=======================================================================================================================京大上海センターニュースレター
第283号 2009年9月14日
京都大学経済学研究科上海センター
=======================================================================================================================目次
○ 上海センター主催講演会のご案内
○ 「中国経済研究会」のお知らせ
○ 中国自動車シンポジウム:中国農村におけるモータリゼーション
○
中国・上海ニュース 2009.9.7-2009.9.13
○ 特別寄稿:中日共同で東アジア経済内需主導型モデルを作ろう
○ 民主党大勝:中国マスコミの意外な論評
○ 【中国経済最新統計】(試行版)
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上海センター主催講演会のご案内
近年、中国企業の海外進出(「走出去」)が世界的に注目されるようになりました。その背景にはどのような企業戦略、または国家戦略があるのだろうか。これを理解するために、下記のような講演会を企画することにしましたので、大勢のご参加をお待ちしております。
記
時 間: 2009年9月19日(土) 15:30−17:30
場 所: 京都大学経済学研究科第3教室(法経東館3階)
講 師: 康栄平(中国社会科学院世界経済と政治研究所世界華商研究中心主任)
テーマ: 「中国企業の海外進出戦略」(仮)
(*講演終了後、有志による懇親会が予定されています)
講師紹介:
1949年生まれ。1968年に知識青年として農村に下方、1970年に都市に戻り企業に勤務。1980年代、遼寧省社会科学院科学技術発展研究所副所長、1990年代初め首都鋼国際化経営研究所所長。1994年社会科学院世界経済と政治研究所に転職し、現在に至る。現在は同研究所の世界華商研究中心主任のほか、中国国際華商理事会副理事長、中国国際経済関係学会常務理事、『世界華商経済年鑑』常務副編集長を兼務。
氏は長年中国企業の海外進出を研究し、多くの研究業績が残された。代表作として『中国企業的跨国経営』、『企業多元化経営』、『中国企業評論:戦略与実践』、『華人跨国公司成長論』などの著書がある。現在の研究課題はWTO加盟後の中国企業成長戦略、華人跨国公司、「走出去」戦略,家族企業など。
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「中国経済研究会」のお知らせ
2009 年度第5回目の研究会は日本を代表する経済学者大塚啓二郎教授を迎えて開催されますので、大勢のご参加を心待ちにしています。
記
時 間: 10月20日16:30−18:00
場 所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館3階第3教室
報告者: 大塚啓二郎(国際開発高等教育機構研究員、政策研究大学院大学教授)
テーマ: 「産業集積の発展過程:中国、ベトナム、アフリカの比較」
講師紹介:
■略歴:1971年北海道大学農学部農業経済研究学科卒、74年東京都立大学社会科学研究科修士課程修了、79年シカゴ大学経済学研究科博士課程修了、同年エール大学経済成長研究所ポストドクトラルフェロー、80年東京都立大学経済学部講師、81年同助教授、86-89年国際稲研究所客員主任研究員兼任、91年東京都立大学経済学部教授、93-98年国際食糧政策研究所客員研究員兼任、2001年本学連携教授、03年FASID大学院プログラムディレクター(現在に至る)。
■現在の研究対象:1.日中台の産業発展パターンの比較研究、2.貧困の動学的変化の研究
■受賞:1993年、アメリカ農業経済学会賞 (The Quality of Research Discovery);1995年、日経・経済図書文化賞; 1999年、日本農業経済学会誌賞; 2004年、NIRA大来政策研究賞;2004年、日経・経済図書文化賞など
