紹介:

吉林省長春市生まれ、53才。1989年から、国家計画委員会(のちの国家発展と改革委員会)に勤務するようになり、産業政策司処長、発展規画司副司長、司長を経て、現在は国家発展と改革委員会副秘書長。中国の重要産業政策及び重要発展規画の主要参加者と責任者の一人。

氏は『中国国民経済と社会発展第九次五カ年規画綱要』の執筆者の一人であり、第十次、第十一次五カ年規画、『汶川大地震震災復興再建総合規画』の起草グループの責任者であった。また、『九十年代国家産業政策』、『自動車産業政策』、『国家重点奨励産業・産品・技術目録』など中国重要産業政策の起草にも参加。現在、中国初の『全国主体機能区域規画』の作成に取り組んでいる。

氏は中国の著名な経済学者によって構成されている「中国経済50人フォーラム」の一人である。主な研究領域はマクロ経済政策、産業政策、発展規画問題、都市化、地域経済などである。代表的な著書は『中国の産業政策:理念と実践』、編著書には『中国持続可能的発展の産業政策研究』、『規画体制改革に対する理論的探究』、『「十・五」都市化発展規画研究』などがある。

 

本講演会に関するお問い合わせは劉徳強(liu@econ.kyoto-u.ac.jp)までお願いします。)

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中国・上海ニュース 7.20-7.26

ヘッドライン

■ 中国:1-6月国有企業、6.3%減収も減少率は縮小

■ 中国:22地域GDP伸び率8%以上、上海低調5.6%

■ 中国:ゴミの量は累計70億トン、世界の3分の1を排出

■ 通信:ネットユーザー3.38億人 増加傾向、4億も視野

■ 就職:大卒者約300万人の就職先が未定、都市部の失業率は4.3%

      上海:「皆既日食」を観察、市民に高い関心

■ 上海:農産品交易センター設立、中台農業関係者が注目

      北京:中古物件の売買が好調、価格は年初比32%増

      香港:返還から12年、外国人1万人以上が香港で中国国籍を取得

     陝西:中国最大の砂漠の湖、数十年以内に消滅か

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629日に行われた上海センター・シンポジウム「中国の環境問題と循環型経済への転換」での報告要旨:

 

「中国の循環型経済と環境問題」

京都大学経済学研究科教授 植田和弘

 

中国における環境問題の現状と課題を概括するとともに、持続可能な発展へ向けた経済構造改革と公共政策のあり方を考えてみたい。本報告では、そのことを検討するに際して、以下に述べるような方法を採用する。すなわち、中国の高度経済成長に伴って環境問題が深刻化していることはよく指摘されているが、その特徴や解決の方向を考えるために、参照基準と比較しながら分析をすすめたい。具体的には、キャッチアップ型の高度経済成長ということと中国が現在到達している経済発展の段階という点から、日本の高度経済成長期及びその後、すなわち1960年代から1970年代における日本の環境問題・環境政策を比較の対象として取り上げながら、検討することにしたい。

中国の環境問題については、高度経済成長に伴って状況が悪化し重大な社会問題化してきたが、それ以前から深刻化していた。特に軍事的要請から工業立地が極めて不合理・非効率になっていたため産業のエネルギー効率は低く、局地的環境汚染も激しかった。自然資源の保全的利用という考え方は希薄で資源基盤も劣化させていた。もう一点指摘しておかなければならないことは、経済発展の過程で日本では段階的に課題となった問題が重層的・複合的に生じていることである。急速な経済成長という点では日本の高度経済成長時と類似しているけれども、中国の場合には国内における地域間格差拡大という問題もあり、一方で安全で衛生的な飲料水の確保や伝染病対策など公衆衛生問題が解決しないまま、他方で環境負荷が急速に増加するなど工業化に伴う問題も生じている。

しかし、環境政策の始まりという点からは――もちろん、環境政策の始まりや展開をどういう指標でみるべきかという問題自体を検討しなければならないが、ここではさしあたり環境政策を担う法や行政機構の整備を指標にしてみている――中国は日本と比較して経済発展段階でみると比較的早い段階から環境政策が始まっている(森晶寿・植田和弘・山本裕美編著『中国の環境政策』京都大学学術出版会(2008)参照)。また、部分的には中国に固有な理念的には他国の環境政策よりも進んだ環境管理システム(例えば、三同時制度)を導入している。もちろん、そのことは環境政策が効果的であることを保証するものではない。すでに中国における環境破壊に伴う環境被害の経済的評価を行ったいくつかの研究があり、それを要約した李志東『中国の環境保護システム』東洋経済新報社(1999)によると、すでに健康被害も含む深刻な環境被害が生じているとみるべきであろう。

日本における1960年から1970年代における環境問題・環境政策の特徴に関してまず第一に指摘しなければならないことは、大規模で不可逆的な健康被害が生じたことである。198712月時点で当時の環境庁が認定した公害病患者は、大気汚染で101,778人、熊本水俣病で1352人にのぼっており、熊本水俣病の場合には当時すでに死亡した患者が829人もいたのである。こうした取り返しのつかない環境被害――しかもこうした被害がその責任や補償問題をめぐって長期にわたる紛争が生じやすいことは、水俣病問題に典型的に表れている――を起こしてはならない、というのが日本の経験からくみ取るべき第一の教訓である。

同時に、その後の環境政策によって急速に環境改善を実現したことも、日本の環境問題・環境政策のもう一面の特徴である。このことは例えば、ドイツの二人の政治学者が編集した著書『成功した環境政策(Successful Environmental Policy)』にまとめられている24の環境政策の成功例の一つに、日本のSOx削減政策が取り上げられていることからも明らかである。J.Broadbentミネソタ大学教授の詳細な実証研究”Environmental Politics in Japan”1998)によれば、世界の先進国はいずれも戦後経済成長に伴って深刻な大気汚染に直面したが、大気汚染の削減が最も急速に実現し成功したのは日本であったという。しかも、大気汚染を最も急速に削減したにもかかわらず、その削減に要した期間におけるGDPで見た経済成長率は、先進国の間で日本が最も高かったのである。

解明すべきは、こうした削減が可能になった要因は何か、という問題である。公害反対の住民運動や公害裁判が果たした役割、さらには新しい環境規制に対応する日本企業の革新的適応力・技術開発力――これは後になってポーター仮説の根拠を示す事例として取り上げられている――など数多くの要因を挙げることができる。しかもそれらの要因は、相互に複雑な連鎖構造を持っているのであり、その構造の解明は今後の研究課題として残されている。ここでは大気汚染の改善に日本の地方自治体が果たした役割に注目してみたい。当時の日本の公害対策には当時はもちろんのこと今日のヨーロッパの環境政策と比べても先進的な面があったと言えるが、その中心の一つが環境政策において地方自治体が果たした役割である。たとえば、横浜市は1964年に公害防止協定を市内に立地する発電所との間に締結したが、この公害防止協定は日本の自治体が発明したユニークな環境政策手段であった。日本に環境庁が設置されるのは1971年であり、環境行政の基本になる公害・環境関係の法体系が確立するのは1970年の公害国会であった。したがって、1964年の時点では法律を執行するだけでは環境を守り被害を防ぐことはできなかったと言ってよく、何らかの地方自治体独自の取り組みが必要であった。1964年に初めて導入された公害防止協定はその後1968年に東京都で導入されたが、現在は全国で約3万を超える協定が存在している。もちろん協定を導入すれば直ちに大気汚染が解決するわけではないが、いくつかの実証研究においてもその有効性が示されている。

現在ドイツなどヨーロッパ諸国の環境政策の先進性が日本ではよく指摘されているが――その指摘は現時点においてそれなりに正しい指摘であるとは思われる――、それが昔からドイツの環境政策は進んでいたとか、そもそも国民性から環境保全意識が高いという議論になると不正確と言わざるを得ない。1970年代後半から1980年代にかけてはドイツから日本の環境問題・環境政策に関する調査団が、日本の経験を学びに来日していた。調査団が注目した1つが、日本の地方自治体の環境政策であった。公害防止協定は世界のどこにもない方式なのでとりわけ注目され、その後ヨーロッパにおいて地球温暖化防止に関わって政府と業界が協定を結ぶという新しい政策を導入する際のヒントにもなったのである。公害防止協定以外にも、東京都が1968年に公害防止条例を制定し、そこに盛り込まれた理念が1970年の公害国会に反映されたと言われている。一般に、環境政策は上からつくられていくことが多いが、日本のケースは、地方自治体での取り組みが国の環境政策を動かしていったという意味で、国際的にもlocal initiativeと評価されている。