■著作:『中国のミクロ経済改革』(共著)日本経済新聞社、1995年;『産業発展のルーツと戦略:日中台の経験に学ぶ』(共著)知泉書館、2004年;The Emergence of Land Markets in Africa: Assessing the Impacts on
Poverty and Efficiency.(共著) Baltimore, MD: Resources
for the Future, forthcoming in 2008 。他、著書や国際雑誌論文多数。
注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行います。2009年度における開催(予定)日は以下の通りです。
前期: 4月21日(火)、 5月19日(火)、 6月16日(火)、7月21日(火)
後期: 10月20日(火)、11月17日(火)、12月15日(火)、1月19日(火)
(この件に関するお問い合わせは劉徳強(liu@econ.kyoto-u.ac.jp)までお願いします。なお、研究会終了後、有志による懇親会が予定されています。)
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京都大学上海センター・東京大学ものづくり経営研究センター
共催
中国自動車シンポジウム
中国農村におけるモータリゼーション
――多元的発展プロセスの下での参入戦略――
後援:京都大学上海センター協力会
2009年11月7日(土) 13時
京都大学百周年時計台記念館百周年記念ホール
総合司会 京都大学大学院経済学研究科教授 徳賀 芳弘
13:00-13:10
挨拶 京都大学大学院経済学研究科長
八木紀一郎
東京大学ものづくり経営研究センター 新宅純二郎
13:10-13:30
京都大学大学院経済学研究科 教授 塩地 洋 汽車下郷と参入戦略
―テーマと報告構成―
[第1部 中国農村における多元的発展プロセス]
13:30-14:00
桃山学院大学経済学部 教授 厳 善平 中国農村の経済社会構造
14:00-14:30
東京大学社会科学研究所 教授 田島 俊雄 軽型車から農用車へ―中国的モータリゼーションの展開過程―
同現代中国研究拠点・北京研究基地代表
14:20-14:40
小島衣料 元社長 小島 正憲 農村の交通事情
15:00-15:20
同志社大学商学部 准教授 西川 純平 農村における販売店・修理工場・中古車
[第2部 いかに農村に参入するか]
15:40-16:00
大阪商業大学経営学部 教授 孫 飛舟 石家庄市近郊農村でのアンケート調査
16:00-16:20
東京大学ものづくりセンター 助教 李 澤建 民族系メーカーの農村戦略
16:20-16:40
熊本学園大学経済学部 准教授 三嶋 恒平 タイにおける日系自動車メーカーの農村戦略
16:40-17:10
伊藤忠商事 シニアフェロー 石岡 徹 日系メーカーによる中国農村戦略
17:10-17:15
閉会挨拶
17:30-18:30
懇親会 カンフォーラ
司会 京都大学大学院経済学研究科 教授 劉 徳強
挨拶 京都大学上海センター協力会 副会長 大森經徳
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中国・上海ニュース 9.7−9.13
ヘッドライン
■ 中国:外資誘致力、中国がなお世界トップ
■ 中国新疆:ウイグル族3人に懲役7〜15年の判決 注射針事件
■ 新型インフル:中国本土の感染者6968人に、新学期開始で集団感染も急増
■ 交通:8月末の車両保有、1億8千万台超える=マイカーの増加が顕著
■ 地球温暖化:中国の平均気温、今世紀末までに2.2〜4.2℃上昇と予想
■
社会:9・9・9で婚姻ラッシュ 「久」は縁起良く
■ 上海ディズニー:建設計画は発表前の最終調整期に
■
広東:景気回復の兆し、珠江デルタで労働力不足が深刻に
■ チベット:気候変動が深刻、対策強化へ
■ 台湾:陳水扁前台湾総統夫妻に無期懲役、公民権終身停止の判決
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特別寄稿:
中日共同で東アジア経済内需主導型モデルを作ろう
―三つの勢力が並び立つ世界の新局面
中国商務部国際貿易経済合作研究院
対外貿易部副主任、研究員 金柏松
2009年8月30日に日本の衆議院議員選挙の結果が発表された。自民党は大惨敗を喫し、麻生内閣は鳩山内閣に切り替わろうとしている。選挙期間中、鳩山氏は日本経済を次第に内需主導型の成長モデルに切り替えさせようとして、経済対策を提案した。これは少なくとも3〜5年を必要とする長期的な調整目標だと考えられる。ところが、将来日本における外向型経済成長モデルの調整が成功するかどうかまだ判断がつかない。目下のところ、日本経済は厳しい衰退に陥り、なおかつアメリカの経済調整への挑戦にも直面している。調整期間中、日本経済は大きな試練に直面するだろう。筆者は、日本の新しい内閣が取りうる経済対策は新しい発想を見つけなくてはならないと考える。例えば、「アジア回帰」など、中国と協力して東アジア地域経済を確立することを提起し、内需主導型の経済成長モデルを作ることが挙げられる。東アジアのインフラ建設などを通して、東アジア地域の内需を拡大させることによって、所得を引き上げ、消費を刺激し、東アジア地域の経済成長を実現させる。
一、地域的な内需主導型の経済モデルを作る
これまで中日両国を含め、東アジアの各経済体は普遍的に欧米市場に依存し、輸出指向型の経済モデルに基づいて経済成長を遂げてきた。今日世界金融危機の衝撃下で、その結果生じた欧米諸国の構造調整とモデル転換の試練を受けざるを得なくなる。そのため、東アジア経済は内需主導型の構造とモデルへの調整を考えなければならない。
1987年、日本の中曽根内閣時代に、「前川報告」を受け、成長モデルの転換を提起し、内需拡大によって経済成長を促進させる戦略を実施したことがあった。しかし、中曽根内閣の政策の具体的な内容を分析すると、内需拡大の政策は公共施設建設の拡大に限定されていることが明らかである。20世紀90年代に入ってからも、日本政府は公共施設の拡大をめぐって経済刺激策を制定した。にもかかわらず、日本の消費や投資の経済成長を促進する役割はなかなか期待された効果を生み出すことはできなかった。これが日本経済の失われた10年をもたらした主な原因の一つであった。小泉内閣になってようやくこのことに気づき、「構造改革」政策を打ち出した。しかし、内需主導型経済確立の必要条件と比べると、なお大きな差があった。なぜなら、日本の個人消費と企業投資で経済を牽引する力が不足している。その背後には伝統的生活理念の転換など、長期にわたって努力しなければならない要素も含め、複雑な経済的要因がある。例えば、日本の国民は消費文化観念が欧米とかなり相違しており、日本の消費者の多くは過剰消費することなく、必ず消費を支出より小さくしなければならないという理念を堅く守っていて、必ず非常時に備えるために貯蓄を持つようにする。従って、日本が単独で内需主導型の経済成長モデルを確立しようとすれば、他の方面をともかくとして、消費理念を転換するだけでも、子供の教育から取りかからなければならず、1世代ないし2世代の努力を経てはじめて新しい消費観念が確立され、消費が経済を引っ張る効果が得られよう。これは大変困難なことであるため、日本にとって、東アジアに目を向け、東アジア経済共同体を作り、東アジアに内需主導型経済成長のモデルを構築することしか期待できないだろう。事実、日本のみならず、東アジアの各経済体も単独で内需主導型経済モデルを確立する困難に直面している。従って、地域内で互いに輸出拡大、投資拡大の政策環境を構築すれば、地域内内需主導型経済モデルの確立はより簡単にでき、実行もよりしやすくなるであろう。
二、中日が共同で推進することの実行可能性
東アジア地域の経済発展レベルは多層化、多様化の様相を呈しており、とりわけインフラ建設及び経済成長には巨大な潜在力を秘めている。例えば、東南アジア諸国は一般的に鉄道路線が不足していて、かつみな狭軌で、技術が立ち後れている。地域発展の角度からみると、もし日本がこれまでのように中国を排斥するような古い、保守的な考え方を捨て、中国と連携して東アジア経済共同体を作る意欲があれば、中日両国の政治、経済の影響力は東アジア地域協力の方向、進展、効率に影響を及ぼすだろう。一方、東アジア諸国も難局から抜け出し、これを受け入れ、積極的に参加するだろう。現在、中日韓はそれぞれ個別にアセアンと経済協力を行っているため、各国とも関係が複雑で、効率が低く、進展が緩慢で、作業の重複が多いという状態に陥っている。もし中日両国が連携して共同で推進すれば、東アジアの経済発展には根本的な変化が起こるに違いない。第一に、より全面的で、成熟した方策を提起できるようになる。第二に、発展の知見がよりはっきりしてくる。第三に、推進力がより強くなる。第四、大きな影響力、アピール効果と求心力が得られ、日中はその中核となる。第五に、世界の三大勢力が並び立つような経済構造を形作り、主権を超える新しい協力モデルが創造できるだろう。