翻って、中国の地方政府はどうか。中国で上で述べたような日本の環境問題・環境政策および地方自治体に関する経験を話すと、必ず出される意見は、中国の地方政府は日本の地方自治体とは異なる行動様式をとっているという指摘であり、どうすればよいのかという質問である。中国の地方政府は基本的に開発志向であり、工場立地には熱心であるが、開発を抑制する環境政策には不熱心だと言われている。これには財政システムも関係しており、地方政府の税収を下げる環境政策――例えば、汚染のひどい工場の操業停止――は採用されにくいのである。地方政府の態度が環境政策の方向性に大きな影響を及ぼし、結果として環境と関わる諸主体にどういうインセンティブを与えられるかによって環境政策の効果が大きく変わることに、中国の人々も気付き始めている。中国政府は人事政策を活用して、経済指標だけでなく、環境指標においてもよい成績を収めなければ、昇進できない評価方式を省政府などで導入し始めたが、その背後にもこうした認識があろう。この点に関して、日本の場合には戦後憲法に地方自治が明確に位置付けられたのに対して、現在の中国において地方自治はこれからの課題である。

 中国の環境問題は、国内的にはもちろんのこと国際的にも今後ますます注目を浴びるであろう。すでに温室効果ガスの排出量では世界全体の排出量の2割を占めており、年末のCOP15に向けた議論にも見られるように、地球環境保全に向けて中国の責任やコミットも求められるであろう。中国が今後国内的にも国際的にも持続可能な発展――環境汚染を無くし、エコロジー基準に適合しつつ、人々の生活の質を向上させる発展――を実現できる方向に舵をとれるか、注視していかなければならない。

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09年6月:暴動情報検証

美朋有限公司董事長

   中小企業家同友会上海倶楽部代表

上海センター外部研究員   小島正憲

 

6月4日は天安門事件20年に当たっており、民衆の動向が注目されていたが、中国を含む世界は意外に平静であった。6月1日の日経新聞は「中国、進む風化 進まぬ民主化」とうまいネーミングで天安門事件20年の記事を載せているが、6月4日を迎えた世界はまさにそのように進んでいることを証明したようだ。

6月3日夜、米国ワシントンの連邦議会議事堂前では、天安門事件20年集会が催され、「天安門のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた柴玲さんや、元北京大学生の王丹さんらが当時の仲間と久々に再開を果たした。柴玲さんは天安門事件後、中国当局の指名手配を受けた活動家21人のひとりで、国内逃亡の末、90年4月に香港ルートで国外脱出に成功し、現在は米国のボストンでコンピューター関連の企業経営者として成功しており、海外での民主化運動からは実質的に遠ざかっていた。人道支援などの活動を積極的に行っているというが、まさにこの柴玲さんの生き様が天安門事件の風化を象徴しているのではないだろうか。

それでも香港では5月31日から6月4日にかけて集会やデモが行われた。当日には追悼集会が開かれビクトリアパークのサッカー場に15万人が集結した。これは天安門事件後、最大規模の集会であったという。

この文章を書いている最中に、ウルムチで大きな暴動が起きた。これは今回の記事の中の③・④・⑤、ことに⑤の広東省の工場での騒動が直接の原因となっているとされている。このウルムチ暴動については、7/13付けで「ウルムチ暴動緊急短信」として各位にお知らせしておいたが、詳しい真相については、現地調査を慎重に行い、遅くない時期にしっかり報告したいと考えている。

今回も①、②は実地検証済み、③~⑪は未検証で情報のみ。  ※暴動評価基準は文末に掲示。

 

①6/15 江西省南康市  家具業者、新税制に反対し、大規模抗議  暴動レベル2。

◎マスコミ報道 : 6/15午前10時、約100人の家具業者が市政府の新税制に反対して集団陳情。彼らは午後、国道105号線を封鎖したため、野次馬が数千人集まり、近辺の交通が麻痺した。排除しようとした警官隊と衝突し、怒った抗議者により、パトカー14台が壊された。抗議者数人が逮捕された。同日午後、市政府はこの税制の執行の延期を発表。夜9時ごろになり、抗議者は解散。家具業者はこの新税制の延期ではなく、撤回をもとめて引き続き抗議活動を行っていく予定。

◎暴動理由 : 家具業は同市の主要産業。市政府が6/15から家具、木材に関する税率を大幅にアップしたため、家具業者が抗議行動を起こした。従来の税金は400~500元/トラック1台分で、新税は200元/1㎥。これにより業者の税負担はかなり重くなるという。

◎実状 : マスコミ報道とほぼ同じ。下記は追加情報。

ⅰ.7/17現在では、上記の現場対比写真のように平穏そのもの。警察の警戒車両などもまったく見当たらない。

ⅱ.南康市は80万人ほどの地方都市で、中国3大家具生産基地の一つだという。中級家具を生産しており、市内の目抜き通りには家具の卸売り店がずらりと並んでいる。

ⅲ.6/15、家具業者たち数千人が市の新税制に反対して家具市場前に結集。それに2万人を超す野次馬が集まった。ⅳ.急に野次馬の人数が増えたので、警察は遠巻きに眺めているだけで手を出せなかった。警察車両が破壊された。

ⅴ.家具業者の婦人たちは、独自に人民政府前に抗議に行ったが、警察犬に追い立てられて解散。

ⅵ.副市長が市政府の代表として、説得のため抗議現場に現れたが、群集に殴られて怪我をして退散した。

ⅶ.6/15、武装警察が出動。抗議者と野次馬は解散。死者なし。負傷者もほとんどなし。

ⅷ.南康市共産党書記は解任。

 

②6/19、20 湖北省石首市 警察の不審死捜査に憤慨し暴動  暴動レベル2。

◎マスコミ報道 : 6/17、勤務先のホテルの前で、このホテルの男性料理人が遺体で発見された。警察が詳

しく捜査をせず、自殺と断定したので、家族がそれに納得せず、ホテル経営者による殺害を疑い警察に抗議。こ

の事件に暴力団が介入し、さらに拡大。19、20の両日に石首市の主要道路である東岳山路と東方大道を封鎖

し、排除しようとした警察と衝突。このとき野次馬を含めて1万人ほどの民衆が集結。警察車両を壊し、ホテルを

焼き討ちするなどに及んだ。民衆200人が負傷した。

◎実状 : 基本的にはマスコミ報道通りであったが、情報として下記の諸点を追加する。 

ⅰ.このホテルの共同経営者に公安関係者が入っており、ホテル側は事件を表沙汰にせず処理しようとした模様。

ⅱ.このホテルでは、数年前にも14歳の男性が怪死しており、同様に処理された。

ⅲ.石首市は麻薬関係者が多く、このホテルも関係しているのではないかと疑われていた。ホテルの裏の地中から麻薬用の注射針が相当数発見されたという。

ⅳ.男性料理人の死因は、肩の骨折を含む全身打撲・内臓破裂であり、警察は飛び降り自殺として処理したが、他殺ではないかと疑われた。男性は14歳から10年以上このホテルに勤め、ホテルの内情に通じていたので、なんらかのトラブルに巻き込まれたのではないかと推測される。遺書があると言われているが、親族は死亡した男性料理人は遺書が書けるほどの教養がなかったと話している。

ⅴ.6/20、警察が男性料理人の死因をあいまいにしたまま火葬にしようとしたので、親族がそれを阻止するため、暴力組織関係者といっしょになって、ホテルの玄関に火をつけた。

ⅵ.ただちに野次馬が数千人集まったため、仰天した石首市公安関係者が大規模暴動発生として、武装警察の出動を依頼した。武装警察が到着するまでに、野次馬によって地元警察の車両が数台破壊された。その後、野次馬は2万人ほどに増えたという。

ⅶ.武装警察1万人ほどが出動したが、野次馬と大きな衝突とはならず、6/21未明に野次馬は解散した。

ⅷ.6/21、22、23とネット上に、ホテルから別の死体が発見されたという噂が流れたので、ホテル前に数百人が再び集まったが、警察の調査により誤報と判明し解決。

ⅷ.6/25、死亡した男性料理人の親族にホテル側から賠償金22万元が支払われた。親族も納得し解決。

◎私見 : 7/15の時点では、街は平穏そのものであり、1か月前に暴動があったとはまったく想像できなかった。武装警察1万人の出動は、石首市警察の野次馬に対する過剰反応であった可能性が大きい。しかし石首市は麻薬関係者が多い場所のようで、6/28付けで、禁毒を呼びかけるチラシが至るところに貼ってあった。なお、6月末に麻薬取締り一斉捜索が警察の手で行われ、700名余が逮捕された。石首市の人口は62万人。

 

③6/03 新疆ウィグル自治区カシュガル  テロ組織を撲滅  暴動レベル0。

・カシュガルの張健共産党書記は、同地で今年1月から4月までの間に、7テロ組織を摘発、解体したと発表した。

・張書記は、以前はテロリストがタジキスタンなど中央アジア諸国から侵入して活動していたが、最近ではインターネットを通じて住民を扇動していると指摘している。

 