三、内需を拡大させる具体的な経路
中国そして東アジアの角度から見て、中日戦略的互恵関係を強化することとは、いかに東アジア地域における経済発展を促進するかという面において具体的な内容を充実させることである。取り立てて指摘したいのは、今回日本の麻生首相がその報告で言及した「アジア経済倍増計画構造」と「アジア総合開発行動計画」には、同様に具体的な内容が欠けており、充実させる必要があることである。
そのため、中日両国は協力して「東アジア総合開発会社」を設立することを提案し、東アジア諸国の投資を引きつけ、利益を共有できるようにする。東アジア総合開発会社の具体的な様式は両国の政府における対外する経済部門が互いに相談し、具体的な実施方策を講じ、東アジア諸国の意見を広く聞いて上で決めてよい。この他に、もし同時に東アジア総合開発会社の起動プロジェクトを打ち出せるなら、さらに建設的実質的な意義を帯びてくる。例えば、先に日本の先進技術を備えた大型製品とプロジェクトを起動し、中国に持っていくことで低コスト製造を実現させ、中国で販売するほかに、東アジアへの販売も可能になる。
まず東アジアの鉄道網の建設を推進することによって東アジア経済体の大都市と都市間の主要交通手段として力を発揮できる。麻生首相の報告によると、日本の東京鉄道網は全通勤客輸送の75%を担い、世界最高記録となっているが、ロンドンは19%の通勤客輸送しか担っていない。日本の地上と地下、速い列車と遅い列車が結合し、発達している鉄道網にはいくつかの特徴がある。第一に、通勤乗客が時間どおり出勤できることを保証する。第二に、2時間の経済協力半径はもう既に500キロに拡大されている。第三に、このような列車は電力で駆動するため、スペースとエネルギーを節約できる。もし国の電力全体でグリーン革命が実現されるなら、列車もそれとともに将来のグリーン環境保護の要求を満たすだろう。第四に、その輸送効率は全交通手段で最高であり、人口密度が大きい国に適している。日本はその鉄道網に関するハードとソフトの技術をセットで中国へ移転して製造すれば、中国で用いられるだけでなく、東アジア諸国への販売もできるだろう。よりよく東アジア諸国に参加してもらうために、中国は部品の生産を部分的に東アジア各国にアウトソーシングして、質の保証を前提に、現地企業の加工製造を積極的に支援することができる。
これを基礎に、中日両国は将来南アジア、中央アジア、中東へ拡大でき、凡アジア鉄道網と、ヨーロッパとアジアを結ぶランドブリッジを建設する。鉄道投資は乗数効果が高いので、その市場には大いに将来性があるだろう。よって、地域経済と日本経済にさらなる成長をもたらしてくれるだろう。技術のスピルオーバー効果だけから見ると、日本企業が日本市場で投入した鉄道網建設の技術のR&D投資はすでに回収されたはずである。もし同様の技術を中国と東アジアに投入すれば、日本の数十倍の面積もある広い国土であるから、その鉄道網建設で得られる技術収益は相当大きいはずである。また、その中に重要な設備、部品、材料などは日本から輸入しなければならないので、これらの製品と技術の輸出がもたらす経済収益も日本に大きな利益をもたらすに違いない。
次に、麻生首相の報告で日本の家庭用小型太陽エネルギーの発電所がすでに開発できたことがわかった。もし中国に移転できれば、中国は市場が広いだけでなく、低コストの製造能力が強いので、東アジア諸国ひいては世界各地へ販売できる。中日両国はこのプロジェクトで東アジア諸国の企業にその中のある生産過程、ある部品、ある材料の製造協力、及び販売の協力へ参加することを支援していかなければならない。再生可能な資源とエネルギー発電を積極的に発展することは東アジアの新興市場での供給不足問題を解決できるだけでなく、資源争奪による緊張関係を緩和し、環境保護や世界のグリーン革命の推進に有利である。
総じて言えば、上述した協力のフレームとモデルの中で、展開できるプロジェクトがさらに数多くあるので、発展の余地は非常に大きい。これは東アジア経済がより良く、より速く発展を実現し、世界の三大勢力が並び立つ局面を構築するに実質的な一歩を踏み出し、アジア経済ひいては世界を全く新しい発展段階へと導く。主権を超えた、新しい地域経済協力を作ることは中国政府にとっては機会でもあり、チャレンジでもある。中国は東アジアと世界の発展に建設的な貢献をしなければならない。
著者紹介: 金柏松先生は中国国家商務部研究院の研究者であり、長年、中国の対外経済、東アジア経済、そして日本経済を研究してきた。1992-95年、2000-02年二度に亘って中国駐日本大使館商務処勤務を経験。中国の対外経済政策、日本経済、アジア経済に関する研究、提言が多数。本論は筆者の個人的意見である。
(翻訳:張冬雪、小林拓磨)
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民主党大勝:中国マスコミの意外な論評
09.SEP.09
美朋有限公司董事長
中小企業家同友会上海倶楽部代表
上海センター外部研究員 小島正憲
8/30、衆議院選挙で民主党が大勝した。
8/31、中国は民主党政権誕生におおむね好意的な反応を示した。しかしながら中国の一部のマスコミでは意外な記事が載った。9/02付け「環球時報」が、「日本要建4艘準航母」という大見出しを掲げ、護衛艦「日向」の大きな写真を載せ、1面全部を使って、日本に自民党よりも軍国主義的で反中的な政権が誕生したかのように報じたのである。この突拍子もない記事は、8/31に出された防衛省の来年度予算の概算要求の中に、ヘリコプター搭載の護衛艦の建造が盛り込まれていることを根拠にして書かれていた。さらに本文では、軍事専門家である戴旭氏に、「日本海軍の当面の仮想敵は中国であり、日本の4艘の準空母の主な狙いは中国の潜水艦である。日本は西太平洋でさらに大きな戦略的野心を持っている」、「もし次期政権の民主党がこの計画を実施するのならば、これは西太平洋の軍備拡大競争に号砲をならすことになる。その場合は中国を含む日本の周辺国家は必ず対応する」との見解を述べさせている。
私はこの情報に接して、意表を衝かれた思いだった。なぜなら私は中国では政府だけでなく、マスコミ界も鳩山次期政権を歓迎するだろうと思っていたからであり、ましてや防衛省の概算要求の件で、鳩山次期政権が攻撃されるとは思ってもみなかったからである。私は8/31に来年度予算の概算要求が提出されたことは、マスコミ報道を通じて知っていたが、この防衛省の概算要求の中身についてはほとんど知らなかった。おそらく私だけでなく、大方の日本人は知らなかったのではないだろうか。「環球時報」の記事は、今回の概算要求の中身については、時事通信社と毎日新聞が発表した記事を基にしたと書いている。
大方の日本人は、常識として民主党が自民党よりは左に位置していると理解している。また、8/31に提出された来年度予算の概算要求については、鳩山民主党代表が見直すと言明しているものであるし、当然のことながら防衛省の予算も見直される。ことに民主党と連立を組む予定の社民党は、マニフェストで自衛隊の縮小を訴えており、軍備拡大の方向には行くはずがない。これが今回の衆議院選挙での日本人の選択である。
このように明確な日本人の選択を、なぜ中国のマスコミは、わざわざ捻じ曲げて報道したのか。ある専門家は「次期政権への牽制である」と評したが、私は中国マスコミ界の当惑ではないかと思う。鳩山民主党代表は、かねてから「靖国神社への参拝はしない」と言明しており、アジア外交重視の姿勢を表明している。したがって今後、中国のマスコミは反日宣伝で点数を稼ぎ、部数を拡大することが難しくなる。「鳩山民主党は自民党よりも中国にとってはましな政権である」と書いても多くの中国人から喝采を受けない。だからわざわざこの一件を持ち出して、早めに悪のイメージを植えつけようとしたのではないかと考える。そうとでも考えなければ、日本人のだれもが考え付かない牽強付会な論評を、いかにもタイミングよく発信したことが理解できないからである。それでもその後のネット上での反応などを見ると、それは目論見どおり、中国人民に鳩山次期政権への間違った印象を刷り込み、点数を稼ぐことには成功したようである。