④6/16 新疆ウィグル自治区ウルムチ  警官、抗議行動で関係者を誤って射殺  暴動レベル0。

・ウルムチで、6/16、複合ビル建設の結果、日照不足が起きると周辺住民が抗議行動を行った。

・抗議の住民60人ほどが、建設現場の出稼ぎ農民工約40人と衝突した。解散させようとしていた警官が、誤って発砲しビル建設会社の現場監督者を射殺した。

 

⑤6/26 広東省韶関市の香港系玩具メーカーで従業員同士が衝突  暴動レベル1。

・6/26午前2時ごろ、韶関市の香港系大手玩具メーカー:旭日国際の工場で、漢族とウィグル族の従業員同士が衝突し、ウィグル族の2人が死亡、120人(大半がウィグル族)が負傷。

・警官や武装警察など400人余りが出動し、争いを収束させた。

・同工場は、韶関市の西の郊外にあり、2003年に設立され、従業員総数は8000人、電子玩具などを生産している。

・同工場では、今年5月以降、ウィグル自治区から出稼ぎ従業員800人余りを受け入れていた。ウィグル族が同工場で働き始めてから、工場内で窃盗や婦女暴行が多発しているといううわさが広がり、今回の衝突に至った。

・漢族の従業員が会社をいったん退職したのち、同じ会社に再就職しようとしたところ、断られたことを根に持って、ネット上で、「同社のウィグル族6人が漢族少女2人を乱暴した」とのデマを流した。これが衝突の原因を作ったと見られている。警察はこの元従業員を逮捕したと発表した。

・この事件が発端となって、7月5日のウルムチでのウィグル族の大暴動につながっていったのだが、この時点ではそのような展開は予測できなかった。

 

⑥5/31 福建省普江市 大手スポーツ用品工場でスト  暴動レベル0。

・5/31深夜、普江市にあるスポーツ用品メーカー「361度」の工場で2000人規模 

のストライキが発生。

・公司側が、警察を導入してストを制圧。武装警察も出動し、100人以上を連行、少なくとも2人が重傷を負う。                                  

・労働時間が長くなったのに給与が2/3に減ったため、労働者が抗議。公司側は臨時手当300元を支払い収拾。

                                                    

⑦6/13 広東省広州市 立ち退き問題でトラブル  暴動レベル0。

・6/13、広州市花都区の村民が、立ち退き問題のトラブルで地元当局の都市管理要員数名を拘束。 

・約1000人の警察が出て、都市管理要員を救出。警察と村民双方に負傷者が出た。

・村民は「花都汽車城区拡大計画」に絡んで立ち退きを迫られており、その立ち退き料に不満で抗議をしていた。

 

⑧6/17 広東省肇慶市 立ち退き補償に不満な住民と警察が衝突  暴動レベル0。

・6/17、肇慶市封開県の地元住民が、砕石現場建設にともなう立ち退きへの補償に不満で、警察と衝突。

・同地で視察中の警察官3人が約60人の住民に取り囲まれ、8時間に渡り拘束された。

・救出に向かった約100人の警察官と約300人の地元住民が衝突。双方に負傷者が出た。

 

⑨6/22 広東省汕脳市 セーター工場のオーナーが殺害される  暴動レベル0。

・汕脳市竜湖新津街道にあるセーター工場で、従業員がオーナーを殺害した。

・従業員はオーナーと退社問題でトラブルとなった。オーナーの態度に不満をもった従業員は、親族10名ほどを集め、公司に乗り込み、オーナーと家族7名を殴った。この怪我でオーナーと家族1名が死亡した。

 

⑩6/29 湖南省郴州駅で江沢民夫妻乗車中の列車衝突  暴動レベル0。

・6/29未明、湖南省郴州駅で、長沙発深圳行の旅客列車と銅仁発深圳西行の列車が衝突、3人死亡、60人余負傷。

・この列車には、前日長沙市内を視察した江沢民夫妻が同乗していた可能性があり、現場には武装警察が出動し警戒にあたった。劉志軍鉄道相が現場に急行し、救出作業の指揮をとった。

 