一方、米国でも、鳩山民主党代表が日本で発表した論文が、タイミングよく抜粋英訳されて米紙に転載され、鳩山次期政権は反米的という印象を与えたことにより、「離米説」が流れた。たしかに鳩山次期政権は、「緊密で対等な日米関係」を唱え、在日米軍の見直しや日米地位協定の改訂、海上自衛隊のインド洋での給油活動の打ち切りなど、従来の自民党政権とは一線を画した政策を打ち出している。しかしながら鳩山次期政権は、一挙に対米政策を変更しようとしているわけではない。あくまでも日米同盟重視の姿勢である。それは米国の知日派ならば、常識の範囲内である。だから前述の鳩山論文抜粋記事は、一部の米国のマスコミの当惑の表れではないかと考える。なおその後の鳩山民主党代表とオバマ大統領との直接対話で、この種の「離米説」は沈静化しつつある。
中国政府は今後、自民党政権に対してきたときのように、「戦略的互恵関係」という衣の下に、「反日」という鎧をちらつかせながら、外交交渉を有利に運ぶという芸当はできない。鳩山次期政権が、アジア外交重視の姿勢のもとに、中国に対しても「謝罪すべきは謝罪し、主張すべきは主張する」という態度を取るので、中国政府にも「反日」の口実がなくなる。さらにマスコミも反日を道具にして、部数を拡大することが難しくなる。いよいよ日中双方が真なる「戦略的互恵関係」を語ることができるようになったのである。しかし同時にこれからは、米国という威を借りることができなくなるわけだから、日本外交に試練のときが訪れたと理解すべきである。また小国日本が、米中の両大国を相手にして、これこそが外交とうならせるような絶妙な手腕を発揮できる舞台が用意されたと喜ぶべきである。
以上
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中国経済最新統計】(試行版)
上海センターは、協力会会員を始めとする読者の皆様方へのサービスを充実する一環として、激動する中国経済に関する最新の統計情報を毎週お届けすることにしましたが、今後必要に応じて項目や表示方法などを見直す可能性がありますので、当面、試行版として提供し、引用を差し控えるようよろしくお願いいたします。 編集者より
|
@ 実質GDP増加率 (%) |
A 工業付加価値増加率(%) |
B 消費財 小売総 額増加率(%) |
C 消費者 物価指 数上昇率(%) |
D 都市固定資産投資増加率(%) |
E 貿易収支 (億j) |
F 輸 出 増加率(%) |
G 輸 入 増加率(%) |
H 外国直 接投資 件数の増加率 (%) |
I 外国直接投資金額増加率 (%) |
J 貨幣供給量増加率M2(%) |
K 人民元貸出残高増加率(%) |
2005年 |
10.4 |
|
12.9 |
1.8 |
27.2 |
1020 |
28.4 |
17.6 |
0.8 |
▲0.5 |
17.6 |
9.3 |
2006年 |
11.6 |
|
13.7 |
1.5 |
24.3 |
1775 |
27.2 |
19.9 |
▲5.7 |
4.5 |
15.7 |
15.7 |
2007年 |
13.0 |
18.5 |
16.8 |
4.8 |
25.8 |
2618 |
25.7 |
20.8 |
▲8.7 |
18.7 |
16.7 |
16.1 |
2008年 |
9.0 |
12.9 |
21.6 |
5.9 |
26.1 |
2955 |
17.2 |
18.5 |
▲27.4 |
23.6 |
17.8 |
15.9 |
1月 |
|
|
21.2 |
7.1 |
|
194 |
26.5 |
27.6 |
▲13.4 |
109.8 |
18.9 |
16.7 |
2月 |
|
(15.4) |
19.1 |
8.7 |
(24.3) |
82 |
6.3 |
35.6 |
▲38.0 |
38.3 |
17.4 |
15.7 |
3月 |
10.6 |
17.8 |
21.5 |
8.3 |
27.3 |
131 |
30.3 |
24.9 |
▲28.1 |
39.6 |
16.2 |
14.8 |
4月 |
|
15.7 |
22.0 |
8.5 |
25.4 |
164 |
21.8 |
26.8 |
▲16.7 |
52.7 |
16.9 |
14.7 |
5月 |
|
16.0 |
21.6 |
7.7 |
25.4 |
198 |
28.2 |
40.7 |
▲11.0 |
38.0 |
18.0 |
14.9 |
6月 |
10.4 |
16.0 |
23.0 |
7.1 |
29.5 |
207 |
17.2 |
31.4 |
▲27.2 |
14.6 |
17.3 |
14.1 |
7月 |
|
14.7 |
23.3 |
6.3 |
29.2 |
252 |
26.7 |
33.7 |
▲22.2 |
38.5 |
16.3 |
14.6 |
8月 |
|
12.8 |
23.2 |
4.9 |
28.1 |
289 |
21.0 |
23.0 |
▲39.5 |
39.7 |
15.9 |
14.3 |
9月 |
9.9 |
11.4 |
23.2 |
4.6 |
29.0 |
294 |
21.4 |
21.2 |
▲40.3 |
26.0 |
15.2 |
14.5 |
10月 |
|
8.2 |
22.0 |
4.0 |
24.4 |
353 |
19.0 |
15.4 |
▲26.1 |
▲0.8 |
15.0 |
14.6 |
11月 |
|
5.4 |
20.8 |
2.4 |
23.8 |
402 |
▲2.2 |
▲18.0 |
▲38.3 |
▲36.5 |
14.7 |
13.2 |
12月 |
9.0 |
5.7 |
19.0 |
1.2 |
22.3 |
390 |
▲2.8 |
▲21.3 |
▲25.8 |
▲5.7 |
17.8 |
15.9 |
2009年 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
1月 |
|
|
|
1.0 |
|
391 |
▲17.5 |
▲43.1 |
▲48.7 |
▲32.7 |
18.7 |
18.6 |
2月 |
|
(3.8) |
(15.2) |
▲1.6 |
(26.5) |
48 |
▲25.7 |
▲24.1 |
▲13.0 |
▲15.8 |
20.5 |
24.2 |
3月 |
6.1 |
8.3 |
14.7 |
▲1.2 |
30.3 |
186 |
▲17.1 |
▲25.1 |
▲30.4 |
▲9.5 |
25.5 |
29.8 |
4月 |
|
7.3 |
14.8 |
▲1.5 |
30.5 |
131 |
▲22.6 |
▲23.0 |
▲33.6 |
▲20.0 |
25.9 |
27.1 |
5月 |
|
8.9 |
15.2 |
▲1.4 |
(32.9) |
134 |
▲22.4 |
▲25.2 |
▲32.0 |
▲17.8 |
25.7 |
28.0 |
6月 |
7.9 |
10.7 |
15.0 |
▲1.7 |
35.3 |
83 |
▲21.4 |
▲13.2 |
▲3.8 |
▲6.8 |
28.5 |
31.9 |
7月 |
|
10.8 |
15.2 |
▲1.8 |
(32.9) |
106.3 |
▲23.0 |
▲14.9 |
▲21.4 |
▲35.7 |
28.4 |
38.6 |
8月 |
|
12.3 |
15.4 |
▲1.2 |
(33.0) |
157.1 |
▲23.4 |
▲17.0 |
|
|
28.5 |
|
注:1.@「実質GDP増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。
2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1月と2月の前年同月比は比較できない場合があるので注意
されたい。また、( )内の数字は1月から当該月までの合計の前年同期に対する増加率を示している。
3. B「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、C「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に対応している。D「都市固定資産投資」は全国総投資額の86%(2007年)を占めている。E―Gはいずれもモノの貿易である。HとIは実施ベースである。
出所:@―Dは国家統計局統計、EFGは海関統計、HIは商務部統計、JKは中国人民銀行統計による。