⑪6/20 山東省荷澤市東明県の住民、決死隊結成  暴動レベル0。

・荷澤市東明県の住民には、従来から近くの化学工場の排水による環境汚染が原因とみられるガンが多発。

・数年来、住民は汚水処理の改善を各方面に陳情してきたが、まったくの無対応が続いた。2008年度には住民の6~8割が甲状腺ガンにおかされるという事態になった。

・住民は全国民に向けて決死の「公開状」を公表した。その中で決死隊を結成し、工場を破壊し、県長と共産党書記だけを殺害すると宣言している。

 

≪私の暴動評価基準≫

暴動レベル0 : 抗議行動のみ 破壊なし

暴動レベル1 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以下(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ

暴動レベル2 : 破壊活動を含む抗議行動 100人以上(野次馬を除く) 破壊対象は政府関係のみ 

暴動レベル3 : 破壊活動を含む抗議行動 一般商店への略奪暴行を含む  

暴動レベル4 : 偶発的殺人を伴った破壊活動

暴動レベル5 : テロなど計画的殺人および大量破壊活動

 

                                                               以上

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中国経済最新統計】(試行版)

 

上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしましたが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供し、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。    編集者より

 

実質GDP増加率

(%)

工業付加価値増加率(%)

消費財

小売総

額増加率(%)

消費者

物価指

数上昇率(%)

都市固定資産投資増加率(%)

貿易収支

(億㌦)

輸 出

増加率(%)

輸 入

増加率(%)

外国直

接投資

件数の増加率

(%)

外国直接投資金額増加率

(%)

貨幣供給量増加率M2(%)

人民元貸出残高増加率(%)

2005

10.4

 

12.9

1.8

27.2

1020

28.4

17.6

0.8

0.5

17.6

9.3

2006

11.6

 

13.7

1.5

24.3

1775

27.2

19.9

5.7

4.5

15.7

15.7

2007

13.0

18.5

16.8

4.8

25.8

2618

25.7

20.8

8.7

18.7

16.7

16.1

2008

9.0

12.9

21.6

5.9

26.1

2955

17.2

18.5

27.4

23.6

17.8

15.9

  1

 

 

21.2

7.1

 

194

26.5

27.6

13.4

109.8

18.9

16.7

 2

 

(15.4)

19.1

8.7

(24.3)

82

6.3

35.6

38.0

38.3

17.4

15.7

 3

10.6

17.8

21.5

8.3

27.3

131

30.3

24.9

28.1

39.6

16.2

14.8

 4

 

15.7

22.0

8.5

25.4

164

21.8

26.8

16.7

52.7

16.9

14.7

 5

 

16.0

21.6

7.7

25.4

198

28.2

40.7

11.0

38.0

18.0

14.9

 6

10.4

16.0

23.0

7.1

29.5

207

17.2

31.4

27.2

14.6

17.3

14.1

 7

 

14.7

23.3

6.3

29.2

252

26.7

33.7

22.2

38.5

16.3

14.6

 8

 

12.8

23.2

4.9

28.1

289

21.0

23.0

39.5

39.7

15.9

14.3

 9

9.9

11.4

23.2

4.6

29.0

294

21.4

21.2

40.3

26.0

15.2

14.5

10

 

8.2

22.0

4.0

24.4

353

19.0

15.4

26.1

0.8

15.0

14.6

11

 

5.4

20.8

2.4

23.8

402

2.2

18.0

38.3

36.5

14.7

13.2

12

9.0

5.7

19.0

1.2

22.3

390

2.8

21.3

25.8

5.7

17.8

15.9

2009

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1

 

 

 

1.0

 

391

17.5

43.1

48.7

32.7

18.7

18.6

2

 

3.8

(15.2)

1.6

(26.5)

48

25.7

24.1

13.0

15.8

20.5

24.2

3

6.1

8.3

14.7

1.2

30.3

186

17.1

25.1

▲30.4

▲9.5

25.5

29.8

4

 

7.3

14.8

1.5

30.5

131

▲22.6

▲23.0

▲33.6

▲20.0

25.9

27.1

5

 

8.9

15.2

1.4

(32.9)

134

▲22.4

▲25.2

▲32.0

▲17.8

25.7

28.0

6

7.9

10.7

15.0

1.7

35.3

83

▲21.4

▲13.2

 

 

28.5

 

 

注:1.①「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。

2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意

されたい。また、(  )内の数字は1月から当該月までの合計の前年同期に対する増加率を示している。

  3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%2007年)を占めている。⑥―⑧はいずれもモノの貿易である。⑨と⑩は実施ベースである。

出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。